中・下咽頭と食道

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内視鏡検査で最低覚えておくべき知識

食道扁平上皮癌のhigh risk group
①50才以上の男性 ②飲酒(日本酒5合以上、ビール大瓶5本以上/日)・喫煙8本以上/日 ③頭頸部癌 ④human papilloma virus感染症 ⑤アカラシア、腐食性食道炎

解剖学的確認

The epiglottis,vocal folds, corniculate tubercles,and piriform recess
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0左図上段左右は咽頭・下咽頭後壁で、上段右図は発声時、
0左図の下段左は左側梨状陥凹、下段右は右側梨状陥凹
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O;食道入口部 S;胸骨上縁 B;気管分岐部下縁 H;食道裂孔
Ut; 胸部上部食道 Mt;胸部中部食道 Lt;胸部下部食道

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消化管のEUSの基本構造は5層構造である(7.5MHzの低周波数では食道壁は5~7層に、20MHzの高周波では通常9層に描出される)。
内腔より第一相(高エコー)、第二相(低エコー)が粘膜層(M)、第三層(高エコー)が粘膜下層(SM)、第四層(低エコー)が固有筋層(MP)、第五層(高エコー)が漿膜下層と漿膜または外膜(SS,SまたはA)

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食道癌の壁深達度
Tis癌腫が粘膜上皮に留まる(EP, M1) epithelium(EP)
T1a癌腫が粘膜固有層(LPM,M2) lamina propria mucosae(LPM)
および および粘膜筋板 粘膜筋板(MM,M3)をを越越えない病変
T1b癌腫が粘膜下層にとどまる病変(SM)submucosa(SM)
T2癌腫が固有筋層にとどまる病変(MP)muscularis propria(MP)
T3癌腫が食道外膜に浸潤している病変(Ad) adventitia(A)
T4癌腫が食道周囲臓器に浸潤している病変 (Adj)

色素内視鏡検査法

  • ヨード染色によりグリコーゲンを有する正常扁平上皮は褐色に染まるが癌部は染まらずヨード不染帯となる。
    食道のヨード染色(反応法)は癌だけでなく粘膜上皮の欠損や萎縮でも不染となる。食道のびらんや潰瘍のヨード染色で周囲が毛羽様濃染像を示せば再生上皮があので良性と判定できる。癌では再生上皮は出現しない。(食道癌の存在・広がり診断に適用)
    ヨード染色により表層が脱落した癌の表面は再生上皮が覆うので
    ヨード染色後は最低1カ月間空けてから内視鏡治療を行う必要がある。
  • トルイジンブルー・ヨード二重染色
    トルイジンブルーを撒布し十分洗浄した後にヨード撒布を追加する。
  • グリコーゲンを産生する正常な上皮成分が薄くなればヨードへの染色性は弱く淡染帯となり、異常な細胞に置き変わってしまえば完全なヨード不染帯として認識される。
    平坦病変のヨード染色性の経時的変化を表すpink color sign陽性をHGN(high grade intraepithelial squamous neoplasia)もしくは浸潤癌の指標とした場合、極めて高い精度が得られる。
    ヨード液の濃度は1~2%のものを用い、必ず洗浄を行った後に行い、切歯列25cm位で止めておく。検査終了後、中和剤Detoxolを撒布する。
    腫瘍性病変(癌と異形成)の場合、ヨード染色にて地図状、多角形の境界のはっきりした不染を呈する。(再生上皮の影響で濃染することもある)
    逆流性食道炎、異所性胃粘膜、乳頭腫、慢性炎症性病変はヨード不染性が多い。
    ヨード不染帯を大きさによって分けた場合、径5mm以上を鑑別のポイントとする。
    径10mm未満のO-IIb病変は高率に上皮内病変である。
    異型細胞が上皮の下層に留まる場合上皮内のグリコーゲンはある程度保たれているので黄白色調の色調が残るが、上皮のほぼ全層が異型細胞で置換された場合完全な不染となる。
    すなわち、ヨード撒布直後はヨードの色が残っているが数分後(2分後)に本来の病変のピンク色調を呈するようになりpink color signと名付けられている。実際、PCsignは病変の異型性ではなく残存した正常上皮の厚さを反映している。

早期食道癌内視鏡治療

食道粘膜癌のリンパ節転移の頻度は極めて低く扁平上皮癌を対象とする限り病変の境界はヨード染色法にて確実に描出できることもありEMR(endoscopic mucosal resection)の良い適応といえる。
バレット食道癌(腺癌)はまだまだ症例数は少ない。

食道癌に対する内視鏡的切除適応
絶対的適応 ・壁深達度 粘膜固有層までにとどまる癌m1,m2であること
      ・腫瘍径が3cm未満で、一括切除が容易であること
      ・周在性は2/3周以下であること(食道の全周は5~6cm)
      ・病巣数は3~4個くらいであること
相対的適応 ・深達度がm1m2でも著しく多発(5~8個)するもの、全周性広範囲
000000000(2/3~全周性)に広がるもの
      ・腫瘍径が3~5cm
      ・病巣数5~8個

00000000・治療前診断でm3,sm1と評価された場合,リンパ節転移の頻度は10~15%で
0000000000あるので、この事実を患者に説明した上で治療方針を決定する。
00000000・m3あるいはsm1と判明した場合は再発の危険性をもとに手術を含めた追加
000000000治療の必要性に関しわかりやすく伝え以後の治療方針を決定する.
000000000m3・sm1でly(+)の場合はリンパ節転移の可能性は約39%である.

切除範囲内に粘膜層と固有筋層との癒着があり生理食塩水を注入しても粘膜が膨隆しないときはEMRの禁忌となる。

禁忌

  • 出血傾向があったり抗凝固薬を服用中
  • 食道静脈瘤があり出血予防策を講じられない
  • 憩室内にまたがるもの
  • 患者が非協力的
  • 粘膜層と固有筋層との癒着があり生理食塩水を注入しても
    粘膜が膨隆しない

食道癌取扱規約(第10版)

画像の説明

リンパ節転移の有無を問わず深達度が粘膜内にとどまる癌を「早期食道癌」、粘膜下層へ浸潤した癌を「食道表在癌」と定義している。

壁深達度
癌腫が粘膜内にとどまる病変
000T1a-EP; 癌腫が粘膜上皮内にとどまる病変
000T1a-LPM; 癌腫が粘膜固有層にとどまる病変
000T1a-MM; 癌腫が粘膜筋板に達する病変

癌腫が粘膜下層にとどまる病変
000SM1;粘膜下層を3等分して、上1/3にどどまる病変
   (粘膜筋板から200μm以内の粘膜下層にとどまる病変をSM1)
000SM2; 粘膜下層を3等分して、中1/3にどどまる病変
   (粘膜筋板から200μmを超える粘膜下層に浸潤する病変をSM2)
000SM3; 粘膜下層を3等分して、下1/3に達する病変

表在型の亜分類
O-1型;表面隆起型(O-1の食道扁平上皮癌はほぼ100%粘膜下層へ浸潤している)
   O-Ip ; 有茎性
   O-Is; 無茎性
O-II型;表面型(O-I型は高さが1mmを超える隆起であり、隆起が1mm以下の場合はO-IIaに分類)
000O-IIa;表面隆起型
000O-IIb;表面平坦型
000O-IIc;表面陥凹型
O-III型; 表面陥凹型

注;1)面積の広い病型から先に記載し+でつなぎ、深達度が最も深い病型には゛゛を付す。
O-IIcとIIaが混在しIIcが広くIIaがSM浸潤しているときはO-IIc+゛IIa ゛と記載する。  
2)一般にO-I型は高さが1mmを超える隆起であり、隆起が1mm以下の場合はO-IIaに分類される。

深達度診断-通常術前深達度診断

食道表在癌では深達度とリンパ節転移との間に密接な相関があり重要である。深達度の浅い癌は凹凸が軽微であり、深くなるに従って凹凸が明瞭になる。
粘膜固有層にとどまるT1a-EP癌およびT1a-LPM癌はリンパ節転移率がほぼ0%である。
T1a-MM癌およびSM1癌はリンパ節転移率が10%程度である。
一方、SM2・3癌では30~50%程度にリンパ節転移を認めるため外科的切除や放射線化学療法が必要とされる。
病変の色調が白色調と発赤調では組織異型や深達度が異なる。
明らかな凹凸を呈するO-I型やO-III型はほとんどが粘膜下層癌で、O-IIa型やO-IIb型は大部分が粘膜内癌である。O-IIc型は粘膜内癌から粘膜下層癌まで様々な深達度の病変が含まれる。

深達度m1・m2にはほとんどリンパ節転移や遠隔転移はなく腫瘍径5~10mmまでの病変であれば確実にEMRで一括切除ができる。
腫瘍径が大きいものはEMRで多分割切除となり遺残・再発が危惧されるので最初からESDによる一括完全切除が望まれる。

  • O-I型大部分がSM2以深の浸潤癌である。
  • O-IIaは、強進展で隆起丈が低くなるのはT1-EP/LPM、強進展でも変化しないのはT1a-MM以深の可能性を考慮する。
    O-IIa型では多くが白色調の隆起を呈し背丈が高くてもT1-EP/LPMにどどまっている。これに対して発赤調の隆起ではT1a-MMへの浸潤が
    見られる。
  • O-IIbでは凹凸が殆ど無くほとんどがT1a-EPである。
    O-IIcは発赤調が多い。T1-EP/LPM癌では強進展で段差が不明瞭となり平坦となる。
    T1a-MM/T1b-SM1癌では強進展でも凹凸が見られ陥凹底には顆粒状の凹凸が見られる。
    さらにSM2~3に達すると陥凹内の凹凸は結節状となり辺縁隆起も明瞭となる。
  • O-III型はIIcより深い潰瘍形成の陥凹病変でありほとんどがSM2以深の浸潤癌である。
肉眼型凹凸および表面性状深達度
O-I型 丈の高い結節隆起大部分がSM2以深
O-II a型  軽度凹凸、粗造T1a-EP
O-II a型 微細顆粒状T1a-EP/LPM
O-II a型  粗大顆粒状T1a-MM/SM1
O-IIc型僅かな陥凹、平滑または軽度の陥凹T1a-EP/LPM
O-IIc型浅い陥凹、陥凹不整、軽度辺縁隆起T1a-MM/SM1
O-IIc型浅い陥凹,結節状の凹凸、明瞭な辺縁隆起多くがSM2以深
O-III型潰瘍形成を伴う深い陥凹、明瞭な辺縁隆起大部分がSM2以深

画像の説明00画像の説明00000画像の説明
左図は「 m1淡い発赤」0中図は「m3均一発赤と顆粒像」0右図は「sm3陥凹周囲の隆起」

内視鏡による食道癌深達度診断
00000000000000000000深さ          色調
m1 0000000000000 わずかな陥凹 淡い発赤
m2 000000000000  浅い陥凹
m3-SM1 000000   明らかな陥凹      均一な発赤
00000000000000000陥凹内顆粒
SM2-3 00000000  陥凹内隆起
00000000000000000陥凹周囲の隆起
注: 白色の顆粒状の隆起は浅く読む

  • M2癌は発赤や凹凸が明瞭に出てくる。通常のM3癌(T1a-MM)が出てくるのは12mmからで11mm以下だと大半がM2癌である。

ESDの適応

ESDが適応となる場合
m3のリンパ節転移は9.3%、sm1は19.3%に認め、m3・sm1癌は相対的適応に位置づけられ、m3・sm1癌のリンパ節転移危険因子は、長径50mm以上、肉眼型O-1 O-III INFβ,γ、低分化型、脈管侵襲陽性であることが判明している。
画像上リンパ節転移を認めず、術前診断m3・sm1癌には、まず内視鏡治療を行い切除後の病理診断をもとに追加治療を検討する。
この長径50mm以上、肉眼型O-1 O-III(術前深達度sm2~3)は術前に判別が可能で、原則外科手術あるいは化学放射線療法を考慮すべきである。
m3・sm1癌では一括切除可能なESD手技が不可欠である。
sm2・sm3癌はリンパ節転移が約40~50%であるため原則的に外科手術を選択する。

化学放射線療法後の局所遺残・再発
原則的にサルベージ手術が考慮されるが術後合併症が高くQOLも低下する。
進達度SMまでの遺残・再発にはサルベージEMRが有用と報告されているが深部断端を確保した完全切除は難しいのでESDによる一括完全切除が期待されている。
EUSで固有筋層が保たれ、腫瘍が完全に筋層に接していなければESD施行の方針とする。

ESDが適応外になる場合
3/4周以上の切除が予測される時は手術ないしは化学放射線療法が推奨され内視鏡治療は適応からはずされる。

  • 全周性ESD後の術後狭窄はほぼ必発である。ガイドラインでもESDの適応は深達度がM1あるいはM2で2/3周以下とされているそれを超えるものは術後狭窄を来す可能性があるため推奨されていない。
    予防的拡張術は遅くとも術後3日以内に内視鏡的バルーン拡張術を開始して狭窄を予防する。1週間以上が経過していったん瘢痕化が始まると食道壁を拡張することは困難になる。
    切除長は6~10cmで、術後1~3日より拡張を開始し、狭窄をさせないという予防的拡張の回数は17~43回で平均103日で最長でも3か月を経過すれば拡張の必要はなくなったとの症例報告もある。

GERDとBarrett食道

キーワードはS-C junctionとEG junction
SSBE: EGJ全周性にBarrett粘膜があり、SCJ最短長で3cm未満であるもの
LSBE:  EGJ全周性にBarrett粘膜があり、さらにSCJ最短長で3cm以上あるもの

画像の説明
00000Grade N 00000000000000000000Grade M
左図(Grade N)は下部食道の柵状血管はSCJまで明確に透見可能であり、白色混濁、発赤、びらんなどの炎症所見は内視鏡的に認めない。右図(Grade M)はEGJから放射状に白色混濁、肥厚した上皮が見られ毛細血管透見像の低下がみられる。
柵状血管は頚部食道と食道胃接合部近傍の下部食道に見られる。
画像の説明
胃側粘膜色と対比して白色領域が扁平上皮であり、その境界がSCJ(扁平円柱上皮接合部である)
SCJは白色と発赤の境界で認識し、同部でGERDの有無を認識する。

画像の説明
Barrett粘膜は扁平上皮が円柱上皮に置換された状態で、この図は
3cm未満で全周性でないことからSSBEと判定される。
炎症の強いほど血管透見が不明確になる。
本邦では下部食道の柵状血管下端をEGJと定義されている。
画像の説明
黄色線がSCJで、黄色がEGJである。

逆流性食道炎

GERDは国民の37.6%が罹患している。
Grade A55%, GradeB32%, GradeC+D 13%とほとんどが軽症例である。
食道と心臓の求心性の知覚が同じ背髄の背側神経に伝えられているため心臓由来と同様にGERDでは、胸痛を惹き起こす。

臨床的特徴はヘルニアの存在、BMI高値または肥満、胃粘膜萎縮がないか軽い、HP非感染・・・・である。
日本人GERDの増加原因は①胃酸分泌能の増加 ②HP感染率の減少③GERDに関する関心増加 ③GERDの概念の変化などが影響している。
一方、GERDにおけるNERDの割合58.6%と半数以上を占めており、日本人NERDの特徴は胃粘膜萎縮が強いことやHP感染率が高く、酸逆流の頻度が高い。
GERDの合併症は出血、食道狭窄、バレット食道、バレット腺癌で
GERDの治療はいかに低下したQOLを改善するかが大切である。
PPIによる胸焼けの改善率はびらん性GERDの方が高く、異常酸逆流の頻度は非びらん性GERDのほうが低い。
PPIを投与した場合、約2時間で血中濃度がピークに達し、壁細胞の分泌管にプロトンポンプがたくさん並ぶので食前投与が最も有利である。
重症REになるに従い食道内酸曝露時間は増加する。
PPIの常用量を使用しても強い症状が残存する場合や重症REが残存する場合は食道内酸曝露時間をさらに減少させるため攻撃因子である胃酸を抑制するためPPIの倍量投与がガイトラインで推奨されている。
軽症REの胃酸逆流の殆どは食後2~3時間以内に発生するが重症REでは夜間の胃酸逆流、すなわち、NAB(Nocturnal gastric breakthrough) はPPI投与中の夜間に胃内pH4未満が連続して1時間以上見られる現象も見られるため問題となる。
夜間は唾液分泌が抑制され、嚥下に伴う一次蠕動波が見られず、仰臥位姿勢であることから胃酸逆流が発生した場合の食道内の胃酸排出のためには二次蠕動波の出現が必要である。
しかし、GERDでは二次蠕動の出現が低下しているため夜間に胃酸逆流が発生した場合長時間の食道内の胃酸曝露を惹き起こすことになる。

GERD発症リスク
・硝酸剤やCa拮抗薬によってLESの圧が低下しGERDが惹き起こされる。
・af発生時、食道内pHの低い時間が有意に長い。
・ワルファリン服用者のうちGERD症状の合併率は約10%であった。
ワルファリンによるGERD症状合併率は低用量アスピリンよりも高率である可能性が高い。
・亀背に食道裂孔ヘルニアを合併している例では80%を越す患者で胃食道裂孔ヘルニアを認める。骨粗鬆症に伴う椎体骨折は食道裂孔ヘルニアの合併を生じやすくGERDの発症リスクとなる。

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参考文献
「食道癌診断・治療ガイドライン2007年7月版」日本食道学会編金原出版、2007
「臨床病理食道癌取り扱い規約第10版」日本食道学会編金原出版、2008

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