播種性血管内凝固症候群

total:186075 today:204 yesterday:405

播種性血管内凝固症候群を分かりやすく解説

凝固活性化と線溶活性化

播種性血管内凝固症候群(DIC)<Disseminated Intravascular Coagulation>は、「基礎疾患の存在下における、全身性持続性の著明な凝固活性化」が本態です。広範囲な血管内の凝固活性化によって、微小血管内で血栓形成が引き起こされ、血流低下により酸素供給量が減少し、虚血性臓器障害が進行します。
すなわち、種々の疾患を基礎に引き起こされる全身の血液凝固系亢進状態であり,全身の毛細血管などに微小血栓が形成され、その結果,血小板・凝固因子が消費され,また,線溶系も複雑に絡み合って臓器の循環障害・機能障害を生じ,高率に多臓器不全・死に至らしめます。
DICは、凝固が亢進することを前提として,「線溶抑制型」「線溶亢進型」の2つに分類されています。
この凝固活性化状態を見るマーカーがトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)です。
DICでは、著しい凝固活性化状態にありますので、TATは必ず上昇します。TATが正常であればそれはDICではありません。
線溶活性化を評価するマーカーがプラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)で、凝固反応に対抗して線溶反応が生じており、この線溶系は血栓だらけにならないための生体の防御反応であります。
そして、線溶活性化の程度はPICの上昇で反映されますが、基礎疾患によって大きく異なり、DICの病態を左右する大きな要素の一つになっております。
DICの進展を阻止するためには、基礎疾患の治療と共に、DICの本態である凝固活性化を阻止する必要があります。
0

基礎疾患

    基礎疾患の存在
       ↓
    全身の持続性の著しい凝固活性化→TATで評価
       ↓
    微小血栓の多発
       ↓
    線溶活性化→PICで評価
       ↓
    出血症状/臓器障害

基礎疾患
全ての生体侵襲はDICを引き起こすことを念頭におく
1. 感染症(全ての微生物による)
2. 組織損傷、外傷、熱傷、手術
3. 血管性病変(大動脈瘤、巨大血管腫、血管炎)
4. トキシン/免疫学的反応(蛇毒、薬物、輸血反応(溶血性輸血反応、大量輸血)、移植拒絶反応
5. 悪性腫瘍(骨髄抑制症例を除く)
6. 産科疾患
7. 上記以外にSIRSを引き起こす病態
000 急性膵炎、劇症肝炎(急性肝不全、劇症肝不全)、ショック/低酸素、熱中症/悪性症候群、脂肪塞栓、
000横紋筋融解、他
8. その他

TATと PICとFDP(D-Dimer)

  • LDH/PLT比は10前後が正常範囲であるが、臓器障害の出現とともに病態を反映し著明にLDH/PLT比上昇増加し、FDP-E、D-Dimerも同様の動きを呈し、TAT,PIC,D-Dimerも著明に増加します。
  • TMは臓器悪化とともに増加し、t-PAICも高値で、TM,PAI-1異常高値例は短期死亡が多い。
  • AT-III活性はProteinC同様に病勢を反映し著明な減少を続けます。

大量の細胞が傷害されればTFも大量に放出され,DICの原因となる
DICはTFから始まる凝固カスケード反応によってトロンビンが発生し,フィブリン血栓が形成されて進行する.
アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)はトロンビンと結合し,(TAT)を形成し,フィブリン血栓形成を阻害する.これがアンチトロンビン製剤(ノイアート®など)をDIC治療に用いる理由であり,
TATが正常値であればその1点のみでDICは否定されます。

  • トロンビン・フィブリノーゲン・フィブリン
    組織因子(TF)の作用によって凝固活性化を生じますと、最終的にトロンビンというkey enzymeが形成されます。トロンビンがフィブリノゲンに作用しますと、フィブリノゲンはフィブリンに転換して血栓が形成されます。
    トロンビンの血中半減期は極めて短く直接測定することはできません。
  • TAT
    トロンビンとその代表的な阻止因子であるアンチトロンビン(AT)が、1対1結合した複合体を測定したマーカーがTATです。
    TATが高値であるということは、トロンビン産生量が多い、すなわち凝固活性化状態にあります。
  • FDP(Dダイマー)
    血管内皮からt-PA(組織プラスミノゲンアクチベータ)が産生されますと、肝で産生されたプラスミノゲンに作用してプラスミンに転換させます。このプラスミンは、血栓(フィブリン含有)を分解してその時生ずる分解産物のことをFDP(Dダイマー)と言います。
  • PIC
    線溶活性化の評価するためにはプラスミン産生量が分かれば良いのですが、血中半減期が極めて短く直接測定することはできません。プラスミンとその代表的な阻止因子であるα2プラスミンインヒビター(α2PI)が、1対1結合した複合体を測定しようとしたマーカーがPICです。
    DICにおいては、凝固活性化と並行して線溶活性化がみられますので、必ずPICの上昇もみられます。
  • アンチトロンビン(antithrombin:AT)(AT-III)
    血管内皮には、ヘパリン様物質が存在します。このヘパリン様物質には、ATは肝臓で産生されるアンチトロンビン(antithrombin:AT)や、血管相皮で産生される組織因子経路インヒビター(tissue factor pathway inhibitor:TFPI)が結合しています。血管内皮は、ATやTFPIによって、血栓ができないように、保護されていることになります。
    ATは流血中にも存在しますし、血管内皮上にも存在しており、ATはヘパリン様物質に結合することによって、活性が飛躍的にアップします(アンチトロンビン(AT)は、以前はアンチトロンビンIII(AT-III)と言われていました)。
    アンチトロンビンⅢとプラスミノーゲンの測定は不可欠であり、一般にアンチトロン ビンⅢとプラスミノーゲンはほぼ並行して動きます。
    肝 疾患で蛋白合成が低下するとアンチトロンビンⅢ、プラスミノーゲン両者ともに低下します。

基礎疾患によるPAIの差異

血管内皮からt-PA(組織プラスミノゲンアクチベータ)が産生されますと、肝で産生されたプラスミノゲンに作用してプラスミンに転換させます。このプラスミンは、血栓(フィブリン含有)を分解してFDP(Dダイマー)とします。
t-PAに対して阻止的に作用するPAI(plasminogen activator inhibiter)が過剰に産生される病態では、線溶に強いブレーキがかかるために、血栓が形成されてもあまり溶解せずにFDPやDダイマーは軽度上昇にとどまります。

PAIは、t-PAと1:1結合することで、線溶を阻止します。PAIの産生が亢進し線溶に強いブレーキがかかりますし、一方、PAIの産生があまりないと線溶が抑制されにくいことになります。(active PAIは健常人は、15ng/mL以下になります。)

大量の血栓が形成されたとしましても、線溶阻止因子PAI(plasminogen activator inhibitor:プラスミノゲンアクチベータインヒビター)の過剰な発現がありますと、線溶に強い抑制がかかり、そのために、プラスミンはあまり産生されず、血栓の溶解が進行しにくくなります。
線溶が抑制された状態では、FDPやDダイマーはあまり上昇しません

凝固活性化が高度ではないために(トロンビン形成は少量であるために)、血栓の形成量が乏しい場合です。血栓量が少ない訳ですから、線溶活性化によりプラスミンが形成されても、血栓分解産物を反映するFDP(Dダイマー)の上昇は軽度にとどまります。

敗血症においては、PAIは健常人の10倍と著増しています。線溶活性化に対して強い抑制がかかっていることになります。
敗血症病態ではPAI-1が異常高値をとり,tPAを強く阻害します。すなわち,敗血症では線溶系が亢進しません。また,α2-プラスミンインヒビター(α2-PI)はPMと結合することでPM-α2PI複合体(PIC)を形成し,これが線溶系亢進のマーカーとなります。敗血症病態ではこのPICは2μg/mL前後しか上昇しません。
敗血症性DICでは、SIRS-Associated Coagulopathy(SAC)という、DICに進展していく前病態の概念であり, SACはまだ臓器障害を発症していない状態であります。
病態進行に伴ってSAC,DIC,MODSと進展していきます。

DICにおける著しい凝固活性化は共通した病態ですが、線溶活性化の程度(PICの上昇で反映されます)は基礎疾患によって相当の差異がみられます。
線溶抑制状態:APL<急性白血病、固形癌<敗血症

FDPは線溶亢進型DICでは著増しますが、感染症に合併した場合のように線溶抑制型DICにおいては、軽度上昇に留まります。
感染症に合併したDICにおいては、線溶阻止因子PAIが著像するために、線溶活性化は軽度ですので血栓溶解にブレーキがかかります。

原因となる基礎疾患によっては、凝固の活性化に続く線溶活性化の程度が大きく異なります。
線溶抑制型 DIC では、その炎症反応により、線溶抑制因子PAI-1(plasminogen activator inhibitor-1)が誘導され、線溶は凝固活性化に比べ著しく抑制されています。
微小血管内で形成された血栓の溶解は少なく、血栓による虚血性の微小循環障害が虚血性臓器障害を引き起こします。
線溶亢進型 DIC では凝固の活性化はもちろん、線溶の活性化も著明です。
微小血管内で形成された血栓が溶解され虚血性臓器障害はあまり認めないが、出血症状の頻度が多くなります。
DIC では、血小板や凝固因子が消費され消費性の凝固障害を呈します。

線溶抑制型 DIC では、線溶が抑制されているために FDP の著増を認め
ないうえに、炎症反応のため急性期反応蛋白であるフィブリノゲンの増加を
認めます。

① 無症候型
凝固活性と線溶活性のバランスが取れている状態で、早期 DIC 治療が望まれます。
② 出血型「線溶亢進型 DIC」
出血症状は認めやすいものの、臓器障害の程度は軽度
③ 臓器不全型「線溶抑制型 DIC」
PAI-1 が誘導され線溶活性が抑制され
虚血性臓器障害を引き起こし多臓器不全の発生頻度は高くなります。

線溶抑制型DIC(旧名称:凝固優位型DIC):
線溶阻止因子PAIが著増するために、線溶に強い抑制がかかりPICの上昇はごく軽度です。多発した微小血栓溶解の結果として血中に出現するDダイマーは微増に留まります。臨床的には臓器症状は重症ですが、出血症状は比較的軽度です。代表的基礎疾患は、敗血症です。

線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC):
線溶阻止因子PAIは微増にとどまるために、線溶に対する抑制はありません(PICの上昇は高度です)。Dダイマーの上昇は明らかです。
FDP/DD比は高値となります。臨床的には出血症状は重症ですが、臓器症状はほとんどみられません。
フィブリノゲンは、線溶亢進型DICではしばしば著減しますが、感染症に合併したDICにおいては、ほとんど低下いたしません。

FDP(Dダイマー)が上昇する時・しない時

組織因子の作用によって凝固活性化を生じると、最終的にトロンビンというkey enzymeが形成され、このトロンビンの作用によってフィブリノゲンがフィブリンに転換し血栓が形成されます。
一方、線溶の役割を演じている酵素であるプラスミンは、血栓(フィブリン)を分解して、FDP(Dダイマー)にします。
通常、フィブリンの方が遥かにプラスミンの作用を受けやすいために、FDPの大部分はフィブリン分解産物です。
FDPには、フィブリン分解産物もフィブリノゲン分解産物も含まれるが、通常はフィブリン(血栓成分)分解産物がほとんどです。
FDP(Dダイマー)の血中濃度が高いというのは、血栓ができてそして溶解したということを意味しています。
生体内重要臓器に微小血栓が多発しても、血栓が溶解しないためにDダイマーは上昇しないということもあります。
FDPの一部であるフィブリン分解産物の、さらに一部の細小単位がDダイマーです。
FDPやDダイマーが上昇しているというのは、凝固活性化によって血栓が形成されて、かつその血栓が溶解し、凝固活性化も線溶活性化も進行したということを意味しています。
すなわち、DICの結果として微小血栓が多発して、さらにその血栓が分解された産物で、DIC病態の最終段階を見ているとも言えます。
血栓が存在しない場合、血栓が存在するが溶解しない場合FDP(Dダイマー)は上昇しません。

FDP(Dダイマー)が上昇しない時というのは
凝固活性化が高度ではない(トロンビン形成は少量である)ために、血栓の形成量が乏しい場合です。
血栓量が少ない訳ですから、線溶活性化によりプラスミンが形成されても、血栓分解産物を反映するFDP(Dダイマー)の上昇は軽度にとどまります。
しかし、FDP(Dダイマー)が上昇しないという現象は、大量の組織因子(tissue factor:TF)が誘導され、高度な凝固活性化の結果として大量の血栓が形成された場合にも見られます。

FDPD-Dimerとともに、TATや、DICの病型分類マーカーであるPICを合わせて測定することで、正確な評価が可能と考えられます。
フィブリン血栓ができると,組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)によりプラスミノゲン(PG)が活性化されてプラスミン(PM)が生成され,このPMがフィブリン血栓を溶解するが,このtPAを阻害するのがプラスミノーゲンアクチベータインヒビター(PAI-1)である.**多臓器不全とFDP [#t68a7fa6]

MODS( multiple organ dysfunction syndrome ):多臓器障害
心,肺,肝,腎,中枢神経系,凝固系,消化管の臓器系のうち,2つ以上の臓器,系が同時にあるいは短期間のうちに連続して機能不全に陥ったもの。

多臓器障害(MOF)の診断基準(緩い基準)

  • 腎 1)尿量 < 600ml/日 2)BUN > 50mg/dl 3)血清クレアチニン > 3mg/dl
  • 呼吸器  1)PaO2  < 60torr (room air )  2)PaO2 / FiO2<350 3)AaDO2 ( FiO2=1.0 )> 300mmHg 4)Qs/Qt >20% 5)5日間以上人工呼吸必要
  • 肝  1)Bil > 3.0mg/dl  2)S-GPT > 100U/L 3)AKBR < 0.7
  • DIC  1)FDP ≧ 20μg/mlまたは血小板 ≦ 8万またはFgn100mg/dl
    2)1~2日以内でFDP,血小板,Fngの急激な悪化(3倍または1/3)
    3)厚生省DIC基準でDIC疑い(6点)
  • 心血管  1)CVP > 10mmHg  2)major arrythmia出現 3)Forrester 分類 IV  4)末梢血管抵抗<1000dyn•sec • cm-5
    5)2時間以上の昇圧剤必要
  • 消化器   1)吐下血  2)潰瘍の確認
  • 中枢神経   1)JCS > 10  2)GCS < 12

DIC症例を、多臓器不全(multiple organ failure:MOF)の有無で分類して比較しますとMOF合併例は予後不良で死亡例が多く、MOF非合併例では全員がDICから離脱して生還しています。
FDPは、MOFを合併して予後不良であった例の方がFDP上昇の程度が軽度です。
MOFの合併がなく予後良好であった例の方でFDPが高度に上昇しています。
MOFを合併例では、線溶阻止因子PAIが著増するために、線溶に強い抑制がかかります。そのため線溶活性化は軽度にとどまり(PICの上昇は軽度に留まり)、血栓の溶解はあまり進行しません。血栓分解を反映するFDPは軽度上昇にとどまります。
MOFの有無にかかわらず、TATの上昇がみられますが、  
MOF合併例ではTATが上昇しても、線溶活性化は見られずPICは上昇しません。
MOF合併例では、凝固活性化が進行しましても、決して線溶活性化は進行しません。
このように、凝固活性化と線溶活性化のバランスは、臓器不全などの病態と密接に関連しております。

MOF非合併例では、線溶阻止因子PAIの上昇はあまりないために、線溶に抑制がかかりまません。そのため線溶活性化は高度となり(PICの上昇は高度となり)、血栓の溶解が進行します。血栓分解を反映するFDPは明らかに上昇します。
MOFのない症例では、凝固活性化(TAT)と線溶活性化(PIC)が並行して進行していることになります。
 
以上から、著しい凝固活性化(TATの著増)に伴い線溶活性化も高度な(PICも著増する)場合には(FDPは著増、Dダイマーも上昇)、重要臓器において多発した微小血栓(microthrombi)が溶解されるために、微小循環障害に起因する臓器障害(多臓器不全:MOF)はきたしにくいと考えられます。
一方、凝固活性化は著明(TATは明らかに上昇)であるものの線溶活性化は軽度にとどまる(PICはあまり上昇しない)場合は(FDP&Dダイマーの上昇は軽度)、重要臓器において多発した微小血栓が溶解されにくく、臓器障害をきたしやすいと考えられます。

大量の血栓が形成されたとしましても、線溶阻止因子PAI(plasminogen activator inhibitor)の過剰な発現がありますと、線溶に強い抑制がかかります。そのために、プラスミンはあまり産生されず、血栓の溶解が進行しにくくなります。
血栓が大量に形成されても(生体にとっては不都合な状態です)、線溶が抑制された状態では、FDPやDダイマーはあまり上昇しません。

血栓が存在しない場合(これは生体にとって良い状態です)であっても、血栓が存在するが溶解しない場合(これは生体にとって悪い状態です)であっても、どちらであってもFDP(Dダイマー)は上昇しません。

FDP上昇をきたす他疾患(深部静脈血栓症、肺塞栓、大血腫、大量胸腹水、術後など)の鑑別は重要です。
特に、DICに深部静脈血栓症や肺塞栓も合併することがあるため、下肢静脈エコーを積極的に施行すべきと考えられます。

DICの診断基準

DICを見るときは,線溶系抑制型か亢進型かを判別し,その道具として原疾患,FDP,DD,PICを解釈します。

DICを合併しやすいSIRSの病態は,サイトカインストーム(サイトカインの嵐)などと呼ばれています。SIRSがなければ,血管性病態,悪性腫瘍,産科疾患以外にはDICを発症しにくいとされています。
炎症性サイトカイン,ケモカインなどにより好中球やマクロファージなどの白血球などが過剰産生されることで,SIRSが惹起・形成されます。
SIRSを導く原疾患に,感染症が合併することにより,感染症が2次性侵害刺激(2nd attack,2nd hit)として働き,SIRSをより重篤な状態とします。
SIRSが重篤化した際にDICを合併し,多臓器不全がさらに進行します。
血液疾患、動脈瘤、固形癌のDICではSIRS基準を満たしません。

画像の説明

●急性期DIC診断
画像の説明
参考; 基本検査=血小板、PT-INR、PT 10.0~14.0秒、FDP 5μg/ml未満、Fib 200~400mg/dl
補助検査:TAT 3~4 ng/mL 以下、D-dimer 1.0μg/ml以下、PIC0.8 μg/mL以下、 
AT-III 80~130%、APTT 25.0~40.0秒、

注意
1) 血小板数減少はスコア算定の前後いずれの24時間以内でも可能。
2) PT比(検体PT秒/正常対照値)ISI=1.0の場合はINRに等しい。各施設においてPT比1.2に相当する秒数の延長または活性値の低下を使用しても良い。
3) FDPの代替としてD-ダイマーを使用して良い。各施設の測定キットにより以下の換算表を使用する。

急性期DIC診断基準
この診断基準は厚生省基準やISTH基準と大きく異なる点が3つ存在します。
SIRSの診断基準は2項目以上で陽性ですが、急性期DIC診断基準では3項目以上で
スコア1点加算されます。

この「急性期DIC診断基準」によりますと、早い段階でDICを疑い,そして,早い段階からDICの診断と治療を行うことができます。
急性期DIC診断基準は、SAC診断をtargetにしており、そこから抗DIC薬を投与を開始します。DICに対する治療は原疾患治療がしっかりなされていることが前提です。
血小板が血管内皮細胞や肺胞に付着し,フィブリン網を形成するがごとく、敗血症では血管内皮細胞傷害の進行により血小板が血管内皮細胞に沈着するようになります。その結果,血液中の血小板数が低下し,些細な傷に対しても出血傾向が出現します。
急性期DIC診断基準では,血管内皮細胞傷害を導く可能性のある全身性炎症が存在するかどうか,そして,結果として生じる末梢血の血小板数の急激な低下があるかどうかに,重点が置かれています。
急性期DIC診断基準は、感染症に合併したDICの診断には威力を発揮しますが、造血器悪性腫瘍(白血病群)には適応できません。

松田の診断基準
DICを生じ得る基礎疾患を有する患者に、
FDPの上昇(20μg/dl以上)、フィブリノーゲンの低下
(150mg/dl以下)、血小板数の減少(10万以下)の3つが認められたら、DICの可能性を考慮する。

0000------------------------------------------------------------------  
0000 フィブリノーゲン    血 小 板 数    FDP
0000------------------------------------------------------------------ 
0000≦100  +3    ≦ 5 +2   ≦40 +2
0000≦150  +2    ≦10 +100000000≦20 +1
0000≦200  +1    ≦15  000000000>20 0
0000≦250   0    ≦20 -1          
0000≦400  -1    >20 -2          
0000>400  -2                     
0000------------------------------------------------------------------ 
上記3項目の合計が4点以上はDIC。
3点でDICの疑い濃厚。2点でDICの存在を否定できない。

画像の説明

厚生省の研究班によるDICの診断基準の一般検査項目だけでDICの9割弱が正しく診断され、特殊項目を加えると96%が正確に診断される。激症肝炎には適応できず、また軽度のDICを見逃す危険があることは留意するべきであります。
骨髄抑制をきたすような白血病群では、出血症状、血小板数を含めません。
早期診断には不向きとの指摘があります。
この診断基準では、非白血病群では7点以上、白血病群では4点以上の場合にDICと診断されます、7割の臨床家が非白血病群では6点、白血病群では3点でDIC治療を開始している実状があります。

1) DICの本態は「全身性」「持続性」の「著しい」「凝固活性化状態」です。
0000TAT、F1+2、SF、FMC、PICのような分子マーカーが不可欠です。
2)分子マーカーは、いつでもどこでも測定できる訳ではありません。
3)FDP(Dダイマー)も、DIC診断に不可欠です。
4) 血小板数も、もちろん不可欠ですが、白血病群では血小板数をはずす必要があります。
5) フィブリノゲンは、感染症を基礎疾患としたDICでは低下しませんが、
急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICのように線溶亢進型DICでは
著減します。
6) プロトロンビン時間(PT)は、DICの要素でも延長しますが、むしろ肝不全やビタミンK欠乏症など他の要素で延長することの方が多く、肝予備能の低下が関係しております(ワーファリン内服例を除く)。
肝不全(肝予備能低下)やビタミンK欠乏症でも容易に延長しますので、決してDICに特異的なマーカーではありません。プロトロンビン時間(PT)をPT比>1.67で最高1点にという考えもあります。
7) 基礎疾患のないDICは存在しませんので、基礎疾患でのスコアリングはナンセンスです。
基礎疾患の存在は必須として、スコアリングから外し、それに伴い(基礎疾患でのスコアリングを外すことに伴い)、DICスコア5点以上でDICと診断されます。
DICは「基礎疾患の存在下における、全身性持続性の著明な凝固活性化」が本態です。
臨床症状をスコアリングから外すことに伴い、スコア4点以上でDICと診断可能
のようです。
8)TATの採用
感染症症例(血小板数<12万/μL)において、TAT<7ng/mLであれば、後日DICを発症する可能性は0%と報告されています。
TAT≧7ng/mLで、1点を与えるという案もあります。(TAT 7ng/mLは、TATの基準値であるTAT<3~4 ng/mLの2倍)
FDP 10μg/mL未満でDICとはまず考えられません。
誤診対策として、FDP<10μg/mLで、-1点とするのがよいのかもしれません。

大量胸水・腹水、大血腫、手術後でもFDPやDダイマーの上昇が見られることがあり、DICとの鑑別が問題となります。
胸水や腹水の貯留時にはFDP20μg/ml程度の上昇 はしばしば認め、FDPの上昇だけでDICとは判定できません。
フィブリノゲンが減少することは急性前骨髄性白血病(APL)の場合を除いて実際にはまれで、基礎疾患である感染症や悪性腫瘍で急性反応性蛋白であるフィブリノゲンがもともと著明に増加していることが多いためであります。

DICの治療

DICの治療としては、重要性の高い順に、基礎疾患の治療、抗凝固療法、補充療法、抗線溶療法が挙げられます。
DICは治療よりもまず予防であり、そのためには,原因となる末梢循環不全徴候を見逃してはならず、バイタルの変動,乳酸値などを念入りにチェックすべきであります。

抗凝固療法
少量ヘパリン5-15U/Kg/hrの投与を行う。ATI I I濃度が正常の50%以下の場合は、AY-III製剤を40-60単位/kgを1日1回点滴静注する。
0000ただし、出血傾向が著しい時はヘパリンの投与はあきらめる方が無難。
0000またAT3濃度が正常の50%以下の場合は、AT3(ノイアートなど)を補充する。
ヘパリン類(ヘパリン、フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)

血液凝固阻止剤
R-ThM(リコンビナントトロンボ モジュリン) 380単位/kg/日の併用も考慮する。
(連続5日間程度は保険診療として認められている)

画像の説明
通常、成人には、トロンボモジュリン アルファとして1日1回380U/kgを
約30分かけて点滴静注する。
1バイアルを生食2mlに溶解後、380U/kgとして0.06mlx体重kg=必要量ml

補充療法

  • ①血小板輸血新鮮凍結血漿(FFP)
    消費性凝固障害のため、血小板や凝固因子の著しい低下のため出血がみられる場合には、補充療法を行います。
    血小板の補充目的としては濃厚血小板(PC)、凝固因子の補充目的としては新鮮凍結血漿(FFP)を用います。
    通常、PCは血小板数2~5万/μL程度以上を保つように、抗凝固療法下に血小板輸血により補充します。(10~20単位/1回 必要があれば経日的に繰り返す)。
    FFPは、フィブリノゲン100mg/dl未満またはPT比1.7以上になるような症例ではPCが必要になることが多い(5単位程度/1回 必要があれば経日的に繰り返す)。

計算して予測する
 《成人では輸血効果を期待するには少なくとも10単位程度は必要である》
計算式: 0.054×患者の体重(kg)×上昇を期待する血小板数(万/μl)
 例:体重60kgの患者で血小板数を3万/μl上げたいとき
   0.054×60×3=9.72  約10単位

※DICによる血小板減少に対して、
FFPと血小板製剤の両方を使う方がFFPのみより多い

※TTP では輸血が増悪因子となる恐れが高く,原則血小板輸血は禁忌である.
通常のメジャー手術や侵襲的処置では血小板数 5 万/μl 以上を,また,中枢神経や眼科手術では,7~10 万/μl 以上を保つよう,術前に予防的に輸血を行う。
術中の大量輸血に伴う希釈性血小板減少症に対しては,血小板数 5 万/μl 以上を目標に輸血を行う.
10単位製剤の成人への投与で,3~5 万/μl の血小板上昇が期待される.血小板の生体半減期は 3~5日で,造血が停止した状態で一定の血小板数を維持するためには,週 2~3 回の輸血が必要である

  • ②フィブリノーゲン製剤
    フィブリノーゲン100mg/dl以上を保つように、新鮮凍結血漿(FFP)で補充する。
    1回4単位静注し、以後は測定値を見ながら行う。
    ATⅢが正常値の50%以下の症例にヘパリンを使用する場合は、AT3製剤(1V=500単位)を1500単位を使用する。
  • ③AT-III製剤
    ATI I I濃度が正常の50%以下の場合は、ATI I I製剤を40-60単位/kgを1日1回点滴静注する。ATⅢの半減期は3日程度であり、必要に応じて追加する(週2回投与が一般的)。
    ATⅢが正常値の50%以下の症例にヘパリンを使用する場合はAT3製剤(1V=500単位)を1500単位を使用する。
    ATI I I濃度が正常の50%以下の場合は、ATI I I製剤を40-60単位/kgを1日1回点滴静注する。
    ただし、アンチトロンビン製剤ATを投与すると,トロンビンと結合してTATを形成することでDICを治療するが,DICでない症例でATを投与してしまうと,TATが上昇してしまい,TATで判断できなくなるリスクがある.

※AT濃縮製剤
ヘパリン類は、AT活性が低下した場合は充分な効果が期待できないため、
AT濃縮製剤(アンスロビンP、ノイアート、ノンスロン)のいずれかを併用する。
保険適応は、AT活性70%以下の症例でAT濃縮製剤を使用することが可能であり、1,500単位/日で3~5日間使用される。

実際には、軽症であれば抗DIC薬投与も不要で、原疾患治療のみで十分である。
次に,重症敗血症であった場合,出血がなければrTMを第一選択とし,これにATやFFPを加える。重症DIC群でATⅢ活性50-69%であればAT 1500単位/日を追加,
ATⅢ活性<50%であれば、AT 3000単位/日+FFP投与する。
非重症DIC群であればATⅢ活性50-69%では他薬剤追加は不要であり、
AT活性<50%ではAT 1500単位/日を投与する。
なお,CHDF使用症例であればAT投与時は全例3000単位/日を推奨した.出血例においてはrTMは使用できないため,ATを第一選択とし,FFPを投与,またGM追加も考慮する。

出血例ではrTMは使用しないがATは使用でき、重症例ではrTMやATを積極的に使用し、万が一出血してもTAは原則使用してはならない。

  • ④合成プロテアーゼインヒビター
    合成プロテアーゼインヒビター(SPI)は、AT非依存性に抗トロンビン活性を発揮する。
    メシル酸ナファモスタット(商品名:フサンなど)および、メシル酸ガベキサート(商品名:FOYなど)である。
    出血の副作用は皆無に近いため、出血の副作用のためにヘパリン類の使用が困難な場合には良い適応となります。
  • メシル酸ナファモスタットは臨床使用量(1.44~4.8mg/kg/日、持続点滴静注:標準的体重の人では150~200mg/24時間)で、抗凝固活性のみならず抗線溶活性も強力であり、線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)に対して有効である。
    フサン:0.06~0.2mg/kg/hrを24時間持続点滴。
    効果はFOYなどとほぼ同等とされている。FOYに比し配合禁忌は少ない。
  • メシル酸ガベキサートは臨床使用量(20~39mg/kg/日、持続点滴静注
    標準的体重の人では1,500~2,000 mg/24時間)では抗線溶活性は強くない。ただし、メシル酸ナファモスタット(フサン)の高カリウム血症の副作用には注意が必要である。両薬剤ともに静脈炎の副作用があり、注意がひつようである。
    FOY:1~2mg/kg/hr。AT3濃度が不明または低値や出血傾向の著明な症例ではヘパリンより好ましい。
    臨床効果はヘパリンと差がないと言われている。
    配合禁忌、血管炎、アナフィラキシーに注意

FOYとフサンの相違点
1)フサンは、抗凝固活性のみならず、抗線溶活性も強力です。FOYは、抗線溶活性は強力ではありません。注射用FOYは,皮膚潰瘍・皮下組織壊死・皮下トンネル形成・索状硬結・血管壊死などの重篤な皮膚障害の副作用が報告されています。

2)フサンは、高カリウム血症の副作用があります。FOYには高カリウム血症の副作用はありません。マイルドな効果を期待したい場合は、FOYが選択肢にあがります。たとえば、出血傾向が強くヘパリン類は使用できないし、しかもカリウム濃度が高く、フサンも使いがたい時などです。

3)フサンは線溶活性化が強いタイプのDICに有効ですが、FOYは線溶活性化が強いタイプのDICにはあまり有効でありません。
線溶亢進型DIC(出血症状が著明なDIC)には、フサンが絶対的に有効です。たとえば、前述のような急性白血病、前立腺癌、腹部大動脈瘤などに合併したDICにはフサンが有効です。

4)アンチトロンビン非依存性に、抗凝固活性を発揮します。

5) フサンは、凝固活性化のみならず、線溶活性化も抑制する作用が強い点が特徴です。
このため、線溶活性化が強いタイプのDIC(線溶亢進型DIC:出血しやすいタイプのDIC)に対して、極めて有効な薬剤になります。
線溶亢進型DICに対して、ヘパリン類のみを投与いたしますと、出血をかえって助長することが少なくありません。

DIC治療をいつやめるかについては.急性期DIC基準スコアが3点以下になったらやめます。
DICに対する治療は基礎疾患が除去され、FDPが正常化するまで続けます。
注意すべき合併症として特に下記の疾患に注意を!
  1.脳出血:血小板輸血、フィブリノーゲンの補充により予防する。
  2.消化管出血:H2ブロッカーを予防的に使用する。
  3.急性腎不全:腎毒性の強い薬剤の併用を避けるなど
  4.ARDS:過量の輸液をさける。
  5.多臓器不全:それぞれの項について留意する。

0
0

血栓性素因

線溶亢進型DIC:典型例では、PIC>10.0 μg/mL
(ただし、7~8μg/mL以上でも、線溶亢進型の
           病型と思われる例も少なくない)
線溶抑制型DIC:典型例では、PIC<2~3 μg/mL

トロンビン形成は少量であると凝固活性化が高度ではないために、血栓の形成量が乏しくなる。
血栓量が少ない訳ですから、線溶活性化によりプラスミンが形成されても、血栓分解産物を
反映するFDP(Dダイマー)の上昇は軽度にとどまる。

先天性血栓性素因
     AT(Anti-thrombin)、Protein C:PC、Protein S:PSの欠損症
後天性血栓性素因
   (antiphospholipid syndrome:APS)APSの診断には、ループスアンチコアグラントや
    抗カルジオリピン抗体(anticardiolipin anibody:aCL)の測定が必要

【病因および病態】
アンチトロンビン(AT)は、トロンビン(FIIa)、活性型第X因子(FXa)、活性型第IX因子(FIXa)
などの活性型凝固因子(セリンプロテアーゼ)に対する生理的凝固阻止因子です。
プロテインC(PC)は、血管内皮細胞に存在するトロンボモジュリン(thrombomodulin:TM)に
結合したトロンビンにより活性化され活性化PC(activated PC:線溶阻止因子APC)となります。
APCはPAI-1を中和し、線溶活性化を促進する。
APCは血管内皮や血小板のリン脂質上でプロテインS(PS)と複合体を形成し、
活性型第V因子(FVa)、活性型第X因子(FXa)を分解・失活させることで凝固反応を阻止します。
【血液検査】
(1)アンチトロンビン
血栓性素因が疑われる場合には、ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LA)、
抗カルジオリピン抗体(IgG抗体)、抗カルジオリピンーβ2グリコプロテインI抗体
(抗aCL-β2GPI複合体抗体)測定による抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:
APS)の検索を行います。
生理的凝固阻止因子であるアンチトロンビン(Antithrombin:AT)、プロテインC
(Protein C:PC)、プロテインS(Protein S:PS)、血中ホモシステインや、Lp(a)濃度の血中活性を
測定し、先天性血栓性素因をスクリーニングします。

  AT活性低値を示す場合
    1)先天性AT欠損症 2)消費性凝固障害(DIC)
    3)炎症性サイトカインの作用による産生低下
    4)血管透過性亢進による血管外漏出(敗血症DICなど)
    5)肝予備能低下(肝硬変劇症肝炎、肝不全)
    6)尿中への喪失(ネフローゼ症候群)
    7)エストロゲン製剤、L-asparaginaseなど薬剤の影響   8)その他
(2)プロテインC
   プロテインC(PC)、プロテインS(PS)はいずれも、凝固VII、IX、X、II因子とともに
   ビタミンK依存性蛋白ですから、PC、PSはビタミンK欠乏症やビタミンKの拮抗薬である
   ワルファリン内服でも低下する。
 PC活性低値を示す場合
    1)先天性PC欠損症  2)肝予備能低下(肝硬変劇症肝炎、肝不全)
    3)ビタミンK欠乏症:食事摂取量の低下、抗生物質の長期連用、胆道閉塞(閉塞性黄疸)、
     ワルファリン内服など。(PCは半減期が大変短く、ビタミンK欠乏状態や肝予備能低下で
     速やかに活性が低下)
    4)凝固活性化による消費(DICなど) 5)血管内皮細胞傷害による血管外漏出
    6)その他。
   血栓性素因が疑わしい例ではワルファリン投与前の検体保存を心がけるべきなのです。
(3)プロテインS
   PS活性低値を示す場合
      1)先天性PS欠損症  2)肝予備能低下(肝硬変劇症肝炎、肝不全)
      3)ビタミンK欠乏症:食事摂取量の低下、抗生物質の長期連用、胆道閉塞
         (閉塞性黄疸)、ワルファリン内服など。
      4)妊娠、経口避妊薬使用時
      5)全身性エリテマトーデス 6)抗リン脂質抗体症候群(APS)
      7)ステロイド内服  8)ネフローゼ症候群  9)その他
また、APC( activated PC)は線溶阻止因子であり、(plasminogen activator inhibitor:PAI-1)を
中和し、線溶活性化を促進する。

powered by Quick Homepage Maker 4.81
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional