甲状腺疾患

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甲状腺機能亢進症の分類

  1.原発性(甲状腺性): TSH低値
    A過機能性
      ①バセドウ病 : 自己免疫性、刺激型TSH受容体抗体
      ②高hCG血症 ; 破壊性状奇胎、正常妊娠第1期
      ③プランマー病; 甲状腺過機能結節、TSH受容体異常
      ④中毒性多結節性甲状腺腫 ; 腺腫様甲状腺腫の一部
      ⑤異所性甲状腺腫 ; Struma ovari
    B破壊性(破壊性は放射性ヨード甲状腺摂取率が非常に低い)
     ①無痛性甲状腺炎
        無痛性甲状腺炎には 抗甲状腺薬は無効であり投与禁忌である。
        症状が軽い場合はβ遮断剤や無機ヨードを投与して経過を見ながら診断する。
     ②亜急性甲状腺炎
     ③急性化膿性甲状腺炎
     ④放射線性甲状腺炎
     ⑤一部の甲状腺癌
  2. 外因性TSH低値(外因性は放射性ヨード甲状腺摂取率が非常に低い)
      ①factious thyroitoxicosis甲状腺ホルモン薬(やせ薬)
      ②食餌性 ウシ甲状腺摂取
  3.中枢性(下垂体性):SITSH
    TSHが抑制されておらず正常あるいは異常高値を示す場合は下垂体からの異常
    分泌を考える。一方、甲状腺抗体や異常アルブミンなどの結合蛋白や薬物との
    干渉物質がないかチェックする。
     ①TSH産生下垂体腺腫
     ②下垂体型甲状腺ホルモン不応症
  4.末梢性: 甲状腺機能検査正常

画像の説明

甲状腺機能検査としてはTSHと遊離サイロキシン(fT4)を測定し、必要に応じて
遊離トリヨードサイロニン(fT3)も測定します。
血中の総ホルモン量であるT3T4はサイロキシン結合グロブリンTBGなど結合蛋白濃度の影響を受けるので一般的には測定しない。。

甲状腺自己抗体検査
00000000バセドウ病の疑い
000000000000
TSHレセプター抗体(TRAb)
必要に応じて甲状腺刺激抗体(TSAb)
00000000000000
バセドウ病と無痛性甲状腺炎を鑑別する際の感度・特異度は
TSAB(第二世代、第三世代)の方が優れている。

0000000000000000000慢性甲状腺炎の疑い
000000000000 ---------------------------------------------
000000000000000000000000000000000000000
サイログロブリン抗体(TgAb) ←RIA→ 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
0000000000↑               ↑
   サイロイドテスト ←凝集法→ マイクロゾームテスト
(抗サイログロブリン抗体)    (抗甲状腺マイクロゾーム抗体)

甲状腺腫瘍関連検査
超音波検査と穿刺吸引細胞診が重要で、血液検査は補助診断として利用します。
サイログロブリン:(甲状腺乳頭癌・濾胞癌) 甲状腺全摘後の残存・転移の有無
     甲状腺癌以外の種々の病態で上昇する。
     サイログロブリンは甲状腺癌以外の種々の病態で上昇するので
     甲状腺癌の診断にはあまり有用ではない。
     抗サイログロブリン抗体(TgAb)陽性の場合、影響を受ける。
カルチトニン: (甲状腺髄様癌)診断、甲状腺全摘後の残存・転移の有無

甲状腺機能亢進症では、総コレステロール低下、アルカリフォスファターぜの上昇が
半数程度に見られ、甲状腺機能低下症では、総コレステロール、
クレアチンキナーゼ(CK)の上昇が半数程度に見られ、20%程度にAST/ALTの上昇を
認めます。

抗甲状腺薬治療中はfT3,fT4,TSH,末梢血液検査、白血球分画、ALTを
治療開始後3け月間は2週間毎に、その後は2ケ月毎に行います。
抗TSHレセプター抗体を3~6ケ月毎に測定し抗甲状腺薬の中止が可能か判断します。
甲状腺ホルモン剤で治療開始後、2週間ごとにFT3,FT4を測定し基準範囲に入るまで
薬剤を増量します。
甲状腺機能低下症では3~6カ月毎にTSHを測定しTSHが基準範囲内になるように
TSHが高ければ甲状腺ホルモンを増量し、TSHが低ければ減量します。

甲状腺中毒症の原因

000バセドウ病 (WBCやや減少) 00000中毒症に占める割合 65%
000無痛性甲状腺炎000000000000000000000000000 16%
000亜急性甲状腺炎0000000000000000000000000000 8%
000機能性甲状腺腫瘍
000サイロキシン過剰投与
000妊娠甲状腺機能亢進症(GTH)
000薬剤性甲状腺機能異常
000アイソトープ治療後甲状腺炎
000橋本病急性増悪
000TSH不適合分泌症候群(SITSH)

※WBC増多は橋本病の急性増悪や急性化膿性甲状腺炎、未分化癌でみられるが稀である。

00000000000000000000000000000遊離T4,遊離T3の上昇

TSHが正常あるいは上昇SITSH     TSH抑制              
TSH産生下垂体腫瘍
甲状腺ホルモン不応症

FT4,FT3測定上の異常
異常アルブミンなど
    
  
甲状腺腫大、眼症・・・バセドウ病の可能性大
眼庄なし、超音波で血流増加なし
      ・・・無痛性甲状腺炎の可能性大
疼痛、発熱、硬い甲状腺
        ・・・亜急性甲状腺炎の可能性大
結節性甲状腺腫
           ・・・機能性結節の可能性大

[I] 甲状腺中毒症(甲状腺ホルモンの過剰)を見た場合
0000甲状腺腫
  1%妊娠性甲状腺機能亢進症(hCGの甲状腺刺激作用は8~13週に多く見られる。)
  * TSH↓ FT4↑ 
000000000000⇒TRAb(+)⇒バセドウ病(I123摂取率びまん性取り込みが高い)
       ⇒TRBAb(-)⇒無痛性甲状腺炎(疼痛のない甲状腺腫、I123摂取率取り込みが低い)
[II]甲状腺機能正常の甲状腺腫を見た場合
   橋本病、単純性甲状腺腫(腺腫様甲状腺腫)
   TSH→、FT4→ ⇒TgAb / TPOAbのどちらか(+)⇒橋本病
            ⇒TgAb / TPOAbのどちらも(-)⇒単純性甲状腺腫
   TSH ↑、FT4↓⇒甲状腺腫(あり)⇒TgAb / TPOAbのどちらも(-)⇒橋本病疑い
                     ⇒ TgAb / TPOAbのどちらか(+)⇒橋本病

   ●甲状腺ホルモンの合成が高まり分泌が高まる場合
    (1)甲状腺機能亢進症を起こす代表的疾患は甲状腺を刺激する抗体
     TRAb(TSH Receptor Antibody)によって生じるバセドウ病、絨毛性ゴナド
     トロピン過剰のため甲状腺が刺激されて生じる機能亢進症、また、甲状腺
     ホルモンを自律的に産生する腫瘍などがある。
   ●甲状腺に炎症が生じてホルモンが濾出する場合
0000000(2)破壊性甲状腺中毒症にはウイルス感染によると考えられている亜急性甲状
0000000000腺炎と自己免疫によると考えられている無痛性甲状腺炎がある。

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甲状腺中毒症の一般的治療法

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アイソトープ治療は中高年で高甲状腺治療で副作用が出たり寛解しない例や手術の
再発例が対象となります。晩発性甲状腺機能低下症で不可避な結果と考えられます。
甲状腺癌や他の腫瘍の頻度を増加させることはないがバセドウ病眼症の悪化があると
言われる。
手術は内科的治療で寛解せずコントロール不良の若年者、抗甲状腺剤の副作用、
腫瘍合併、短期間の治療希望したり甲状腺腫が非常に大きい場合に適応となります。

甲状腺クリーゼ

生命が危険となるような激しい症状を呈する甲状腺中毒症。
未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患がありこれに何らかの強いストレスが加わった時に
甲状腺ホルモン作用過剰により生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をのことを指す。
死亡率20%以上の予後不良な疾患であり感染、手術、ストレスなどを誘因として発症する。
バセドウ患者であることがわからずに緊急手術を受けると術後6~18時間で甲状腺クライシスを起こす
ことがある。現在では感染症が誘因として最も多い。
原因不明の頻脈、異常な発汗、下痢、発熱、心不全症状、中枢神経症状を見たら甲状腺クライシスを
疑わなければならない。
高齢者は高熱多動などを呈さないapathetic thyroid stormに注意を要する。55歳以下にAfを認めることは
非常に稀であり若年者にafを見た場合は甲状腺機能亢進症を必ず考えなければいけない。
臨床症状
全身症状
38度以上の高体温、高度の頻脈や多汗、ショック
臓器症状
80%以上に中等度以上の中枢神経症状(譫妄、錯乱、傾眠、昏睡)が存在し、JCS2以上の重篤例が多い。
28%以上の例で黄疸が見られる。心房細動は約40%に見られる。
心不全心房細動との間の関連性があった以外は症状は独立して発症する。

甲状腺クリーゼの診断基準
必須項目
甲状腺中毒症状の存在(遊離T3および遊離T4の少なくともいずれか一方が高値)
症状
中枢神経症状(不穏、譫妄、精神異常、傾眠、痙攣、昏睡、JCS1以上)
他の症状

  • 38度以上の発熱
  • 130/min以上の頻脈
  • 心不全症状(肺水腫、肺野50%以上の湿性ラ音、心源性ショックNYHA4度以上)
  • 消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢、黄疸を伴う肝障害)

確実例
必須項目および以下を満たす
a. 中枢神経症状+他の症状項目1つ以上、または
b. 中枢神経症状以外の症状項目3つ以上

疑い例
c.必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ、または
d.必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫の存在が
あって上記確実例条件のa.またはb.を満たす場合

甲状腺クリーゼの治療
①甲状腺ホルモン産生・分泌の減弱
②甲状腺ホルモン作用の減弱
③全身管理
④誘因除去

末梢での甲状腺ホルモンの作用を抑える薬として
①副腎皮質ステロイド②βブロッカー ③ヨード溶液(合成・分泌を抑える)
④抗甲状腺薬がある。

抗甲状腺剤は大量に投与する
  PTU4~5錠(200~250mg)またはチアマゾール4錠(20mg)を6時間ごとに投与。
MMIのほうが作用発現が速く血中半減期も長い。(MMIが4~7時間、PTUが1~1.6時間)
  抗甲状腺剤投与後1時間以上空けて無機ヨード剤(ホルモン合成の材料にならない)
を投与する。(ルゴール液1ml/8時間毎または飽和ヨードカリ3~5滴を8時間ごとに投与)
無機ヨードは甲状腺からT4の分泌を抑制する(Wolff-Chaikoff効果)。
PTU,副腎皮質ホルモン、β-blockerにはT4からT3への変換抑制作用がある。
相対的副腎不全の状態にあるので副腎皮質ステロイドを投与する。
ハイドロコルチゾン(ソルコーテフ)50~150mgを時間ごとの投与で開始し漸減していく。
βブロッカーはメトプロロール(セロケン)20mg3錠/3x/day、プロプラノロール(インデラル)
10mg4錠/4x/dayで開始する。
中枢神経症状があるときは鎮静剤や抗痙攣剤を使用する。
全身管理としては、一般的緊急処置、十分な輸液と電解質補正、徹底した身体の冷却
解熱剤投与を行う。頻脈に対してはβ-blockerで心拍数コントロールを行い心不全には
心血行動態に応じた治療を行う。
予後
致死率は10~20%で死因は心不全、不整脈、ショック、ついで肝不全が続く。

バセドウ病

画像の説明

バセドウ病の所見

  • 甲状腺中毒症状(あることも無いこともある)→Euthyroid Graves`disease
  • 血管雑音、※甲状腺腫大
  • 眼瞼腫脹、眼瞼後退、※眼球突出          ※は自己免疫機序に関連
  • 限局性粘液水腫(前頚部など)
  • ※爪甲剥離、※脱毛、※白斑
  • 周期性四肢麻痺(過食後)

ポイント
①甲状腺腫大はTRab刺激が必要以上に甲状腺ホルモンを作り、自己免疫性反応(リンパ球浸潤、サイトカイン、VEGFなど)、TSH上昇(過剰治療による甲状腺機能低下により違和感の強い甲状腺腫大をきたす)などで出現する。
②慢性の甲状腺ホルモン過剰では、心房細動のみならず拡張型心筋症様変化、頻拍性心筋症や肺高血圧など
心血管系不全を呈してくる。バセドウ病が再燃悪化するときに甲状腺が増大することがあるが疼痛はない。

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【バセドウ病の診断基準ガイドライン】

a)臨床所見
1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
2.びまん性甲状腺腫大
3.眼球突出または特有の眼症状

b)検査所見
1.遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値
2.TSH低値(0.1μU/ml以下)
3.抗TSH受容体抗体(TRAb, TBII)陽性、または刺激抗体(TSAb)陽性
4.放射線ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性

診断
a)の1つ以上に加えて、b)の4つを有するもの

2)確からしいバセドウ病
a)の1つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの

3)バセドウ病の疑い
a)の1つ以上に加えて、b)の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くもの

付記
1.コレステロール低値、アルカリフォスターゼ高値を示すことが多い。
2.遊離T4正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある。
3.眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離T4およびTSHが正常の例はeuthyroid Graves' diseaseまたはeuthyroid ophthalmopathyといわれる。
4.高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする。
5.小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める。
6.遊離T3(pg/ml)/遊離T4(ng/dl) 比は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる。

無痛性甲状腺炎の診断ガイドライン

a)臨床所見
1.甲状腺痛を伴わない甲状腺中毒症
2.甲状腺中毒症の自然改善(通常3ヶ月以内)

b)検査所見
1.遊離T4高値
2.TSH低値(0.1μU/ml以下)
3.抗TSH受容体抗体陰性
4.放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率低値

診断
1)無痛性甲状腺炎
a)およびb)の全てを有するもの

2)無痛性甲状腺炎の疑い
a)の全てとb)の1~3を有するもの

除外規定
甲状腺ホルモンの過剰摂取例を除く。

付記
1.慢性甲状腺炎(橋本病)や寛解バセドウ病の経過中発症するものである。
2.出産後数ヶ月でしばしば発症する。
3.甲状腺中毒症状は軽度の場合が多い。
4.病初期の甲状腺中毒症が見逃され、その後一過性の甲状腺機能低下症で気付かれることがある。
5.抗TSH受容体抗体陽性例が稀にある。

[III] 検査値からの評価
① TRAb>2.0 の時バセドウ病の可能性が大きいが弱陽性の場合は
  無痛性甲状腺炎も考えながら経過観察する。
  ● RAIU(radio-active-iodine-uptake)が正常か高値の場合、
    取り込みがびまん性であればバセドウ病(カラードプラーで血管の占める割合が
     30%以上)、
    Hot noduleであれば機能性結節性甲状腺腫である(シンチグラム)。
  ● RAIU低値の場合、痛みが無ければ無痛性甲状腺炎、
                 疼痛があれば亜急性甲状腺炎である。
② FT3/FT4>2.9 であればバセドウ病の可能性が高く、
  FT4>2.9であれば殆どがバセドウ病
    甲状腺中毒症が軽度であれば治療を始めずに2~4週後にFT4を再検し低下傾向に
    あれば無痛性甲状腺炎の可能性が高い。
③TSH高値、FT4低値、正常の場合
0000橋本病か萎縮性甲状腺炎によるものである。
0000萎縮性甲状腺炎ではTRAbが陽性になることもある。
0000甲状腺抗体が陰性であってもこのようなときは ヨード過剰摂取や亜急性甲状腺炎、
0000無痛性甲状腺炎の回復期の可能性もある。
0000穿刺吸引細胞慎でリンパ球浸潤があれば橋本病と診断する。
④高齢者でFT3正常でTSHのみが上昇している潜在性機能低下は原因不明のことが多い。
0000TgAb(Thyroglobulin Autoantibody),TPOAb(thyroid peroxidase antibody)が
0000陰性であっても橋本病を否定することは出来ない。

参考値
機能検査  CLIA法
0000TSH 0.436~3.78 μIU/ml, FT3 2.1~4.1pg/ml , FT4 1.0~1.7 ng/dl
自己抗体検査 TgAb 0.3 未満U/ml, TPOAb(=抗マイクロゾーム抗体(MCHA))0.3 未満 U/ml , TRAb1.0 未満IU/l
橋本病の場合:TgAbとTPOAbができて甲状腺を破壊、徐々に甲状腺ホルモンがつくられなくなってしまう。

亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン

a)臨床所見
有痛性甲状腺腫
b)検査所見
1.CRPまたは赤沈高値
2.遊離T4高値、TSH低値(0.1μU/ml以下)
3.甲状腺超音波検査で疼痛部に一致した低エコー域

診断
1)亜急性甲状腺炎
a)およびb)の全てを有するもの

2)亜急性甲状腺炎の疑い
a)とb)の1および2

除外規定
橋本病の急性増悪、嚢胞への出血、急性化膿性甲状腺炎、未分化癌

付記
1.上気道感染症状の前駆症状をしばしば伴い、高熱をみることも稀でない。
2.甲状腺の疼痛はしばしば反対側にも移動する。
3.抗甲状腺自己抗体は原則的に陰性であるが経過中弱陽性を示すことが有る。
4.細胞診で多核巨細胞を認めるが、腫瘍細胞や橋本病に特異的な所見を認めない。
5.急性期は放射線ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率の低下を認める。

甲状腺機能低下症の診断ガイドライン

症状  無気力、眼瞼浮腫、寒がり、便秘、嗄声、体重増加、無月経など
理学所見 びまん性甲状腺腫大、アキレス腱反射弛緩相遅延
一般検査  コレステロール高値、AST/ALT高値、CPK高値、貧血、CEA軽度上昇、
        ※γグロブリン/ZTT高値(橋本病の場合)

       甲状腺機能低下症の原因
原発性甲状腺機能低下症       中枢性甲状腺機能低下症
0-------------------------------------------------------------------------------0
橋本病(慢性甲状腺炎)       腫瘍(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫)
萎縮性甲状腺炎          血管障害(Sheehan症候群) 
先天性(発生異常、合成異常)    リンパ球下垂体炎
無痛性甲状腺炎の一時期      感染症(結核など)
   (出産後に良く見られる)   肉芽腫(サルコイドーシスなど)
亜急性甲状腺炎の一時期      TSH単独欠損症
ヨード摂取過多          TRH単独欠損症
医原性              医原性 
 (放射性ヨード治療、頚部放射線    (頭部放射線照射、手術、薬剤性
照射、甲状腺摘出後、          --ステロイド、ドパミンなど)
薬剤性-抗甲状腺薬)

特殊な病態として末梢組織の甲状腺ホルモン受容体の遺伝子異常により血中ホルモン
レベルに見合ったホルモン効果が発現しない甲状腺ホルモン不応症があります。
甲状腺機能低下症の殆どは原発性であり橋本病がほとんどの原因である。
その他、萎縮性甲状腺炎や先天性のものがある。
無痛性甲状腺炎や亜急性甲状腺炎では経過中に一過性の機能低下に陥ることがある。ヨード過多による一過性の機能低下も知られている。
一方、中枢性機能低下症の原因には、下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫などの脳腫瘍、
Sheehan症候群などの血管障害、リンパ球性下垂体炎、感染や肉芽腫、放射線照射や
手術などの医原性のものがあり、その他多くは他の下垂体機能異常を伴っている

00000000000甲状腺機能低下症の原因疾患診断のための検査
原発性甲状腺機能低下症          中枢性甲状腺機能低下症
0-------------------------------------------------------------------------0
橋本病
 *抗マイクロゾーム(抗TPO)抗体陽性   *下垂体ホルモン分泌刺激試験
 *抗サイログロブリン抗体陽性      *視床下部・下垂体を中心とした
 *細胞診でリンパ球浸潤を認める      頭部MRI検査
 *US内部エコー低下や不均一       *Nonthyroidal illnessとの鑑別
萎縮性甲状腺炎
 *一部例で抗TSH受容体抗体
  (阻害型抗体)陽性
00*USで甲状腺萎縮

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症状理学的所見と一般検査値の異常

甲状腺機能低下症の診断に必要なのは、TSHと遊離T4の測定で、対数変換したTSHと
遊離T4の間には負の相関が成り立ちます。原発性甲状腺機能低下症の診断はTSHで行い、遊離T4は重症度の評価に用いられます。

-原発性甲状腺機能低下症
橋本病とは甲状腺特異的自己免疫疾患で、主たる標的抗原はサイログロブリンと甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)であり、病理学的特徴は甲状腺実質へのリンパ球浸潤とリンパ濾胞の形成、ろほう上皮の萎縮と好酸性変性、間質の繊維化である。
必ず機能低下を伴うわけではなく殆どは甲状腺機能正常である。橋本病では抗マイクロゾーム抗体(抗TPO)や抗Tg抗体が高頻度で陽性となる。
橋本病の場合びまん性甲状腺腫を認めγグロブリンやZTTの高値を見ることがあります。上図の様な所見を示さない人も潜在的には多数います。

萎縮性甲状腺炎
一部の例で、抗TSH受容体抗体(阻害型抗体)陽性
超音波検査で甲状腺萎縮

-中枢性甲状腺機能低下症
下垂体ホルモン分泌刺激試験
視床下部・下垂体を中心とした頭部MRI検査
Nonthyroidal illnessとの鑑別(無理なダイエットをしている女性で中枢性甲状腺機能低下と類似の所見を示すもの)
遊離T3の低下が目立ち、遊離T4は正常から軽度低下の範囲である。

遊離T4の上限と下限には2倍ほどの開きがあるが、一人ひとりの遊離T4値は狭い範囲に
維持されている。TSHと遊離T4の間に負の相関が成り立ちます。
遊離T4値は重症度の評価に用いられる。中枢性甲状腺機能低下ではTSH分泌異常が
原因なのでこのような関係は見られない。

潜在性甲状腺機能低下では明らかな症状がなく、動脈硬化症のリスクファクター
である可能性や、妊婦では児の神経系発育阻害の可能性が報告されている。

0
0000000000000000000000000000原発性甲状腺機能低下症000000000000000
000000000000000000000000000000000000000000000000000000 中枢性甲状腺機能低下症

        明らかな顕正低下   潜在性          
TSH    高値       高値          低値~基準値内     
遊離T4   低値      基準値内        低値   

原発性甲状腺機能低下症
a)臨床所見
  無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、
  記憶力低下、便秘、嗄声等のいずれかの症状
b)検査所見
 遊離T4及びTSH高値

診断
a)およびb)を有するもの

付記
1.慢性甲状腺炎(橋本病)が原因の場合、抗マイクロゾーム(またはTPO)抗体
  または抗サイログロブリン抗体陽性となる。
2.阻害型抗TSH受容体抗体により本症が発症することがある。
3.コレステロール高値、クレアチンフォスホォキナーゼ高値を示すことが多い。
4.出産後やヨード摂取過多などの場合は一過性甲状腺機能低下症の可能性が高い。

中枢性甲状腺機能低下症
a)臨床症状
  無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がりね、体重増加、動作緩慢、
  嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声等のいずれかの症状
b)検査所見
  遊離T4低値でTSHが低値~正常

診断
a)およびb)を有するもの

除外規定
甲状腺中毒症の回復期、重症疾患合併例、TSHを低下させる薬剤の服用例を除く
付記
1.視床下部甲状腺機能低下症の一部ではTSH値が10μU/ml位まで逆に高値を示す
ことがある。
2. 中枢性甲状腺機能低下症の診断では下垂体ホルモン分泌刺激試験が必要なので専門医への紹介が望ましい。

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甲状腺機能低下症の治療
 甲状腺ホルモン補充療法であり、血中甲状腺ホルモンレベルを基準値レベルに
 保つことを目的とする。一般的には合成T4製剤(レボチロキシンナトリウム錠)を
 使用する。亜急性甲状腺炎や無痛性甲状腺炎などは低下症があっても補充せずに
 経過を見ておくだけのこともあります。

  • 甲状腺ホルモン投与は、初期量としてレボチロキシンナトリウム25~50μgの
      少量から開始し2~3週間かけて徐々に増減します。
  • 永続的機能低下症には生涯服薬が必要である
  • ヨードの過剰摂取の可能性がある場合はヨード制限を指示し再検査する。

治療上の注意点
1)高齢者
は生理機能が低下していることが多く、基礎代謝亢進による心負荷により
狭心症を起こすことがあるので少量から開始し投与間隔を延長する。
初期量をレボチロキシンナトリウムとして125μgまたはそれより少量から開始し
投与間隔を延長します。
2)狭心症、心筋梗塞などは病態が悪化するおそれがあるので少量から長時間かけて
増量する。
3)副腎皮質機能不全、脳下垂体機能不全の患者では副腎クリーゼを誘発し
ショックを起こす可能性があるので副腎機能の改善を十分にはかって副腎皮質ホルモン
の補充をしてから投与開始する。
4)内服中断していた患者の補充再開は少量から再投与する必要性がある。

T4製剤とT3製剤
合成T4製剤(レボチロキシンナトリウム)、合成T3製剤(リオチロニンナトリウム)、
乾燥甲状腺末の3種類があるが通常T4製剤を用いる。
通常、成人では合成T4製剤(レボチロキシンナトリウム) 1日1回25~50μg/day服用する。
T3製剤は粘液水腫に使用することがある。
                 T4製剤       T3製剤
半減期              6~7日        約1日
補充可能な血中ホルモン     T4とT3        T3のみ
(体内でT4→T3へ転換される)
血中ホルモン濃度の安定性    ほぼ安定       変動しやすい
作用発現             緩徐         急速
作用消失             遅い         急速
服薬中止の影響        ゆっくり出現     早期に出現

甲状腺ホルモン製剤と使用上の注意

  • アルミニウム含有制酸剤、鉄剤、コレチスラミン→吸収遅延または減少
  • クマリン系(ワルファリンカリウム)→作用を増強するのでPT-INRを測定調節する
  • 交感神経刺激剤→冠動脈疾患では冠不全のリスクが増大する可能性がある
  • 強心配糖体製剤→甲状腺機能低下状態ではジゴキシン濃度が上昇している
  • 血糖降下剤→血糖コントロール条件が変わることがある
  • フェニトイン→血中濃度低下させることがある

甲状腺機能低下と妊娠

  • 妊娠前
    甲状腺機能低下症は胎児の成長に影響し、また、不妊の原因と考えられている
    ので甲状腺機能を正常にする治療を受けておくことが大切である。
  • 妊娠中
    甲状腺機能が変化しやすいが治療は継続する。
    甲状腺ホルモン剤は胎児に影響しないので十分量を補充する。
  • 出産後
    甲状腺機能が変化しやすいが必要により補充する。

潜在性甲状腺機能低下症
臨床症状がないか気づいていない。
血中遊離トリヨードサイロニン(fT3),遊離サイロニン(fT4)は正常で、血中TSHのみ高く、
TSH高値群(10μU/ml以上)に対しては治療の対象とされている。

【慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドライン】

画像の説明

橋本病の病理学的特徴は甲状腺実質へのリンパ球浸潤とリンパ濾胞の形成、濾胞上皮の萎縮と好酸性変性、間質の線維化である。自己免疫疾患であり、その主な標的抗原はTgと甲状腺ペルオキシダーゼである。必ず機能低下を伴うわけではなく殆どは甲状腺機能正常である。橋本病では抗マイクロゾーム抗体(抗TPO)や抗Tg抗体が高頻度で陽性となる。
Nonthyroidal illnessは無理なダイエットをしている女性などで中枢性機能低下症と類似の所見を呈します。
遊離T3の低下が目立ち、遊離T4は正常から軽度低下の範囲である。

機能低下症の評価の基本はTSH値で、遊離T4により重症度の判断をし自己抗体を参考にします。

a)臨床所見
1.びまん性甲状腺腫大
但しバセドウ病など他の原因が認められないもの

b)検査所見

1.抗甲状腺マイクロゾーム(またはTPO)抗体陽性
2.抗サイログロブリン抗体陽性
3.細胞診でリンパ球浸潤を認める

診断
a)およびb)の1つ以上を有するもの

付記
1.他の原因が認められない原発性甲状腺機能低下症は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。
2.甲状腺機能異常も甲状腺腫大も認めないが抗マイクロゾーム抗体およびまたは抗サイログロブリン抗体陽性の場合は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いとする。
3.自己抗体陽性の甲状腺腫瘍は慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いと腫瘍の合併と考える。
4.甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均一を認めるものは慢性甲状腺炎(橋本病)の可能性が強い。

⑤ TSH/FT4正常の場合
[A]非結節性びまん性甲状腺腫の場合
  単純性甲状腺腫、橋本病(甲状腺機能正常の)、結節不明の腺腫様甲状腺腫、グレーブス
 甲状腺機能正常、サイロイドテストやマイクロゾームテストが陰性でU/S,TgAb,TPOAb,
 穿刺細胞診に異常が見られない場合単純性甲状腺腫という。
 ユーサイロイド・グレーブスはバセドウ病で甲状腺機能に異常は無いが眼症状が認め
00られTSH受容体抗体特にTSAbが陽性になることが多い。
00TR-Abには刺激抗体(Thyroid Stimulating Antibody: TS-Ab)と抑制抗体(TSH Stimulation
Blocking Antibody: TSB-Ab)の少なくとも2種類が存在し、バセドウ病ではTS-Abが優位であることが明らかになった。
[B] 結節性甲状腺腫の場合
  直径1cm以下の腫瘍については超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行う
  結節性で一番多いのは腺腫様甲状腺腫であり細胞診を行う
  未分化癌、悪性リンパ腫、髄様癌、乳頭癌> 濾胞癌
  (カラードプラーで診断をつける)
  腺腫様甲状腺腫(結節性病変が多発する疾患)は過形成であり、悪性腫瘍や甲状腺機能
  亢進の合併がなければ経過観察する。
⑥ TSHとFT4に乖離がある場合
  1)中枢性甲状腺機能低下症
    低下症が長期間続いた後は血中甲状腺ホルモンが正常に入ってもTSHはすぐには
    正常化してこない。
  2)TSH不適合分泌症候群(SITSH)
    下垂体にTSH産生腫瘍がある場合と下垂体T3受容体異常のために甲状腺不応症が
    生ずる。
  3)妊娠中はFT4/FT3,TSH低値などさまざまな値を呈してくる
  4)FT4 TSHの測定に干渉する物質(抗体など)
⑦ 甲状腺に疼痛がある場合
   亜急性甲状腺炎(多核巨細胞が認められる)
   橋本病の急性増悪(少量のリンパ球が採取される)
   急速増大未分化癌(腫瘍性多核巨細胞が見られる)
   シストや腫瘍内への出血
   急性化膿性甲状腺炎(膿汁が吸引)
⑧ 甲状腺ホルモン値に変動を与える可能性の薬物
  リチウム、ヨード、アミオダロン、テグレトール、フェノハール
  リファンピシン、アレビアチン、グルココルチコイド、
  男性・女性ホルモン、ヘパリン、NSAID、ドパミン、サイトカイン

第2章 甲状腺疾患の治療法

[I]バセドウの治療
画像の説明

PTUの場合1日300mgで開始する場合が多いが軽症例ではより低用量でも可能である。
MMIの場合朝夕1日2回または朝1回投、PTUの場合1日3回に分けて服用する。
βブロッカーを併用することが多い。
約2~4週毎に血中甲状腺ホルモンを測定し正常化すればβブロッカーを中止し
抗甲状腺剤を徐々に減量していく。
甲状腺ホルモン正常化後の検査は1~3ケ月に1度TSH、甲状腺ホルモン、
抗TSHレセプター抗体を測定してモニターします。
1日0.5錠から1錠で甲状腺機能を維持できるようになっても維持量を6ケ月継続する。
バセドウの寛解を得るには1~2年の長期間にわたる治療が必要という報告があります
少量の抗甲状腺剤でコントロール可能で甲状腺腫が小さく、抗TSHレセプター抗体
陰性の場合は再発に注意して抗甲状腺剤中止を試みてもよい。

画像の説明

   チアマゾール(MMI5mg錠)とプロピルチオウラシル(PTU50mg錠)があるが、MMIを
   先に用いる。軽症例はMMI15mg/1xで、中等度以上の機能亢進(fT4>5ng/dl)には
   MMI 30mg/2x/dayで開始する。
0000000TSH正常化を目安にして2.5mg/day単位あるいはさらに細かく投与調整する。
0000000MMIが副作用で使えないか挙児希望例ではPTUを用いるがMMIのおよそ
00000020倍に相当する。MMI15mg以下の1日1回服用の場合はPTU100mg以上は
0000002~3回に分けて服用する。
000000副作用や血液疾患の合併例で薬物が使えない場合は、手術やRI治療が選択される。
000000この場合、術前やRI治療後の一時的機能改善には無機ヨード治療が有効である。
000000RI治療は、抗甲状腺薬による無顆粒球症、手術不能例、甲状腺腫大きい場合は
000000適応となるが晩発性機能低下は避けられない。
  副作用
    蕁麻疹と肝機能障害は全体の10%位、無顆粒球症は0.4%程度である。
0000バセドウ病の治癒と寛解
0000000抗甲状腺薬はあくまで甲状腺機能亢進症に対する対症療法であり、バセドウ病の
0000000根治治療ではない。ガイドラインでは抗甲状腺薬隔日1錠(MMI2.5mg/日、PTU25mg/日)
0000000で半年間TSHが異常低値をとることがなければ中止を検討する。中止後数年以内に
000000020~30%は再燃すると考えるべきである。TRAb陽性や甲状腺腫を有する例では再年率が
0000000高い。遮断型抗TSH受容体抗体の出現により機能低下になることがある。

[II] クリーゼなど緊急を要する場合の治療
  機能が正常化するまでヨード剤と抗甲状腺薬を続ける
 ● 抗甲状腺薬はホルモン合成の抑制であるのでホルモン低下するのに時間がかかる
  MMI(5) 30~45mg  PIU(50) 450~600mg
 ● ヨード剤はホルモン分泌を抑制する
  ルゴールは一日一回5滴
 ● 副腎皮質ホルモンはT4からT3への転換を抑制してT3濃度を低下させる
  プレドニン静注は30~40mg/dayを3日間続ける。
  全身状態悪ければさらに3日間続ける
 ●甲状腺性脈異常
  afにはジゴキシン1A+Ns20ml
  頻脈にはワソラン40mg/1T 2時間待って100以上の頻脈にはさらに1錠追加
  翌日からはワソラン3T/3x/day ジゴキシン1T/1x/day
  洞性頻脈にはβブロッカー(インデラル30mg/day)も考える
 ● FT3FT4が正常になった時点でヨード剤は中止し抗甲状腺剤は続ける
 ● ホルモン上昇が著しい時はヨード剤を再開する
 ● ヨード剤を中止して機能が正常にコントロールされていれば抗甲状腺薬を減量していく  

[III]抗甲状腺薬の副作用

副作用       頻度         出現時期        対応
0-----------------------------------------------------------------------------------0
無顆粒球症    1/500~1/1000   2週間から3カ月    抗甲状腺剤中止
                               G-CSF投与

蕁麻疹・皮疹   1/10        2~3週間       抗アレルギー剤
                              抗甲状腺剤中止

肝障害      まれ        2週間から3カ月    抗甲状腺剤中止

ANCA関連    まれ        PTUに多い
血管炎症候群             腎炎や間質性肺炎に   抗甲状腺剤中止
                   注意

インスリン自己   まれ       MMI特有        MMI中止  
免疫症候群              低血糖症状

  副作用(無顆粒球症、発疹、肝障害、貧血)観察のためCBC/SMAを行う。
  無顆粒球症は投与2カ月以内に発現する。顆粒球が1000未満になれば薬剤を中止する。
  500未満になれば75μgのG-CSFを皮下注する。
  その他、SLE様症状、インスリン自己免疫症候群(MMIに特有)、
  ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎症候群(PIUで発症) などが報告されている。
  SLE様症状では抗核抗体、抗DNA抗体、BCG,CRPを測定。
  どうしても抗甲状腺薬が使用できないときはアイソトープか手術ということになる。
  甲状腺腫が小さく機能亢進が軽いときは無機ヨードの治療でも良い。
  まれであるがPIUで劇症肝炎、MMIで胆汁うっ滞性肝炎をおこすことがある。
  ALT、ASTが100以上、総ビリルビン1.5~2.0以上の時は薬を中止する。
  これ以下でも急激に上昇する事もあるので注意を要する。

[IV]抗甲状腺薬の使用法
0000MMI 3錠分1で始める
① FT4>7ng/dl以上TRAb高値、甲状腺腫が大きい時は
00000MMI 6錠 分2
② 授乳中や妊娠希望の時は PTU 6錠 分3
[V]抗甲状腺薬の投与漸減法
0000ホルモン高値が正常化するまで激しい運動は控える
0000FT4が正常化した後は4週ごとにFT4とTSHを測定する
0000TSHが低値でもFT4が1ng/dlを下回らないように投与量を調整する
0000TSH/FT4の両方が正常化した後は維持量(TSH正常を保つ必要最小限の投与量)を続ける
[VI] Block and replace療法
0000MMIの増減に伴ない甲状腺機能の変動が激しい場合は
0000MMI30mg程度と合成T4(チラージンS)100μmg/dayを併用することにより安定性を得る
000000ことができる。
00000完全にホルモン合成を抑える量のMMI 6錠以上と合成T4 100mgを投与することが多い。
00000この治療法は甲状腺機能を安定させ通院回数を減らすものと考えられる。

参考

Q:甲状腺機能亢進症の治療
メルカゾール5mg連日投与でFT3、FT4が低値となりTSHが上昇したので、メルカゾール5mgを隔日投与にしたところ、この変更により、FT3、FT4が正常値より上昇し、TSHが低値となってしまいTSHレセプター抗体も上昇してしまいました。
この時、どうする?

A: Block & Replacement
一般的に、では、もっと大量の抗甲状腺剤投与のまま(例えばメルカゾールなら15〜20mg以上)でTRAbの抑制を期待して合成甲状腺ホルモンを併用しておりますが、余りに大きい甲状腺腫や異常に高値のTRAbに対して漫然と高容量の抗甲状腺剤継続するのが嫌であれば放射性ヨードを使うか手術に回します。
むしろ、抗甲状腺剤を使っているとホルモン合成は抑えられるけれどもTRAbが下がりきらないとか、一旦陰性化していたのに直ぐ再燃してしまうと言う様な状況で、合成甲状腺ホルモンの併用を行います。
メルカゾールが5mgで抑え過ぎで、隔日投与にすると反跳してしまうのであれば
メルカゾール5mgにチラーヂンSを25〜50μg加えて、3ヶ月か半年程度、確実にTRAbが陰性化する迄待ってから、そのままセットで隔日投与にします。どちらの薬も半減期から考えれば服用していない日にはかなり効果が低くなりますが、それでも反跳しなければ、今度はLT4の補充を止めます。その上でメルカゾールをウィーニングして完全中止・離脱に持って行きます。

注意すべきことは単に減量した時期と再燃が一致しただけの場合もあります。
バセドウは結局刺激性の免疫と防御系の免疫のバランスが偏って症状が出て来るので、だいたいは精神・身体的なストレスがかかっているとか、酷く疲労しているとか寝ていないとか何らかのきっかけが隠れている事が多く、たまたま燃え返してしまったのなら、素直に抗甲状腺剤を2〜3錠に増量する必要があるかも知れません。その他にもヨード造影剤検査とか、大量の昆布を食べたとかの一過性の無機ヨード負荷の病歴も不自然な経過の原因と成ります。

バセドウ病の治療は甲状腺機能の正常を維持することで,薬を止めることではありません。のんきにやろうというのが診療姿勢です.
1錠毎日から1錠隔日にしたら、TRAbを含めて再燃したということで、このようなはっきりした再燃であれば、一旦1錠毎日に戻します。
甲状腺ホルモン値によっては3錠の初期量に戻すこともあります。
逆に、もし、TSHだけが下がるような軽度(再燃初期)の場合は、3日に2錠という手もあります。
ただし、再燃が一過性で終わることもありますので、その場合はそのまま我慢して次月再検するということです。
チラーヂンSを併用しても構いませんが、こうしてしまうとこれで落ち着いてしまいますので、MMI中止の判断が難しくなることがあります。
MMIでFT3高値FT4低値になるようなときだけ、チラーヂンSを併用して(どちらも正常範囲内になるようにして)います。

[VII]抗甲状腺薬の中止時期の判定
000TSHを見ながら減量していき1日1錠でTSH正常が6カ月以上保たれれば
000隔日に一錠投与する。これで6カ月間TSHが正常に保たれれば中止を考える。
000TRAb>3.0であれば再発する可能性が高いので中止しないで経過観察する。
0000抗甲状腺薬治療では2年間の治療で寛解に入らなければ寛解しにくいことが分かっている。

第3章 妊娠・出産・育児

ポイント

  • 1.甲状腺機能が正常に維持されている状態で妊娠を図る。
  • 2.MMIで頭皮欠損などの奇形が増加するので妊娠前にPTUに変更しておく。
  • 3.MMI維持療法が妊娠8週以降に発覚した場合はそのまま継続する。
  • 4.妊娠後半期には児の機能低下を防ぐために甲状腺機能を正常上限に調整する。
  • 5.TRAb高値例では新生児がバセドウ病を発生するかもしれないので注意する。
  • 6.出産後授乳はMMI10mg,PTU300mg/日以下で許可する。
  • 7.出産後2~6カ月後にバセドウ増悪を高率に認める。

妊娠性甲状腺中毒症(妊娠性一過性甲状腺中毒症GTH)
  妊娠8~13週に多く見られ
  hCGの甲状腺刺激作用によるもので甲状腺腫は軟らかくて小さいものが多い。
  TRAb陽性の場合はバセドウ病であり、妊娠性の時はTSAbは通常は陰性である。
  hCG<60,000iu/Lに低ければGTHは否定的である。
  TSAbはGTHにも弱陽性に出ることがある。

妊娠中の治療と母体・胎児
 妊娠初期においてはメルカゾールは控えてPTUで治療した方が無難である。
 母体のTRAbは胎盤を通過して胎児の甲状腺を刺激するので
 TRAbが妊娠20週で高値の場合は胎児甲状腺機能亢進症の可能性が高く
 妊娠末期に高値の場合は新生児バセドウ病になる可能性が高い。

挙児希望する場合の甲状腺治療

  • ① 未治療患者はPTUで治療開始し3カ月以上一定のPTUで甲状腺機能が正常に
      コントロールされていれば妊娠許可を出す。
  • ② 甲状腺機能コントロールに大量のPTUが必要な場合はPTU9錠/日でも
      妊娠出産は可能であるが1~2年妊娠を待てるようであれば手術治療を、
      2~3年待てるようであればRI治療を考えて専門家に相談する。
  • ③ MMIで一日2錠以下でコントロールされていればPTU2~4錠/日に変更する
  • ④ PTUが副作用で使えない時や効きが悪いとき、そして、MMIしか使えない場合は
      MMIを使用しながら妊娠出産するか患者に選択してもらう。
     大量のMMIが必要な患者には、妊娠初期にMMIを中止しヨード治療に切り替えたとき
     悪化する可能性がある事を十分説明する。
  • ⑤ 一日1~2錠のMMIでコントロールされている人は漸減中止して妊娠を計画するが
     投薬中止まで待てない時は妊娠4週からMMIを中止しヨード剤で治療する。
     ヨード剤でコントロールされていれば妊娠12週以降にMMIを再開するのがベストであるが
     妊娠8週目になればヨード剤を中止しMMIを開始してもよい。

(A)MMI服用中に妊娠した場合
 妊娠の判明が8週以前であればその時点でMMIを一旦中止し必要に応じてヨード剤を
 投与する。妊娠8週を過ぎた時点でMMIを再開する。

(B)妊娠中の甲状腺機能のコントロール
 妊娠中はコントロールに必要な抗甲状腺薬は非妊娠時よりも少なくなることが多い。
 妊娠前に少量の薬でコントロール出来ていたケースは妊娠中は中止できることが多い。
 妊娠8~13週にhCGにより一過性に機能亢進が加わって機能が悪化するときは薬を増量する。
 抗甲状腺投与の仕方は20週までは非妊娠時と同じようにコントロールし
 20週を過ぎれば胎児甲状腺機能を正常にすることを優先して母親のFT4を正常上限に保つ。

 術後、RI後に妊娠した場合はTRAbが高値でなく機能が正常に保たれていれば問題ない。
 ただし、TRAbが高値の場合は妊娠中胎児が機能亢進になって危険なことがあるので
 専門家に相談する。

(C) 出産時
 TRAbが高値の場合に新生児バセドウが発症する可能性がある。
 母体の機能が正常であれば母体に問題はない。

(D)出産、母乳の場合
 授乳中は原則PTUで治療する。PTU<300mg/dayであれば乳児の機能には影響はない。
 MMIしか服用できないときはMMI一日一回とし服用後は6~8時間開けての授乳は良い。
 TRAb正常でMMI隔日に一錠以下であればMMIを中止できる可能性があるので出産後は
 MMIを中止する。中止後3カ月間機能が亢進してくるようであればPTUを開始する。
(E)催奇形は遺伝因子や他の因子が加わらないと発生しない。

無機ヨード治療

  • ① 無機ヨード治療の効果は早期に現れるが一過性のことが多い
      通常3日以内に臨床症状が改善してくる。しかし、この効果は一過性で
      長期間ヨードを投与すると血中甲状腺ホルモンが再び上昇してくることが多い。
  • ② ヨード治療だけで緩解してくる例もある
     甲状腺腫が小さく、FT3 、FT4、 TRAb値が高くない例で寛解に至るものがある。
     ヨウ化カリウム液2~3滴を一回朝食後投与開始後2月間で反応が認められない時は
     ヨード剤を倍量して1カ月観察し、それでも反応がないときは他の治療に切り替える。
     ヨードで機能正常になるまで1年を要するものもある。
     ヨード剤で機能が低下してくる例にはヨード剤を減量せずにチラージンSを加えて
     機能コントロールする。

抗甲状腺薬を使用できない場合

  • ①甲状腺腫が大きい場合は手術を選ぶ。
  • ②機能亢進症状が非常に強く合併症がある場合はクリーゼの危険があるのでRIは避ける。
     合併症はAf, 心不全、DM, 肝炎、喘息等
  • ③合併症のないバセドウはβブロッカー投与しながらRIを行ってもよい。
  • ④RI治療後機能亢進症状が強くなればヨード剤の投与を行う。
     さらに、頻脈、不整脈、消化器症状、38度以上の機能亢進症状が重篤になれば
     大量の副腎皮質ホルモン剤を投与する。
  • ⑤ 術前の機能コントロールはヨード剤で行うがヨード剤でエスケープした場合は
     βブロッカーと副腎皮質ホルモンを用いる。

甲状腺良性腫瘍の種類

(1)濾胞腺腫follicular adenoma(新生物)
(2)腺腫様甲状腺腫adenomatous goiter=tumor-like lesion多発性病変
 単発の時は腺腫様結節adenomatous nodule
(3)甲状腺嚢腫cyst
  真性の嚢胞はまれで腺腫様結節か腺腫などに変性壊死あるいは出血などの
0000随伴病変に生じた続発性嚢胞です。

診断法 視診、触診、超音波検査、穿刺吸引細胞診、頚部X-P、
00000000血清サイログロブリン値はふつう、高値を示すが血清中に抗サイログロブリン自己抗体が存在するときは
0000000000血清サイログロブリンの測定値は修飾されるので注意。
0000000000ヨードシンチグラフィは自律機能性甲状腺結節の場合に必要でCTは縦隔甲状腺腫の場合に必要。
0000000000細胞診で濾胞癌、濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫との鑑別はかなり困難。

自律機能性甲状腺結節(autonomous functioning thyroid nodule)
AFTNは病理組織はほとんどが良性の腫瘤であり、濾胞腺腫か腺腫瘍結節である。
TSH受容体の異常やG蛋白の変異(gsp oncogene)などを持つときは自律性に甲状腺ホルモンを過剰に合成分泌し、それにより血中TSHが抑制される。
  腫瘍部分にはヨードが強く集積(hot)し、正常部分には集積しない。
  手術、放射性ヨード療法、PEITが行われる。ヨーロッパ人に多い。
  悪性は殆ど無い。
  プランマー病、過機能性甲状腺結節(単発)、中毒性多結節性甲状腺腫(多発toxic multinodular goiter=TMNG)

良性腫瘍は手術せず6~12カ月毎にUSを行い大きさと形状を検査する。
嚢胞は大きければ穿刺排液して経過観察するが短期間に内容液が貯留する場合は
PEITも考慮する。乳頭癌が大きな嚢腫を形成することがあります。
排液後に実質部分が残る場合はその部分の細胞診を行います。

甲状腺良性腫瘍の手術適応
(1)腫瘍の長径が4cm以上で硬い時
(2)経過観察中に徐々に大きくなる時や腫瘍が気管や食道を圧迫する時そして
 腫瘍が縦隔に侵入している時
(3)内部が実質性の時
(4)腫瘍自身が甲状腺ホルモンを過剰に分泌する時(AFTN)
(5)美容上本人が摘出を希望する時

良性腫瘍のTSH抑制療法
T4製剤を投与して血清TSH抑制で経過観察することがある。
良性腫瘍の細胞膜にはTSH受容体、G蛋白、adenylate cyclaseが存在している。
In vitroではTSH刺激でこのシグナル伝導伝達系は刺激され活性化されるので
TSH抑制でこの伝達系を不活化する。
閉経女性でT4投与で骨粗鬆症が引き起こされることある。
TSH抑制で徐々に大きくなるときは手術治療する。

濾胞癌の頻度の高い所見
(1)血清サイログロブリン値1000ng/ml以上
(2)細胞診class3以上
(3)USの内部エコーパターン充実性で、低エコーレベル
(4)USの境界性状が粗雑
このような症例は経過観察すること無く手術治療が必要である。

甲状腺悪性腫瘍 ( 男女比1:5 平均年齢49歳)

1)乳頭癌papillary thyroid carcinoma(PTC)90% 分化型癌
 リンパ行性転移が多い。予後良好で10年生存率95~96%
 放射線被曝と関連がある。約50%にBRAF遺伝子変異が認められる。
 硬いリンパ節触知、穿刺細胞診で95%以上の正診率、微細石灰化などから術前診断は比較的容易
濾胞細胞由来でサイログロブリン分泌やTSH依存性があり、甲状腺ホルモン大量投与によるTSH抑制療法が有効
45歳以上の年齢が高いほど予後不良、M遠隔転移でもヨード131による内照射で治療可能
2)濾胞癌follicular thyroid carcinoma(FTC)5% 分化型癌
肺・骨への血行性転移が多い。
腫瘍被膜浸潤または脈管侵襲あるいは転移巣を認める場合、細胞異型の有無を問わない。
濾胞細胞由来でサイログロブリン分泌やTSH依存性があり、
甲状腺ホルモン大量投与によるTSH抑制療法が有効
45歳以上の年齢が高いほど予後不良、M遠隔転移でもヨード131による内照射で治療可能
3)髄様癌medullary thyroid carcinoma(MTC)2%
 傍濾胞細胞(C cell)から発生、APUD系細胞
 神経内分泌腫瘍の一つで血中CEAやカルチトニンが高値を示す。
 遺伝性のものもあり、髄様癌のみが遺伝する場合は家族性髄様癌と呼ばれる。
 ヨードMIBGシンチグラムが集積する場合もある。
 多発性内分泌腺腫症2型(MEN2型)の一つの病変として髄様癌が含まれていてこの遺伝子保有者は予防的に甲状腺全摘術を施行する。
4)未分化癌anaplastic thyroid carcinoma(ATC)約2%、性差なし
 ほとんどが50歳以上で急激な甲状腺腫の増大を認める。
 嗄声、肩甲痛、皮膚発赤、軽度白血球増多、血沈亢進、呼吸困難、嚥下困難、顔面浮腫
 予後不良で平均生存期間は6カ月
 良性腫瘍や分化型癌、髄様癌からの未分化転化を来す。
 根治手術可能例はまれ、
000ガリウムは悪性リンパ腫と未分化癌に取り込みます。

5)甲状腺悪性リンパ腫thyroid malignant lymphoma(TML)約2%
 高齢者に多い。石灰化は伴わない。
ほとんどが橋本病を前駆に発症するので甲状腺自己抗体が陽性のことが多い。
 多くは非ホジキン型B細胞性リンパ腫で予後良好である。
 診断がつけば化学療法や放射線治療が第一選択で過大な侵襲を伴う手術は必要ない。
000ガリウムは悪性リンパ腫と未分化癌に取り込みます。
6)その他

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