ケトアシドーシスとインスリン投与法

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高血糖ではあるが緊急事態ではない時の対応

[A]意識障害なく、血糖値500mg/dl以下の時
①、スライディングスケール
②安全マージンを考慮した血糖コントロール
最初はブドウ糖10 g当たりヒューマリンR 1単位にとどめます。
例えば、ソリタT3  500 mLのボトルにはヒューマリンRを4単位入れます。
血糖値チェック後、血糖値がまだ高いとなれば、7gに対して1単位、5 gに対して1単位とヒューマリンRを増やしていきます。
ヒューマリンRを静注した場合、半減期は約10分、通常投与後20-30分で血糖が
最も低くなると言われています。
またインスリンはバッグや点滴ルートにかなり吸着します。血糖値を何回か測定して個体差、点滴バッグ、点滴ルートにあったインスリン量を決めます。

[B]意識障害なく、血糖値500~600mg/dlのとき
最初に、生理食塩水500ml+ヒューマリンR 6単位を2時間かけて点滴、
その後は、スライディングスケールで経過を見るか、あるいは、
ソリタT3 500ml+ヒューマリンR 4単位の点滴併用してコントロールします。

[C]意識障害があり、意識がもうろうとし、血糖値が600mg/dl以上ある場合、
高血糖の非常事態の対応になります。経験がモノを言いますのでモノがない人はパスしてください。
最初、1時間5単位のヒューマリンRをシリンジポンプで投与するのが一般的です。
この方法では1時間あたり5単位を4単位や3単位に減らしたり、6単位に増やしたりなど微調整ができます。
持続静注開始1時間目以降くらいから血糖値が下がっていきます。理想的には1時間に50mg/dL-70mg/dLずつ下げていきます。急に補正すると、脳浮腫が出てしまいます。最初は血糖値100mg/dL台まで待っていかず、250 mg/dL程度までに抑えます。
高血糖のため浸透圧利尿により脱水になっていますので、生理食塩水の点滴を行います。生理食塩水を最初は1時間1000 mLの速い勢いで点滴し、次は1時間あたり500 mLの補液を2時間、その後は1時間150 mL - 250 mLのペースで点滴します。
2時間ぐらいすると血清Kが下がってきます。
インスリンでグルコースが細胞内に取り込まれ、一緒にナトリウムも細胞内に取り込まれます。Naの濃度が細胞内で高くなると、イオンチャンネルの作用で、ナトリウムを細胞外に排泄し、カリウムを取り込むのです。カリウムが下がると不整脈を起こす可能性が高くなります。そこでカリウムを点滴中に混和します。
血糖値300mg/dlに落ち着いたら、今度は点滴中に5%になるようにグルコースを入れます。栄養を与えることになります。
神経細胞や血液細胞では代謝維持にグルコースが必要とされていますので十分量のグルコースによる栄養補給は必須です。

Question
全身倦怠で救急搬送されてきた。
血糖330、BGAでpH7.0、 PaO2 110Torr、 PaCO2 15Torr、 HCO3 10mEq/L、K5.0mEq/L、Na136、Cl 90、尿ケトン体(陰性)
異常を指摘せよ

[K補正]
インスリン不足やアシドーシスで血管内Kがやや高めに出てくることが多い。
血清KはpHの影響を受け、pHが0.1下がるごとにKが0.6mEq/L上昇するので補正が必要である。
血清Kが3~3.3mEq/L以下ならインスリン投与よりK補正が先になる。
pH7.0の場合、正常7.4と比べ0.4低下しており、これを補正すると0.6x4=2.4低下しているはずであるから本来の血清Kは5-2.4=2.6 しかない。
同時に、低MgであればMgを補充しないと低Kは治らない。
血清Mg<1.8mEq/Lの高度の低Mg血症のときは硫酸マグネシウムを1g/hourで5時間投与する。
血清K異常を参照

[Na補正]
見かけ上125~130と低Naとなっている場合は、血清Naは、血糖が100上がるごとに1.6~1.8下がってしまう。
HONKで血糖が800(正常100より700高い)でNa140という場合は補正Naは140+1.6x7=151.2となる。
これを急激に低張にしてしまうと浸透圧の急激な変化で中心橋髄鞘融解を来してしまう。
高Na血症参照

ケトアシドーシスとインスリン投与法

ケトン体とは、高度のインスリン不足とインスリン拮抗ホルモンの過剰により肝のグリコーゲン分解亢進・末梢組織の糖利用低下・脂肪分解亢進が生じ、糖質をエネルギー源として使えなくなるため蛋白質や脂肪の分解が亢進し遊離脂肪酸が増えて肝臓に流入することでその分解過程において分解産物としてできる物質です。
ケトン体は正確には、ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンの 3つの物質の総称であり、血液中にケトン体(酸性物質)が大量にある「状態」を、(ketosis)と言い、これが血液の中に増えると血液も酸性となります。 
ケトーシスは、糖尿病でなくとも、飢餓状態とか、極端なダイエットをした場合にも起こります。
ケトーシスが発生すると、血糖コントロールがさらに悪化して悪循環がおこり、その結果、ケトン体の量がさらに増え、血液のpHが酸性に傾いていきます(keto-acidosis)。
ケトアシドーシスの状態になると、血液中の酸素の利用が低下するので、さまざまな臓器の働きが低下し、脳の機能も低下して、昏睡状態になってしまいます(ケトン性糖尿病性昏睡)。
高血糖に伴う高浸透圧性利尿により循環血漿量は減少し血漿浸透圧は上昇します。
さらに、高ケトン体血症に伴い代謝性アシドーシスが進行します。
インスリン欠乏とインスリン拮抗ホルモン(glucagon,cortisol,adrenalin)が増加し、高血糖(300以上)、
ケトン尿、高ケトン血症(βヒドロキシ酪酸増加>1mM)、アシドーシス(pH7.3以下、HCO3 18mEq/L以下)となります。

高血糖救急に遭遇したらまず計算
① 血漿浸透圧mOsm/L  2x(Na+K)+Glu/18+BUN/2.8 正常値285~295mOsm/L
② 脱水推定量(L)  (血漿浸透圧/290-1)x 30Lまたは 0.6x体重x(1-140/血清Na)
体液喪失量(L)= (患者血漿浸透圧-正常血漿浸透圧290)÷正常血漿浸透圧290x0.6x体重kg
③ アニオンギャップ(mEq/L)  Na-( Cl+HCO3)  正常値 8~16mEq/L 
④ 補正血清Na(mEq/L) 血糖が100上がるごとに1.6~1.8下がってしまうので見かけよりは本当はずっと高いはずである。
血清Na+1.6x(血糖-100)/100   正常値135~145
⑤補正血清K(mEq/L) pHが0.1下がるごとに:血清Kは0.6mEq/L上昇するので見かけよりはずっと低いはずである。
血清K-0.6 x [ (7.4-pH)x10]   正常値3.5~5.0mEq/L
⑥BE=[HCO3]-24.8+16.2x(pH-7.4)  基準値-2.2~1.2mEq/L

[A] STEP 1: 糖尿病ケトアシドーシス(血清K 濃度管理)    

  • 1. 高浸透圧(高血糖)とアシドーシスの改善そしてインスリンの投与→血清K の細胞外から細胞内へ移動により血清K 濃度低下
    →治療開始早期のK の静脈内投与→1時間毎の電解質再検
    K の補給→必ず腎機能正常であることを確認する→排尿の確認
    腎機能低下では重篤な高K 血症をきたす可能性に注意。
  • 2. 輸液の種類
    生理食塩水500mℓ+塩化カリウム(20mEq/1A)1A
    3.アシドーシスの補正は原則として行わない。(原則としてメイロンの投与は行わない。)
    ただし、重度のアシドーシス(pH<7.1、HCO3-<5)の場合は
    「注射用蒸留水500ml+メイロン100ml」を5ml/kg/hr と生食5ml/kg/hr の半々で輸液を開始する。2時間経過したらメイロンの投与は中止する。

0000◎または、メイロン40mlを蒸留水160mlで200mlとし(等張)
00001時間でpHが6.9以下の時はメイロン20~40mlをゆっくり投与し、
0000pHを7.1まで補正する。

メイロン投与のガイドライン
アシドーシスに対して原疾患の改善以外に、メイロンを落とすぐらいしかない。
1.  原則として、10mmol/L 以下の不足量は補正しない。
2.  pH 7.20 以上で、バイタルが落ち着いていれば投与しない。
3.  標準投与量は、以下の計算式から得られた量の、半量から補正する。
HCO3不足分 = 0.25x体重(Kg)x(-base excess : BE)
または、アシドーシス(pH<7.1)では
重炭酸不足量(mEq)=0.6×体重(kg)×(15-〔 HCO3〕測定値)
この式で求めた投与量の半分を補正し、残りはデータを見ながら補正していく。
重炭酸を投与する際は CO2 産生が増えるので、呼吸性アシドーシスに
メイロンを投与することは危険である。
CO2 + H2O ⇦⇨ H2CO3 ⇦⇨ H+ +  HCO3

要注意
代謝性アシドーシスでpH7.2以下になり、重炭酸ナトリウムにより補正を考慮する場合、重炭酸イオンの不足量=0.5x体重x(24-HCO3)からこの不足量の1/2を3時間以上かけてゆっくり補正する。そして、pHが7.2以上になった時点でいったん中止し血液ガスを繰り返しながら経過を見る。
しかし、重炭酸ナトリウムの大量投与に当たっては浸透圧の問題があり、8.4%の濃度重炭酸溶液のNa濃度は1000mEq/Lでありこれを正常Na濃度にするためには投与量の6倍以上の水を必要とする。
また、アシドーシスに対して重炭酸ナトリウムが投与されると末梢組織で重炭酸イオンが水素イオンと反応して水と炭酸ガスになる。
この末梢組織で発生したCO2は水素イオンと異なり細胞膜を容易に通過するため組織内の炭酸ガス分圧を高める結果、組織内をアシドーシスにする。重炭酸の投与がかえってケトンや乳酸の低下を遅くする。そのため。PH7.0以上であれば重炭酸の投与は行う必要はない。

●電解質管理(Na,P,Mg,Na)
DKA患者では、Kは総量で300-500mEq 不足しているので血液中のK濃度に応じて、輸液製剤中にKClを加える。
治療に伴い、Pの不足も高頻度に出現する。予後には影響しないが、測定すべき。
リンの投与は原則として行わない。

●Kの補正が特に大切
はじめはKを含まない輸液を使用する。
   Kが4~5mEq/l→10mEq/hr
   Kが3~4mEq/l以下→20mEq/hr
   ただし、1日200~300mEq以下とし、
アスパラK 10ml(10mEq)を適宜、生食に入れて1時間毎にモニターする。
糖尿病性昏睡による重症脱水症状では血清K,P,Mg,Naの体内貯蔵量が枯渇している。
K+が補充されない場合は治療開始後12時間までに2/3の患者で低K血症になる。
最初の1時間で点滴する生食1㍑中にはK+は必要ないが血糖値が300mg/dl以下になったら200mg/dlにならないうちに20~40mEq/hrの割合でK+の補充を行う。**[B] STEP 2: 糖尿病ケトアシドーシス(脱水補正) [#x83262f9]
1. 高血糖改善による血清Na 濃度上昇-高血糖改善により水が細胞外から細胞内へ移動
→血糖100mg/dℓ減少につき血清Na 濃度1.6~1.8mEq/ℓ上昇

具体例生理食塩水を用いて血糖値を850 から250mg/dℓに改善
→血清Na 濃度は[(1.6~1.8mEq/ℓ)×(850-250mg/dℓ)/100]=9.6~10.8mEq/ℓ 増加
→高ナトリウム血症参照

◯ケトアシドーシス(+)血糖値300mg/dℓ以上の輸液
→1時間毎の電解質再検 (血清Na 基準値:136~147mEq/L)
① ただちに生食で 1ルート確保。10ml/kg/hr で1~2時間輸液し利尿をつける。
② 同時にもう 1ルート確保し、速効型インスリン0.1 単位/kg/hr で投与する。

例)体重10kg の場合:「生食200ml+ヒューマリンR(ノボリンR)(100 単位/ml)0.2ml=0.1 単位/ml」を10ml/hr で投与。(0.1単位=1ml/kg/hr 10ml/10kg/hr)

a 生理食塩水で治療後高Na 血症とならない場合(Na<138)-生理食塩水
b生理食塩水で治療後高Na 血症となる場合(Na>138)-2/3生理食塩水 (生理食塩水:蒸留水=2:1) (具体的には、生理食塩水1000ml と蒸留水500ml を混合して作成) または半生食(0.4%)は蒸留水1000ml+10%NaCL 40ml (蒸留水500ml+10%NaCl 20ml)
1/2生食を用いるときには、脳浮腫の危険をたえず念頭におく。
著明な高浸透圧時(>350mOsm/L)でも生食を使用してよい。
生食の浸透圧は308mOsm/L(Naは154mEq/L)で患者の血漿よりは低張である。
半生食(1/2生食)の使用は急速な浸透圧の低下を招来し、脳浮腫をおこすので生食で十分な効果が得られないときは2/3生食を用いる
(心不全合併例では1/2生食をゆっくり補給)
&deco(red){水分喪失量(L)=(血漿浸透圧-292)/ 292×標準体重×0.65
このうち、半分を最初の6時間で、残りを24時間で投与する。};
検査外注の場合はすぐに結果がでないので、血液浸透圧=2x(Na+K)+BS/18+BUN/2.8で速算して求める。
高齢者や高度脱水そして心、肺、腎などに合併症のある例では200~300m/hrにとどめる。
また、うっ血性心不全、肺水腫の発生に注意。

◯ケトアシドーシス(+) 血糖値300mg/dℓ以下の輸液
血糖は1時間毎、電解質や血液ガスは2~4時間毎にチェックを繰り返す。
①ソリタ-T3 号(5%ブドウ糖を含む維持液)またはソルデム1号10ml/kg/hr で1~2時間輸液し利尿をつける。
② 同時にもう1ルート確保し、速効型インスリン0.05 単位/kg/hr で投与する。

移行期の治療:
1)輸液速度を落す。20~40kg→5ml/kg/hr、40kg~→4.5ml/kg/hr(最大250ml/hr)
2)利尿確認+腎機能正常+高K血症(-)で血糖300mg/dl 以下となったらソルデム3A(G)に変更する。
輸液速度は初期輸液速度の1/2~1/4 で、欠乏量を36時間で補正できるよう計算する。
3)血糖を急激に下げないよう注意し、200~300mg/dl 程度で保つようにする。

初期輸液
乳酸アシドーシス         DKA          HONK(非ケトン性高浸透圧性)
乳酸高値>45mg/dl      BS250~600        BS600~1500
P>8mg/dl            血清
                血液浸透圧<330      浸透圧>335
                ケトン体+~+++
                   AG>20
                   Pは低値 
                 初期輸液
               0.5~1㍑./時間(2時間)     1㍑/時間(2時間)
                 その後
               500ml/時間(4時間)        4~14ml/kg/時間

血液浸透圧=2x(Na+K)+BS/18+BUN/2.8

[C] STEP 3: 糖尿病ケトアシドーシス( 高血糖の是正)

治療開始後48 時間以内は血糖値を300mg/dℓ前後に維持
ー急速な高血糖の改善は脳浮腫の危険ー
1. インスリンの投与法-静脈内持続注入
2. インスリンの種類-速効型(ノボリンR、ヒューマリンR)
中間型や遅効型インスリンは使用しない。
超速攻型(ノボラピットなど)は、添付文書に静脈内投与可能とは記載されていない。
3. インスリンの投与量
治療開始後から血糖値250mg/dℓ前後まで 0.05~0.1 単位/kg/時間→血糖の降下程度で調節(1時間毎に血糖再検)
血糖値250mg/dℓ以下
ブドウ糖5g 前後につきインスリン1 単位程度のビン注

インスリンのテクニックはこうやる!!
急速な血糖低下やアシドーシス補正からくる脳浮腫による意識障害に注意して「いかに安全に血糖を下げるか」がポイントである。
糖尿病性緊急症の場合、まずはヒューマリンR 1 ml(100単位)+生食99mlを作り、1u/mlとし、最初に、ヒューマリンRを0.1~0.2単位/kg たとえば 10単位静注します。
以後は0.1単位/kg/hrにて持続投与します。
血糖が250~300mg/dl、HCO3>18、pH>7.3になるまで続けます
インスリン0.1単位/kg/時間血糖は75~100mg/時間の割で低下します。
インスリンが十分量投与されれば,ケトン体は数時間以内に消失し始めるので尿ケトン体が消失するまで持続投与する。
しかし,ケトン体のクリアランスは遅れることがある。これはアシドーシスが消失するにつれてβヒドロキシ酪酸がアセト酢酸(検査室で測定される“ケトン体”)に変換されるためである。
血清のpHおよびHCO3濃度も迅速に改善するはずであるが,血清HCO3濃度が基準範囲内まで回復するには24時間かかる場合がある。
pHが7を下回った場合にはHCO3投与によるpHの急速な是正が考慮されることもあるが,HCO3は急性脳浮腫の発症(主に小児での)と関連しておりルーチンで使用すべきではない。

重症の糖尿病性ケトアシドーシス時のアルカリ剤投与のしかた
pH7.0以下の場合のアルカリ欠乏量mEq/L=(base excess) x(体重kg) x0.3より計算した重炭酸イオン量の半量をメイロンにて1~2時間かけて補充し、残り半量は24時間かけて点滴静注する。pH7.0以上なったならメイロンの補充は中止してよい。
一般に、インスリンの治療を始めるとケトン体産生は減り、ケトン体は重炭酸イオンに代謝され、遠位尿細管での重炭酸イオンの産生も始まるため、血中の重炭酸イオンは上昇するはずであるので安易にアルカリ化剤は使用しないのが原則である。
糖尿病性ケトアシドーシスの危険な合併症は脳浮腫の悪化であり、血糖値が急激に下がっても細胞外の浸透圧が下がるので血液中の水が中枢神経細胞内に移行して脳浮腫が生ずる。
血糖値は1時間あたり50~100mg/dl程度下げるのが良い。
治療開始して12時間経過しても意識障害が改善しないときは脳浮腫が依然として存在するか悪化している可能性が高い。
脳浮腫を確認したら10%グリセオール200ml/2hrを2~4回/day
デカドロン0.5mg/kg 分3~4静注を行う
[補液]
循環血漿量を維持し急激な浸透圧低下を避けるためにNaが高値であってもまず生食を用いる。
輸液は最初0.9%生食1000ml/時間で開始し2~3時間で3㍑程度投与し時間尿が30ml以上を保つように維持する
高齢者で心合併症があるときは500ml/時間が無難である
切り替えのタイミングは決まっていないが治療開始後4時間は生理食塩液0.9%を,その後、補正Na濃度>146mEq/Lとなり循環動態が改善したら2/3生食か半生食(0.45%食塩液)に切り替え250~ 500ml/時間で維持するのが無難である。
補正Na=実測Na+[(血糖-100)/100]x1.65                 
血糖値が300mg/dl未満となったときには、インスリンの注入速度を0.05単位/体重/hrに下げるとともにグルコースの入った輸液、すなわち,5%ブドウ糖を含む2/3食塩液に変更すべきである。
そして、血糖を150~250mg/dlの範囲内に維持する.
ケトン体陰性、摂食可能になればインスリン皮下投与に変更する。
成人で血糖値が250〜300mg/dL(13.88〜16.65mmol/L)になったときには,5%ブドウ糖液を静脈内輸液に加えて低血糖のリスクを低減させるべきである。

治療開始<> ~  1.5時間 ~ 7時間  ~14時間
  生理食塩液←→ フィジオ70←→  KN2B      
         +KCl(20~40mEq/L)  +KCl(30~40mEq/L)

治療開始24時間程度後に血糖値が150mg/dl程度になったらインスリンは持続静注から皮下注射に変更していく。

[インスリン]
まずはレギュラーインスリン10単位をボーラス(ワンショット)で静注。その後0.1U/kg/h の
ペースで持続静注開始。 血糖値が250をきったら、静注スピードを1→0.05U/kg/hに減量する。
DKA改善の指標はHCO 3またはアニオンギャップの正常化である。
HCO 3濃度が正常化するまでは、インスリンの静注スピードはこれ以下に下げない。
インスリン投与開始後1時間毎の血糖値を参考にしてはインスリン投与調節スケール
(インスリン静脈内持続投与)でインスリン注入量を調整する。
Anion gap (正常値12±4)でaniongap>18で上昇ありと判定する。
ケトアシドーシスの基本は血糖値が低下するまで血糖、血液ガス、血清電解質は1~2時間毎に測定する。

少量持続注入療法
   a) 0.1単位/kg/hrで開始する。
   b) 反応が鈍いときは注入速度を2倍(0.2単位/kg/hr)にする。
   c) 血糖値が250mg/dlまでの平均降下速度は124mg/dl/hr。
   d) 1時間毎に血糖を測定し、血糖値が250~300mg/dlまで低下したら、
     注入速度を1~2単位/時間に減じ、輸液を生食から5%グル(ソリタT3)に変える。

レギュラー インスリン の持続静注は、アニオンギャップが小さくなり血液および尿が持続的に
ケトン体陰性となるまでは継続すべきである。
AG=Na-(CL+HCO3)正常値は12±2mEq/L
患者が安定し食事ができるようになったときには,典型的な混合型インスリン
分割投与法,または基礎-ボーラス インスリン 投与法を開始する。
初回の インスリン 皮下投与後も インスリン 静注を1〜4時間継続すべきである。
小児では, インスリン 皮下注射が開始されpHが7.3を上回るまで0.05単位/kg/時の
インスリン 注入を継続すべきである。

意識状態が悪くなるほど、血糖が高いとき、ショック状態やアシドーシスの場合は毛細血管が収縮しているため、インスリンを皮下注しても吸収されない
このような場合にはシリンジポンプによるインスリンの持続静注を行うが、落ち着くまでは、最低2時間おきの血糖チェック、6時間おきの血中K濃度のチェックが必要になる。

ケトアシドーシス昏睡の初期治療例 
血糖  浸透圧  総keton  pH  HCO3  BE  尿ケトン体 インスリン量  輸液ml/hr
        下記数値以上の時00000000000000000004単位/時間0000生食1000
7490003650006.300007.07 0003.2 0-27.6000+++0003単位/時間00生食500
682 00034900005.8 0007.170004.70-21.4000 ++ 0 3単位/時間00生食333
5350003350004.300007.230007.0000-14.2000+0002単位/時間000ST2/250
32600031300003.800007.3100011.3000-7.2000±001単位/時間005%ブ糖250
2960002830000.5 00007.3800013.8000-5.00000001単位/時間000 ST2/250

輸液
●生理食塩水を基本とするがNa150以上では2/3NaCLを投与し、高度のショック時はプラズマネートなどの血漿代用剤を投与する。
血糖が250前後に安定したら5%GかST2の低張液に変更する。
●輸液速度は当初の1~2時間は500~1000ml/時間で次の3~8時間は250~500ml/時間とし尿量50ml/時間を目安とする。
●インスリンは50~100mg/dlの下降速度で少量静脈内持続投与0.1単位/kg/時間とし血糖値が250mg/dl前後に安定したら0.05単位/kg/時間に調整する。

合併症の予防及び治療
  1.不均衡症候群:血糖、電解質、浸透圧、pHなどがあまりに早く補正されると、異常状態に適応した組織(特に脳組織)は急激には新しい環境に適応できず、両者間の均衡が破綻して脳浮腫、Paradoxical acidosis、肺水腫などを生じることがあるので、臨床症状や検査結果をみて補正の速度を調節する。
  2.血栓症:血液の濃縮により、血栓ができやすい状態にあるので、脳血栓、心筋梗塞、DIC、腸間膜動脈血栓症などに注意する。浸透圧が380以上のときは、6000~10000単位のヘパリンを持続静注する。  
  3.感染症の予防:尿路及び呼吸器感染症に注意し、必要に応じて抗生剤の投与を行う。 
  4.急性胃拡張・胃アトニー:重症例に発生することがある。嚥下性肺炎の予防のため、経鼻胃管を挿入する。

シリンジポンプによる持続投与

長崎大学のガイドラインでは「ヒューマリンR50単位+生食49.5ml」で1単位=1ml。
指示は「単位/時間」で出すことと決まっており、通常「0.5~5単位/時間」で使用する。
インスリン投与調節スケール(インスリン静脈内持続投与)
0000血糖値00000現行流量に対するインスリン量の増減0000000000目安(参考)
0059 以下00インスリン中止し、50%ブドウ糖液20 mL 静注後Drコール00同 左
00060 ~ 79000インスリン中止し、Dr コール00000000000000000000 同 左
00080 ~ 99  (  )単位/時間 減らす0000000000000000000000.5 単位/時間 減
 100 ~ 199 (  )単位/時間 増やす • 減らす0000000000000そのまま
 200 ~ 249 (  )単位/時間 増やす • 減らす000000000000.2 単位/時間 増
 250 ~ 299 (   )単位/時間 増やす • 減らす0000000000000.4 単位/時間増
 300 ~ 349 (  )単位/時間 増やす000000000000000000 0.6 単位/時間 増
 350 ~ 399 (  )単位/時間 増やす000000000000000000 0.8 単位/時間 増
 400 以上  (   )単位/時間 増やし、Dr コール000000001.0 単位/時間 増
  ※単位数を記入し、「増やす」か「減らす」を○で囲む。
  ※血糖値が99 mg/dL 以下および350 mg/dL 以上の時は、上記処置後1 時間で血糖値を再検し、再度注入量を調節する。

★緊急の場合  血糖値の1/20のインシュリンを静注
★一般的な高血糖の補正に対して次の6時間に投与するインシュリン量 ・・・(現在の血糖-100)×0.08 I.U.

[D] STEP 4: アシドーシスの補正

アシドーシスは脱水と高血糖の改善により是正されるので補正は原則として不必要。
高度のアシドーシス(pH≦6.9)で重症意識障害が合併している時は補正を考慮する。
例えば体重50kg で心肺機能が問題ない症例では
1)1時間ごとに電解質と血糖値を測定しながら、まず、生理食塩水500ml+ノボリンR 5 単位を1時間で点滴開始し
2)利尿が得られ、腎機能が正常なのが確認できたら次に生理食塩水500ml+ノボリン5 単位+塩化カリウム(20mEq/1A)1A を1~1.5 時間で点滴し
3)血糖値250mg/dℓ以降はソリタ-T3 号500ml+ノボリン5 単位を1.5 時間で点滴する。
という流れになる。

注意
メイロン投与で乖離曲線の左方移動、浸透圧負荷、CO2上昇(paradoxical acidosis)などが起こりK低下に気をつけなければなりません。
呼吸不全合併例では血中CO2が上昇してアシドーシスを助長する。
輸液など十分な初期対応を行っても重篤なアシドーシス(pH<7.0)が遷延する場合に限りメイロン投与はひとつの選択肢となります。
メイロンの浸透圧は約5倍と高く、メイロン100cc投与するとおよそ生食500ccを負荷したのとほぼ同じナトリウム負荷となります。
代謝性アシドーシスが遷延し不足塩基が-10mEq/L以下の場合、
体重kgX不足塩基(mEq/L)X0.24(ml)量投与も考慮することがある。

非ケトン性高浸透圧性昏睡 (HONK:hyperosmolar non-ketotic diabetic coma)

Ⅱ型糖尿病をbaseにもつ患者の感染症などを契機に発症します。
DM患者の感染症は気腫性胆嚢炎、気腫性腎盂腎炎など恐ろしい感染症が隠れてることがあります。
focal neurological signを呈することもあり、片麻痺や痙攣を生じても脳卒中と誤診することもあります。

著明な高血糖(通常800ないし1,000mg/dL以上)、血漿浸透圧は著しく高く、血液浸透圧> 340 mOsm/L、アシドーシスはない。
高浸透圧に基づく脱水、脳神経症状が病態の中心である。
糖尿病患者にIVHを開始したときや感染、脳血管障害、手術、利尿薬やステロイド投与で高血糖がきっかけで利尿を生じ、著明な脱水を生じている。
2型高齢糖尿病患者で意識障害を認めた場合、HONKを疑い、血糖、BUN、血中Na(ともに上昇)、尿中電解質、血液浸透圧を調べ脱水の評価を行う。
AG<12  *AG=Na+HCO3--Cl- で、正常値は8~12(Anion gap (正常値12±4)でaniongap>18で上昇ありと判定する)
脱水の程度がDKAより強い。体重の10~20%の水分欠乏があり、水分の補給がインスリンの投与よりも優先する。
血液浸透圧> 340 mOsm/L
Na は高血糖により見かけは低下。
血液ガスは正常範囲。  pH7.3以上、HCO3 18~20mEq/L以上

HONKでは補液が最も重要で、はじめは低血圧が是正され尿量が増えるまで生理食塩水を投与し、ついで自由水を補うために2/3生食に変更する。
インスリン投与は賛否両論で、ある専門家は DKA と同様に投与せよと主張し、またあるものは インスリン感受性が亢進しているので DKA 患者に使用する量の半量を短時間作用性インスリンで投与すべきであるとしている。
HONK 患者は DKA 患者より脳浮腫を起こしやすいので、重篤な高血糖や高浸透圧は12~24時間かけて徐々に補正する。血糖値ははじめの24時間は 250 mg/dL 以下にすべきではない。
以前 NKHS の死亡率は 50%以上とされていたが、早期発見と ICU での管理により現在は 10~15%といわれている。
輸液
治療開始時は生食を用い、最初の1時間で1000mlを点滴する
その後は尿量を見ながら500ml/h程度に減量し、輸液も2/3生食に変更
インスリン
通常は輸液のみで血糖は下がるため、ボーラス量は用いずに静注インスリンを1-2U/hで開始
血糖値が300以下に下がったらスライディングスケールによる皮下注に変更
① 一般的に食塩液を治療開始1時間で1~2㍑を投与し2~8時間かけて さらに2~3㍑ 追加投与する。
②最初の6時間で予測体液喪失量の1/2をその後残りの1/2を24時間で補うように輸液量を調節する
体液喪失量(L)= (患者血漿浸透圧-正常血漿浸透圧290)÷正常血漿浸透圧290x0.6x体重kg

乳酸アシドーシスの治療

乳酸アシドーシスは、明らかな原因がなくとも重症患者に認められることが少なくない。
重症の患者は、輸液を行わなくともアシドーシスになる可能性があり、ピルビン酸の代謝に必要なチアミンが補給されない状態で高カロリー輸液が行われると、ピルビン酸はアセチルCoAへの経路を経ずに増加し乳酸の産生・蓄積をきたしてアシドーシスとなる。
 アシドーシスを起こした場合、直ちに高カロリ-輸液を中止し、低酸素状態の改善、
重炭酸ナトリウムの投与などによりアシドーシスの治療に努め無効の場合にはビタミンB1(100~400mg)の投与を行う
血中乳酸濃度が18mg/dl以上(正常値は3.3-14.9mg/dL)となり、血液のpHが酸性側に傾いた場合は乳酸アシドーシスを考えます。
乳酸アシドーシスをおこす原因となるものには
ショック、うっ血性心不全、循環不全などによる低酸素血症に続発する (type A)
循環不全はないものの全身疾患(痙攣発作、感染症、褐色細胞腫、B1欠乏)、糖尿病、肝疾患、悪性腫瘍など基礎疾患に続発する(type B)があります。
ビグアナイドやアルコールなど薬物、毒物に関連したtype B2などに分類される。
(メトホルミン(メルビン)は肝で代謝されず大部分が腎から未変化体のまま排泄)

腎機能障害の患者ではメトホルミンが体内に蓄積する可能性があり
腎排泄低下のためアニオンギャップ上昇型の乳酸アシドーシスとなる。
ビグアナイド薬が肝細胞のミトコンドリア細胞膜に結合し、酸化的リン酸化を阻害しピルビン酸が蓄積し、その結果、乳酸の増加が起こるのでメトホルミンは必ず腎機能の評価を行いGFR が 60未満の場合には、メトホルミンの投与を控えるべき。
日本腎臓学会から出版された「CKD 診療ガイド」では、
CKD のステージ3以降(GFR<60mL/min/1.73 m2)では、ビグアナイド薬は使用しないと記載されています。

妊婦は乳酸アシドーシスを起こしやすい
乳酸アシドーシスが発症してしまうと死亡率50%と高いので誘因の除去や
基礎疾患の治療が重要である。
血漿乳酸値 ≧5mmol/L(45mg/dL)で致死的重症の場合は
輸液による循環血量の維持を基本とし、薬物の除去と乳酸の除去に血液透析を早期に行います。
1. 高齢者、肝腎機能低下、心不全そしてビグアナイド薬(メルビン、グリコラン)服用患者に認められることがある。
2. アニオンギャップの増大(15mEq/L 以上)のアシドーシスで尿中ケトン体、ケトーシスや腎不全が認められない場合には本症を疑う。
3. 治療:低血糖の場合もあり、インスリン投与、メイロン点滴[pH 7.0 以下、50~100mEq/時間(3~6A/時間)]そしてブドウ糖添加もときに必要である。

参考
GBS類似症候群
HAART療法におけるNRTIの副作用
血漿乳酸値 ≧5mmol/L(45mg/dL),pH < 7.25(アシドーシス)重炭酸イオン < 20 mmol/L,
アニオンギャップ > 16で予後不良といわれる
HCO3-(mmol/L), 基準値21~30 mmol/L

文献
1)KJitabchi AE et al: Manegement of hyperglycemic crisis in patients with diabetes Care24:131-153,2001
2)Tsuyama N et al :Modulating effects of olanzapine on the develpement of diabetic ketoacidosis Diabet Med21:300-301
3)Tanaka K et al: Analysis and a lon-term follow up of ketosis-onset Japanese NIDDM patients. Diabetes Res Clin Pract 44:137-146

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