周術期の管理

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周術期の血糖管理

手術侵襲とインスリン抵抗性

[血糖コントロールの悪い例】
空腹時血糖200以上、食後血糖300以上、尿ケトン体陽性のいずれかの場合には、手術延期が勧められる。
[インスリン持続静脈内投与の適応]
糖尿病昏睡、ケトアシドーシス、非ケトン性高浸透圧性昏睡、高カロリー輸液時高血糖、重症感染症、外傷、術後の著しい高血糖

周術期における血糖管理の原則
局所麻酔または腰椎麻酔         全身麻酔
血糖コントロール 良好         血糖コントロール不良

HbA1c<7.0~7.5%           HbA1c<7.5~8.0%

    ↓                   ↓
SU薬を手術の前日に中止        SU薬をインスリンに変更
HbA1c<6.0またはFBS<100と     速効型、中間型の頻回注射
安定した状態であれば               ↓
前前日に中止              なるべく午前中の早い時間に手術
    ↓                    ↓
なるべく午前中の早い時間に手術      午前中の早い時間に手術
朝食中止、経口薬は服用しないで      朝食中止、インスリン皮下注もせず
5%Glucose濃度以下の維持輸液     GIK療法で血糖管理し2時間ごとに血糖チェック
を使用2時間ごとに血糖チェック    
    ↓                     ↓
4~8時間ごとに血糖チェック       2~4時間ごとに血糖チェック
食事の開始時に経口薬開始        血糖が安定した時点でインスリン
                    混合製剤に変更または経口薬開始

周術期の血糖管理については、
経口薬のみで血糖コントロールが安定している場合は経口薬を中止し、術中の血糖値が200を超えた時点でGIK療法を開始する。
インスリン治療中の場合は術前2~3日前から速効型インスリンと中間型インスリンの頻回注射に変更し、術当日の朝からGIK療法を行ってもよい。

[I]術前管理

原則1週間~3日前入院しインスリン治療の継続または導入
1)既にインスリン投与中の患者
インスリン量の調節もしくは強化療法を継続ないし導入
原則としてグルコースの点滴静注とともに、速効性インスリンの静脈投与を行う。
初期投与量の例としては
①手術前夜より5%ブドウ糖溶液を50ml/時で開始。
②インスリンを、[血糖値(mg/dl)/150] units/ hrで投与する。
③血糖値が100~200mg/dlになるようインスリン投与量を調節する。
大量の中間型インスリンを注射している患者で、侵襲が著しく大きい手術でない場合は、 術前に普段の早朝インスリン注射量の半分程度を皮下注し、血糖を見ながら 速効性インスン の投与を行う。
2)食事療法・運動療法のみの患者血糖コントロール目標を満たさない場合は術前よりインスリン治療に切り替える。
初期投与例
①手術前夜より5%Gを50ml/hrで開始
②インスリンを[血糖値mg/150]u/hrで投与する。
③血糖値100~200mg/dlとなるようインスリン投与量を調整する。
※入院による食生活の改善や内服・注射コンプライアンスの向上に伴い急速に血糖が改善することもあるので注意が必要
3) 経口血糖降下薬を内服中の患者
確実に食事の摂取が出来るようになるまでは内服薬の中止
● ビグアナイド系薬剤(1週間前、遅くても3日前には中止)
メトフォルミン(メトグルコ、メデット)は乳酸アシドーシスから腎不全を起こすことがあり
Crea♂1.5♀1.4以上の時は禁忌である。
肝障害、腎障害、心障害の既往がある患者には使用をさける。
造影剤使用時、手術前、心不全や低酸素血症などでは禁忌である。
●スルホニル尿素薬( 効果が数日間持続することがある)
4)高カロリー輸液を開始する場合は慣らし期間が7日前後必要で、期間が短いと高浸透圧性乳酸アシドーシス性昏睡に移行することがある。

参考
① 一般的に基礎インスリンが適正化どうかを知る方法
就寝前と朝食前の血糖値を比較することであり、夕食から就寝まで4時間以上たって、夕食前の追加インスリンの効果により血糖が低下しきっている場合には、就寝前と翌朝の血糖値がほぼ同様であれば基礎インスリンは適量と考えられる。
過不足がはっきりしない時には絶食試験をすると良い。
すなわち、朝は平常通りインスリン注射をして食事をし、昼食前の追加インスリンをしないで昼食を抜いて1時間ごとに血糖を測定する検査法である。
血糖が上昇していくようなら基礎インスリンは不足しているので増量が必要でありほとんど変化がないかやや低下するならば適量であり、低下の幅が大きすぎるときは過剰と判断できる。
インスリンは血糖を正常に維持するための薬である。
  
IVHや経管栄養を中止する場合インスリン量を50%落とし最初の4時間は1時間毎にチェックする。
糖尿病既往のない高血糖は既往のある高血糖より予後が悪く死亡率が高い。
周術期高血糖は糖尿病があろうがなかろうと治療したほうが結果は良い。
ただし、厳格にコントロールしすぎると有害(低血糖)であった。

[II] 術中管理

GIK療法の簡便法
K含有維持輸液製剤(ST3など)500ml+20%glucose40ml+ヒューマリンR7~15単位 (ST3はGlucose21g含有)       111111111111
50~100ml/時間で滴下し1~2時間毎の血糖チェック
1111↓                 ↓
血糖値100mg/dl以下     血糖値200~250mg/dl以上
1111↓                 ↓
輸液速度を1/2として      輸液速度を2倍として
30分毎の血糖チェック     2~4時間毎の血糖チェック
  
解説
ST3 500mlに20%glucose40mlと速効型インスリン15単位を加え良く混和し、50ml/時間で滴下し1時間ごとに血糖をチェックしつつ以下のように輸液速度を調整します。

  • 血糖値が70以下であればインスリンの注入を30分間中断し、
  • 血糖値が100mg/dl以上であることを確認して30ml/時間で再開します。
  • また、70~100以下であれば輸液速度を1/2として30分後に血糖値をェックし、血糖値を100~200の範囲に維持するようにします。
  • 血糖値が200~250以上であれば輸液速度を2倍とします。
    術後は食事が開始されるまではGIK療法によるインスリンの持続点滴を継続します。
    血糖のチェックは2~4時間ごとに行います。
    1 mEq/L = 1 mmol/L = 23 mg/L

GIK(Glucose-Potassium-Insulin)療法

  • 10%グルコース液500ml+速効型インスリン12~15単位+KCL10mEq/L

    100ml/時間で滴下し血糖を108~198mg/dlに維持する
  • ②血糖が198以上の場合は新たに輸液バッグを作成し
    10%グルコース液500ml+速効型インスリン20単位+KCL10mEq/L
  • ③血糖が108以下の場合は新たに輸液バッグを作成し
    10%グルコース液500ml+速効型インスリン10単位+KCL10mEq/L
    として滴下する。

参考

  • ''周術期のインスリン持続静注法プロトコール''

持続静注用インスリン溶液は生食250ml+レギュラーインスリン25単位(濃度0.1u/ml)
輸液総量に制限のある場合は生食100ml+レギュラーインスリン100単位(濃度1u/ml)

直前の血糖値   処方1   処方2    処方3

70以下  50%ブドウ糖50mlを投与、インスリンを中止、15分後に
血糖値を再検、70未満ならプロトコールを中止、70以上であれば
インスリン投与を再開する

70~100     0.1u/hr    0.8u/hr     1u/hr
101~120    0.5      1.0      1.5
121~150    1.0      1.5      3.0
151~200    1.5      2.5      4.0
201~250    2.0      4.0      6.0
251~300    3.0      5.0      8.0
301~350    4.0      6.0      10.0 
351~400    5.0      8.0      12.0
401以上  レギュラーインスリン10uを単回投与後、12u/hr  で持続投与。
血糖値は手術1時間前から測定し少なくとも1時間ごとに測定する。

① 患者の血糖値が2時間にわたり(連続2回の測定)で200を超えて上昇傾向にあるときは1段階上の高用量処方に変更する。

② 血糖値が2時間にわたり(連続2回の測定で)70~100の範囲であれば1段階下の低用量の処方に変更する

③ 処方3にしても2時間にわたり(連続2回の測定で)200以上の血糖値が持続する場合は血糖値が200未満に維持するように必要に応じて投与速度を調整する。

1)術前の1日インスリン投与量30単位未満の例、あるいは、経口血糖降下薬のみの治療でHbA1c 7未満(術前の安静時血糖が150未満)の例は処方1から始める。

2) 術前の1日インスリン投与量30単位以上の例、あるいは、経口血糖降下薬のみの治療でHbA1c 7以上(術前の安静時血糖が150以上)の例は処方2から始める。

3)以上の2つの処方で管理できない例すなわち処方2を用いても連続
2回以上血糖値が200を超える場合にのみ処方3を用いる。

註;血糖測定の間隔は目標値に達するまで最初の4時間は1時間、次の4時間は2時間毎、 安定したら4時間毎でよい。4時間目標値にあればインスリン量は調節しなくてよい。

術中輸液に糖は必要か?
術中の糖の投与は血糖値を上昇させているだけでなく一部は利用され、タンパクの異化を防いでいると考えられており、術中の糖の投与量としては0.4g/kg/hrを超えない糖負荷が上限といわれ、実際は0.1~0.2g/kg/hrがさほど血糖値も上がらず、投与量と消費量がつりあう程度と推察される。

[III] 術後管理(集中治療)

術後の管理:少なくとも100g以上の糖質を補いつつ、スライディングスケール法でコントロールしていく。
手術的ストレスは術後2~3日で 軽減し1週間後にはおさまる。
麻酔中は血糖値は150~250に保って良い。
集中治療室の患者に強化インスリン療法を適用し、血糖値を80~110mg/dlの範囲を目標にする。 
点滴はケトーシス予防のため5%G100~200ml/hrをベースに入れる。
それに応じて必要なインスリン量は下がってくる。
術後1~3病日の輸液管理はグルコース150~200g/day、第4日以降は漸増し1日30~40kcal/kg標準体重で維持量とする。

術後の厳格(80~110)なコントロールは180~200を目標群とをICU患者を対象に比較したところ、ICU滞在中死亡率を32%低下させたという報告がある。
これら厳格なコントロールによる成果は、術前の糖尿病病歴の有無に関係なく認められた。しかし、厳格なコントロールは、低血糖のリスクも高いことに注意

まとめ
周術期の血糖を管理することにより術後感染に代表される合併症の発生率を低下させることができる。
血糖を厳格にコントロールすればするほど低血糖の危険性も高く
なるため、術後の全身状態などを総合的に判断してコントロール
目標を設定することが大切である。 

集中治療患者:ADAとACE(American College of Endocrinology)の推奨
血糖値を140~180mg/dLにコントロールする.
外科ICU患者では,80~110mg/dLにした方が予後がよいという報告もある(NEJM 2001)が,内科ICU患者では予後は変わらず低血糖が多かったという報告(NEJM 2006)があるので厳しいコントロールにはしない方が良い.

経口血糖降下薬,インスリン皮下注は中止し,微量輸液による持続インスリン(0.5~1単位/ml の濃度で調整)の使用が必要.

2型糖尿病のインスリンの適応
[A] 絶対的適応

ケトアシドーシス(ペットボトル症候群)
高血糖高浸透圧性昏睡
侵襲の大きい手術や外傷後
妊娠中
肝機能障害(非代償期)
腎機能障害(腎不全期)

[B] 相対的適応

内因性インスリン分泌能の低下(尿中CPR排泄量30μg/day以下)
1型糖尿病が疑われる
経口糖尿病薬二次無効
ステロイド糖尿病
副作用のため経口糖尿病薬が使えない
高カロリー輸液中 

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