深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症

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凝固阻害薬と血栓溶解薬の基礎知識

《I》凝固阻害薬

静脈内で出血が起きた場合、凝固系が亢進して血液が固まる(赤色血栓)ので、静脈血栓の予防には
血液凝固阻害薬(へパリンやワルファリン)が有効である。
プロトロンビンはビタミンKによって活性化されるのでワルファリンはビタミンKと拮抗するため、
血液凝固阻害を示す。
また、トロンビンを抑制するものにアンチトロビンⅢがあるが、へパリンはアンチトロビンⅢを活性化する。
これによって、間接的に血液凝固阻害を示す。
なお、硫酸プロタミンはへパリンと拮抗してその作用を弱める。
硫酸プロタミンはへパリン過剰投与による出血傾向を抑えるために使用される。
抗凝固療法に関してはヘパリンは5000IUを静注し、引き続き18U/kg/時を持続静注します。
最初の24時間は開始6時間毎にその後は24時間毎にAPTTを測定しコントロールの1.5~2.5倍になるように
調整します。


ヘパリン(10000単位/10ml)2Aと5%ブドウ糖液500mlで40単位/1mlになるように調節します。初期量は現液を4-5ml静注します。そして作った製剤を精密持続点滴22ml/hでスタートします。


動脈内で出血が起きた場合、動脈では血小板機能の亢進が起きる(白色血栓)なので、動脈血栓の予防には
血小板凝固阻害薬の方が有効である。
血小板凝固阻害薬の代表的なものにアスピリンがある。

アスピリンは低用量(20~100mg/日)で使用することにより、血小板のシクロオキシゲナーゼ1
(COX1)を抑制することで、結果として血小板凝集促進作用を示すトロンボキサンA2(TXA2)を阻害するのである。
なお、アスピリンはシクロオキシゲナーゼを不可逆的に阻害するので
一度アスピリンが作用した血小板は使い物にならなくなるのである。(血小板の寿命は一週間程度)であるため、
それまで血小板凝固作用が持続する。

アスピリンを高用量で用いると鎮痛作用を得ることができるが、高用量では「血小板凝集抑制作用を示す
プロスタグランジンI2(PGI2)」まで阻害するようになってしまい、「アスピリンジレンマ」に陥る。

抗凝固薬比較
画像の説明

  • アリクストラ(選択的Xa阻害薬)
    Ccr、eGFR≦50、80才以上、40kg未満の人→2.5mg/1x/day
    Ccr、eGFR≦30、80才以上、40kg未満の人→禁忌
  • クレキサンの禁忌
    HITの既往、Ccr、eGFR≦30、80才以上、40kg未満の人→禁忌

術後抗凝固療法
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抗凝固療法と麻酔・ブロック
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  • カテ抜去予定日午前中のヘパリンとクレキサンは中止。
     クレキサンは抜去前12時間、抜去後6時間は投与禁止。
     アリクストラの場合は硬膜外麻酔は原則禁忌で、硬膜外カテ留置患者に投与した
     場合は前12時間、・後36時間間隔をあける。 
  • 硬膜外カテ抜去は、抜去当日は、抜去は抗凝固薬投与していた予定時刻(午前10~12時)に行う。
  • 硬膜外カテ抜去後に、疼痛・しびれが出現した場合は関係科の麻酔科等専門医と共に事故に対処する。
  • 抗凝固薬の再開は、中止した次の投与時刻から再開する。

プロタミンでの中和(プロタミンは10分以上かけて緩徐に静注)
アリクストラはプロタミンで中和できない。
ヘパリンとクレキサンはプロタミンで中和可能。
画像の説明

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《II》血栓溶解薬(線溶系に作用する薬)

t-PA製剤として、アルテプラーゼのほかに、モンテプラーゼ(商品名:クリアクター)、パミテプラーゼ
(商品名:ソリナーゼ)も臨床使用可能であり、いずれも「急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解
(発症後6時間以内)」に適応を有している。
心筋梗塞に加えて、「虚血性脳血管障害急性期に伴う機能障害(発症後3時間以内)の改善」にも
適応があるのは、アルテプラーゼのみである。
t-PAは、血栓を構成するフィブリンへの親和性が高いため、病変部位の血栓溶解に対する選択性が比較的
高く、出血傾向が生じにくい。

血栓溶解療法は、一般に発症から48時間以内に投与されたときの効果が大きく、6日から14日後であっても
血栓溶解の効果があるとされています。
ウロキナーゼなどの血栓溶解薬はプラスミノーゲンをプラスミンに変換する。
このプラスミンがフィブリンを分解するので、ウロキナーゼは全身のフィブリンに作用する。
ウロキナーゼは、病変部位の血栓のみならず、循環血液中の線溶活性を亢進させるので、出血傾向に陥りやすい

【モンテプラーゼ(遺伝子組換え)やクリアクター の溶解使用法】
急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解(発症後6時間以内)
不安定な血行動態を伴う急性肺塞栓症における肺動脈血栓の溶解
通常、成人には体重kgあたりモンテプラーゼ(遺伝子組換え)として27,500IUを静脈内投与する。
投与に際しては、1mLあたり80,000IUとなるように日本薬局方生理食塩液で溶解し、
1分間あたり約10mL(800,000IU)の注入速度で投与する。
モンテプラーゼは半減期が長くワンショットで使用可能です。

27,500IU/kgを80,000IU/mlとなるように生理食塩水で溶解して10ml/分で投与します。
1mlあたり80,000単位/mlとなるように生食で以下のように溶解する。
40万単位  生理食塩液の必要量 5ml/バイアル
80万単位            10ml/バイアル
160万単位            20ml/バイアル
体重kgあたりモンテプラーゼ27,500単位を静脈内投与するから、
体重50kgなら27,500x50=1,375,000単位となる。
137万5000単位なら1375000÷80000=17.1mlとなり
17mlを2分間で投与する。
クリアクター投与6時間後からヘパリンを開始し、凝固系や血小板凝集能のリバウンドに備えます。

『肺血栓塞栓症でのモンテプラーゼの禁忌』
①出血している患者
②頭蓋内出血の既往または頭蓋内腫瘍、動静脈奇形、動脈瘤などの出血性素因のある患者
③頭蓋内あるいは脊髄の手術または障害を受けた患者(2か月以内)
重篤な高血圧患者
⑤成分にアレルギーの既往のある患者
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肺血栓塞栓症

DVT(深部静脈血栓)はPTE(肺血栓塞栓症)と併せてVTE(静脈血栓塞栓症)と総称される。
急性肺血栓塞栓症の主な病態は、
①急速に生じる肺血管抵抗の上昇(肺血管の機械的閉塞に加えて,血栓より放出される神経液性因子と低酸素血症に伴う肺血管攣縮)、および
②低酸素血症(肺血管床の減少による非閉塞部の代償性血流増加と気管支攣縮による換気血流不均衡)である。
PTEはDVTの一部(5~10%)に発症する疾患である。
わが国では人種的に凝固因子の構造異常は極めて少なく、環境因子、妊娠、分娩、手術侵襲による血栓症が主体である。
妊娠中は1.凝固能の亢進、線溶能の低下、血小板の活性化 2.女性ホルモンの静脈平滑筋弛緩作用3.妊娠子宮による腸骨静脈、下大静脈の圧迫4.手術操作による総腸骨静脈の血管障害、手術侵襲による凝固能亢進、血液粘性亢進および術後臥床による血液うっ滞などがDVTさらにはPTEを生じさせやすくしている。
PTEの90%以上は下肢DVTに起因し、PTEのほとんどは産褥期に発症し、その大多数は帝王切開術後である。

周術期肺血栓塞栓症の発症時期は疾患・術式により大きく異なる。
大腿骨・骨盤の骨折手術患者は術前からの予防が、悪性腫瘍の開腹手術患者は術中から術後に予防を開始することが適切と考えられている。
悪性腫瘍手術(一般外科・婦人科・泌尿器科)術後 30 日までの症候性血栓塞栓症の発症は4 割以上が術後 3週以降に起きている。
腹部手術後の低分子ヘパリン4 週間投与では、深部静脈血栓症の発症率は5%と減少している。
術後の抗凝固薬投与は出血リスクが低くなった時点(術後 3 日目・4 日目でも可)から開始し、退院まで長期間(最大 14 日間)継続することが現実的な方法と考える。
静脈血栓塞栓症を強く疑う症例
対象疾患: DVT/PE の既往・疑い症例、血液凝固疾患※、長期寝たきり症例
0000000000(※:抗リン脂質抗体症候群、プロテイン C 欠乏症、
00000000000プロテイン S 欠乏症、アンチトロンビンⅢ欠損症、高ホモシステイン血症など)

1)症状と身体所見
主要症状は呼吸困難と胸痛で、頻呼吸,頻脈が高頻度に認められる.
深部静脈血栓症に起因する所見として、下腿浮腫,calf tenderness,Homans 徴候などがある。
他疾患(心不全,心筋梗塞、狭心症,肺炎,胸水貯留,気胸,無気肺,など)との鑑別が必要である。

2)血液検査
フィブリノゲンにトロンビンが作用すると,フィブリンモノマー(FM)が形成され,
2 分子のフィブリノゲンと結合して SF となり、SF にさらにトロンビンが作用すると,フィブリンポリマーが
起こり,血栓形成に致たる。
少量のトロンビンは直ちにアンチトロンビンやフィブリノゲンにより不活化されるので,血栓形成には
トロンビンと SF の共存が重要であり,SF が増加した病態は血栓準備状態と考えられる.
フィブリンポリマーがプラスミンなどにより分解されると,D-dimer となる.D-dimer そのものに
血栓形成能はなく,D-dimer の増加は血栓形成の結果と二次線溶を反映する.
フィブリノゲンが直接プラスミンにより分解されると,D-dimer は形成されないが,FDP は増加する.
FDP は D-dimer とフィブリノゲン分解産物を含んだものである.
このため,FDP は一次線溶と二次線溶の両者を反映し,D-dimerとはよく相関しD-dimer は二次線溶
のみを反映し、SF は血栓症の診断だけでなく,過凝固状態(前血栓状態)の診断にも有用である。
D-dimer を 測 定 し,0.5 μg / ml 以 上 あ れ ば CTや肺シンチなどの画像診断による確認を行う.
D-dimer が 0.5 μg / ml 以下であれば,活動性のPE / DVT は否定的である。

術前検査では、SpO2,血小板、PT,APTT,Fbg,FDP(Fib/Fbgの分解産物)、D-Dimer,
抗カルジオリピンβ2抗体、ループスアンチコアグラント、血ガスなど拡散障害の有無を調べる。

  • 血小板
      血小板が正常でも出血傾向が認められる場合は先天・後天性の血小板機能異常を疑う。
  • PT
      2次止血能(特に外因系のX,VII,V,II因子、Fbg)を評価する。
  • APTT
      基準値は対象値±25%で、30秒前後である。ヘパリン投与により内因系凝固因子は
    阻害されAPTTは延長する。
  • Fbg
      Fbgは肝臓で生成される。基準値は200~400mg/dl
  • FDP
      正常値は5μg/ml未満
      Fbgの分解である1次線溶は血液癌などの悪性疾患や線溶療法で亢進し、
      Fbの分解である2次線溶(凝固反応が起こってからの線溶)は手術、DIC,血栓症、
    TTPなどで亢進する。
  • D-Dimer
      FDPのうちD分画が重合した構造をし、2次線溶亢進、血管内血栓で増加する。
      基準値0.5~1.0μ/ml

3)胸部 X 線
肺門部肺動脈拡張と末梢肺血管陰影の消失
Westermark’s sign(血流のない肺野が黒く映る),knuckle sign(左右の肺動脈陰影が突出),横隔膜挙上,心拡大といった所見がみられることがある.
肺梗塞を伴う症例では,肺炎様陰影,Humpton’s hump(塞栓部を頂点とした楔状陰影),胸水などがみられる.

4)造影CT
肺血栓塞栓症の確定診断に使用される頻度が増えている.

5)薬物治療

《抗凝固療法》
抗凝固薬は未分画ヘパリンとワルファリンであり,一般的には急性期に即効性の
ある未分画ヘパリンの 静脈内投与を,慢性期にかけてはワルファリンの経口投与を
用いる.

《血栓溶解療法》
血栓溶解療法は,ヘパリンによる抗凝固療法に比較し,より早期に肺動脈内血栓の
溶解が得られ,血行動態を改善する。予後改善効果については,抗凝固療法単独治療に対する優位性が
明らかにされていない。

1. 急性期の治療

  • (ア)抗凝固療法
    00000禁忌でない限り,全例に抗凝固療法を行なう.
    00000未分画ヘパリン:5000 単位ボーラス静注後,500~1000 単位 / 時で持続静注
    000004~6 時間ごとに APTT を測定し,コントロール値の 1.5~2.5 倍になるように用量を設定する.
    00000慢性期にかけて経口ワルファリンが使用されるが,投与開始より治療域に達するまでには
    0000004~5 日間を要するため,ヘパリン治療下で開始しワルファリンが治療域で安定した後にヘパリンを
    000000中止する。
    000000ワルファリン:3~5 mg /日程度の維持量で開始する.
    0000003 日後より PT-INR を連日測定し,2 日間連続で 1.5~2.5 の治療域に到達したことを確認した上で
    000000未分画ヘパリンを中止する.
  • (イ)血栓溶解療法
         出血のリスクを評価したうえで,更に血栓溶解療法を行なう.
         モンテプラーゼ: 13,750~27,500 単位 / kg を約 2 分間で静注する.

例)27,500IU/kgを80,000IU/mlとなるように生理食塩水で溶解して10ml/分で投与します。
1mlあたり80,000単位/mlとなるように生食で以下のように溶解する。
40万単位  生理食塩液の必要量 5ml/バイアル
80万単位            10ml/バイアル
160万単位            20ml/バイアル
体重kgあたりモンテプラーゼ27,500単位を静脈内投与するから、
体重50kgなら27,500x50=1,375,000単位となる。
137万5000単位なら1375000÷80000=17.1mlとなり
17mlを2分間で投与する。

2.慢性期の治療

  (ア)PT-INR を 1.5~2.5 の治療域に維持できるワルファリン量を継続投与する.
  (イ)推奨されるワルファリンの継続期間
     可逆的危険因子(手術や一時的な臥床など)の初発症例
                →少なくとも 3 ヶ月間
     特発性(明らかな危険因子を有さない)の初発症例 少なくとも
00000000000000000000000000000→6 ヶ月間
     持続性危険因子(癌,凝固異常症,など)を有する症例や
0000000000000000000000000000000抗凝固療法中止後の再発症例 →無制限
      

参考

FDP,D-dimer,SF の使い分け
ヘパリン は,アンチトロンビン(AT;antithrombin)を介して抗凝固作用を示す.
ヘパリンが AT に結合すると,速やかにヘパリン・AT・プロテアーゼ複合体が形成され,その作用が即時に阻害される.
出血傾向あるいは術前検査では,スクリーニング検査として APTT,PT,Fbg と血小板
数(および D-ダイマーなど)を確認する.
PT および APTTが正常であれば,凝固因子を定量する必要はない.

           FDP        D-dimer        SF
    検体 血清(血漿で測定できる   血漿        血漿
    キットもある)           
一次線溶0000000000000000000000×         ×
二次線溶00000000×
血栓形成0000000000000000000  ◎000000       ○
過凝固状態000000000×00000000000000000000000
増加期間00000000000000000000000 1-2 週間00000  1 日間
治療効果の評価00000000000000   △0000000000000

◎;非常に有用,○;有用,△;有効な場合がある,×;無効
SF のピークは約 1 日で,D-dimer や FDP は約 1-2 週間である.
SF とD-dimer を同時に測定する
線溶療法が行われると,D-dimer の増加は著しくなる.線溶療法時には,D-dimer の増加が高いほうが予後は良い.
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深部静脈血栓症

画像の説明

症状が片側性の場合は深部静脈血栓症を疑い,両側性の下肢腫脹は全身性疾患(心不全,腎不全,肝不全等)を疑う。
下腿が腫脹している場合は大腿から膝にかけての大腿静脈閉塞が存在する.
これらの徴候はスクリーニングに用いられる.
Homans’s sign(足関節の背屈により下腿痛が出現する),Bancroft’s sign
(下腿を前後に圧迫した時に圧痛が生じるが下腿を両側から圧迫した時には疼痛は生じない)
などがある.
大腿静脈あるいは膝窩静脈に沿って指で押すときに圧痛が生じる場合は深部静脈血栓症を
疑い、また,大腿周囲径で 2 cm 以上の左右差,下腿周囲径で 1.5 cm 以上差が
ある場合にも深部静脈血栓症を疑う

下肢静脈エコーの実際
造影CTと下肢静脈エコーがDVT診断のゴールドスタンダードになっている。
細い静脈の血栓や小血栓、壁在血栓など高精度画像が必要な場合や血栓確認の
圧迫法(ゴールド・スタンダード)はリニアプローブの方がよく、広い範囲を検査したい場合や
大腿部中枢・腸骨静脈を検査したい場合はコンベックスプローブを用いる。
ヒラメ静脈血栓は飛散することきは稀であるので充分圧迫する必要がある。

深部静脈血栓症の早期治療目的は,
第 1 に肺血栓塞栓症の予防,
第 2 に二次性静脈瘤と下腿鬱滞性症候群(鬱滞性色素沈着,湿疹,皮膚萎縮,遷延性下腿潰瘍)の予防である.
急性期の深部静脈血栓症にはヘパリンによる抗凝固療法を行う .
発症後約 1 週間以内に治療を開始した場合は著効し,3~4 週間でも有効である.

ごく急性期の深部静脈血栓症で血栓が大腿静脈あるいは腸骨静脈にかけて存在する場合には,入院のうえ治療開始後、約 1 週間は歩行を禁止してヘパリン療法を行う.
急性期の約 2 週間は下肢圧迫装置の使用や弾力ストッキングの着用を避ける.
慢性期には弾力ストッキングの着用を勧める.
なお,出血がある場合には原則として抗凝固療法や線溶療法は禁忌である.
ヘパリンの持続的投与法は,10 単位/ kg / 時間から開始し増量して APTT を
50~60 秒に保つ
アンチトロンビン活性が 70%未満の場合はアンチトロンビン製剤の補充を考慮する.

  • ヘパリン投与中に血小板数減少と動脈や静脈の血栓症が認められた場合には,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)を疑い,ヘパリンを中止してアルガトロバン(スロンノン)に切り替える.
    ヘパリンの抗凝固効果が十分に認められず,APTT を 1.5 倍に延長するために
    35,000 単位/ 日以上のヘパリンを要する病態は,「ヘパリン抵抗性」として知られる.
    ヒスチジンリッチグリコプロテイン,血小板第 4 因子などの血漿蛋白,テトラサイクリン,抗ヒスタミン剤,ジギタリス,ニコチン酸などの薬剤によるヘパリン作用の中和が考えられる
  • 血栓を,急速に改善させたい場合
    線溶療法としてウロキナーゼは 36 万単位を1 時間で 静脈注射し,その後
    6 時間毎に6 万単位を 1 時間で静脈注射する.
    ウロキナーゼは計 96 万単位を目処とする.
    ただし,日本で許されるこの投与量では有効性が明確でない.
  • 急性期のヘパリン治療が終わるとワーファリン治療に移る
    ワーファリン投与開始前に,女性に対して催奇形性についての説明と,プロテイン C 活性とプロテイン S 抗原(活性の保険適応が無いため)の測定を行う.
    プロテインC 欠損症およびプロテイン S 欠損症では,ワーファリン中止後だけでなく投与中でも、また、抗リン脂質抗体症候群は特に深部静脈血栓症を再発しやすい.
    ヘパリン投与開始後 7 日目から,ワーファリン 2 mg 投与を開始してその後増減を行い PT の INR 値を 1.5~2.0 にコントロールする.
    深部静脈血栓症の再発予防のために,ワーファリンを原則として 3 ヶ月間投与する.
    ワーファリンが設定値に達した後にヘパリン投与を中止する.
    慢性期で発見された症例や急性期の下腿限局型では最初からワーファリン療法を開始できる.
    治療を 3 ヶ月間適切に行った場合の再発率は5.3%であるのに対して,不適切に行った場合の再発率は 47%であると報告されている。

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抗凝固剤を使用できないとき、または、度重なる肺塞栓症を伴う場合は、永久留置下
大静脈フィルターを使用出来る。

(静脈内間歇注射法)
1回5,000~10,000単位のヘパリンを、4~8時間毎に投与する。
注射開始3時間後から、24時間毎に活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定し、投与前の1.5~2.0倍になるように投与量を調整する。

(皮下注射用の高濃度のヘパリンを使用)
初回に15,000~20,000単位、続いて維持量として1回10,000~15,000単位を1日2回、
12時間間隔で投与する。
手術又は心筋梗塞等に続発する静脈血栓症の予防には,5,000 単位を 12 時間ごとに
注射する.
投与期間は 7~10 日とし,その投与期間の後半に経口抗凝固薬を併用し,以降は
経口抗凝固薬単独に移行する指針も提唱されている.

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『血栓溶解療法の適応』

①肺塞栓症でショックや低血圧が遷延する広範型肺塞栓症で治療の第一選択となります。
②ショックでない症例
  正常血圧で右心機能障害のない非広範型肺血栓塞栓症では、抗凝固療法のみで治療します。
  抗凝固療法に関してはヘパリンは5000IUを静注し、引き続き18U/kg/時を持続静注します。
0000最初の24時間は開始6時間毎に
  その後は24時間毎にAPTTを測定しコントロールの1.5~2.5倍になるように調整します。

  ヘパリン(10000単位/10ml)2Aと5%ブドウ糖液500mlで40単位/1mlになるように調節します。
  初期量は原液を4-5ml静注します。そして作った製剤を精密持続点滴22ml/hでスタートします。

③血栓溶解療法ですが、一般に発症から48時間以内に投与されたときの効果が大きいですが、6日から14日後であっても血栓溶解の効果があるとされています。
  血栓溶解薬にはウロキナーゼやt-PAがありますが、ウロキナーゼはt-PAと異なり、
000フィブリンに結合しないで血液中の
  プラスミノーゲンを活性化するので出血の危険性が高くなります。
000つまり、フィブリンのある血栓局所ではなく
0000全身性に作用してしまいます。そのためウロキナーゼは使いずらい。

静脈血栓塞栓症の予防法と局所麻酔

早期離床やベッド上での運動がある。下腿静脈(ひらめ)のポンプ作用により下肢静脈の血流量が増加する。
弾性包帯、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法などの理学的予防法があるが血栓を遊離させる可能性があるので
術前にDVTの有無を診断しておく。

画像の説明

予防法の種類
・早期離床および積極的な運動
・弾性ストッキング
 ハイソックス・タイプがストッキング・タイプより推奨される。
00弾性ストッキングや弾性包帯の使用を考慮し、入院中は術前術後はもちろん、
00静脈血栓塞栓症のリスクが続く限り終日着用する。

・間欠的空気圧迫法
 カーフポンプ・タイプとフットポンプ・タイプがよく使用されるが,手術の種類など目的により使い分ける。
00原則として,周術期では手術前あるいは手術中より装着開始,
 また外傷や内科疾患では臥床初期より装着を開始し,少なくとも十分な歩行が可能となるまで終日装着する。
 
・低用量未分画ヘパリン
 8時間もしくは12時間ごとに未分画ヘパリン5,000単位を皮下注射する方法である。
 高リスクでは単独で有効であり,最高リスクでは理学的予防法と併用して使用する。
00脊椎麻酔や硬膜外麻酔の前後に使用する場合には,未分画ヘパリン2,500単位皮下注(8時間ないし12時間ごと)に減量することも選択肢に入れる。
 開始時期は危険因子の種類や強さによって異なるが,出血の合併症に十分注意し,必要ならば手術後なるべく出血性合併症の危険性が低くなってから開始する。
 
 抗凝固療法による予防は,少なくとも十分な歩行が可能となるまで継続する。
00静脈血栓塞栓症のリスクが持続して長期予防が
 必要な場合,未分画ヘパリンからワルファリンに切り換えて抗凝固療法を継続する。

刺入操作やカテ抜去

  • 1)刺入操作は未分画ヘパリン投与から4時間空ける。高濃度未分画ヘパリン皮下注(ヘパリンカルシウム)では,投与後10時間は空ける。
  • 2)未分画ヘパリン投与は刺入操作から1時間空ける。
  • 3)カテーテル抜去は未分画ヘパリン投与の1時間前,または最終投与から2~4時間後に行う。高濃度未分画ヘパリン皮下注(ヘパリンカルシウム)では,最終投与から10時間は空ける。

用量調節未分画ヘパリン
 APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の正常値上限を目標として未分画ヘパリンの投与量を調節して,抗凝固作用の効果をより確実にする方法である。最初に約3,500単位の未分画ヘパリンを皮下注射し,投与4時間後のAPTTが目標値となるように,8時間ごとに未分画ヘパリンを前回投与量±500単位で皮下注射する。

用量調節ワルファリン
 ワルファリンを内服し,PT-INR(プロトロンビン時間の国際標準化比)が1.5~2.5となるように調節する方法である。
 ワルファリン内服開始から効果の発現までに3~5日間を要するため,術前から投与を開始したり,投与開始初期には他の予防法 を併用したりする。

  • 1)長期にワルファリン投与を受けている患者は,基本的には手術前3~4日前に投与を中止する。
       抗凝固療法の継続が必要であれば未分画ヘパリン10,000~15,000単位/日に変更する。
       未分画ヘパリン投与は脊椎麻酔や硬膜外麻酔施行2~4時間前に中止する。ブロックの直前にPT-INR<1.5,
       あるいはACT(活性化全血凝固時間)<180秒であることを確認する。
  • 2)カテーテルの抜去はPT-INR<1.5で行う。
  • 3)硬膜外ブロック中にPT-INR>3となった場合は,ワルファリン投与を中断するか,減量する。

線溶(fibrinolysis )とはt-PAがプラスミノゲン(plasminogen )をプラスミン(plasmin )に転換することによって,プラスミンが主としてフィブリン(fibrin )(血栓:thrombus )を分解する現象である.
血栓溶解の分解産物がFDP であり,フィブリン分解産物の細小単位が D ダイマーである。
t-PA(血管内皮から産生)とプラスノゲン(肝から産生)は,フィブリンに対する親和性が高いため血栓上で効率よく線溶が進行することになる.
血中 FDP や D ダイマーが上昇は通常は血栓の分解を意味している.
血栓が溶解した(凝固・線溶の両者の活性化が進行した)サインと考えることができる.
DICにおいては,全身性持続性の著しい凝固活性化がみられて全身臓器の細小血管に微小血栓が多発するが,
同時進行的に線溶も活性化して血栓が溶解して FDP や D ダイマーが上昇する.

トラネキサム酸(商品名:トランサミン)は,プラスミンのフィブリンへの吸着を阻止することで抗線溶作用を発揮する.
連用することで血中プラスミノゲン活性が低下する。
トラネキサム酸の血中半減期は,1 ~ 1.5 時間であり,3 ~ 4 時間以内で腎から排泄される(腎代謝).最も効果を発揮する
のは全身性の線溶活性化が原因の出血である.
精査を行っても出血性素因が発見されなかった場合の種々の出血(鼻出血,紫斑など)に対しても,カルバゾクロムスルホン酸
ナトリウム(商品名:アドナ)とともにトラネキサム酸が投与される場合があるが
有効性に関して過剰な期待を持たない方が良い.また,血尿に対してトラネキサム酸を投与すると,凝血塊が溶解されにくくなり尿路結石の原因になることがあるため注意が必要である.
線溶療法に用いられる薬剤はフィブリンを直接溶解するプラスミンと,その活性化を触媒するプラスミノーゲンアクチベータ(PA )である.梗塞臓器の傷害を最小に抑えるためには迅速な血栓溶解が重要である.
生理的にはフィブリン上でのみプラスミンが産生され効率的にフィブリンが溶解する機構が存在するが,治療のために PA が過剰に投与されるとこれらの制御機構が機能せず,
血漿中で線溶活性が過剰発現しフィブリノーゲンが分解されることになる
高フィブリン親和性薬剤としては tPA がその代表であり,全身性投与でも局所への集積が期待できる。
線溶系は
α2AP と PAI-1 (血栓症発症の危険因子)という生理的な阻害因子により調節されている.PAI-1は血中濃度が低く,影響は小さいが、α2AP は血漿中濃度も高く,線溶療法により生じたプラスミンを速やかに不活性化することからその意味合いは大きい.
プラスミン産生量がα2AP 量を凌駕するとフィブリノーゲン分解により出血の危険性が高まるとされ,血漿中のα2AP 残存活性が安全域を知る上で重要になる.
一方,効率的な血栓溶解には血栓局所においてα2AP 量を上回るプラスミンの産生が必要である.梗塞による組織破壊は無論血管壁にもおこる.脆弱になった血管に高圧で血液が再還流すると血管壁が破綻し出血をきたすことになる.これには再環流に伴い発生する活性酸素等のフリーラジカルも関わる。
therapeutic time window と呼ばれる発症から治療開始までの許容期間があり、
tPA 全身投与は 3 時間以内としている.tPA は他の PA より脳出血の合併症が多い

動脈血栓は抗血小板療法が,静脈血栓に対しては抗凝固療法
動脈血栓は「血小板血栓(白色血栓)」とも呼ばれ,血小板が主体をなし、高圧,高速血流状態で生じる血栓である.
基礎疾患としては,
①動脈硬化性疾患(病態)(高血圧,脂質代謝異常,糖尿病や喫煙などが主な危険因子となる.女性の場合には閉経によるホルモンバランスの変化)の存在,②血液粘稠度の亢進(ネフローゼ症候群でも血管内脱水) ③不整脈・弁膜症(左心弁の弁置換術が行われたり,心房細動) ④血管炎などの炎症性疾患の存在,などを
考慮する必要がある.

●静脈血栓は,フィブリンと赤血球を主体とする血栓が生じ,「フィブリン血栓」または
「赤色血栓」といわれる.
静脈血栓の基礎疾患・病態には,凝固阻止因子活性の低下,血流のうっ滞,組織因子の産生・放出,凝固因子活性の上昇などが報告されている
特に重要なのはアンチトロンビン(AT ),プロテイン C(PC ),プロテイン S(PS)活性の低下である.
ネフローゼ症候群では AT や PS などの活性が低下し静脈血栓の原因となりうる.
妊娠や出産,長期臥床・下肢下垂では下肢静脈のうっ滞を来たし静脈血栓の原因となる.腹部・骨盤内臓・整形外科
(股関節・膝関節)手術は手術侵襲による組織因子の放出とともに血流のうっ滞を来たし,静脈血栓を惹起する.
腫瘍からの組織因子産生・放出が原因と考えられている.の右→左シャントが存在脳梗塞の原因となりうる(奇異性塞栓症)
抗リン脂質抗体症候群は動脈にも静脈にも血栓を発症する疾患であり,動脈・静脈にかかわらず,
若年性,再発性血栓症例では鑑別疾患として忘れてはならない.
エコノミークラス症候群は深部静脈血栓症であり,抗血小板薬の有用性は証明されていない. 心房細動や弁置換術後の心源性脳塞栓症は左心房内での乱流による血栓,異物(弁)による血栓が原因となるため,血栓(再発)予防としては抗血小板療法ではなく,静脈血栓に準じてワルファリンによる抗凝固療法を行う必要がある

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