呼吸不全

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動脈血pHとFiO2

動脈血ガスを取ったときに、まずpHを見ます。
O2は、SpO2で、pHは動脈血ガスでなくては分かりません。
pHの正常範囲は、7.350~7.450、つまり、7.400±0.050です。
ものすごーく狭い範囲に入っています。
pHが低いということは、血液が酸性であり,これをアシデミアといい、アシデミアに向かっている状態をアシドーシスといいます。
逆に、pHが高いということは、血液がアルカリ性であり、アルカレミアといい、アルカレミアに向かっている状態を、アルカローシスといいます。

pHに大きく影響するのは、主に肺と腎臓です。
肺はCO2(酸性物質)の量を変え、腎臓はHCO3-(アルカリ性物質)の値を変えることでpHに影響します。

吸入気酸素濃度(FiO2)とは、吸気に含まれる酸素の濃度です。
体重60kgの健康な人は、FiO2=21%(室内気)の空気を、1分間に
600ml/回×12~15回=7200~9000(ml)換気することで、動脈血ガスをおおよそ次のように保っています。

動脈血ガスの正常値(正常範囲)
pH=7.350~7.450
PaCO2(動脈血ガス二酸化炭素分圧)=35~45mmHg
PaO2(動脈血ガス酸素分圧)=80~100mmHg
HCO3-(重炭酸イオン)=22~26mEq/L

PaO2の正常値(臥位) ≒107.4-0.43×年齢 (torr=mmHg)
この正常値は60歳までで、 それ以上の年齢では、1年歳をとる毎に1Torrずつ下がっていく。
PaO2≒100-0.4x年齢

参考
動脈血の酸素飽和度をSaO2と呼び、パルスオキシメータで求めた酸素飽和度(ヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンの割合)をSpO2 (pは、percutaneous)と表記し、動脈血ガスで求めたPaO2と区別している。
ここで大事なのは、PaO2=60mmHgに相当するSpO2=90%です。
PaO2 torr 97  80  60  55  40
SpO2 %  98  95  90  88  75

アシドーシスとアルカローシス

アシドーシスは、pHが低くなっていく状態で,肺が原因で起こるものを呼吸性アシドーシスといい、CO2の値が増加することで、pHが低下します。
また、腎臓が原因で起こるアシドーシスのことを代謝性アシドーシスといいHCO3-の値が減少することで、pHが低下します。
アシドーシスになると、pHを正常に保つため、肺なり腎臓なりの問題のない方の臓器で、アルカリ側に持って行くような機構が働き代償します。
例えば、CO2が貯まった結果、呼吸性アシドーシスになりますと、腎臓はHCO3-を増加させることで、血液pHを正常に戻そうとします。これを腎臓による代償とします。
アルカローシスはその反対。

肺が原因で起こるアルカローシスのことを呼吸性アルカローシスといいCO2(酸性物質)の値が減少することで、pHが上昇します。
また、腎臓が原因で起こるアルカローシスのことを代謝性アルカローシスといいますが、これはHCO3-(アルカリ性物質)の値が増加することで、pHが上昇します。

●呼吸様式(呼吸の深さ、呼吸数)でFiO2が変化する
特に鼻腔は、元々人間が持っているリザーバーですので、解剖学的リザーバーと呼んでいます。
患者さんの呼吸様式(呼吸の深さ、呼吸数)は状態によってまちまちです。
「息が苦しい」と感じると、普通は呼吸が速く、浅くなり、息を吐いてから次に吸うまでの時間が短くなります。
すると、解剖学的リザーバー(鼻腔)内に酸素がたまる暇がなくなってしまい、結果、FIO2は低下してしまいます。
患者さんが苦しくてがんばって呼吸するほど、低酸素になってしまいます。
逆に、呼吸がゆっくりであると、FIO2が上昇します。
特に、CO2が貯留しているⅡ型呼吸不全の患者さんでは、呼吸がゆっくり~FIO2が上昇~さらに呼吸がゆっくり~さらにCO2貯留~CO2ナルコーシスとなるため危険なのです。
患者さんの呼吸様式(呼吸の深さ、呼吸数)が変わると、解剖学的リザーバーにたまる酸素の量が変わるため、吸入気酸素濃度(FIO2)が変化するのです。

I型呼吸不全とII型呼吸不全について

I型呼吸不全
低酸素血症が高じて、PaO2が60mmHgを下回っているが、PaCO2が45Torr未満の時、
I型呼吸不全といいます。
低酸素血症の治療は、FiO2を上げ、酸素投与とならんでPEEPが重要です。
肺胞がやられる病気(肺炎、心不全、肺気腫、肺線維症、結核など)では、ガス交換が出来ない肺胞が生じ、
低酸素血症になります。
拡散障害、肺内シャント、換気血流比不均等などの病態の時に見られる(=肺不全 hypoxic failure)。
Ⅰ型呼吸不全ではAーDO2が開大します。

II型呼吸不全
Ⅰ型呼吸不全が数年以上慢性に経過すると、換気応答がだんだん鈍ってきます。
PaCO2が45Torr以上の高炭酸ガス血症を伴うもので、主として肺胞低換気時や 高度の換気血流比不均等でも見られる(=換気不全 hypercapnic failure)。
Ⅱ型呼吸不全ではA-aDO2が変わらない場合(神経、筋疾患、胸郭異常、呼吸中枢機能低下など)とAーDO2が開大する場合(肺気腫、慢性気管支炎などのCOPD急性憎悪例)があります。
慢性にⅠ型呼吸不全が続くとき以外に、呼吸筋に問題があるときや中枢性換気応答低下状態では、分時換気量(Minute Volume:MV)=1回換気量(Tidal Volume:TV)×呼吸回数が減少するため、PaCO2が上昇します。
もともと健康な肺胞の数が減っているのを呼吸数などで補っていたので、そこが弱ってくるとCO2蓄積が起こってきます。

Ⅰ型呼吸不全(低酸素血症)との違いは、PaCO2の値が、そのまま生命の危険に直結しない・・ということです。
PaCO2が高値になると、呼吸性アシドーシスになり、血液pHは低下してきます。
このスピードがゆっくり、慢性に起これば、腎臓による代償が間に合って、pHが適正値に保たれます。
しかし、その代償が間に合わないスピードでアシドーシスが起こると、pHが低下して臓器障害が起こり、生命の危険が生じます。
具他的にはpHが7.25を下回ると具合が悪いので、この場合の治療は、換気量を上げるしかありません。
    ↓    ↓
実施可能であればNPPVを試す(Non-invasive Positive Pressure Ventilation)
CPAP (Continuous positive airway pressure) - 持続的気道陽圧法
BIPAP (Biphasic positive airway pressure)

NPPVマスクか、挿管か

最近、顔にフィットする優秀なマスクが開発され挿管しなくても人工呼吸ができるようになりました。
手技的なハードルが低く、患者さんの苦痛が少なく、人工呼吸器関連肺炎のリスク減少、というメリットがあります。
マスクによる人工呼吸の弱点は、舌根沈下や気道閉塞があったりすると、全く呼吸できませんので、呼吸停止や意識が全くない患者さんには使えません。
また、気道に管が入っていると、気管~気管支内の痰を吸引するのは容易ですが、マスクでは口腔内の吸痰の多い時や誤嚥のリスクが高い患者さんには使われません。

人工呼吸の適応基準
Ⅰ型呼吸不全の場合
マスク、鼻カニューレを使用して最大量の酸素を投与しても、PaO2が60mmHgを下回るとき

Ⅱ型呼吸不全の場合
PaCO2の値に関わらず、pHが7.25を下回るとき、人工呼吸の適応になります。

具体的には、Ⅰ型とⅡ型で基準が異なります。

I型呼吸不全
体重60kgの健康な人は、FIO2=21%の空気を、1分間に600ml/回×12~15回=7200~9000(ml)換気することで、
PaO2(動脈血ガス酸素分圧)を80~100mmHgに維持しています。

PaO2(動脈血ガス酸素分圧)は、肺胞の数とFiO2で決まります。
たとえば肺炎がおこると、その範囲の肺胞は浸出物で埋め尽くされ、そこには空気が入らず、ガス交換が成立しません。
肺胞を巡る毛細血管の血流は、ガス交換を経ることなく、汚いまま左房に帰ることになります。
例えば半数の肺胞がやられてしまった状態では、PaO2が1/2になります。これが、低酸素血症です。

PaO2(正常値が80~100mmHg)が60mmHgを下回るとき、低酸素によって臓器障害が起き、生命の危険が生じます。このような状態をⅠ型呼吸不全といいます。
低酸素血症の治療は、FiO2を上げる、つまり酸素投与になります。
呼吸を行う肺胞の数が減る病気(肺炎、心不全、肺気腫、肺線維症、結核など)では、ガス交換ができない肺胞が生じ低酸素血症になります(Ⅰ型呼吸不全)。治療法は酸素投与です。
二酸化炭素は,低酸素血症になると呼吸中枢が刺激され換気量が増えるので残っている元気な肺胞から飛んでいくため高二酸化炭素血症にはなりません.

Non-invasive Positive Pressure Ventilation(NPPV)を試す

Ⅰ型呼吸不全ではAーDO2が開大し(肺気腫、慢性気管支炎などのCOPD急性憎悪例)、
Ⅱ型呼吸不全ではA-aDO2が変わらない場合(神経、筋疾患、胸郭異常、呼吸中枢機能低下など)とがある。
A-aDO2≒(年齢÷4)+4以下(臥位)
    ↓    ↓
実施可能であればNPPVを試す(Non-invasive Positive Pressure Ventilation)
CPAP (Continuous positive airway pressure) - 持続的気道陽圧法
BIPAP (Biphasic positive airway pressure)
IPAP 4cmH2O, EPAP 4cmH2O, FiO2 1.0から始め加温加湿
酸素化の点からEPAPを2cmH2Oずつ上げ、呼吸数をみて換気補助の点からIPAPを2cmH2Oずつ上げていく。酸素化がよくなればFiO2を下げる。
    ↓   ↓ 
自発呼吸が温存されている場合の挿管
NPPVの延長としてのPSV(呼吸仕事量の軽減) pressure support ventilation
    ↓   ↓ 
PSV(呼吸仕事量の軽減) pressure support ventilation(CPAP+PS)
過剰な気道内圧がかからず、ファイティングがおきにくいからです。
PSVは、患者さんが息を吸う間、低めの圧をかけてあげて息がしやすいように助けてあげる働きをします。あくまでも自発呼吸にそって、ちょっと後押しをしてあげる方法です。

呼吸不全の対処・治療

1)気道確保
000①舌根沈下やその危険にはnasal airway を挿入。
000②上気道内異物は咳、吸引、気管内挿管後吸引などにより除去。
000③喉頭、声門浮腫(アナフィラキシ-・クインケ浮腫)の場合
000000 a)ボスミン 1/2A 0.5mg(0.5ml)の皮下注 
000000 b)クロ-ルトリメトン1A+5%glucose20mlをゆっくり静注
000000 c)ソルコ-テフ 100mg静注(浮腫の軽減と再発予防)
000000 d)窒息しそうな時は、甲状・輪状軟骨間に18G以下の太い針を3本以上刺す。
00000000しかし、早急な気管切開が必要。

2)酸素療法
000001. 室内気吸気中の血液ガスを測定後、鼻腔カニューレ酸素4㍑/分(FIO2≒36%)で開始する。
00000000但し、慢性呼吸不全の急性増悪時のようにPaCO2≧50torrの場合は、
00000000O2 0.5~1.0㍑/分より開始する。
000002. 15~20分後に血液ガスをチェックする。
000003. PaO2が、80torr前後(SaO2 ≧90%)になるように酸素流量を調節する。
00000000(※慢性呼吸不全の急性増悪では、50~60torrで十分)。

a)PaCO2の上昇を伴わない場合は、
0000① 酸素流量を増やす、
0000② 酸素投与法を変えるなどの方法でFIO2を上げていく。
000000PaCO2が8下がる毎にPa02は10づつ増加する。
b)PaCO2の上昇を伴う場合は、
000FIO2を上げることで低酸素換気ドライブが抑制されCO2を
000上昇させないように注意し、PaO2とPaCO2の
000バランスを考えながら、O2濃度を注意深く変更する。
c) いずれの場合も重症例では、気管内挿管の適応基準を念頭におき対応する。

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