副甲状腺疾患

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オープニングサマリー
原発性副甲状腺機能亢進症(pHPT)はPTHの産生分泌が何らかの原因によって起こり、骨吸収亢進などにより高Ca血症を起こす疾患である。
特に、閉経後の女性に多く認められ、骨粗鬆症の一因となる。診断は血清Ca値の上昇に加えて血清インタクトPTHの高値により疑い、頚部エコーにて低エコーの腫瘤を認める。
さらに、部位診断としてMRIのT2強調画像にて高信号を認め、Tc-MIBIシンチグラフィーの遅延相にて陽性像を示す。
PTHは尿細管からのCaの吸収を亢進させるが、高Ca血症により尿中Caは高値を示す。
尿細管からのPの排泄が増加し血清P値は低値を示す。骨病変は、骨吸収が亢進し、骨髄は線維性血管組織で置き換わり、出血が生じ嚢胞状となり汎発性繊維性骨病変となる。pHPTの際はPTHrPは低値を示す。
悪性腫瘍による高Ca血症は
腫瘍から分泌されるPTHrPによるHHM(humoral hypercalcemia of malignancy)とLOH(local osteolytic hypercalcemia)に分類される。
pHPTの原因として腺腫が約80%、過形成(多くは多発性内分泌腺腫症I型)が約15%、癌が数%である。
治療は脱水の補正とカルシトニンなどの投与により血清Ca値を低下させ、その後、手術により腺腫摘出術、過形成は正常の副甲状腺まで含めた全摘+自家移植が行われることが多い。局在診断の明らかでない症例は経過観察が行われることもある。
Excuses I hear
悪性腫瘍に伴う高Ca血症(MAH)は腫瘍細胞がPTHrP(副甲状腺ホルモン関連ペプチド)や骨吸収促進性サイトカイン(IL1,IL6,TNF-α)などの骨吸収促進因子を産生するために生じるが多くの場合PTHrPによる。これら液性因子によるMAHはHHM(humoral hypercalcemia of malignancy)とも呼ばれる。
成人T細胞リンパ腫・白血病でも高頻度でPTHrPを産生しHHMを惹き起こす。
MMや乳癌の広範な骨転移ではPTHrPの産生がなくとも高Ca血症を呈することがありLOH(local osteolytic hypercalcemia)と呼ばれる。
検査
NAHは比較的急激に高Ca血症を生じてくることが多く、補正Ca値が12~13mg/dl台でも全身倦怠、食不振、傾眠などが生じやすい。
さらに高Ca血症が進行し補正Ca値が14以上になると尿の濃縮力の障害のため多尿が生じ口渇、多飲が出てくる。このためMAH患者は殆ど著明な脱水状態にある。
MAHの診断は詳細な問診に加え、血清Ca値、インタクトPTHおよびPTHrPの測定が重要である。
補正カルシウム
補正Ca値が12mgを超えると臨床症状が出てくる。
補正Ca値=血清Ca値+(4-血清Alb値)
血清Alb(基準値 3.8~5.3g/dL)
      重症度分類
軽症 ~12 脱力・嘔吐・便秘・疲労感   
中等  14 ~15
重症  16~

治療
MAHの治療の基本は脱水を是正し速やかに血清Ca値を減少させることである。脱水の是正には生食の点滴を1日尿量が最低2㍑確保できるように初日は3~4㍑以上持続しておこなう。十分な補液のもとに、尿中のCa排泄量を増加させるためにループ利尿薬(ラシックス)を投与する。
さらに、急性期にはカルシトニン製剤の点滴もしくは筋注もおこなわれる。
ビスホスホネート製剤の効果を待つ間に迅速な血清Ca値の減少を図れるためカルシトニン製剤は有効であるが、連日投与ではエスケープ現象が起こる可能性がある。
また、ビスホスホネート製剤との併用では低Ca血症を惹き起こす可能性が注意を要する。ビスホスホネートは強力な骨吸収抑制作用がありMAHの第一選択薬である。アレディア、テイロック、ビスフォナール、ゾメタがある。
通常、血清Caは投与2日目頃から減少しその効果は約2週間持続する。
CaとビタミンDを入れずに補液を行うことが肝要である。
MAH患者では中心静脈栄養が行なわれることが多く、汎用される総合ビタミン剤にはビタミンDが含まれているので使用しない。

PTH/VitDの副甲状腺・腸・骨・腎への相互作用

PTH-intact;基準値:14~66pg/ml

副甲状腺からは主にintact PTHとして分泌され、末梢においてN末端及びC末端部分に分解され、N末端が生理的活性を有する。
PTHの主要な作用は
①骨芽細胞の機能を抑制し破骨細胞活性を促すことによって骨吸収作用を進行させる。
②腎のCa、Mg再吸収作用とリン酸(P)再吸収抑制作用(P排泄増加は近位尿細管で行われる)
③腸管のCa吸収促進作用 ④PTHは尿細管において1,25vitDへの促進作用を示す。
PTHは脈動的分泌があり、夜間睡眠時に上昇する日内変動があり、激しい運動でも上昇する。
また、抗がん剤や抗生物質など腎尿細管障害を起こす薬物により腎臓でのCa再吸収が低下してもPTH分泌亢進が起こることがあり、逆に、ビタミンD3による高Ca血症ではPTHは分泌抑制されます。

VitDについて

VitDは,活性化代謝物をもつプロホルモンでレセプターは腸・腎・副甲状腺にある。
VitDの生体への作用はCaの輸送や吸収を調節しており、腸管におけるカルシウムの吸収を促進し、また、骨においてはPTHと同様に骨吸収を促進する。
VitDには, D2(エルゴカルシフェロール)およびD3(コレカルシフェロール)の2つの型があり、ビタミンD3は,日光に暴露することにより皮膚で合成される。
VitDは主に魚肝油や卵黄などの食物からも得られ、体内に摂取されたVitD2あるいは皮下に存在するvitD前駆体(プレビタミンD3)が紫外線により変換したVitD3は、まず肝臓に運ばれ25VitD3になり(血中25(OH)D濃度が良いマーカーで基準値12~50ng/ml, 5ng/ml以下が
欠乏)、これが腎臓で代謝活性が最も高い1,25VitD3になる。活性化型vitDの産生は血清Ca濃度、とくにイオン化カルシウムの変化に影響され、生理学的作用を有する。(腸管からCaの吸収、骨からCaの溶出を促進させて血清Ca濃度を上昇させる)

Ca++の低下があるとPTHを介して1,25vitDの産生が増し、逆に、Ca++の上昇があるとPTHを介して1,25vitDの産生が減少する。
また、P濃度の低下により1,25vitDの産生が促進され、P濃度の上昇により1,25vitDの産生が抑制される。
ミネラルの吸収にはVitDが必要なためビタミンD欠乏により低カルシウム血症が起こり,PTHの産生が刺激され副甲状腺機能亢進症が引き起こされる。
PTHに対する反応性は、破骨細胞と尿細管のリン酸トランスポーターに強く認められ破骨細胞は骨破壊を促進し、その結果リン酸イオンとカルシウムイオンが血中に増加する。
壊された骨は1型collagenを残して分解されることになるので、これが繊維成分となって「線維性骨炎」の状態になり、一方、腎臓では、尿細管細胞にPTHが結合することによりリン酸トランスポーターの作用を促進し血中から尿中へリン酸排泄が促進される。

副甲状腺機能亢進症ではPTHの分泌が止まらないとどんどん骨を壊してカルシウム及びリンを増加させようとする。壊せる骨が無くなってもPTHは出続けるので近位尿細管からのリン排泄は促進されたままになるので低リン血症になってしまい骨の無機質化が障害される。

  • VitD欠乏症
    ビタミンD欠乏症では,血清リン酸値は通常低下し,血清ALP値や血清PTH値は通常上昇する。原則として、PTHとビタミンDの両方がなければ血清カルシウムは正常範囲まで上昇しない。
    ビタミンD欠乏は、骨基質の石灰化不全により、小児ではくる病を,成人では骨軟化症を引き起こし,また骨粗鬆症の原因となる。
    副甲状腺機能低下症やVitD代謝異常に伴う疾患には、
    VitD3製剤ワンアルファ(0.5/1.0)1~4mg/1x/day、(D3カルシトリオール)ロカルトロール(0.5)0.5~2mg/1x/dayなどのビタミンD
    経口投与することにより治癒可能である。
    約10日以内に,血清Ca値およびP酸値は上昇し,血清ALP値が低下する。
    3週目には,十分なCaとPが骨組織に沈着しているのがX線上でみられる。
    テタニーがある場合,VitDの補給は,1週間を限度としてカルシウム塩の静注投与とともに行うべきである。
  • ビタミンD中毒症
    ビタミンD過剰用量の服用から起こる。成人では,数カ月にわたってVitD2500μg/日服用すれば,中毒症を生じることがある。
    中毒症症状が現れる際、血清Ca値が12〜16mg/dLに上昇し、血清25(OH)D値(基準値12~50ng/ml)が15倍にもなる。
    ビタミンD,特に強力な1,25(OH)2Dの大量投与を受けている患者は全員,血清Ca値を頻繁に(初めは毎週,後に毎月)測定するべきである。
    高カルシウム血症に準じた治療を行い,ビタミンD服用の中止,食事によるカルシウム摂取の制限,毒性が重度であれば,コルチコステロイド,またはビスホスフォネート(骨吸収抑制)の投与を行う。

0000ビスホスホネート: ボナロン(5/35)35mg/週1回起床時180mlの水で服用
00000000000000000005mg/毎日
            アクトネル(2.5/17.5)17.5mg/週1回、2.5mg/毎日
            ボノデオ(1)1mg/日1回 
0000コルチコステロイド類(例,プレドニゾン20〜40mg,1日1回経口)

Caについて

血漿総Ca濃度の基準範囲は8.8〜10.4mg/dLである。総血中Caの約40%はアルブミンを主とする血漿蛋白と結合している。残りの60%は,イオン化Caや,リン酸(PO4)およびクエン酸と複合体を形成したCaである。
高カルシウム血症(総血漿Ca濃度が10.4mg/dを上回る)
 [原因疾患]
  ①原発性副甲状腺機能亢進症 
  ②悪性腫瘍1)PTHrP産生腫瘍(肺扁平上皮癌、腎癌、乳癌、骨髄腫)、
0000000悪性腫瘍の骨転移、浸潤 
0000000プロスタグランジン産生腫瘍(腎癌)、OAF(osteovlast activating factor)
0000000産生腫瘍(成人T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫)
  ③VitD作用の過剰 
000000001)VitD中毒症
000000002)1.25VitD産生慢性肉芽腫症(サルコイドシース、結核など)
  ④他の内分泌疾患に伴うもの、不動、FHH(家族性低Ca血症:Caレセプターの不活化
    変異にもとづく先天性疾患)、薬剤(VitA、サイアザイド系利尿剤など)
  ⑤腎不全時の合併症時(赤目現象CaxP>70)

高Ca血症の臨床症候

PTH作用の過剰なものが殆どで高Ca血症と同時に低P血症、活性型VitD高値を認める。
腎濃縮力低下に伴う多飲・多尿、腸管運動の低下に基づく便秘、異所性石灰化に伴う皮下石灰化により皮膚搔痒感などが比較的多く、消化性潰瘍は高Ca血症によるガストリン分泌の亢進が約10%にみられます。
(MEN-Ⅰ型が疑われる例ではZollinger-Ellison症候群との鑑別に注意)。
腎型では尿路結石が、骨型では線維性囊胞性骨炎ostitis fibrosa cystic(5%)を呈する。

1)腫瘍の一部からPTH-related peptide, PTHrP(PTHの約2倍)が分泌され、骨および腎臓の両方のPTH受容体に結合して破骨細胞性骨吸収などのPTH類似作用をもたらす。
造血器癌(骨髄腫,リンパ腫やリンパ肉腫)は,破骨細胞を刺激して骨を再吸収し、高Ca血症を引き起こし,破骨細胞を活性化するサイトカインまたはプロスタグランジンにより骨溶解性病変やびまん性骨減少をもたらす。
※ 悪性腫瘍によるPTHの増加
  悪性腫瘍またはその骨転移巣により、PTH-related peptide, PTHrP が分泌されることにより、
  局所の骨融解が促進され、高Ca血症が惹起される。
  血漿カルシウム濃度が13mg/dLを上回れば癌が示唆される。
  貧血,尿毒症,および高カルシウム血症が同時に認められれば骨髄腫が示唆される。
  サルコイドーシスやその他の肉芽腫性疾患,一部のリンパ腫による高カルシウム血症では,
  1,25(OH)2Dの血漿濃度が高値を示すことがある。ビタミンD中毒も1,25(OH)2D 高値を
  特徴とする。
2)高Ca血症は,床上安静開始後数日から数週間で発症する。
体重負荷がかかる状態に戻れば高Ca血症は迅速に回復する。
3)ミルク-アルカリ症候群では,過剰量のカルシウムおよび吸収性アルカリ剤が摂取され,高Ca血症,代謝性アルカローシス,腎機能不全が生じる。
(ハリソン内科学では、高MgはPTHの分泌抑制を来し、腎でのHCO3排泄を抑制する結果、連鎖反応的にアルカローシスを増悪させ、遠位ネフロンにおいて選択的にカルシウム再吸収を亢進させ高カルシウム血症を悪化させる・・・と説明している)

  • [検査所見]
    血清Ca濃度が正常上限であれば血中PTH濃度は通常正常中央値以下であるが血清Ca濃度とPTHがともに正常上限値を示すような場合は、潜在性副甲状腺機能亢進症の可能性を考慮します。
    電解質,BUN,クレアチニン,血清アルブミン、イオン化カルシウム,PO4,ALP,intactPTHおよび24時間尿中カルシウムを測定すべきである。
  • [治療]
    軽度高カルシウム血症(10.2<血漿Ca濃度<11.5mg/dL)で症状が軽いときには,確定診断まで治療を延期し、診断後に基礎にある原因を治療する。
    リン酸塩が最も有効なのは発症初期に他の薬物を用いて血清Ca低下に成功した後である。
    等張生理食塩水およびループ利尿薬やパミドロン酸(アレディア)を投与して尿中Ca排泄を増加させる方法がある。ほぼ全ての重度高Ca血症患者で循環血液量は低下しているので,深刻な心不全がない限りまずは生理食塩水1〜2Lを2〜4時間かけて投与する
    約250mL/時の尿量を維持する(1時間毎にモニター)ために,必要に応じてフロセミド20〜40mgを2〜4時間毎に静注する。
    低K血症および低Mg血症を回避するために,治療中は4時間毎にKやMgを監視し,必要に応じて静脈内投与で補充する。
    2〜4時間で血漿カルシウム濃度は低下しだし,24時間以内にほぼ基準範囲まで下がる。
  • 中等度高カルシウム血症(血漿Ca濃度が11.5mg/dLを上回るが18mg/dL未満)
    等張生理食塩水やループ利尿薬で治療するか,原因によっては骨吸収を抑える薬物(通常はカルシトニン,ビスホスホネート),コルチコステロイドを用いて治療する。
    カルシトニン製剤:エルシトニン注20sディスポ20単位
    高ca血症では1回40単位を1日2回(骨粗鬆症20単位/週1回IM)
    カルシトニンは,破骨細胞活性を阻害することによって血漿カルシウム濃度を低下させる。
    通常、成人にはサケカルシトニン(合成)として1回10国際単位を週2回筋肉内に注射する。
    しかし,サケカルシトニンおよびプレドニゾンの併用によって,一部の癌患者では数カ月間にわたって血漿カルシウム濃度を制御できる場合がある。
    カルシトニンが作用しなくなったならば,2日間中止してから(その間プレドニゾンは継続)再開する。
    ビスホスホネート類は破骨細胞を抑制する。これらは通常,癌による高カルシウム血症の治療選択薬である。
    ビスホスホネート: ボナロン(5/35)35mg/週1回起床時180mlの水で服用、5mg/毎日
    アクトネル(2.5/17.5)17.5mg/週1回、2.5mg/毎日
    ボノデオ(1)1mg/日1回 

ページェット病および癌による高カルシウム血症の治療には,
エチドロン酸(ダイドロネル)7.5mg/kg,1日1回を3〜5日間にわたって静注する。
20mg/kg,1日1回経口による維持も行われる。癌による高カルシウム血症には1回量を30〜90mgとしてパミドロン酸(アレディア)を静注することもあり,再投与は7日後以降にのみ行う。
これは血漿カルシウム濃度を最大2週間低下させる。
ゾレドロネート(ゾメタ)も4〜8mgを静注する場合があり,平均で40日間を上回る期間にわたって血漿カルシウム濃度を低下させる。
カルシウムを基準範囲内に維持するために,
経口ビスホスホネート類(アレンドロネートまたはリセドロネート<アクトネル、ベネット>)を投与することがある。

ビタミンD中毒,乳児の特発性高カルシウム血症,およびサルコイドーシスを有する患者の大半では,コルチコステロイド類(例,プレドニゾン20〜40mg,1日1回経口)の追加によってカルシトリオールの産生,ひいてはカルシウムの腸管吸収が抑えられ,高カルシウム血症を効果的に制御できる。
骨髄腫,リンパ腫,白血病,または転移癌の患者の一部では,プレドニゾン40〜60mg,1日1回が必要となる。
しかし,このような患者のうち50%を上回る者がコルチコステロイド類に反応せず,反応がみられるときでも数日を要することから,通常は他の治療が必要になる。

  • 重度高カルシウム血症(血漿カルシウム濃度>18mg/dLまたは重度の症状を伴う)には,上述の治療に加えて低カルシウム透析液による血液透析が必要になる場合がある。
    血液透析が恐らくは最も安全で信頼できる短期治療である。

副甲状腺の手術の適応

副甲状腺の腺腫(77.9%)、過形成(14.7%)あるいは癌(4.8%)。
腺腫のほとんどは単発性で、10%近くは食道後部、縦隔内などに異所性に存在する。
多発性の場合は過形成の可能性を考え、過形成の多くが多発性分泌腺腫症multiple endocrine neoplasis(MEN)か家族性原発性副甲状腺機能亢進症に伴う。
治療の第一選択は手術で腺腫様の副甲状腺は切除する。
摘除術が行われれば予後は良好である。

副甲状腺の手術の適応
①iPTH>500pg/ml、直径10mm以上
②正常では40mgであるがU/Sで500mg以上の大きな上皮小体が存在する。
③PTHが高くてX—Pで線維性骨炎所見があり、血中ALPやオステオカルチンOC高値
の3つを満たし、
1)CaやPが高値、2)異所性石灰化が進む、3)X-Pで骨が溶けている骨量が減っている
4)エリスロポエチン製剤で良くならない貧血がある
5)膝・踵の痛み、胸の変形、筋力低下、痒み、イライラ感、不眠、集中力低下などの自覚症状がある。・・・などの項目が1つでもあれば適応となる。

  • 手術の目的は大きくなった上皮小体を少なくすることにある。手術を施行しても腎臓はよくならないから再び再発の危険があるので切除した上皮小体の一部をシャントのない方の前腕に移植する。
    手術適応外の例では病態に応じて内科的治療も考慮します。
    術後の副甲状腺機能低下症を予防するために,正常とみられる副甲状腺の小片を通常は
    胸鎖乳突筋腹や前腕皮下に移植する。持続性副甲状腺機能低下症が発症した場合に
    後日自家移植ができるように,副甲状腺組織の凍結保存もときに実施される。
  • 手術が実施されないのであれば,患者の活動性を維持し(高カルシウム血症を増悪させうる長期臥床を回避し),低カルシウム食を摂り,水分を大量に摂取して腎結石症の発生する可能性を最小限とし,サイアザイド系利尿薬など血漿カルシウム濃度を上昇させうる薬物を避けるべきである。血漿カルシウム濃度および腎機能を6カ月毎に監視する。骨密度は12カ月毎に監視する。
  • 手術後は血中のCaが下がり、大量のCaとVitDがが必要になる。
    PTHは半減期が極めて短いため副甲状腺が切除されると麻酔から完全覚醒を待たずしてテタニー症状を見るので術後はグルコン酸カルシウムを点滴に加え、活性化型VitD3製剤を投与する。
    再発・再手術を防ぐために長期的にCa,Pを管理することが必要である。
    腕に植えた上皮小体が再び大きくなって再手術が必要となるのは手術後3年で10%、5年で20%、7年で30%くらいである。
  • PTZ/PEITの適応
    長年パルス療法をしてもPTHが下がらない、大きさが小さくならない。
    CaやPが下がらない人はパルス療法を諦めてPEIT(エタノール注入法) PTX(副甲状腺摘出術)のどちらかを選択する。
    すなわち、活性型ビタミン製剤による治療に抵抗するiPTH>500pg/mlが持続し、高Ca血症(補正Ca>10mg/dl)またはP>6.0mg/dlが存在する場合はPTZ/PEITを考慮する。
    治療薬「レグパラ錠」
    活性型VitD製剤は、PTH抑制効果は確実であるものの小腸からのCa吸収能を上昇させる
    ため投与量を増やすと高Ca血症を引き起こす危険があるため十分量を投与できなかったが
    「レグパラ錠」は副甲状腺細胞表面のCa受容体に直接作用し血清Ca値を上昇させずにPTHを抑制すると共に血清P値を低下させる薬剤calcimimeticsである。
  • 再手術は困難である。
    副甲状腺癌によるものが約3%に認められ、再発例では予後不良です。
    単一の腺腫は腫大腺の摘出を行います。
    過形成の場合は4腺を全摘し1/2腺を自家移植し、MENの部分症の可能性を考慮します。
  • 尿路結石に対しては経口中性リン製剤0.5~1.5g/4~6x/day(日本では承認されているものなし)
    により高Ca尿症の抑制を図るが、血清Ca12mg/dℓ以下かつGFR75mℓ/分以上の例に限ります。
  • 閉経後女性の骨塩量低下の抑制のため女性ホルモン補充療法やビスホスフォネートの投与を行う場合もあります。

原発性副甲状腺機能亢進症primary hyperparathyroidism(pHPT)

原発性副甲状腺機能亢進症は一般に中年期以降に認められるが,症状出現の数年前から存在する可能性がある。明らかな原因がない場合に,血漿カルシウム濃度が11mg/dL未満であれば副甲状腺機能亢進症またはその他の非悪性の原因が示唆される。
副甲状腺機能亢進症では,血漿Ca濃度が12mg/dLを上回ることはまれですが,血漿イオン化カルシウム濃度はほぼ常に高値を示す。

血漿PO4濃度が低値であれば副甲状腺機能亢進症が示唆され,特に腎臓からのPO4排泄増加を併発する
副甲状腺機能亢進症によって骨代謝回転が亢進すると,血漿ALPはしばしば上昇する。intactPTHの上昇によって診断確定する。
成人尿路結石症の2~5%は原発性副甲状腺機能亢進症が原因となっており、逆に原発性副甲状腺機能亢進症の約半数は尿路結石を合併している。
血清Caの上昇、血清Pの低下、尿中Ca排泄の増加、尿細管P再吸収率〔%TRP〕の低下、PTHの増加により診断される。
人口10万人に対し年間5人程度。
女性が男性の約2倍と多く、40~60歳代が最も多く、閉経後女性では一般成人の約5倍といわれている。
腎不全患者の副甲状腺機能亢進症の治療では,食事からのPO4摂取制限と,炭酸カルシウムまたはセベラマー(レナジェル)などのPO4結合薬を併用して,高リン酸血症や転移性石灰化を予防する。
治療は、腺腫等の外科的摘出が主体となる。
副甲状腺超音波診断が最も鑑別かつ有用で200mg以上の腫大腺なら甲状腺後面の低エコー腫瘤として認められます。
99mTc-MIBIシンチグラフィも用いられます。
(CTやMRIの描出能は超音波検査より劣りコストも高い)。

多発性内分泌腺腫症

(1)多発性内分泌腫瘍I型(MEN-I)(多発性内分泌腫瘍I型ワーマー症候群)
MEN-I型は、第11染色体上にある優性遺伝の家族性疾患であり,下垂体腫瘍,副甲状腺過形成,膵内分泌腫瘍(インスリノーマ)を特徴として発症し、機能性内分泌腫瘍の多くは十二指腸ガストリノーマである。
MEN-Iの約40%では,副甲状腺,膵臓,および下垂体の3種の罹患腺の腫瘍が全てみられる。発生のピークは女性では20代,男性では30代で、女性は男性の2倍罹患しやすく、発症年令は4~81歳の範囲にわたると報告されている。
第1度近親者は,年1回の臨床スクリーニングを要する。
遺伝子保因者は15歳から定期検診を始めて,消化性潰瘍,下痢,腎結石,低血糖,および視野障害,先端肥大症,および皮下脂肪腫の身体所見をチェックし、血清カルシウム,副甲状腺ホルモン,ガストリン,およびプロラクチンの濃度を測定し、トルコ鞍のCTやMRIを行う。
[症状と徴候]
副甲状腺: 副甲状腺機能亢進症は90%以上みられ、無症候性高カルシウム血症が最も一般的である。腎結石症や腎石灰化症は約25%の患者で認められる。
膵臓: 膵島細胞腫瘍が患者の30〜75%に生じ、約30%の腫瘍は悪性で,局所転移または遠隔転移を伴う。
膵島細胞腫瘍の約40%はβ細胞由来で,インスリノーマが多く、一般に40歳未満でみられる。
腫瘍の約60%は非β細胞成分由来で,40歳以上に多い傾向がある。
悪性腫瘍の発生率は非β細胞腫瘍の方が高い。
ガストリンは非β細胞腫瘍から最も一般的に分泌されるホルモンで,MEN-I型患者の50%以上に難治性消化性潰瘍を伴う(ゾリンジャー-エリソン症候群)。
また、過剰な胃酸分泌が膵リパーゼの不活性化を伴い,下痢や脂肪便の原因となる。
ゾリンジャー-エリソン症候群患者のうち20〜60%がMEN-Ⅰを呈する。
水様性下痢,低カリウム血症,塩酸欠乏症症候群などの複合症状はWDHA(膵性コレラ)と呼ばれ,血管作用性腸管ポリペプチドに起因するためVIP-omaと言われている。
下垂体: 下垂体腫瘍はMEN-Ⅰ患者の50〜65%に生じる。下垂体腫瘍の25〜90%はプロラクチノーマで、約25%は成長ホルモン,または成長ホルモンとプロラクチンを分泌する。
約3%の腫瘍はACTHを分泌してクッシング病をもたらす。
残りの大半は非機能性である。局所での増大は視覚障害,頭痛,および下垂体機能低下を引き起こす場合がある。
その他の症状: カルチノイド腫瘍がみられる例もある。多発性に皮下脂肪腫や内臓脂肪腫が生じることもある。
[治療]
副甲状腺と下垂体病変の治療は原則的には外科手術である。単独の腫瘍が見つからない場合には,高インスリン血症を適切にコントロールするために膵全摘術が必要となることもある。ジアゾキサイドは低血糖の有効な治療補助薬であり,ストレプトゾシンは腫瘍の影響を減らし症候を改善する。
オクトレオチド(ソマトスタチンアナログ)はガストリン非分泌性膵臓腫瘍からのホルモン分泌を阻害する。

(2)Multiple Endocrine Neoplasia type 2多発性内分泌腫瘍症2型シップル症候群
ヒト10番染色体上のRET遺伝子の異常で、MEN 2、FMTCになることが分かっている。
MEN2では内分泌臓器の、甲状腺や副腎、副甲状腺に腫瘍ができたり機能亢進が起こる。
甲状腺は濾胞細胞とC細胞(傍濾胞細胞)からなります。甲状腺の99%以上は甲状腺ホルモンを作る濾胞細胞からなり、C細胞は甲状腺内でもごくわずかで(甲状腺癌は、約85%が乳頭癌、約10%が濾胞癌で濾胞細胞から発生する癌です)。
C細胞が腫瘍化したものが甲状腺髄様癌で日本の甲状腺髄様癌の頻度は2%弱を占めます。髄様癌はカルシトニンやCEAを分泌します。画像検査として、頸部CTやMRI、胸部CTなどを行います
カルシトニン誘発刺激試験では、ガストリンやカルシウムを静脈から注射すると、髄様癌細胞ではこれらの刺激に対してカルシトニンの分泌が高まります。
MEN2では副腎髄質に褐色細胞腫ができてきます。
副腎髄質は、血液中や尿中のカテコラミン(ADR,NOR-ADR)の量を測定したり、CTやMRIといった画像検査で腫瘍ができていないか確認します。

MEN2の体質は50%の確率で子どもに伝わり、兄弟姉妹もほぼ50%の確率で同じ遺伝子変異体質を持っています。
実際には甲状腺髄様癌例でMEN2である割合は30%程度です
また、見つかった甲状腺髄様癌がMEN2によるものであることがわかれば、甲状腺は正常部分も含めて全て手術で取り除く必要があります。
MEN2では臨床症状の違いによってMEN2A、MEN2B、FMTCに分けられます。

MEN2A
MENの中ではもっともよく見られるタイプで、甲状腺髄様癌がほぼ全例にみられ、褐色細胞腫も約6割の患者さんで発症し、そのうちの約半数では両側にみられます。
また1~2割の患者さんでは副甲状腺機能亢進症も発症します。
MEN2Aの約5%が副甲状腺機能亢進症となり、血中カルシウム濃度が高くなります。
副甲状腺機能亢進症の治療も手術によって副甲状腺を取り除きますが、MEN2Aの患者さんの副甲状腺機能亢進症は一般に軽症であることが多いので、もしこの病気が見つかったとしても手術を行うかどうかは、総合的に判断する必要があります。
褐色細胞腫がある場合は、手術が最良の治療法で、甲状腺髄様癌の手術より先に副腎の手術を行わなければなりません。

MEN2B
甲状腺髄様癌(悪性度高い)や褐色細胞腫(約50%で)を発症する点はMEN2Aと同様ですが、副甲状腺機能亢進症はみられません。
また、やせ形で手足の長い体型になり、舌や口唇に粘膜下神経腫が多発します。
MEN2BやFMTC(Familial Medullary Thyroid Carcinoma)では副甲状腺に異常は生じてきません。MEN2Bの診断は甲状腺髄様癌の他に粘膜下神経腫や特徴的な体型から診断がなされていました。
褐色細胞腫がある場合は、手術が最良の治療法で、甲状腺髄様癌の手術より先に副腎の手術を行わなければなりません。

FMTC(Familial Medullary Thyroid Carcinoma)
甲状腺髄様癌が常染色体優性遺伝により家族に多発しますが悪性度は低く、それ以外の病気はみられません。

●高Ca血症クリーゼ

高度の高Ca血症により意識障害などの中枢神経症状や嘔吐などの消化器症状をきたし、尿濃縮能の低下による脱水の進行と腎機能低下により、高Ca血症がさらに悪化するという悪循環に陥った場合です。
生理食塩水の補液による脱水の改善、ループ利尿薬による尿中Ca排泄の促進、ビスホスフォネートによる骨吸収抑制などをはかり、クリーゼが改善した後に手術を行います。

● 続発性〔二次性〕副甲状腺機能亢進症(慢性腎不全、VitD欠乏症)

慢性腎不全例においては、GFRが40ml/分以下になると血中PTH濃度が上昇し、リン酸PO4の排泄が十分に行われなくなり、高リン酸血症を呈する。
腎障害のために、腎臓でのビタミンD活性化が障害され、消化管からのカルシウム吸収が減少することも低カルシウム血症の一因となっている。
そこでPTH分泌が増加し、尿細管でのCaとPO4の正常化をはかろうとし、その結果、二次性副甲状腺機能亢進症が生じ、PTHの過剰分泌のために腎性骨異栄養症が起こる。
非経口用の活性型ビタミンD3製剤カルシトリオール,またはそのアナログ「パリカルシトール」(未承認)などのビタミンDアナログの方がこのような患者の二次性副甲状腺亢進症の予防に優れている。

★ビタミンD製剤の使用開始用量
i-PTH値(pg/ml)  300~600   600~1000  >1000 
Ca値(mg/dl)     <9.5       <9.5     <10.0
P値(mg/dl)      <5.5       <5.5      <5.5
Ca×P値(mg/dl)    <55      <55      <55
カルシトリオール 静注0.5~1.5ug  1.0~3.0ug  3.0~5.0ug
(ロカルトロール) 経口0.5~1.5ug  1~4μg    3~7μg
パリカルシトール 静注2.5~5.0ug  6.0~10ug   10~15ug

腎性上皮小体機能亢進症
腎不全になると活性型VitDが出来なくなりCaを摂取しても吸収されにくくなる上、Pも尿から排泄されず貯まってくるのでPTH分泌を促進するがPTHは腎臓に上手く働くことができないため骨を溶かしてCaを維持しようとする。
腎性上皮小体機能亢進症が進行すると血中CaやPが高くなって骨以外の部分にCaが溜まりやすくなり異所性石灰化がおこるため、これが進行する前に手術が必要になる。
血清Pが高くなるとPTHが分泌されて尿細管におけるPの再吸収を低下させ尿中へのP排泄を増加させる反応が生じる。
PTH分泌亢進により骨が溶けて脆くなると血清P値も上昇し、それがまたPTHを増やすという悪循環になる。
また、CaとPが共に高い状態が続くと関節周囲や動脈、肺胞、眼等にリン酸Caが沈着し、異所性石灰化を招く。
「腎性骨症」や「異所性石灰化症」が起こって狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症(大動脈弁狭窄症)、虚血性腸炎による消化管出血が出現することなどがありきます。

透析患者さんでは血中のリンは上昇し、カルシウムは逆に低下します。
これを防ぐには、日頃より、カルシウム(mg/dl)×リン(mg/dl)<65 (透析前値)
となるようにコントロールします。
しかし、リンはあらゆる日常食品に含まれており、たんぱく質の多いものほどリンも多く含まれている。透析前値でP「6.0mg/dl」以下になるようにします。
腸でのP吸収抑制薬として炭酸カルシウム錠(炭カル錠6錠/日以内)を服用します。
ただし、便秘傾向になるので便通には注意。
朝・昼・晩の食事毎(直前~食事中が望ましい)にはもちろん、おやつなどの間食をした時にも2~3錠追加して服用します。

カルシウムとリンのバランス異常(カルシウム×リン>70)が長く続くと副甲状腺の働きが強くなって「PTH」が異常に高くなり、骨がもろくなります。
血中のカルシウムを増やすために活性化VitD剤(内服としてアルファロール、ワークミン)を
服用します。
大きな目安として透析歴約10年(早い方で5~6年)の患者さんには骨痛や関節痛などの症状がなくても副甲状腺の精査(エコー、採血等)で、ある一定サイズ以上に腫大した副甲状腺に対しては一部を取り除く(一部は前腕に移植)手術が必要となります。

(A) Ca(mg/dl)×P(mg/dl)<65
(B)
       透析前     透析後
  Ca   8.5~10.5  <  11.5
  P   4.0~6.0   >  2.5
(C)
                     Ca       P
     VitD   アルファロール00000000 ↑      ↓
 P吸収抑制剤炭酸カルシウム000000000000↑      ↓
        レナジェル000000000000→       ↓
(D)
副甲状腺ホルモン(PTH高感度):10,000pg/ml 以下にとどめること

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