クッシング症候群

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Cushing症候群

クッシング症候群は、コルチゾールの自律性かつ過剰分泌により高コルチゾール血症を呈する疾患で、病因及び原発巣により、クッシング病(下垂体性クッシング症候群)異所性ACTH 症候群及び副腎性クッシング症候群副腎癌を含む)に大別される。
男女比は1:3から1:4と女性に多い。
クッシング症候群は治療をしない場合、高コルチゾール血症の持続により、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、精神症状などの悪化のみならず、これらの合併症により全身状態の不良のために原発巣に対する治療(切除等)が困難となり、予後に重大な影響を及ぼす場合がある。クッシング症候群の75%程度に高血圧がみられ古典的内分泌性高血圧の一つに数えられ、その不顕性を含めて潜在的に大きな患者人口をもつ重要な疾患である。
また、感染による敗血症で死に至る危険性がある。正常では、糖質コルチコイドはACTHをnegative feedbackしている。

我が国における年間発生数は約1300例と推定される。
内訳はコルチゾール産生副腎腺腫が47%,下垂体cushing症候群36%、副腎結節過形成6%、異所性ACTH産生腫瘍4%程度である。
一方、クッシング病は下垂体からのACTH分泌過剰によってコルチゾール分泌過剰がもたらされたクッシング症候群である。
病態生理
ステロイドホルモンは脂溶性生理活性物質であり血中へ分泌されて標的細胞に到達すると細胞質に存在する受容体に結合する。
受容体はリガンド誘導性の転写因子であり転写活性化シグナルを伝達する。 (コルチゾールのミネラルコルチコイド作用はコルチゾールがMC受容体に結合しアルドステロン作用を発揮する)
グルココルチコイド受容体は海馬や視床下部に分布しており多幸などの神経症状と関連している。
グルココルチコイドの生理作用
糖代謝(末梢での糖利用抑制、糖新生促進)、
蛋白代謝(蛋白分解しアミノ酸を肝で糖新生を促進)、脂質代謝(脂肪を分解する)、免疫抑制・抗炎症作用、骨形成抑制し骨粗鬆症を惹起、
水・電解質に対する作用(GFRを増加、ADHに拮抗し利尿作用)

糖新生酵素を活性化してブドウ糖放出を増加して血糖を上昇する。
筋や脂肪などの末梢組織では糖取り込みと利用を抑制し、特に脂肪組織から遊離脂肪酸が放出されインスリン抵抗性が高まる。
皮膚は非薄化し結合織は弱くなり骨塩量の低下、骨芽細胞の機能抑制が起こる。また、腸管からのCa吸収抑制と腎尿細管からのCa排泄亢進する(骨粗鬆症や成長障害)。中間代謝ステロイド(デオキシコルチコステロン、コルチコステロン)がミネラルコルチコイド作用は弱いが慢性的過剰は血圧を上昇させる。

ステロイドホルモンの代謝
コルチゾールからコルチゾンへの返還は一部肝でも行われるが大部分は腎で行われる。
ミネラルコルコイド受容体はコルチゾールとアルドステロンの両方に親和性を示すがコルチゾンには結合活性を示さない。
コルチゾールの血中濃度はアルドステロンの1000倍であるにもかかわらずミネラルコルチコイド作用を示さない。腎でコルチゾールがコルチゾンへと不活性化されるためである。
アルドステロンを除きステロイドホルモンは蛋白に結合して存在する。コルチゾールの約1%は代謝を受けずに尿中に排泄され遊離コルチゾールとなる。
遊離コルチゾールは代謝酵素の影響を受けないのでコルチゾール分泌量のよい指標となる。

球状層からは電解質ステロイドであるアルドステロンが、束状層からはグルココルチコイドであるコルチゾールが、皮質の中で一番内側の網状層からはDHEA・DHEAS(弱いアンドロージェン作用を有する)が分泌される。
電解質ステロイドはACTH以外にレニン・アンギオテンシン系によって調節されている。
糖質コルチコイドであるコルチゾールは、ストレス、日内変動、negative feedbackという3つの要素により分泌が調整されている。
DHEAはACTHで上昇する事は分っているが、何によって調整されているか現在不明。分泌量としてはコルチゾールの10倍から100倍の濃度で分泌されている。

クッシング症候群(広義)の分類

ACTH依存性クッシング症候群>
  クッシング病
   ACTH産生下垂体腺腫、まれに下垂体癌
0000000 -異所性ACTH産生腫瘍
     -肺小細胞癌
     -カルチノイド(気管支、胸腺、膵)
     -甲状腺髄様癌、褐色細胞腫、前立腺小細胞癌など
0000000 -異所性CRH産生腫瘍
     -胸腺カルチノイド、神経節神経芽細胞腫

ACTH非依存性クッシング症候群>=Cushing症候群(狭義)
  副腎皮質腺種(多くは片側性)
  副腎癌
  ACTH非依存性大結節性副腎過形成
  (ACTH-independent macronodular adrenal hyperplasia:AIMAH)
0000Primary pigmented nodular adrenocorcal desease(PPNAD)
0000異所性受容体発現(gastric inhibitory peptide, hCG/LH,serotoninなど)

Cushing 症候群の診断

診断確定および基礎にある原因の調査には一般にホルモン検査や画像検査が必要である。

画像診断

副腎の画像診断
造影CTが診断的に最も安定している。
核医学
00000a)131I-アドステロールシンチ―皮質のホルモン産生腫瘍(クッシング腫瘍
00000000000など)に特異的に集積する。ホルモン産生が活発なほど濃く写る。
00000b)131I-MIBGシンチ―髄質のホルモン産生腫瘍(褐色細胞腫)に特異的に
0000000000集まる。

褐色細胞腫は、悪性10%、両側性10%、異所性10%であり、異所性や転移性のものも診断できる。

下垂体の画像診断
MRI―小さい腺腫でも診断可能。
腺腫にはプロラクチノーマ(30%)、GH産生腫瘍、ACTH産生腫瘍などがあるが、画像での鑑別は困難。

下垂体はガドミニウムを投与すると正常な下垂体には取り込むが腫瘍への取り込みは悪く、コントラストが付く。
中にはクッシング病と異所性ACTH産生腫瘍と鑑別が困難な症例では、下錐体静脈洞(下垂体から出てくる静脈血が集合する部分)にカテーテルを挿入し、下垂体から出てくるホルモン量と末梢血でのホルモン量を比較する。異所性ACTH産生腫瘍では両者に差がない、クッシング病では非常に高くなる

ホルモン検査

  • 尿中遊離コルチゾル(UFC)(基準範囲20〜100μg/24時間)は全クッシング症候群患者で120μg/24時間を上回る
    クッシング症候群が疑われUFCが著明に上昇して基準上限の4倍を上回る患者は,ほぼ確実にクッシング症候群に罹患している。2〜3回の採尿結果が基準範囲内であれば,診断は実質的に除外される。
  • わずかな濃度上昇は,デキサメタゾン試験によってデキサメタゾン1mg,1.5mg,または2mgを午後11〜12時に経口投与し,翌朝8〜9時に血漿コルチゾルを測定する。
    大半の健常者では、朝の血漿コルチゾルを1.8μg/mL以下に抑制するが,クッシング症候群患者では事実上、常にこれよりも高値となる。
  • 低用量デキサメタゾン0.5mgを6時間毎に2日間経口投与する方法がある。一般に,低用量デキサメタゾンに反応して濃度抑制が明らかに生じなければ診断が確定する。
    コルチゾールは,正常では早朝(午前6〜8時)には5〜25g/dLあり,徐々に低下して午前0時には1.8μg/dL未満になる。
  • クッシング症候群患者で朝のコルチゾルが基準範囲内ということもときにあるが,日中のコルチゾル産生減少は正常に起こらず,その結果午前0時の血漿コルチゾル濃度は基準範囲を上回り,24時間の総コルチゾル産生は増加する。
  • ACTH濃度を測定して基礎濃度や特に副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)反応濃度も検出不能であれば,原発性の副腎異常が原因として示唆される。高値であれば,下垂体が原因であると示唆される。
  • ACTHが検出可能であればACTH依存性クッシング症候群,クッシング病と異所性ACTH症候群との鑑別に誘発試験が役立つ。
  • 高用量デキサメタゾン(2mg,6時間毎に48時間経口投与)に反応して,大半のクッシング病患者では午前9時の血清コルチゾル値が50%よりも低下するが,異所性ACTH症候群患者ではそれはまれである。高用量Dex抑制試験は下垂体ACTHの依存性の有無を見るもので下垂体クッシング病では抑制されACTH,コルチゾールの日内変動は保持される。副腎性クッシング症候群では高用量Dex抑制試験は抑制されず、ACTH基礎値低下(10pg/ml以下)、夜間の高値など日内変動が消失する。
  • 単純肥満との鑑別;
    デキサメサゾン1mgを夜11時に服用させ、翌日の朝に血漿コルチゾールが1μg/dl以下に抑制されていればcushing syndは否定される(簡易抑制試験)。

診断の流れ

スクリーニング検査(自律性分泌を証明)
0000随時血中ACTHおよびcortisolを測定し血中ACTH基礎値の10pg/mlで分ける
     ↓
[I] ACTH依存性Cushing症候群
(血中ACTH10pg/ml以上を上回る時ACTH依存性Cushing症候群の可能性あり)
但し、欝などの精神疾患やアルコール多飲などで視床下部~下垂体~副腎皮質が活性化されるために高ACTH高cortisol血症となるので除外する
     ↓
  ●Overnight DEX0.5mg抑制試験
     23:00にDEX0.5mgを内服し翌朝8~10時に血中ACTHおよび
     Cortisolを測定する。血中cortisol値が5ug/ml以上を示す。
000●DDAVP試験(デスモプレシン注4mg静注)
0000000030分毎に90分まで3回、血中ACTHおよびCortisolを測定する。
00000000ACTH値が前値の1.5倍以上を示す。
     ↓
これで異常なければ健常状態と判定する。
異常が見られたら「確定診断」へと進む 
     ↓
0000①CRH(corticotrophin-releasing hormone)試験でACTH頂値が前値の1.5倍以上
0000②23:00DEX8mg服用、翌朝8~10時の血中cortisol値が前値の半分以下に
0000000000抑制される。
0000③MRI上、下垂体腫瘤の証明
     ↓
Cushing病:①②③の3点が証明された時、あるいは、
①②③の1~2点の時、海綿静脈洞または下垂体静脈洞からの選択的
静脈血サンプリングを追加し、ACTHの中枢/末梢比>2以上
(CRH負荷併用の場合は3以上)あればCushing病と診断
     ↓
異所性ACTH産生腫瘍: 1~2点に該当しない時はACTH分泌源は下垂体以外にあるので*全身CT * 18FDG-PETまたは113In-octoreotide シンチを行う

[II]ACTH非依存性クッシング症候群の疑い
       ↓
① 血中cortisolが高値もしくは基準域にあるのに対し測定感度が
0000血中ACTH<5pg/mlと抑制が強い場合は直ちにthin slice CT
       ↓
0000腫瘍が確認されれば131Iアドステロールシンチを行い、
0000対側集積消失が認められれば腫瘍側からのcortisol過剰分泌が0000あるものと断定できる。
②ACTH基礎値が完全に抑制されていない場合
副腎性preclinical cushing症候群の診断に準じて

1)CRH試験でのACTH抑制不十分
2)DEX抑制試験で抑制不十分
     ↓
副腎性Cushing症候群

参考
内分泌検査(副腎皮質) 基準値
血中コルチゾール   4.0~18.3(μg/dL)
血中ACTH    早朝安静時7.1~53.8pg/ml    
血中アルドステロン  随時: 36~240臥位: 30~159 pg/ml
血漿レニン活性  0.2~2.7 (早朝安静時)ng/ml/hr.
尿中遊離コルチゾール 11.2~80.3 μg/day
尿中17-KGS   ♂6.0~18.4mg/日 ♀3.5~11.2mg/日   
血中DHEA-S

''クッシング病の診断の手引き(平成21年度改訂)

  • 1. 主症候
    00(1)特異的症候
    00000 ①満月様顔貌②中心性肥満または水牛様脂肪沈着
    00000 ③皮膚の伸展性赤紫色皮膚線条(幅 1 cm 以上)
    00000 ④皮膚のひ薄化および皮下溢血
    00000 ⑤近位筋萎縮による筋力低下
    00000 ⑥ 小児における肥満をともなった成長遅延

0000000(2)非特異的症候
00000000000①高血圧 ②月経異常 ③座蒼(にきび)④多毛
00000000000⑤浮腫 ⑥耐糖能異常 ⑦骨粗鬆症 ⑧色素沈着 ⑨精神異常

00上記の(1)特異的症候および (2) 非特異的症候の中から、それぞれ一つ以上を
00認める。

  • 2. 検査所見
    (1) 血中 ACTH とコルチゾール(同時測定)が高値〜正常を示す。
    000採血は早朝(8〜10時)に、約30分間の安静の後に行う。
    0000ACTH が抑制されていないことが、副腎性との鑑別において重要である。

000(2) 尿中遊離コルチゾールが高値〜正常を示す。
0000000原則として24時間蓄尿した尿検体で測定する。ただし随時尿で行う場合は、
00000000早朝尿ないし朝のスポット尿で測定し、クレアチニン補正を行う。

000000上記のうち (1) は必須である。 上記の1,2を満たす場合、ACTH の自律性
000000分泌を証明する目的で3のスクリーニング検査を行う。

  • 3.スクリーニング検査
    0000(1) 一晩少量デキサメサゾン抑制試験:前日深夜に感度を上げる目的で少量
    00000(0.5 mg)のデキサメサゾンを内服した翌朝(8-10 時)の血中コルチゾール
    00000値が 5 μg/dl 以上を示す。
    0000(2) 血中コルチゾール日内変動:複数日において深夜睡眠時の血中コル
    0000チゾール値が 5 μg/dl 以上を示す。
    0000(3) DDAVP 試験:DDAVP (4 μg) 静注後の血中 ACTH 値が前値の 1.5 倍
    0000以上を示す。
    0000(4) 複数日において深夜唾液中コルチゾール値が、その施設における平均値の
    000001.5倍以上を示す。

(1)は必須で、さらに (2)-(4) のいずれかを満たす場合、ACTH 依存性クッシング症候群を考え、
異所性 ACTH 症候群との鑑別を目的に確定診断検査を行う。

  • 4.確定診断検査
    000(1) CRH 試験:ヒト (CRH 100 μg) 静注後の血中 ACTH 頂値が前値の 1.5 倍
    00000以上に増加する。
    000(2) 一晩大量デキサメサゾン抑制試験:前日深夜に大量(8 mg) のデキサメサゾ
    00000ンを内服した翌朝(8-10 時)の血中コルチゾール値が前値の半分以下に抑制
    00000される。
    00000標準デキサメサゾン抑制試験(8 mg/日、分4,経口、2日間)では、
    000002日目の尿中 遊離コルチゾールが前値の半分以下に抑制される。
    000(3) 画像検査:MRI 検査により下垂体腫瘍の存在を証明する。
    00000下垂体腫瘍陽性率は 1.5 テスラの MRI では 60-80% 程度である。
    000001.5 テスラの MRI で不明確な場合は、3テスラの MRI で診断すること。
    000(4) 選択的静脈洞血サンプリング(海綿静脈洞または下錐体静脈洞):
    00000本検査において血中 ACTH 値の中枢・末梢比 (C/P 比) が
    00002以上(CRH 刺激後は3以上)ならクッシング病
    00002未満(CRH 刺激後は3未満)なら異所性 ACTH症候群の可能性が高い。

【診断基準】
確実例:1,2,3および4の (1)(2)(3)(4) を満たす
ほぼ確実例:1,2,3および 4の(1)(2)(3)を満たす
疑い例:1,2、3を満たす

副腎性プレクリニカル・クッシング症候群の診断基準

Cortisolの自律産生能を有する副腎病変でありながらその程度がcushing症候群に特徴的な症状を呈するに至らない状態
オープニング症例
45才女性、高血圧治療中に腹部超音波検査で右副腎腫瘍を指摘され造影CTで右副腎に2.0x1.5cmの円形腫瘍を認めた。
163cm63kg血圧148/90、中心性肥満、満月顔貌、水牛様脂肪沈着、皮膚線状は認めない。
FBS 96HbA1c5.2 血清K3.9 血漿ACTH(早朝空腹時)18.1pg/ml(基準9~52)、血清コルチゾール10.8μg/dl(基準5.0~18.3)、血清コルチゾール(午後11時)9.7μg/dl、Overnight法のデキサメサゾン抑制試験では1mg服用後の血清コルチゾール7.1μg/dl、8mg服用後の血清コルチゾール4.8μg/dlであった。血清DHEAS178ng/ml(基準210~2120)、血漿レニン活性0.6ng/ml/hr(基準0.5~2.0)、血漿アルドステロン濃度10.3ng/dl(基準3.6~24.0)、アドステロールシンチグラフィーでは右副腎に集積を認め左副腎には集積しない。
さて、この例は悪性か?手術適応は?

こたえ
副腎腫瘍からコルチゾールの自律的な分泌を認めるがクッシング症候群を呈するには至らない。本症例はクッシング症候群より高齢であり、経過観察中にクッシング症候群に移行することは稀でありクッシング症候群とは異なる疾患と考えられる。
手術適応について質の高いエビデンスは存在しない。
厚生省の診断基準では、高血圧、糖尿病、肥満を合併する場合は検査所見の3)~6)のうち2つ以上異常値を有するものに手術を勧めている。
現在のところでは、、年齢や全身状態、高血圧、糖尿病、高脂血症、骨粗鬆症の有無、コルチゾールの分泌量ゆACTH抑制の程度を総合的に判断して手術適応を決定することになる。
本例は年齢も若く、高血圧を有し、ACTHの基礎値の抑制はないものの23時の血清コルチゾール値、デキサメサゾン投与後の血清コルチゾール値も比較的高値であることから手術を行うのは妥当と考えられる。腫瘍摘出術後、副腎不全症状を呈する可能性があり、少量のステロイドホルモンを投与するか、症状の出現に注意して経過観察する必要がある。腫瘍径の大きさで良悪性鑑別のカットオフ値は4.8cm(3cm程度の副腎癌の報告もあるが)とされ、腫瘍径が2cmでは悪性腫瘍はほとんど考えられない。

厚生省の診断基準
1.副腎腫瘍の存在(副腎偶発腫)
2.臨床症状:クッシング症候群の特徴的な身体徴候の欠如(注 1)
3.検査所見

  • 1)血中コルチゾールの基礎値(早朝時)が正常範囲内(注 2)
  • 2)コルチゾール分泌の自律性:
    オーバーナイト・デキサメサゾン抑制試験の場合、スクリーニング
    に 1mg の抑制試験を行い、血中コルチゾール値 3μg/dl 以上の時、本疾患の可能性が考えられる。
    ついで 8mg の抑制試験を行いその時の血中コルチゾール値が 1μg/dl以上の時、本疾患を考える。
  • 3)ACTH分泌の抑制:
    ACTH 基礎値が正常以下(<10pg/ml)あるいは ACTH 分泌刺激試験の低反応。
  • 4)副腎シンチグラフィーでの患側の取り込みと健側の抑制
  • 5)日内リズムの消失
  • 6)血中 DHEA-S 値の低値(注 5)
  • 7)副腎腫瘍摘出後、一過性の副腎不全症状があった場合、あるいは付着皮質組織の萎縮を 認めた場合

検査所見の判定:1)2)は必須、さらに 3) - 6)のうち 1 つ以上の所見、あるいは7)がある時、陽性と判定する。
1、2 および 3 の検査結果陽性をもって本症と診断する。

ホルモン濃度が高い場合、組織の正常のfeedback機構から逸脱した結果によるものかを判定するため、DEX負荷試験はACTH分泌を抑制した際のcortisol分泌抑制を見るものである。
デキサメサゾンは糖質コルチコイド活性が極めて強い合成ステロイドホルモンである。
デキサメサゾンの投与によって糖質コルチコイドが過剰だと誤解した脳下垂体系は、正常ならばCRHやACTHの分泌を抑制して、糖質コルチコイドの合成は抑制されて、その代謝産物である尿中17-OHCSも減る。
抑制されない場合はfeedback経路のどこかに異常があると考えられる大半の健常者ではこの薬物が朝の血漿コルチゾルを1.8μg/mL以下に抑制するが,対するクッシング症候群患者では事実上常にこれよりも高値となる。
したがって下垂体腺腫に基づくクッシング病ではACTHおよびコルチゾールの分泌が抑制されるが、 異所性ACTH症候群と副腎腫瘍の場合にはこれらの分泌が抑制されない
就寝時にデキサメサゾンを服用し、翌朝に血漿中のコルチゾールが3μg/dL以下まで抑制されていれば 抑制試験陽性とされる。

[治療]
クッシング症候群においては原発巣の切除が第一選択となるが原発巣の同定が容易ではないこと、手術不適応例、術後のメチラポン投与が必要な例も存在すること等から、早急な内科的管理が 必要とされる。
下垂体腫瘍によるクッシング症候群は、微小腺腫のため同定が困難であり、切除例でも再発率が高いことが知られている。
下垂体照射あるいはガンマナイフはその効果発現に長期間を要することから、少なくともその間、内科的管理が必要となる異所性ACTH 症候群では腫瘍の局在診断が極めて難しく、多くは発見されても既に転移していることもあり、この場合は手術適応とはならない。
副腎腫瘍では心血管リスク因子を有する患者が多く、さらに易出血性、易感染性のために外科的処置のリスクが大きい

クッシング病の薬物療法
副腎への直接的な治療としてステロイド合成阻害薬(ミトタン、トリロスタン、メチラポンなど)は高い効果を示すと考えられるが、根底に存在する腫瘍を治療するものではなく、また、HPA 分泌系(視床下部-下垂体-副腎皮質系)の動態を正常に回復させるものでもない。
国内外の教科書、総説よりメチラポンはクッシング病、異所性ACTH 症候群及び副腎性クッシング症候群のすべてのクッシング症候群において適応可能とされている。

異所性ACTH 症候群
転移性あるいは原発巣不明の場合を除き、外科的切除が最も効果的である。
薬物療法あるいは副腎摘出術は、外科的切除が不奏功、原発巣不明、転移性の腫瘍あるいはクッシング症候群に伴う症状が重度の場合に適応となる。
したがって異所性ACTH 症候群の診断・治療の原則は、
①コルチゾール合成阻害薬(あるいは副腎全摘術)による高コルチゾール血症の是正と合併症の治療、
②病態が安定してから病型及び部位の診断、
③原疾患(腫瘍)の治療、の順で行う。

メチラポンは速やかに、また可逆的に作用し、副作用も軽微であることから、薬物療法の第一選択である
メチラポンは高コルチゾール血症のすべての病態で効果が認められる。副作用は、皮疹、悪心、嘔吐、下痢、神経毒性(運動失調、嗜眠、めまい)である。また、メチラポン投与によりACTH の増加が考えられることから、アンドロゲン活性及び鉱質コルチコイド活性を有するステロイドの分泌亢進により、女性における多毛症、鉱質コルチコイド過剰症(高血圧、浮腫、低カリウム血症)が発現する可能性が考えられる。
メチラポンは、下垂体照射との併用で推奨されているが、臨床症状の長期のコントロールは十分ではない。メチラポンはクッシング症候群の治療として最も一般的に用いられており、術前あるいは下垂体照射の効果発現までの間にコルチゾール値を低下させるためにしばしば用いられている。

血中あるいは尿中遊離コルチゾール値を指標として1 日量を決定する。1 日の平均血漿コルチゾール値が11 μg/dL程度か尿中遊離コルチゾール値の正常化を目標とする

クッシング病(下垂体性)
下垂体からのACTH分泌過剰によってコルチゾール分泌過剰がもたらされたクッシング症候群である。下垂体腺腫を伴うものと伴わないものがあるが、大部分が下垂体の微小腺腫 microadenoma に起因する。
本腫瘍は完全に自律的にコルチゾールを分泌するのではなく、末梢のコルチゾールからのnegative feedback 機構 の制御を受ける点が極立った特徴である。

[病態生理]
①ACTH依存性下垂体クッシング症候群
多くは直径 1cm 以下の微小腺腫から分泌された過剰なACTHが原因である。
腺腫がこのように微小なのは本症ではコルチゾールによるnegative feedback機構が残存しており、これが腺腫 の発育を抑制しているからである。
したがって副腎皮質をあやまって摘出するとフィードバック機構が破綻して腺腫が巨大化する(Nelson症候群)。

②副腎皮質ホルモンの過剰分泌
コルチゾールおよびアンドロゲンの過剰分泌を来たす。
選択的な経蝶形骨洞切除術(Transsphenoidal surgery; TTS)が第一選択である。
外科手術が成功しなかった場合、下垂体照射が試みられることがあるが、効果の発現が遅く、成人では効果が不十分であることが多いため、ACTH の持続高値による副腎への影響を遮断するステロイド産生抑制薬が併用される。

TTSによって治癒あるいは寛解に至らない例が約20~30 %あり、残存腫瘍が明らかで再手術が困難であれば、下垂体放射線照射あるいはガンマナイフを考慮する。
放射線照射法の効果発現には1 年以上要することが多く、その間あるいは無効例では内科的治療を考慮する。

クッシング症候群(副腎性)
外科的アプローチが実行可能でない患者に対しては、内科的な副腎抑制が適応となる。
重症のクッシング症候群の患者でも、手術療法の前にステロイド産生の抑制が必要になる場合がある。
薬物による副腎抑制は、ステロイド産生抑制薬(ケトコナゾール)の投与(600~1200 mg/day)によって達成することができる。クッシング症候群における薬物療法は、主として術前における高コルチゾール血症のコントロールあるいは外科的切除が成功しなかった場合において、術後補助療法として用いられる。
メチラポン、ケトコナゾール及びミトタンなどの経口は、クッシング症候群治療薬として最も一般的に用いられており、効果も高い。

参考
ネルソン症候群は,副腎摘出術後に下垂体が腫大を続けるときに生じ,ACTHおよびその前駆体の分泌が著明に増加して重度の色素沈着がもたらされる。
これは副腎摘出術を行った患者の50%以下にみられる。
下垂体照射が実施されれば,リスクは恐らく低下する。放射線治療が下垂体の持続的な成長を阻止することもあるが,多くの患者は下垂体切除術も必要となる。
下垂体切除術の適応は下垂体腫瘍と同様で,腫瘍が周囲構造を圧迫して視野欠損,視床下部圧迫,その他の合併症をもたらすほど腫大した場合である。
過去に放射線照射が行われていなければ,ルーチンの放射線照射がしばしば下垂体切除術後に行われる。標準的な放射線外照射療法がすでに実施されているときには,病変が視神経および視交叉から十分離れている限り,放射線手術,すなわち集束ビーム放射線療法を単回照射で行う場合がある。
副腎皮質腫瘍は外科的に切除する。患者には術中および術後にコルチゾルを投与しなければならないが,それは副腎皮質の非腫瘍部分が萎縮し抑制されているからである。
良性腺腫は腹腔鏡で摘出できる。多結節性副腎過形成では,両側副腎摘出術が必要となる場合がある。副腎の全摘が推定された後でさえも,少数の患者では機能の再生が起こる。
異所性ACTH症候群は,ACTHを産生している非下垂体腫瘍を切除することによって治療する。
しかし,一部の例では腫瘍が播種しており切除できない。
メチラポン500mg,1日3回経口(総量6g/日まで)またはミトタン0.5g,1日1回経口(最大3〜4g/日まで増量)などの副腎阻害薬は,通常は重度代謝障害(例,低カリウム血症)を制御する。
ミトタン使用時には,低用量のヒドロコルチゾンまたは高用量のデキサメタゾンが必要となる場合もある。
コルチゾル産生の測定は信頼性が低く,重度の高コレステロール血症が生じることもある。
ケトコナゾール(400〜1200mg,1日1回経口)もコルチコステロイド合成を阻害するが,ケトコナゾールは肝毒性をもたらす恐れがあり,さらなる症状を引き起こしうる。
代わりに,ミフェプリストン(RU 486)でコルチコステロイド受容体を阻害することもできる。ミフェプリストンは血漿コルチゾルを増加させるが,コルチコステロイドの作用を阻害する。ときにACTH分泌腫瘍が長時間作用型ソマトスタチンアナログに反応するが,軽度胃炎,胆嚢結石,胆道炎,黄疸,およびビタミンB12吸収不良が発生する可能性があるので,2年を超える投与では慎重な経過観察を必要とする。

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