人工呼吸器

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人工呼吸の適応
a)FiO2≧0.5でも(O2=7.25㍑/分以上)、空気呼吸時PaO2≦60Torr(酸素化不全)
b)吸入酸素に関係なく PaCO2≧60Torr、またはpH≦7.25(換気不全)
c)呼吸数40回/分、またたは呼吸数≦5回/分
d)意識状態の低下や循環動態の悪化を伴う場合

注)但し、慢性呼吸不全の急性増悪ではレスピレ-タ-の使用はできるだけ避ける。

人工呼吸の設定・・・器械のみによる呼吸

最初に換気モードを考えます。
自発呼吸があるか、ないか、あるいは自発呼吸を消したいかということです。
呼吸停止時には自発呼吸はないので、人工呼吸を開始した時は、変に自発呼吸が残っていたりすると
呼吸効率が悪くなり、病状が悪化することもあるため、大概、鎮静、あるいは/ならびに筋弛緩をかけて
自発呼吸をなくし、器械のみによる呼吸モードを選びます。

患者さんの(分時)換気量(MV)=器械で設定した1回換気量(TV)×呼吸回数
になるので、正確に設定をする必要があります。

CMV持続強制換気の際に確認すべき設定

二酸化炭素を決める要素として、
・1回換気量(TV)
・呼吸回数
を決めます。
000分時換気量=1回換気量( Tidal Volume:TV)×呼吸回数を設定します。

酸素を決める要素として、
・肺胞の数=PEEPと
・ FiO2
を設定します。

PEEPは呼吸に関与する肺胞の数を増やすものです。
人工呼吸を行っているとき、吸気では陽圧がかかり、肺胞をふくらませます。
そのため、肺胞がぺしゃんこにならないようにする、圧力のことをPEEPといいます。

  • ●PEEPをかけると、吸気の時の肺胞の状態は変わらなくても、呼気時にぺしゃんこになる肺胞の数が減る。その分、呼吸に関与する肺胞が増える(減らない)ことになるので、PaO2は改善することになるのです。
  • ●PEEPは最低でも4~5cmH2Oぐらいはかけておくもので、場合によっては20cmH2Oくらいまでは許容範囲といわれています。
  • ●PEEPをかけると、胸腔内の圧が上昇するので、心臓が少し圧せられます。そのため、静脈還流が減り、全身の血圧が低下します。
    ただでさえ、陽圧換気で血圧が低下しているところ、さらに低下するのです。
  • ●PEEPを変化させるとその分,最高気道内圧が変わります.PEEPをあまり高くすると,最高気道内圧が高くなるので圧外傷(気胸,気縦隔,皮下機種など)が生ずる恐れがあります.

人工呼吸管理によって起こりうる合併症

次の3項目があります。
1. 血圧低下
人工呼吸は器械から陽圧の空気を送り込むことで呼吸を行っています。
従って、ほぼ常に胸腔内は陽圧になり、心臓が圧されて静脈還流が減ることで、心拍出量の低下、血圧の低下を来します。PEEPをかけると、血圧はますます低下します。

2. 圧損傷(気胸、縦隔気腫、皮下気腫)
気道内の陽圧によって、肺組織自体が傷害されます。気道または肺胞がやぶれて気胸や縦隔気腫が生じるのです。ステロイドを大量に投与していて組織が脆弱になっている場合は特に注意が必要です。
予防のためには、最高気道内圧(プラトー圧)を35cmH2O以下に保つべきで
30cmH2O以下ぐらいがよいとされています。

3. 酸素中毒
高い吸入酸素濃度も肺障害の原因になるため、FIO2をなるべく60%以下に保つべきとされています。具体的には、FIO2>60%が24時間以上続くと肺障害の率が上がると言われています

人工呼吸器中の事故、合併症を避けるためには
■できるだけ早期にFIO2を下げる(60%を下回るように)
■できるだけ最高気道内圧を低めに維持(30cmH2Oを下回るように)する必要があります。

その上で、PaO2、PaCO2を適正な値に保つよう、コントロールを考えます。
具体的には、以下のように考えて参ります。

[I] PaO2の値が不適切な場合
FIO2を変化させると、PaO2が変化します。
また、PEEPを変化させても、(換気に参加する肺胞の数が増えるので)PaO2が変化します。

PEEPを変化させると、胸腔内の圧が変化し、PEEPを上げると血圧が下がります。
さらに、PEEPを変化させると、その分、最高気道内圧が変わります。
permissive hypercapnea(許容できる高CO2)といいICUにおける基本的な戦略に
なっています。
最高気道内圧が、30cmH2Oを越えないよう低めに維持するためにはTVを減らす必要が
ありますが分時換気量が落ちるため、CO2が貯留気味になります。
しかし,多くの人工呼吸管理を必要とするI型呼吸不全では多少CO2が貯留してもpHには影響が出ない程度であることが多いためpH異常にならない限り高CO2を許容することが多いのです.
 
[II] PaCO2の値が不適切な場合
分時換気量(=1回換気量×呼吸回数)を変化させると、PaCO2が変化します。
一方、1回換気量を増やすと、最高気道内圧が上昇します。
また、あまり呼吸回数を増やすと、死腔換気が増えるため、折角の換気が無効になります。これらの条件をクリアーしつつ、適正なPaCO2に近づけるよう、分時換気量をコントロールしていきます。
PaCO2は肺胞換気量の指標であり、他の要因に左右されない。
PaCO2↑とは肺胞低換気を示し、換気障害(呼吸停止、気管内異物、気管支炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患など)や循環障害(心停止、肺梗塞など)でおこる。

器械呼吸 器械のみによる呼吸モード

CMV:continuous mandatory ventilation持続強制換気
自発呼吸か゛消失した状態で使用します。
設定の原則。1回換気量×呼吸回数を設定します。

器械のどこを見ても、1回換気量とか呼吸回数とか、書いてない!
CMVの通常の初期設定
一回換気量(VT): 10ml/kg
分時換気量(f): 14~20/min
FiO2 : 1.0
PEEP :OFF

従量式と従圧式の違いは、吸気時に、どういう風に空気を入れるかの違いです。
X従量式は、決められた一定の量(1回換気量)の空気を、決められた回数(呼吸回数)入れる。
パラメーターの設定も、1回換気量と呼吸回数を決めるもので、わかりやすいです。
デメリットは量を優先させるので、特にARDSなど、肺が硬くなる疾患や喘息の時など、思いがけない高い圧が気道内にかかってしまう可能性があり、気胸や縦隔気腫といった圧外傷を引き起こしやすいことになります。
それで、最近では、従圧式の方が好まれる傾向にあります。

O従圧式は、一定の圧を決められた時間入れるので、換気量は保証されないわけです。
救急・ICUの領域で人工呼吸をする疾患の多くは、ARDSのようなⅠ型呼吸不全が多いため、換気量をがっちり入れる必要はないケースが多く、圧外傷の回避、肺の保護という観点で、こちらが好ましいとされることが多いようです。
パラメーターの設定は、最高圧レベル(PC)吸気時間を決めます。吸気時間I:呼気時間Eの比(I/E比)も必要です。これで、どの程度の圧でどれだけの時間空気を送り込むか、1分間に何回送り込むかが決まり、その結果分時換気量が決まるのです。

設定のところを見ただけでは1回換気量も、呼吸回数も、分時換気量もわかりません。
肺の硬さなど、いろいろな要因の結果、換気量が決まってくるのです。
必ずモニター画面があって、1回換気量も、呼吸回数も、分時換気量や、自発呼吸の回数なんかもわかるようになっています。

従量式でも、従圧式でも、大事なことは、設定後に実際の数値をモニターして確認することです。

※従量式であれば、気道内圧が上がりすぎていないか。従圧式であれば、しかるべき
分時換気量が保たれているか。血液ガスも取りましょう。
場合によっては、設定の再調整が必要になってきます

器械呼吸+自発呼吸

ウィーニング(人工呼吸器からの離脱)も意識して、状態が落ち着けば、自発呼吸を生かした設定に切り替えていきます。
あるいは人工呼吸開始時から、ある程度自発呼吸を生かした設定にしておくことも多く、そのときのモードがSIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation:同期式間欠的陽圧換気)です。CMVとの大きな違いは、自発呼吸を許容できるかどうかです。
SIMVの初期設定
FiO2 1.0
1回換気量 6~10ml/kg 
PEEP 3~5H2O
I:E=1:2
ピーク気道内圧 40cmH2O以下
呼吸数 拘束障害14~25回 閉塞障害 6~12回
PS 10~15cmH2O
アンビューやジャクソンリースは必ず用意

SIMVにプレッシャーサポートのついている機械で一晩持たせることが前提

  • ピーク気道内圧が40mmHg以下、できれば30以下になるように一回換気量を決める。
  • 60kg程度であれば一回換気量450ml、換気回数15回前後、PS10cmH2O程度が無難。
  • 自発呼吸が弱いなら呼吸回数は以上のままに、自発換気がしっかりしているなら
    プレッシャーサポートのみでも構わない。
  • 人工呼吸器導入直後は、いかなる場合でもFiO2は1.0にしておくが、
    FiO2が1.0の状態は3時間もたつと肺胞障害が始まるので、呼吸器が
    問題なく作動しているならSpO2を見ながらFiO2を0.6まで下げ調整をする。
    FiO2が0.4まで持ってこられたらこのまま長期管理が可能である。
  • FiO2が一段落してから血液ガスを取る。
  • 換気回数が多い場合の対策は、プレッシャーサポート圧を上げたり鎮静を深くする。
    ケタミン、塩酸モルヒネなどの鎮痛・鎮咳効果を併用すると上手くいく。
    気管挿管を行い呼吸器を装着している時に意識があったなら鎮静は必須。
    例⇨ドルミカム10A(20ml)を1ml/hrから開始
    例⇨ドルミカム5A+生食40mlを3ml/hrで開始
    例⇨ディブリバン原液を2ml/hrより開始
    例⇨ドルミカム8A+ケタラール(筋注用)2000mg(2A)+生食14mlを2ml/hrから開始
  • PEEPは3~5cmH2Oが無難
  • PSを用いたウィーニングは徐々に圧を下げ、PEEP5cmH2O、PS 5cmH2Oまで
    きたら抜管可能である。

CMVでは、自発があっても、無視されて呼吸するので負担がかかり、
ファイティングを起こすことになってしまいます。
SIMVにすると、自発を許容して、サポートまでしてもらえます。
このモードでは、
患者さんの(分時)換気量(MV)=
器械で設定した1回換気量×呼吸回数+自発呼吸の1回換気量×呼吸回数
 (こちらで設定できる)         (こちらで設定できない)
 となります

器械による呼吸+自発呼吸
酸素量を決める要素として、1) 肺胞の数=PEEP 2) FiO2
二酸化炭素を決める要素として、分時換気量=1回換気量×呼吸回数

つまり、
患者さんの(分時)換気量(MV)=
器械で設定した1回換気量×呼吸回数+自発呼吸の1回換気量×呼吸回数
 (こちらで設定できる)         (こちらで設定できない)

なので、設定するパラメーターとしては、
PaO2に関与する、吸入気酸素濃度(FIO2)やPEEP圧と、

PaCO2に関与する、(1)1回換気量(TV)と呼吸回数(従量式)
(または吸気流速と吸気時間I:呼気時間E)(2)最高圧レベル(PC)と吸気時間(従圧式)(3)プレッシャーサポート圧(これらは分時換気量(MV)を決定)となります。

SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation同期式間欠的陽圧換気)モードの(pressure support:PS)圧補助。
圧力を補助とは患者さんが自発呼吸を行うときに、吸気努力(回路内が陰圧になる)を感知して、患者さんの吸気にあわせて器械が一定の圧を送り込み、吸気を助けるものです。
これは自発呼吸を含むモードの時に限って設定されるものです。
自発が弱いときには圧を高く、ウィーニングが進んでくると低くしていきますが、そもそも人工呼吸回路がつながった状態で呼吸すると、回路内の抵抗があるので、相当呼吸が苦しくなりますので、最低でも4-5cmH2Oはかけておきます。

●酸素と二酸化炭素を決める要素
体重60kgの健康な人は、FIO2=21%の空気を、1分間に
600ml/回×12~15回=7200~9000(ml)換気することで、動脈血ガスを保っています。
pH=7.350~7.450
PaCO2(動脈血ガス二酸化炭素分圧)=35~45mmHg
PaO2(動脈血ガス酸素分圧)=80~100mmHg

※PaO2とPaCO2を規定しているもの。
  ①酸素:肺胞の数(PEEP)とFiO2で決まる
  ②二酸化炭素:分時換気量(ミニットボリューム Minute Volume:MV)で決まる
人工呼吸器の設定を決めるときには、PaO2とPaCO2を別に考えてやる必要があるのです。

酸素は肺胞の数(PEEP)とFiO2で決まるのに、二酸化炭素は分時換気量(Minute Volume:MV)で決まるのは、酸素より二酸化炭素の方が、拡散のスピードが速く,二酸化炭素は外気と呼気の濃度差が大きいということです.

FiO2によって動脈血中のO2(PaO2)が決定されます。呼吸回数を増やして、換気量を上げてもFiO2はさほど影響を受けず、PaO2はあまり変わりません。

それに対して、呼吸回数を増やして、換気量を上げるとCO2はどんどん(CO2濃度の高い)血中から(CO2濃度の低い)空気中に拡散し、PaCO2は速やかに減少するのです。

●実例
救急の現場で、160cmぐらい(体重不明、中肉)の人が、両肺真っ白、ARDSの様な
状態で搬送されてきたとします。
ものすごく浅薄呼吸で、自発呼吸がほとんど無効換気という場合。

*無効換気:死腔(鼻腔、口腔~気管支の間にあらかじめあって肺胞に入らないで呼吸・ガス交換に関係しない空気の量)といい、150(~300ml)程度あるため、浅薄呼吸だと
RV(残気量)のところを行ったり来たりで、ガス交換に寄与しない「無効換気」となります。

モードはCMVで、従圧式にします。
ARDSだと肺が硬くなる(線維化を起こす)ため、1回換気量(Tidal Volume:TV)は小さめ(6ml/kg理想体重程度)に、呼吸回数は気持ち多め (通常12~15であるのでこれより多め) にします。

設定しながらでも、実際のTV、呼吸回数、最高気道内圧はダイレクトにモニターできますから、160cmの理想体重55kgぐらいとして、6X55=TV330、まあ350位を目標になるよう圧と吸気時間を決めます。吸気時間1秒、呼気時間2-3秒の間で、呼吸回数が増えすぎない、良さそうなところに設定します。
いったん設定を決めて、SpO2 が安定したら、20分ほど経ってからpHとPaCO2をチェックするため血ガスを取ります。

人工呼吸中の管理

a)吸引
 1)分泌物の吸引は必要に応じて2~3時間毎に行う。吸引前後にはO2を十分に
0000与える。吸引は無菌的に行い、10~15秒以内とする。
 2)多量または粘調な痰による閉塞性無気肺が生じた場合は、
0000気管支鏡を用い選択的に気管支の洗浄、吸引、検体の採取を行う。
 3)分泌液の流出をうながすために体位ドレナ-ジ、タッピング、バイブレ-ションなど
0000を4~6時間毎に行う。
b)薬剤:必要に応じ、気管支拡張剤、去痰剤、抗生物質などを投与。
c)栄養管理
 1)長期(3日以上)の人工呼吸管理が予想される場合にはすみやかに経鼻胃管による
0000チュ-ブ栄養やIVHを施行する。
 2)投与カロリ-量は、30kcal/kg/日が望ましい。
 3)カロリー源はブドウ糖が中心。アミノ酸は1.0~1.5g/kg/日(窒素量として
0000200~250mg/kg/日)を目安とするが、窒素バランスは正またはゼロを
0000目標とする。 カロリ-/Nは150~250が 望ましい。
0004)血清アルブミン値は、2.5g/dl以上に保つことが望ましく、適宜アルブミン
0000製剤にて補正する。

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