ピロリ菌

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HP非感染粘膜00000000HP陽性粘膜0000000浮腫性襞の腫大や蛇行00000粘液付着
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HP除菌前の皺襞の肥厚
と蛇行00000000000000000除菌1年後000000000000000除菌2年後
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ABC分類は胃の健康度評価法であり、これによって診断するものではない。
A群は胃癌の超低危険群で、C群は胃癌高危険群と言える。
A群はHP感染なく萎縮もない群で胃癌の危険は殆ど無く、B群はHP感染あるも萎縮が軽度で胃癌の危険は少ない。C群はHP感染あり、萎縮は中等度から高度で胃癌の危険は高い。
B群の中でPGII高値例(30ng/ml以上)は胃癌リスクが高いことも報告されているのでB群の細分類もありうるかもしれない。
A群は5年に1回、B群は2~3年に1回、C群は1年に1回内視鏡を行って運用すれば良い。
A群の中に①HP除菌後、②高度萎縮に伴うHP自然消退、が入らないように、既往の問診、感度の良好なHP抗体の使用が重要であり、さらにPGI<35ng/mlの除菌後の可能性やPGII>15ng/mlのHP偽陰性の可能性に留意すべきである。
AとE以外のB、C、D群は原則的には除菌すべきです。
PGは胃の蛋白分解酵素ペプシンの前駆体で、PGIは胃底腺主細胞からのみ分泌され、PGIIは胃底腺のみならず幽門腺、噴門腺、Brunner腺からも分泌され、胃粘膜萎縮が進行すると胃底線領域が縮小しPGIおよびI/IIが低下する。
除菌をするとペプシノーゲン法も8割くらいは陽性から陰性に変わってしまう。
胃腺腫はC群であり、胃過形成性ポリープもC群で高頻度である。
消化性潰瘍特に十二指腸潰瘍はB群で顕著である。GERDはA群において高頻度である。
H.pylori慢性感染の成立は幼少児期である。
A群と判定された人がその後B群やC群に移行することは理論的にありえない。
B群の人が年齢を重ねた結果C群に移行することは考えられる。

胃癌のリスクファクター
胃粘膜萎縮に影響を及ぼす胃癌発症の危険因子
HP感染、喫煙、塩分10g/day以上、遺伝体質、野菜・果実不足

RAC (regular arrangement of collecting venules)

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  • 鳥の足様微細血管所見(RAC;regular arrangement of collecting venules)はHP陰性を示唆する重要な所見であるがRAC陽性は必ずしも胃全体のHP陰性を示すものではなく局所粘膜のHP陰性を表現するものである。
    胃内にHPが感染すると急性胃炎が生じ、持続感染が成立し炎症が持続すると慢性活動性胃炎や萎縮性胃炎に進行し、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃癌、胃MALTリンパ腫、胃過形成性ポリープなどが発生すると考えられている。
    慢性活動性胃炎の内視鏡所見は、①粘膜の皺襞の肥厚、蛇行 ②乳白色の粘液付着③びまん性発赤④鳥肌状粘膜が特徴的で主としてリンパ球や好中球の浸潤が著しい。
    内視鏡的に凹凸不整、まだら模様が生じ粘液付着に多量のHPを認める。鳥の足様微細血管(RAC)のある粘膜は炎症も萎縮もない正常粘膜である。
    RAC(+)ではinflammationの程度はnormalが92.7%で、RAC(-)ではほとんどがリンパ球浸潤などの慢性炎症細胞浸潤を認め、84.4%にHPを認めた。
    RACの有無と粘膜のinflammmation,Activity,HPの有無とは明らかな相関を認め、RAC(+)では慢性炎症細胞浸潤はごく軽度で好中球浸潤、HP感染は認めない。RAC(-)では慢性炎症細胞浸潤、好中球浸潤を認め、HPも存在する所見と考えられた。RAC(+)はHP陰性の内視鏡所見と考えられる。

2009年の日本ヘリコバクター学界ガイドライン

「HP感染症」という疾患名のもと、すべての感染者の除菌を推奨した。
すべてのHP感染者に慢性活動性胃炎が発生し、その病態下で慢性萎縮性胃炎、消化性潰瘍、過形成性ポリープ、胃MALTリンパ腫、胃癌などが生じてくる。
さらに、保険改正により同時2種類のHP検査が収載され、
①胃MALTリンパ腫 ②ITP(特発性血小板減少性紫斑病) ③早期胃癌に対する内視鏡治療後胃、におけるHP除菌が保険適用となった。
萎縮性胃炎には胃癌の発症予防のため除菌が強く勧められると明記された。

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  • [I] HPの細菌学
    HPが、胃粘膜上皮に感染定着して長期にわたる感染が前癌状態と見なされる萎縮性胃炎や腸上皮化生を引き起こし、ひいては胃癌や胃MALTリンパ腫発生の重要なリスクファクターになる。約6000万人以上が感染していると推察され、そのうち年間24万人前後がHPに起因する胃癌が発生している。
    栄養分枯渇、嫌気、抗菌薬、オキシラジカルなどストレスに晒されるとらせん型から球状のcocoid formに変化する。このcocoid formは生きてはいるが培養できないVNC(viable but non-cultuable)状態の細菌で一種の休眠状態とも考えられる。
    除菌により、菌体が球状菌になるとウレアーゼ活性を示さず培養不能の状態になる。

生息部位から胃内生息性と胃外生息性をし、HP菌は人獣共通感染症としての側面も有する。
HPは5~10%の酸素存在か下で発育でき、強力なウレアーゼ活性を菌体内と菌体外に有し、胃内で尿素を分解しCO2とアンモニアを産生する。
菌体内のウレアーゼは菌体内の尿素を分解することで水素イオンの消費に働き鞭毛モーターに駆動をもたらし胃液内にスクリュー様の動きで進入する。

  • [II]感染経路
    母子感染がメインで口-口感染が主と考えられている。産道感染はほとんどないか、あっても一過性感染である。
  • [III]HPの病原機序
    細菌側因子として、ウレアーゼ、アドヘジン、VacAサイトトキシン、CagAおよびcagPA、dupAなどがあり、宿主側因子としてサイトカイン、活性酵素、一酸化窒素、DNA/RNA編集酵素(AID)が含まれる。HP陽性の胃癌組織には高率にAID蛋白が発現されている。
  • [IV]感染診断

血清・尿抗体法はcut-off値付近で3%程度、戯陽性、偽陰性が生じやすい。
除菌治療を行っても抗体が直ちに消退しないため除菌できた場合6カ月後に抗体値が半分以下になっている場合は除菌成功の参考になる。抗体検査は除菌して数か月ないし数年陽性が続くことがあり、あまり、除菌判定には適さない。

便抗原法は、比較的正確で、抗体法や尿素呼気試験を行ってcut-off値付近で判定に迷うときは確認する方法として考慮する。

尿素呼気試験は、13Cでラベルした尿素を内服し胃内で20分間反応させ、感染者はウレアーゼによって分解されラベルされたCO2が呼気に増加する。
口腔内細菌のウレアーゼ活性を排除するために錠剤型尿素製剤(ユービット錠)を用いることでより精度の高い診断が可能である。感度98%,特異度97%除菌内服終了後4週間あけて測定することが望ましい。
④内視鏡を使って 胃生検検体を用いる方法には、培養法、鏡検法、迅速ウレアーゼ試験の3つがあり、それぞれ精度が高い。

健康保険では、2つの方法を組み合わせて行っても初回に限り算定可能との注釈がある。

1)鏡法迅速ウレアーゼ試験
2)血液・尿の抗HP抗体測定尿素呼気試験
3) 血液・尿抗HP抗体測定便中HP抗原測定
4)尿素呼気試験便中HP抗原測定(一番信頼がおける)

  • [V]除菌判定の実際
    除菌判定を除菌治療中止後4週以内に早期に行った場合、偽陰性を認めHPが再燃する例がある。杏林大学では除菌療法後の際、陽性化例は約5.5%であり、うち1年以内に再陽性したものは除菌終了日から判定まで2か月以内であるため、除菌判定は除菌終了3カ月目以降に行うことが望ましく2カ月以内に判定をした場合には6~12カ月後に判定することにより正確な除菌判定が可能となることが示唆されている。
    また、便中抗原測定でも除菌判定時期を遅らせることによりより確実な除菌判定をすることが可能である。
    幽門前庭部は腸上皮化生により偽陰性になりやすいため幽門前庭部大湾と胃体上部~中部大湾の2カ所からの生検が望ましい。
    胃を半分くらい切っている場合は、すぐに腸に行ってしまうから腸内細菌が標識尿素を分解して疑陽性に出てしまうことがある。
    PPIや一部の防御因子増強薬はHPに静菌作用があるため除菌前・後の2週間は中止することが望ましい。
    内視鏡上、隆起型を呈すると深達度が深いため除菌治療が無効となりやすく、胃炎型は有効例が多い。深達度が粘膜層、粘膜下組織の場合、有効例が多い。
  • [VI]除菌手段
    アモキシシリンは腎臓からそのまま排泄されるので腎障害がある場合は慎重投与。クラリスロマイシンは肝臓で代謝されるので肝機能低下がある時、副作用頻度が高くなる。

①一次除菌
CAM耐性HPは確実に増加している。一次除菌レジメはPPI/AC療法のみであり、その除菌率は70%前後である。3~4割の除菌不成功例が発生する。
1次除菌レジメン(除菌率は70%前後である)
PPI(ランソプラゾール60mg/day,オメプラゾール40mg/day、ラベプラゾール40mg/day)+アモキシシリン(1500mg/day)+クラリスロマイシン(400mgあるいは800mg/day)

②二次除菌
二次除菌治療に際して一次除菌レジメを再度処方することができるが、その際、二次除菌の成功率は4割にも満たず繰り返すことの臨床的意義は乏しい。
二次除菌率では81.8%と良好で二次除菌の感受性試験は不要である。
メトロニダゾール内服中のアルコールは、ジスルフィラム-アルコール反応がでるため禁酒を指導し、ワルファリン作用の増強により出血が現れることがある。
2次除菌の時は飲酒を絶対しないように言っておく必要がある。
2次除菌(保険承認されている)
PPI(ランソプラゾール/タケプロン60mg/2x/day,オメプラゾール40mg/2x/day、ラベプラゾール/パリエット20mg/2x/day)+ アモキシシリン(1500mg/2x/day)+メトロニダゾール(500mg/2x/day)を7日間

③三次除菌
三次除菌は保険適用外で確立されたレジメもないが、PPI+AC+ニューキノロン系抗菌薬が有力候補である。ニューキノロンではレボフロキサシンが注目されている。候容量PPI+ACの2週間療法も候補となっている。
3次除菌(保険適応外)
①ランソプラゾール/タケプロン60mg/2x/day+アモキシシリン(1500mg/2x/day)+シタフロキサシン200mg/2x/dayを7日間
②ラベプラゾール/パリエット(30mg/3x/day) +アモキシシリン(1500mg/3x/day)+レボフロキサシン500mg/1x/day を14日間
③ラベプラゾール/パリエット(40mg/4x/day) +アモキシシリン(2000mg/4x/day)を14日間

  • [VII]各種疾患の対応

[瘢痕を含む胃潰瘍、十二指腸潰瘍]
●開放性潰瘍の診断とともに除菌治療を開始し、除菌薬終了後も潰瘍治癒まで抗潰瘍薬を投与すべきである。
●NSAID投与開始前に除菌を行うことにより薬剤性潰瘍の発症が抑制される。
NSAIDがすでに投与されている潰瘍例では除菌は行うべきではない。
潰瘍の既往がある例では低容量アスピリン(LDA)を投与する場合、除菌が望ましく制酸剤の投与が必要である。

[胃MALTリンパ腫]
HP感染を基盤にリンパ濾胞が生じここを発生起源とする。
リンパ腫細胞はリンパ濾胞マントル層外側のマージナル層由来B細胞である。
FP除菌が第一選択であるが20~40%は無効である。
HP感染の有無、臨床病期、深達度、API2-MALT1染色体転座の有無が独立した予測因子である。API2-MALT1染色体転座があると除菌無効が多い。
除菌治療のみのCRが約85%、放射線療法のCRが約90%で非外科的治療に移行している。経口単剤化学療法シクロフォスファミドも良好である。

[ITP]
HP陽性率は60~70%程度で、急性ITPはウイルス感染が先行することが多い。
血小板に対する自己抗体の産生により血小板が破壊されることが主な機序である。
血小板減少をきたす他の疾患が除外できた場合に診断される。
小児の自然軽快する急性型と成人に好発する慢性型に分類される。
除菌失敗例は、通常、血小板増加は得られない。steroid抵抗性でも除菌が有効なことが多い。

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[早期癌に対する内視鏡的治療後胃]
EMRでは2cm以上の病変に対しても一括切除が可能となった。
分化型M癌であれば大きさに制限はなく、3cm以下の潰瘍合併分化型M癌、3cm以下の潰瘍非合併分化型SM1癌、2cm以下の未分化型M癌に対して内視鏡の適応拡大がなされている。
内視鏡治療後の経過観察中に遺残再発や異時性多発癌を認めることがある。
遺残再発は切除瘢痕に接して癌を再び認めたものと定義で不十分な内視鏡的治療が原因とされ、ほとんどが2年以内に発見される。
一方、胃癌の内視鏡的切除後の経過観察中に切除した部位とは別の部位に異時性多発癌(二次癌)を認めることがある。
HP感染により胃全体に炎症が惹起されることで異時性多発癌が起こりやすい。
内視鏡的治療では胃臓器全体が温存されるため異時性多発癌の発生頻度が高い。
したがって、HP除菌は異時性多発癌の予防にきわめて有効である。
HP除菌は胃癌の根治的治療ではなく早防治療として期待されている。除菌によって胃癌全てが抑制できるわけでもなく除菌成功後でも内視鏡検査は必要である。
除菌による胃癌予防効果については前癌病変のない段階での予防効果が示され、萎縮の進行した早期胃癌内視鏡治療後でも予防効果が示された。

[胃過形成性ポリープ]
胃過形成性ポリープはHP感染陽性で、胃底腺ポリープはHP感染陰性が殆どである。
除菌治療でHPが消失するのは胃過形成性ポリープである。
胃過形成性ポリープの癌化の頻度は1.5~3.0%と報告されHP感染は76~100%と高率である。
Rosen and Hoakによると癌化した胃過形成性ポリープの殆どが最大径2cm以上であったこから
①2cm以上は完全切除、
②1~2cmは1年ごとの内視鏡検査で不変か増大したときは完全切除する。
③1cm以下では切除しないで1年毎の内視鏡検査で胃全体を経過観察する・・・としている。
HP除菌療法で80%の症例で除菌成功3~15カ月後に胃過形成性ポリープが消失したという成果も出ている。
胃過形成性ポリープはHP感染陽性であれば大きさに関係なく除菌治療を行い内視鏡検査で経過観察することが第一選択となるであろうともいわれている。

  • [VIII] HP陽性NSAIDs潰瘍例の除菌は行わないほうがよい理由
    NSAIDsの消炎鎮痛効果は、COX由来のPGを抑制する作用で、胃では、PGは粘膜防御機構を調節する重要な物質で、NSAIDsを投与することでPGは減少し、それと相対するロイコトリエンが活性化され粘膜を傷害する物質が産生される。
    さらに直接作用が加わりNSAIDsの胃粘膜傷害が発生する。
    粘膜傷害・潰瘍の治療の観点からCOX-2由来の粘膜PGが上昇し潰瘍治癒を促進する。
    潰瘍の治癒にはCOX-2由来のPGが大切である。HP感染粘膜ではCOX-2由来のPGが上昇している。NSAIDsを長期に服用しているとPGは常時低下した状態になる。

参考

  • NSAIDs潰瘍はプロスタグランジンを減少させる事により引き起こされる。PG製剤(ミソプロストール)はNSAIDs潰瘍に保険適応。
  • 除菌によって逆流性食道炎を増悪させるエビデンスに乏しい。
  • 消化管外疾患として、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹、虚血性心疾患、動脈硬化との関連性が指摘されているがエビデンスが不十分。
  • 未分化型胃癌の抑制には萎縮性胃炎が生ずる前段階の若年者の除菌が重要である。
  • Helicobactor heilmanniはH.pyloriと混合感染する場合が多い。
    人獣共通感染症でウレアーゼ活性があり、MALTリンパ腫との関連が
    報告されている。PCR法により同定可能。
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参考文献
1)日本ヘリコバクター学会:HP感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版、1-25,2009
2)井上和彦、藤澤智雄:血液検査による胃癌危険度評価を基準とした検診システムの提案.消化器科43:760-764.2009
3)消化性潰瘍診療ガイドライン、日本消化器学会編、南江堂、2009
4)川上浩平・他3剤療法によるHP除菌率の経年変化、第16回日本ヘリコバクター学会学術集会、2010

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