原発性アルドステロン症

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副腎皮質の分化
副腎皮質は胎齡5週頃に中胚葉から発生する。原基は胎児層が形成され、2ケ月頃に将来髄質へと分化していく。胎生期副腎は、成人副腎皮質に分化していく。
胎児層は胎齢6カ月頃から急速に増大し、皮質の80%を占め、出産後、急速に退縮し恒久層が残る。
恒久層は球状層、束状層、網状層へと分化する。球状層、網状層は老化とともに萎縮と線維化が進む。
球状層はアルドステロン合成を行うP450aldが発現しているのでミネラルコルチコイドのみを分泌する。
束状層、網状層はコルチゾールやアンドロゲンの合成に必要なP450c17が発現しているので束状層はコルチゾールを分泌し、網状層はコルチゾールとアンドロゲンを分泌する。右副腎は下大静脈に、左副腎は左腎静脈に流入する。
球状層機能はレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系が主要調節系であり、束状層機能はCRH-ACTH-cortisol系により調節されている。
ミネラルコルチコイドの生理作用
ミネラルコルチコイドの基本的作用はミネラルコルチコイド受容体を介してNaを再吸収し、K排泄を促進することである。
ミネラルコルチコイド過剰によりあるレベル以上になるとNa、水の出納が平衡状態になりNaの再吸収とNa貯留は見られなくなる(escape phenom)。
ミネラルコルチコイド過剰では高血圧、低K血症、代謝性アルカローシスをきたす。

原発性アルドステロン症

はじまり
ミネラルコルチコイドであるアルドステロンは1954年英国のSimpsonとTaitにより単離精製された。
アルドステロンは副腎皮質の最外層の球状層で合成され血液に分泌されるが主にRenin-Angiotensin系の最終産物であるアンジオテンシンIIの支配下にあるが下垂体からのACTHや血清Kなどによっても分泌は調節される。
アルドステロンは主に腎臓や腸の上皮細胞に作用してNaや水を再吸収しKを排泄する。遠位尿細管細胞ではミネラルコルチコイド受容体(type1) に作用し、Naの再吸収を亢進させ、循環血液量が増加する。体液量が一定のレベルに達するとANPの増加によってNaの再吸収が抑制されNa貯留が減弱する。
これに伴いKと水素イオンの排出が促進され低K血症と代謝性アルカローシスをきたす。

アルドステロンが過剰になるとこのプロセスが増強しNaや水の増加により循環血漿量が増加し血圧上昇や低K血症を来し腎臓などの臓器障害を進展させることになる。
アルドステロンは心血管系に存在するミネラルコルチコイド受容体に直接的に作用し、心臓の肥大、線維化、血管内皮障害と炎症、血管平滑筋細胞のアポトーシスなどを促進し臓器障害、動脈硬化を進展する。
米国のConn JWにより1955年に低K血症を合併する高血圧が特徴であるPrimary Aldosteronismが報告された。
(Connの3徴候)
①アルドステロンの過剰分泌
②血漿レニン活性の抑制
③尿中17OHCSと17KS排泄量が正常範囲
R-A-A系は血圧・循環血漿量の代表的な調節系である。

循環血漿量の減少や血圧低下により腎潅流圧が低下すると腎糸球体の輸入細動脈壁にある傍糸球体細胞がそれを感知しレニンを分泌が増加する。
レニンがアンジオテンシノーゲンを分解して生物作用のないアンジオテンシンIを産生し、ついで、ACEの作用により、強力な血管平滑筋収縮作用と副腎からのアルドステロン分泌作用を有するアンジオテンシンIIが作られる。
その結果、血圧の上昇、循環血漿量増加が生じ、腎潅流圧の増加によりレニン分泌は元に回復する。
正常では循環血漿量の減少や血圧低下によりレニンが増えるが
Primary Aldosteronismでは副腎腫瘍からアルドステロンが自律性に増加するため持続的にNa・水貯留、循環血漿量の増加、血圧上昇が生じレニンは抑制される

頻度
PAは高血圧患者の5%以上を占める。
日本においてPAの原因疾患で最も多いのはAPA(アルドステロン産生腺腫)であり、PAの75%を占める。APAの半数近くが数mm程度のマイクロアデノーマであるとされる。
両側副腎皮質過形成によるIHA(特発性アルドステロン症)はPAの20%を占める。腺腫の大きさは通常6g以下、径3cm以下が多い。
腺腫は黄金色を呈しP450酵素活性が上昇しているが周囲組織の酵素活性は低下している。過形成では周囲組織の活性は上昇している。
高血圧症と診断される患者の6%程度にミクロアデノーマが見つかる。
アルドステロン産生腺腫(APA)の頻度が最も多く(80~90%)、過形成の見られる特発性アルドステロン症(IHA)、束状帯からアルドスロンが過剰に分泌されるグルココルチコイド反応性アルドステロン症(GRA)もある。
GRAは副腎に明らかな形態的異常がなく常染色体優性遺伝を示し若年発症の家族性高血圧を特徴とする。アルドステロン産生能を持つキメラ遺伝子が束状帯細胞に発現しグルココルチコイド反応性アルドステロン症を発症させACTH調節下にアルドスロン産生が起こる。
少量のデキサメサゾン連続投与によりアルドステロン症の症候がすべて正常化する。

Stage2 (JNCVI)179~160/109~100以上の高血圧では頻度が急増する。
低K血症の合併頻度は1990年以降約25%で正常K血症でもPrimary Aldosteronismは否定はできない。
Primary Aldosteronismでは経過中血清Kは変動する。
血清Kの上昇に影響する因子は①溶血00②採血が困難で手の収縮・進展で筋肉からK遊出③著明な減塩は腎からのK排泄が減少④臥位から立位への姿勢変換などにより影響を受ける。

心血管系の合併症
Primary Aldosteronismは早期診断と治療が大切で高血圧の診療では常に考慮すべきである。
多くの場合、一側性の腺腫が原因で、手術により低K血症、高血圧は正常化し治癒可能である。罹病期間が長い場合や血管リモデリングが進んだ例では血圧の正常化率が低くなる。高血圧の治療抵抗性例ではPrimary Aldosteronismの可能性が高いので積極的なスクリーニングが必要である。
Primary Aldosteronismは低レニンであるにもかかわらず、心肥大、脳梗塞、大動脈疾患などの臓器障害の合併を認め、特に、心肥大の合併頻度が高く、心重量の増加があり壁肥厚のある求心性心肥大の割合が多い。

Primary Aldosteronismの診断手順
本態性高血圧症と原発性アルドステロン症の鑑別をした後、アルドステロン産生腺種と特発性アルドステロン症の鑑別には入院の上、内分泌負荷検査が必要となるが、最終的には副腎静脈サンプリングによる。
アルドステロン産生腺種のアルドステロン分泌はACTH依存性であり、特発性アルドステロン症ではレニン-アンジオテンシン系への依存性を残している。
おおむね、レニン活性が1.0ng/ml/時以下でかつアルドステロン濃度が100pg/ml以上であれば疑う。食塩制限を行っても血漿レニン活性は通常2ng/ml/時を超えて上昇することはない。
また、尿中アルドステロン排泄量は健常者では6μg程度であるが10μg以上あれば原発性アルドステロン症は確実である。

  • PAは高血圧、低レニン-高アルドステロン血症、低K血症、代謝性アルカローシスを呈するのが特徴である。低K血症による夜間多尿、筋力低下、周期性四肢麻痺、耐糖能悪化をきたすことがある。
    PAで明らかな低K血症を来す例は半数以下である。
  • 血清K値が正常で、血圧上昇も顕著でない軽症例が多数存在しているので全ての高血圧患者においてPAを疑い、血漿レニン活性(PRA)、血漿アルドステロン濃度(PAC)を測定することが望ましい。
    アルドステロン/レニン比(ARR: PAC/PRA比)をスクリーニング検査に用いARR300~500(PACの単位pg/ml)以上のときにPAを疑う。
  • PAの確定診断には、経口食塩負荷試験、迅速ACTH負荷試験、生食負荷試験、フロセミド立位負荷試験などが用いられる。
  • CTなどの画像診断と副腎静脈サンプリング(AVS)の結果から片側性か両側性かを判別する。
    本症の原因となるAPA(アルドステロン産生腺腫)にはマイクロアデノーマが多いためAVSは患側決定のゴールドスタンダードである。
    APAはACTH負荷によるアルドステロンの分泌増加が強いのでACTH負荷後にAVSを行うと過剰分泌の判定がより正確になる。

00000000000000対象   高血圧患者
50歳以下、収縮期血圧>160、拡張期血圧>100、K<3.5、降圧薬2~3剤
40歳以下で標的臓器障害、副腎腫瘍あり
00000000000000000000000
0000000000000ARR(Aldosterone to Renin Ratio)>200
00000000PAC(アルドステロン)pg/ml / PRA(レニン)ng/ml
0000000000000000特にPAC>150pg/ml
降圧薬服用開始前で早朝(AM8~9)空腹時、30分以上の安静臥床後での採血が望ましい。  

ARRが偽陽性になるのは65歳以上(低レニン)、腎機能障害(機序不明)、βブロッカー、αメチルドパ

局在診断
[1]副腎CT 少なくとも3mmスライス、造影前後での実施が必要。
腺腫(アルドステロン産生腺腫)か過形成(特発性アルドステロン症)かは画像診断できない。
[2]沃素アドステロール副腎シンチ(機能と局在を評価可)
非腫瘍側の取り込みを抑制する目的でデキサメサゾン前処置を行う。
[3]副腎静脈サンプリング

機能確認検査
1) カプトプリル負荷試験
000カプトプリルを投与し、血圧やPAC、PRAを測定する。
000正常ではPRAの上昇が見られるが、本症ではPRAは抑制されたままとなる。
2)フロセミド立位負荷試験
フロセミド40mgを1回静注し2時間の立位をとらせる。
0、60、120分後にPRAとPACを測定する。
正常ではPRAは前値の2倍以上、かつ2ng/ml/時以上となる。PRAの頂値が1.0mg/ml時以下であれば原発性アルドステロン症が強く疑われる。
3)生理食塩水負荷試験

参考
0000000   1日分泌量   血中濃度     1日尿中排泄量

アルドステロン 50~250μg 安静臥位30~160pg/ml 1~10μg

Primary Aldosteronismの治療
高血圧、低K血症、過剰アルドステロン作用の阻害に対する治療が三本柱でアルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン、エプレレノン)とCa拮抗薬の併用が多い。
診断確定前はホルモン測定値への影響を避けるためアルドステロン拮抗薬は避ける。
RAA系への影響が少ないCa拮抗薬、αブロッカー、などで降圧する。これで不良なら適宜ARB、さらにアルドステロン拮抗薬を併用する。

Primary Aldosteronismは小腫瘍が多く、約50%はCTで腫瘍の確認困難であり、アルドステロン産生腫瘍の1/5がCTで腫瘍が見つからないとの理由で治療可能な手術が実施されなかったり1/4が病変とは反対側が手術される可能性がある。
局在診断は可能だがホルモン産生能は評価不可能である。

続発性アルドステロン症

PAは副腎皮質からアルドステロンの自律性分泌増加を原因としているのに対し、続発性は体液量の減少に伴いレニン-アンジオテンシン系が活性化されて皮質からアルドステロンの分泌増加が起こる。
アルドステロンの生理的分泌刺激因子として、アンジオテンシンII、ACTH、血清Kなどがあり、分泌抑制因子としてドパミン、ANP、セロトニンがあげられる。
続発性アルドステロン症の殆はレニン-アンジオテンシン系の亢進による。傍糸球体装置からのレニン分泌は、腎潅流圧低下、交感神経活動亢進、Na喪失ににより亢進する。
循環血液量減少、Na喪失に伴うレニンアンジオテンシン系の亢進は、レニンアンジオテンシン系の代償的増加によって生体の恒常性を保つための反応であり血圧は上昇しない。
レニン分泌はβ交換神経刺激により分泌が亢進する。心不全では交換神経活性が高く、血症レニン活性、アルドステロン濃度が高値となっており高いアルドステロンが心臓に直接作用し心筋の線維化を進め、体液貯留効果と相まって心不全を悪化させている。
続発性アルドステロン症の多くは原疾患のレニンアンジオテンシン系の代償作用の結果であり原疾患の診断が優先する。
各種利尿薬、エストロゲン製剤、過度の食塩制限などはレニン分泌を亢進させる。

参考文献
1)成瀬光栄・田辺晶代編著:原発性アルドステロン症診療マニュアル、診断と治療社2008
2)Kaplan NM:Primary aldosteronism.In:Clinical Hypertension,6th ed,pp389-408,William & Wilkins,Baltimore,1994
3)Dluhy RG,Williams GH:Endocrine hypertention.In:Williams Textbook of Endocrinology,9th ed,pp739-749,WB Saunders,Philadilphia,1998.

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