劇症肝炎

total:8590 today:1 yesterday:0

いろいろな難しい肝炎

劇症肝炎と類縁疾患

劇症肝炎
肝炎の初発症状発現後8週間以内に高度の肝機能+昏睡II度以上の肝性脳症をきたしPT<40%を示す。
急性型  発病後10日以内に脳症が発現するもの
亜急性型  発病後10日以降に脳症が発現するもの
劇症肝炎前駆病変または類縁疾患
急性肝炎重症型   PT<40%で肝性脳症を認めない昏睡I度以内 
遅発性肝不全(LOHF)  初発症状発現から8週~24週以内に昏睡II以上の肝性脳症を示すもの

劇症化予測
凝固因子低下、血小板減少、ビリルビン上昇、直接/総ビリルビン値(D/T)の低下(0.7以下)は劇症化のサインです
0000λ=-2.7469+0.0914x年齢+0.1255x(総ビリルビン-0.1534xPT%)
0000λ>0 劇症化  λ<0 非劇症化

肝不全の2大症状は出血傾向と解毒能低下による肝性脳症

劇症肝炎の原則
0000生体部分肝移植、血漿交換(PE)、血液濾過透析(HDF)

予備能力(重症度)の判定基準による治療法の選択
肝移植: Child-Paugh分類(C),脈管浸潤(-)、ミラノ基準内かつ65才以下なら適応
肝移植のミラノ基準(腫瘍径3cm以下、個数3個以下、あるいは単発5cm以下)
肝切除:  Child-Paugh分類(A or B)
緩和療法:  Child-Paugh分類(C)で65才以上
経皮的ラジオ波焼灼療法: 原則としてhild-Paugh分類(A or B),腹水(-)
経カテーテル的肝動脈塞栓術: 原則としてhild-Paugh分類(A or B),腹水(-)

生存可能月数
=18.4ー0.16xBil+ 0.035xchE+ 0.011x cholestー0.62xProthromb timeー0.80x(栄養状態)ー1.70x(腹水)ー3.76x(肝性脳症) 
栄養状態 腹水 肝性脳症(無し0, コントロー可能1、不能2)

肝疾患の輸液療法

  • 凝固因子の補充
    0000PT活性>40%を目標にFFP 4単位/日を投与する
  • 基本輸液
    0000フィジオゾール3号1500ml+ビタジェクト1V+ザンタック2A
  • 感染症
    0000広域スペクトラム スルペラゾン1g x2 /day
  • 肝庇護療法(G-I療法)
    00005%Glucose500ml+グルカゴン1mg+ヒューマリン10単位  一日1~2回200ml/hr
  • 肝性脳症
    0ラクツロースシロップ 30mlx3回/ 日 
    0000ラクツロースという人工的糖分を投与
    0000ラクツロースは血液中のアンモニアを減らす働きをします。
    0000ヒト消化管粘膜には、ラクツロースを分解する酵素が存在しないため、経口投
    0000与されたラクツロースは 消化・吸収されることなく、下部消化管に達し、
    0000ビフィズス菌,乳酸菌によって利用・分解され、有機酸(乳酸・酢酸)を産生
    0000します。
    0000この有機酸は腸管内pHの酸性化をもたらし、アンモニア産生菌の発育を抑制
    0000します。
    0000また、腸管内アンモニアの吸収も抑制します。

0000ラクツロースは、高アンモニアのための症状の改善のために投与されます。
0000「水様便が惹起された場合には投与量を減ずるか,又は投与を中止することと
0000添付文章には記載されています。

  • 栄養治療  
    0000非蛋白エネルギー 25 ~35kcal/kg/ 日
    0000アミノレバンEN1包x3回/ 日 (アミノ酸製剤の投与)
    0000このうち1回は眠前服用
  • 低アルブミン血症
    000025%アルブミン 100ml/日 点滴

原発性胆汁性肝硬変primary biliary cirrhosis(PBC)

PBCはほとんどの症例が40歳以上の中高年女性に好発し肝内胆管(末梢胆管)が進行性に破壊される原因不明の疾患。
通常、胆道系酵素、IgM高値や抗ミトコンドリア抗体陽性により診断可能である。
肝生検で典型的な中等大小葉胆管ないし隔壁胆管に慢性非化膿性胆管炎あるいは胆管消失を認めるる。グリソン鞘内および障害胆管周囲にリンパ球を主とする炎症細胞の浸潤があり、グリソン鞘は繊維化により拡大する。
PBCは自己免疫性疾患とも合併しうる。Sjogren症候群、関節リュウマチや慢性甲状腺炎(橋本病)もしばしば合併することがある。
治療はウルソ酸、フィブレート系薬剤の効果が報告されている。
予後予測は困難であるがgp210の持続陽性者は進行性で予後不良である。

胆管病変に始まり、胆管の消失により、慢性の胆汁うっ滞をもたらす。このため、胆汁酸や銅の排泄が障害されて肝細胞内に蓄積するため肝細胞障害を引き起こす。
また、胆汁の流出障害のため高ビリルビン血症となり、黄疸をみとめる。脂溶性ビタミン(vitamin A, D, E, K)の吸収障害によるビタミン欠乏症が起こることがある。
二次性胆汁性肝硬変は大きな肝外胆管の長期閉塞による。

Scheuerの病期分類
Ⅰ期(florid bile duct lesion):胆管上皮は腫大し、不整形となり、好酸性を増す。胆管腔も不整となり、基底膜の断列像、胆管の破壊像がみられる。胆管周囲にはリンパ球、形質細胞、好酸球の浸潤がみられる。
肉芽腫を認めることもある。
Ⅱ期(ductular proliferation):胆管は消失、胆管上皮の増生をみとめる。
Ⅲ期(scarring, septal fibrosis and bridging):門脈域からの線維の進展、piecemeal necrosisも認められるようになる。
Ⅳ期(cirrhosis)肝硬変

  • 原因
    遺伝的要因: 家族内集積例
    免疫学的機序: 細胞障害性T細胞
    抗ミトコンドリア抗体(AMA): ミトコンドリア抗原は、ミトコンドリア内膜に存在する酵素ファミリーよりなり、このうち主要なものはピルビン酸脱水素酵素複合体のE2 componentである。
    90%以上で検出され、他の肝疾患での陽性率は5%以下。
    血清IgMや補体の副経路を活性化する免疫複合体からなるクリオ蛋白が80~90%で陽性。
  • 検査
    胆道系酵素上昇 (ALPやγGTPなどの胆道系酵素活性値の上昇が著しい)
    細胆管病変→セルロプラスミン上昇→血清銅値上昇
    胆汁うっ滞→総コレステロール上昇
    赤沈亢進
    トランスアミナーゼ軽度増加: 異常高値は自己免疫性肝炎の合併を考慮
    抗ミトコンドリア抗体: 90%以上で陽性 (このうちM2分画はピルビン酸脱水素酵素に対する抗体で、PBCに特異的)
    抗核抗体、抗平滑筋抗体: 30~50%で陽性
    γ-グロブリン上昇(IgM高値
    ERCP: 肝内胆管に拡張はみられない。
    確定診断には肝生検が必要。
  • 予後
    約2/3が無症候性原発性胆汁性肝硬変で、予後は比較的良好。
    黄疸を呈する症候性原発性胆汁性肝硬変の予後は不良。
    総ビリルビン2.0mg/dLをこえると進行は加速し、多くは数年以内で肝不全の徴候が出現。
    死因は肝不全、消化管出血が多い。
  • 治療
    ウルソデオキシコール酸(UDCA) 600mg/日
    皮膚掻痒感にコレスチラミン
    胆汁うっ滞に脂溶性ビタミン
    コルヒチン
    ステロイド、免疫抑制薬は適切な比較対照試験で効果が確認されていない。
    肝移植: 移植後も多くの患者で抗ミトコンドリア抗体陽性。

原発性硬化性胆管炎: Primary sclerosing cholangitis(PSC)

PSCは肝内および肝外胆管の硬化性変化、線維化を伴う慢性炎症性疾患。
ERCで胆管の不整な狭窄と拡張を認める(beaded appearance)。
組織学的には門脈域に線維化と細胆管の増生、胆管周囲にも線維化を認める。
潰瘍性大腸炎と合併することがある。

Schwartzの診断基準:
   ①肝外胆管のび漫性炎症性肥厚、②胆道手術の既往が無いこと、
00000③胆石が無いこと、④胆管癌が否定されることの4項目を挙げた。

PSC の特異的なマーカーは見つかっていない。中年の男性に好発し総胆管や太い肝内胆管に病変の首座があり、MRCPやERCPなどの画像診断を行う。組織学的には慢性非化膿性破壊性胆管炎を認める。

自己免疫性肝炎の国際診断基準

検査項目 点数
1. 性 女性 +2
2. ALP/ALT(ALP値をその基準上限値で除した値をX1、ALT値をその基準上限値で除した値をX2 とした場合、X1/X2が ALP/ALTにな)
000000 <1.5 +2   1.5 - 3.0  0   >3.0 -2
3. 血清グロブリンあるいはIgG;基準上限値との比
000000 >2.0 +3  1.5 - 2.0 +2  1.0 - 1.5 +1 <1.0  0
4. ANA(抗核抗体), SMA(抗平滑筋抗体)あるいはLKM-1の力価
000000  >1:80  +3  1:80 +2  1:40 +1  <1:40  0
5. AMA(抗ミトコンドリア抗体) 陽性 -4
6. ウイルスマーカー (A, B, C型肝炎ウィルス (EB, CMV etc)) 陽性 -3 陰性 +3
7. 最近の肝障害を起こしうる薬剤の服薬歴あるいは血液製剤の非経口的投与
0000000 あり -4    なし +1
8. アルコール(1日平均エタノール摂取量)
0000000 <25g +2    >60g -2
9. 病理組織 Interface hepatitis +3
000000000 著しい形質細胞浸潤   +1
000000000 肝細胞のロゼット様配列 +1
000000000 上記所見なし  -5
000000000 胆管病変  -3
00 自己免疫性肝炎とは異なる病因を示唆する所見(肉芽腫、
00 鉄沈着、銅沈着など)         -3
10. 患者あるいは一親等での他の自己免疫疾患の合併 +2
11. 付加的検査項目(ANA, SMA, LKM1がいずれも陰性の者に適応する)
00・他の自己抗体 (p-ANCA, SLA, ASGPR, LCI, LP, anti-sulfatide) 陽性
0000 * ASGPR : asialoglycoprtein-receptor LCI : liver-cytosolic antigen +2
00・HLA-DR3あるいはDR4陽性 +1
00・治療に対する反応 完全緩解 +2
000000000000000000 再燃 +3
総合点による評価 確定診断(definite AIH) 治療前 : >15
                    治療後 : >17
疑診(probable AIH)  治療前 : 10 - 15 治療後 : 12 - 17

AIH
中年以降の女性に好発し、早期に肝硬変への進展傾向を示す慢性活動性肝炎である。
持続性または反復性の血清トランスアミナーゼ値の異常.(高値)
血清タンパク分画・・・・γ-グロブリン分画の高値(2g/dl以上)
血清免疫グロブリン・・・IgGにお増加(2g/dl以上)
血中自己抗体(特に抗核抗体,抗平滑筋抗体など)が陽性.
00000抗核抗体・・・陽性 抗平滑筋抗体・・・・しばしば陽性
抗LKM-1抗体・・・・ときに陽性
ウイルスマーカー・・・:原則陰性
肝生検・・・piecemeal necrosis(限界板の破壊).1979年犬山分類では、piecemeal necrosisが著明。
組織学的には肝細胞壊死所見およびpiecemeal necrosisを伴う慢性肝炎あるいは肝硬変であり,しばしば著明な形質細胞浸潤を認める.
特に急性肝炎像を呈する.
AIHはⅠ型からⅣ型まであり、わが国ではⅡ、ⅢとⅣ型はきわめて稀である。
Ⅰ型では全身性エリテマトーデス(SLE)様の症状とLE細胞現象などの検査成績がみられることがあり、LE細胞現象陽性の症例にかぎってルポイド肝炎と呼んでいる。

自己免疫性胆管炎

臨床的にはPBCの像を呈しながらAMAは陰性で抗核抗体が高力価を呈する病態に対し自己免疫性胆管炎の名称が提唱された。基本的にはPBCであると考えられている。
病因
慢性甲状腺炎、シェーグレン症候群等の自己免疫性疾患や膠原病を合併しやすいことから、病態形成には自己免疫学的機序が考えられている。
症状
 (1)胆汁うっ滞に基づく症状、(2)肝障害・肝硬変および随伴する病態に伴う症状、
 (3)合併した他の自己免疫疾患に伴う症状、の3つのカテゴリーに分けて考えることができる。
 病初期は長期間無症状であるが、中期・後期になると本疾患に特徴的である胆汁うっ滞に
 基づく皮膚そう痒感が出現してくる。
 無症候性PBCでは合併した自己免疫性疾患の病態・症状が表面に出ていることも多い。
(1)胆道系酵素(ALP、 γ-GTP)優位の肝機能異常を呈する慢性の胆汁うっ滞性疾患である。 
(2)原則としてウイルスマーカーが陰性、かつ原因となるような薬剤の服用もない。
(3)画像等により閉塞性黄疸など他の疾患が除外されている
(4)血清中にAMA(蛍光抗体法、ELISA法)が陽性である。
以上の所見が揃えばほぼPBCと診断できる
肝組織においてCNSDC(慢性非化膿性破壊性胆管炎Chronic non-suppurative destructive cholangitis)および肉芽腫など特徴的所見が認められれば、診断は確実である。

ウルソデオキシコール酸(UDCA)は現在第1選択薬とされており、初期から投与される。
1日量で通常600mg、効果が少なければ900mgまで増量できる。90%の症例では胆道系酵素の低下がみられるが、進行した症例では効果が期待できない。我が国では、最近はUDCAとともに、高脂血症薬のひとつであるベザフィブラートも有効とされている。作用機序はUDCAと異なるためUDCAとの併用が勧められるが、本症に対しての保険適応はなされていない。

PBC- AIHオーバーラップ症候群 PBC-AIH overlap syndrome

PBCとAIHの両方の病像と検査所見を呈する病態はPBC-AIHオーバーラップ症候群と呼ばれている。
病理学的には、PBCに特徴的な肝組織所見に加え、活動性の肝炎像がみられる。
臨床的には、AMA陽性でありながらAST、ALTが高値を呈し、急性肝炎様の病態を呈し、治療によりトランスアミナーゼ値の改善がみられた後は胆道系酵素優位の上昇を呈する。
PBCとAIHの病態が同時にみられる症例とともに、PBCの経過中にAIHの病像を呈する、あるいはAIHの経過中にPBCの病態が生じるという異時性のものがみられる。
本病態がPBCの亜型であるのか、それぞれ独立した疾患であるのか、結論は得られていない。
PBC-AIHオーバーラップ症候群で肝炎の病態が強い場合や、自己免疫性胆管炎(AIC)の初期には副腎皮質ホルモンが併用される。

特発性細菌性腹膜炎spontaneous bacterial peritonitis

類洞壁細胞にあるkupper細胞は肝硬変で機能や数が低下し感染を起こしやすい。
腹水を伴う非代償性肝硬変症の約8~10%に合併する肝硬変症の予後を左右する重篤な合併症である。
腹水中の多核白血球の数が250/㎜3 以上あれば、SBP の疑いが濃厚になる。
500/㎜3 以上あれば、培養の結果が陰性でも、SBP と診断される。
SBP が疑われる患者で腹水には菌は証明されず、流血中に菌が証明される例が少なくない。
腹水の乳酸値が33㎎/㎗以上、pH7.31以下も参考になる。
セファロスポリン系抗生物質が有効で、85%の感染消失率であるが
セファロスポリン系抗生物質を2週間続けて無効な場合には、他の抗生物質に代えてみる。 
⑴ 低タンパク質濃度の腹水に対して利尿剤を投与してタンパク質濃度を上げる。norfloxacin_も予防効果がある。
⑵ 消化管出血をきたした患者には非吸収性の抗生物質(ゲンタマイシン、バンコマイシン、ニスタチンの併用、またはネオマイシン、コリスチン、ニスタチンの併用)が推奨される。

肝腎症候群の診断基準

1. 重症肝疾患を有し,腎毒性物質の使用もなく,数日ないし数週間のうちに進行する
000腎不全である.
000糸球体濾過率の低下(血清Cr>1.5mg/dlまたは24時間CCr<40ml/min)
2. ショック・細菌感染・体液喪失・腎毒性薬剤の投与がない
3. 蛋白尿が<500mg/dayで エコー上閉塞性の尿路病変や実質性腎疾患がない
4. 利尿薬の中止と1.5literの血漿増補液輸液による血漿増容によっても持続的な腎機能の
000改善(血清Cr≦1.5mg/dlまたは24時間CCr≧40ml/min)がない
5. 上記診断基準に加えて下記の特徴的所見を有する.
0000 尿量<500ml/day
0000 尿Na濃度<10mEq/L
0000 尿浸透圧>血漿浸透圧
0000 尿沈渣(赤血球)<50/hpf
0000 血清Na濃度<130mEq/L

参考文献
1)JSHコンセンサス2007年版アルゴリズム(日本肝臓学会編:肝癌診療マニュアル).医学書院、東京.2007
2)小川聡(総集編):改訂第7版内科学書:肝・胆道・膵疾患(井廻道夫編集)
中山書店、東京、2009
3)杉本恒明、矢崎義雄(総集編):第9版内科学.朝倉書店、東京、2007

powered by Quick Homepage Maker 4.81
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional