低Ca血症と副甲状腺

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PTH//VitDの副甲状腺・腸・骨・腎への相互作用

''低カルシウム血症''(総血漿Ca濃度が8.8mg/dL未満)

低Caの原因は主として4つあり、これは,腸管からのCa吸収の抑制,Caの尿中排泄の増加,骨吸収の抑制,透析による過剰なCaの除去である。
副甲状腺機能低下症とは、副甲状腺ホルモン分泌が低下する「特発性」および「続発性」と、副甲状腺ホルモンの作用が障害を受ける「偽性」とに大別されます。
副甲状腺ホルモンの不足により血清Ca濃度が著しく低下するため、運動神経や筋の興奮性が高まり、筋肉はけいれんを起こす。
副甲状腺機能低下症の治療では、血中のカルシウム濃度を上昇させるために活性型ビタミンD製剤が用いられます。
ロカルトロールの内服薬の適応に「副甲状腺機能低下症」が有り、PTHの不足を原因とした低カルシウム血症、高リン血症です。
内服のロカルトロールは、活性型ビタミンDの効果でCaの腸管での吸収を高め、腎臓での、低カルシウム血症ひいては、高リン血症を改善します。

低Ca血症の原因疾患
原因には,副甲状腺機能低下症,ビタミンD欠乏症,および腎疾患(慢性腎不全)がある。
①PTH分泌低下
②PTH標的臓器の不応(レセプター異常=偽性副甲状腺機能低下症、この場合PTHはむしろ増加)
③VItD代謝異常
④高P血症(P投与、腎不全、白血病寛解期)
⑤尿細管アシドーシス、ファンコニー症候群

[低Caの症状と徴候]
1)筋・神経系
口唇周囲のしびれ感、テタニー、てんかん発作、Chvostek徴候、Trousseau徴候、精神神経症(情緒不安定など)、意識障害、知能発育遅延、大脳基底核石灰化
2)循環器系
心電図上のQTc遅延、不整脈、心不全
3)その他
歯牙発育異常、白内障など

低カルシウム血症が遷延すると白内障が生じることもある。
血漿カルシウム濃度が7mg/dL未満の重度低カルシウム血症は,細胞膜電位の異常が神経筋の易興奮性によりテタニー,喉頭痙攣,全身性痙攣を引き起こす恐れがある。
急性低カルシウム血症患者の大半にクボステック徴候(外耳道の直前で顔面神経を軽く叩打すると誘発される顔面筋の不随意収縮)やトルソー徴候(止血帯または収縮期血圧を20mmHg上回るように膨らませた血圧測定用カフで前腕を3分間加圧して手への血液供給を抑えることで手の痙縮が促進誘発)が認められるが、アルカローシス,低マグネシウム血症,低カリウム血症,高カリウム血症でもみられ,電解質異常が確認できない者でも約6%に生じる。
著しい低Ca血症では助産婦手が生ずる。トルソー徴候として誘発できるテタニーには,グルコン酸カルシウムの10%溶液10mLを10分かけて静注する。反応は劇的であるが,わずか数時間しか持続しないと考えられる。
反復投与を行うか,10%グルコン酸カルシウム20〜30mLを5%ブドウ糖液1Lに溶解して,続く12〜24時間かけて持続的に追加注入する必要が生じるであろう。
カルシウム注入は,ジゴキシンを投与されている患者では危険なので緩徐に行い,持続的に心電図モニタリングを行う。テタニーに低マグネシウム血症が付随するときは,マグネシウムを補充して改善する。

[診断]
低Ca血症患者では,腎機能(例,BUN,Crea),血清PO4,Mg,ALP,intactPTHの濃度を測定すべきである。
PTHが検出不能な濃度であれば,特発性副甲状腺機能低下症が示唆される。
副甲状腺機能低下症は,血漿Caが低値,血漿PO4が高値,ALPが基準範囲内であることを特徴とする。血漿PO4濃度の上昇を伴う低Ca血症腎不全を示唆する。

病因と病態生理(低カルシウム血症には多数の原因がある。)

  • 1)タミンD欠乏症:
    いずれの病型も活性型ビタミンD治療により低Ca血症を是正すれば予後は良好です。
    食事からの摂取不足や,*肝胆道系疾患または腸の吸収不良による吸収低下、また,*皮膚の日光暴露不足や、ビタミンD代謝を変化させる抗痙攣薬(フェニトイン,フェノバルビタール)およびリファンピシン,クエン酸で抗凝固処理を行った血液の輸血(>10単位),ならびに2価イオンキレート薬であるエチレンジアミン四酢酸を含有する造影剤によっても生じる。
  • 2)腎疾患:
    腎臓からの異常なカルシウム喪失や,腎臓での1,25(OH)2Dへの変換低下による重度低カルシウム血症を引き起こす場合がある。特にカドミウムは,近位尿細管細胞を損傷しビタミンD変換を阻害することによって低カルシウム血症をもたらす。
  • 3)急性膵炎では,炎症を起こした膵臓から放出される脂肪分解産物がカルシウムをキレートしたり、膵からのリパーゼにより遊離脂肪酸が作られ、それがカルシウムと結合したりして低カルシウム血症が引き起こされる。
    急性膵炎や横紋筋融解症が改善すると、高カルシウム血症になることがあるから急性膵炎や横紋筋融解症で低カルシウム血症になっている時は、十分なカルシウムの補正はすべきでない。
    横紋筋融解症では横紋筋の融解でCPK(creatine phosphokinase)が
    増大するから、リンが増えることになり、リンはカルシウムと結合するから、低カルシウム血症になる。
    横紋筋融解症でCPKが増大するのでPが増えることになり、PとCaが結合し低Ca血症になる。
  • 4) 低マグネシウム血症は、臓器のPTHの感受性を妨げるために低カルシウム血症になる。
    低マグネシウム血症と低カルシウム血症があると、カルシウムを補っても、マグネシウムを補わなければカルシウムは増えない。
  • 5)低蛋白血症は蛋白結合の減少による低カルシウム血症は無症候性である。
  • 6)hungry bone症候群
    特に重度の嚢胞性線維性骨炎患者で副甲状腺機能亢進症を外科的に治療した後には骨形成亢進にカルシウム摂取が追いつかない状態とる。
  • 7)敗血症性ショックは,PTH放出の抑制および25(OH)Dから1,25(OH)2Dへの変換の減少による低カルシウム血症を引き起こす可能性がある。
  • 8)高リン酸血症は低カルシウム血症をもたらすが,その機序はほとんど解明されていない。
  • 9)カルシトニン過剰分泌
  • 10) 低カルシウム血症とアシドーシスがあり、両方とも積極的な補正が必要な時は、カルシウムの補正を先にしてからアシドーシスの補正をすべきである。
       アシドーシスが先に補正されると、カルシウムイオンがさらに減少するからである。
  • 11)アルミニウム、アルコールはPTHを抑制する。 また、エストロゲンはカルシウムの骨吸収を妨げる。
  • 12) PPIは胃酸を減少させカルシウムの吸収を減らす。
  • 13)副甲状腺機能低下症hypoparathyroidism

PTH欠乏症は,癌に対する根治的甲状腺摘出術や,副甲状腺そのものに対する手術(副甲状腺の亜全摘術または全摘術)の後で,より一般的にみられる。
低カルシウム血症の症状は,通常は術後約24〜48時間経って発現するが,数カ月後または数年後に生じることもある。
副甲状腺亜全摘術後の重度低カルシウム血症の危険因子には,*術前の重度高カルシウム血症,*巨大腺腫の摘出,および*ALP高値がある。
その他、副甲状腺機能が何らかの原因によって障害され、PTH分泌そのものが低下しているものと、副甲状腺機能は保たれているにもかかわらず、標的組織のPTHに対する反応性が低下したものとの2つに大別されます。

【副甲状腺機能低下症の分類】

  A. PTH分泌の低下に基づくもの
     1)特発性副甲状腺機能低下症idiopathic hypoparathyroidism(IHP)
       (自己免疫疾患に合併するものも含む)
     2)続発性副甲状腺機能低下症secondary hypoparathyroidism
       (術後性、放射線照射、悪性腫瘍の浸潤など)
     3)常染色体性優性低Ca血症(Ca感知受容体の活性化変異による)
     4)副甲状腺の先天性形成不全(DiGeorge症候群、Catch22など)
     5)低Mg血症に伴うもの
  B. PTH不応性に基づくもの
    1)偽性副甲状腺機能低下症pseudohypoparathyroidism(PHP)
     PTHに対する不応性により、低Ca血症に副甲状腺機能亢進を合併した
     家族性疾患で低身長、肥満や第4指の中手指の短縮等の発育異常が
     特徴的とされている。
    2)低Mg血症(PTHの分泌のみならず作用も低下する例がある)
      腸管での選択的なMgの吸収障害、全般的な吸収不良やアルコール中毒に
      より生じた低Mg血症が長期間持続した後に血中PTH濃度が減少し、
      Mg塩の投与にて速やかに改善する。
00000C.その他
    偽性特発性副甲状腺機能低下症pseodoidiopathic hypoparathyroidism
    活性のないPTHの分泌によるとされるが、現在の測定系での報告はない。

副甲状腺機能低下症は血中TPH濃度は低値で、それを反映して血清Caは低値をとる。
ところが、血清Caは低値なのにも関わらず、血中副甲状腺ホルモンが低値でない
(むしろ高値)もある。一見副甲状腺機能低下症のように見えるが実は違うため、
偽性副甲状腺機能低下症という。ホルモンの標的臓器の不応である。
副甲状腺ホルモン受容体以降の細胞内シグナル伝達に障害がある。
副甲状腺ホルモン分泌機能は正常のため、血清カルシウム低値が刺激となり
フィードバックにより血中副甲状腺ホルモンは上昇する。
遺伝形式は常染色体優性遺伝で特徴的な身体所見(低身長、肥満、円形顔貌、
短指症、皮下の骨化など)を伴う。
ところが、家族歴もあり、偽性副甲状腺機能低下症が示す特徴的な身体所見を持って
いるにもかかわらず、血清カルシウムや血中副甲状腺ホルモンが正常で一見偽性副甲状腺
機能低下症のように見えるが実は違い、偽性偽性副甲状腺機能低下症という。
病因遺伝子を母親から受けつぐと偽性副甲状腺機能低下症になり、父親から受け継ぐと
偽性偽性副甲状腺機能低下症となる。
               血清Ca 血清P 血中PTH  身体所見
(特発性)副甲状腺機能低下症(IHP) ↓   ↑   ↓   なし
偽性副甲状腺機能低下症(PHP)   ↓   ↑   ↑   あり(Ib型II型はなし)
偽性偽性副甲状腺機能低下症  正常  正常  正常   あり
血中intactPTH正常ないし高値(≧30pg/mℓ)を示せばPHPと、低値(<30pg/mℓ)であればIHP

=PHPの診断基準=(低Ca血症、高または正P血症、腎機能正常)
  1)低カルシウム血症  補正血清カルシウム<8.5mg/dℓ
  2)成人血清リン≧3.5mg/dℓ  
3)血清BUN≦30mg/dℓ  血清クレアニチン≦2mg/dℓ
4)血清intact PTH≧30pg/mℓ
血中intactPTHが30pg/dℓ未満であっても、測定感度以上の値を示した例については、
念のためE-H試験を施行することが望ましい。
病型により投与量が異なり、PHPではほぼ生理量の投与により、高Ca尿症をきたすことなく
血中Caの正常化が期待でき、IHPに対しては約2倍の活性化ビタミンDが必要であり
、しかも高Ca尿症をきたしやすい。

低カルシウム血症で治療を要するのは、カルシウム濃度が7mg/dl以下になったときである。
甲状腺摘出術後または副甲状腺部分摘出術後の一過性の副甲状腺機能低下症には,
Caを経口補給すれば十分な場合もあるが、慢性腎不全患者または末期腎疾患患者における
副甲状腺亜全摘術後の低Ca血症は,特に、重度で遷延する可能性がある。
経口のカルシウムおよびVitDで十分となるまで,1g/日ものCa元素の補給を5〜10日間要し、
このような状況下で血漿ALP高値は,Caが骨に迅速に取り込まれている徴候であり、
大量の非経口カルシウムは,通常はALP濃度が低下し始めるまで必要である。
カルシトリオール[ロカルトロール(0.5)0.25~0.75mg/1x/day]は腎臓での代謝変換を必要と
しないので,腎不全で特に有用である。

CaおよびPO4が食事やサプリメントから十分に補給されない限りVitD療法は無効である
血漿Ca濃度の監視を当初は毎週,Ca濃度安定後は1〜3カ月間隔で実施すべきである。
通常,カルシトリオールやジヒドロタキステロールの維持量は時間とともに減少する。
VitD欠乏症によるくる病は,わずか10 μgのVitD(VitD2またはD3として)に反応する;
骨軟化症があれば,125μg/日のVitDを6〜12週間投与して,その後10μg/日に減じる。
治療初期には2g/日のCaの追加が望ましい。
日光暴露不足によるくる病または骨軟化症の患者では,日光暴露の増加や紫外線ランプによる治療が必要である。

Ⅰ型ビタミンD依存性くる病
  (腎臓において25(OH)D から1,25(OH)2Dへの変換酵素が欠損しているか,障害されて
   いる常染色体劣性疾患)はカルシトリオール0.25〜1.0μg/日の経口投与に反応する。
Ⅱ型ビタミンD依存性くる病(1,25(OH)2Dレセプターの突然変異による)には,いかなる
   種類のビタミンDにも反応しない。

治療は骨病変および低カルシウム血症の重症度による。重症例では,最大6μg/kg体重,
または総量で30〜60μg/日のカルシトリオールを最大3g/日のカルシウム元素と併用する
必要がある。
治療にはカルシウム投与を行い,ときにビタミンD(ワンアルファ、ロカルトロール)を併用する。
常用量: ワンアルファ(0.5/1.0) 1~4ug/1x/day
      ロカルトロール(0.5) 0.5~2ug/1x/day

急性期の治療

  テタニー発作や全身痙攣など、低Ca血症に伴う重篤な急性期症状を呈する場合は、
  ただちにCa製剤の経静脈的投与が必要です。
  カルシウムの点滴静注は重要臓器の血管収縮と虚血をもたらすことがあり、
  カルチコールを1アンプルずつゆっくり静注しますが、必要に応じ心電図を
  モニタしつつ緩徐に投与します。

  • カルチコール 15~25ml(Ca 118~196mg) +5%ブドウ糖液または生理食塩水
    000100mlを10分で落とす。
  • その後カルシウムを0.3~2mg/kg/時で少なくとも6時間は点滴し、その後、
    000血清カルシウムにより、投与を変える。
  • 体重50kgの患者にカルチコール40mL + 5%ブドウ糖液または生理食塩水 500mL
    000を6時間で点滴静注すると、1.25mg/kg/時で投与したことになる。
    10分でカルシウムを200mg投与すると、血清カルシウムは1mg/dL上昇するが、30分もすると下がり始めるために6時間以上の持続点滴をする。

   特発性、偽性のいずれの病型に対しても、活性型ビタミンDによる血中Ca濃度の
   維持が治療の基本とる。
   ビタミンD製剤には、calcitriol(1,25-dehydroxycholecalciferol)
   (商品名 ロカルトロール)がある。1日1回 0.5~1μgを経口で投与する。

【活性型ビタミンD2による副甲状腺機能低下症の治療基準】

  • 1. 副甲状腺機能低下症では、血清Caのわりに尿中Caの排泄が増えるので
      著しい高Ca尿を避けるため、翌朝空腹時の血清Caは正常低値
    000(8.5~9.0mg/dℓ)に維持するのを目標とする。
      また治療中の早朝空腹時尿中Caとクレアチニンを測定し、Ca/クレアチニン比を
    0000.3以下におさえることがのぞましい。
  • 2. 初期投与量より開始し、血清Caおよび尿中Caを測定しながら維持量を決定する。

00000活性型ビタミンD3:αカルシトール(ワンアルファー) 

              初期投与量     維持治療

IHPまたは術後      ug/1x/day      3.5ug/1x/day
PHP             1ug/1x/day     2.0ug/1x/day

活性型ビタミンD3: カルシトリオール(ロカルトロール)   

               初期投与量    維持治療
IHPまたは術後       1ug/2x/day     2.0ug/2x/day
PHP              0.5ug/2x/day    1.0ug/2x/day

  • 3. 適正量の活性型ビタミンD3を投与すれば、Ca剤の使用は一般に必要でない。
      Ca剤を併用すると、活性型ビタミンD3の投与量を節約することができるが、
    000Ca剤服用後に血清Caと尿中Caの異常高値をきたすので、朝食前の血清Caは
    000むしろ低めにおさえ、飲水量を増やすなどの注意を必要とする。
  • 4. 維持治療に入ったら、血清Caおよび尿中Caの測定は、2ヶ月に1度施行すること
    000がのぞましい。
      高Ca血をきたした場合は、ただちに投薬を中止すると、数日のうちに血清Caは
    000低下する。
       高Ca血の著しい場合は、副腎皮質ステロイドを投与する。

《維持治療期》

   血清Ca濃度を正常下限に維持することを目標とするが、とりわけIHPでは
   より低い血清Ca値で尿中Ca/クレアチニン比が0.3を超えることがしばしばあり、
   このような時は、遠位尿細管のCa再吸収促進効果を期待してサイアザイド
   利尿薬(フルイトラン2~4mg)を併用する。
   &deco(red){Ca製剤の併用は高Ca尿症を増悪させ、血中Caの変動を高めるため原則として
   行わない。};
   高Ca尿症が高度で、尿中Ca/クレアチニン比が0.4を超える時は長期的に
   腎機能低下をきたしうるので、より低い血清Ca濃度での維持をはかり、
   通常血清Ca濃度が7mg/dℓ以上に維持すると、口唇しびれ感やテタニーなど
   低Ca血症の症状は出現しない。

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