糖尿病の臨床

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糖尿病の診断基準

診断基準
初回検査で
早朝空腹時血糖値≧126mg/dl
75g糖負荷試験2時間値≧200mg/dl
随時血糖値≧200 mg/dl
HbA1c(国際標準値)≧6.5%のうちいずれかを認めた場合は「糖尿病型」と判定する。
別の日に再検査を行い、再び「糖尿病型」が確認されれば糖尿病と診断する。
但し、HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする。
また、血糖値とHbA1cが同一採血で糖尿病型を示すこと(①~③のいずれかと④)が確認されれば、初回検査だけでも糖尿病と診断してよい。
また、ストレスのない状態での高血糖の確認が必要である。

●血糖値のみが診断基準を満たし「糖尿病型」(①~③のいずれか)と判定される場合は、糖尿病の典型的な症状(糖尿病の典型的症状(口渇,多飲,多尿,体重減少)の存在)、 確実な糖尿病網膜症(確実な糖尿病網膜症の存在)---のいずれかを認める場合に糖尿病と診断する。

肝硬変、慢性腎不全、出血性胃潰瘍では貧血を来すため通常よりもHbA1cは低値となる。
以上ヘモグロビン血症では異常低値と異常高値を示す場合がある。
甲状腺機能亢進症はヘモグロビン代謝に影響しないので血糖コントロールの指標として用いることができる。

様々な指標を理解し使いこなす

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  • インスリン正常値は空腹で5〜10μU/mL
    食後高血糖が数年続いた後に基礎分泌のインスリンが低下してきて早朝空腹時血糖値が上昇してきます。
    空腹時IRI>15μU/mlはインスリン抵抗性の存在を示し、インスリン抵抗性評価のための指標である。
  • HOMA-R  1.6以下が正常で、2.5以上が抵抗性あり
    数値が大きいほどインスリン抵抗性が強い。
    FBS90~177で良好な相関があり空腹時IRIに依存している。肥満者での相関は良好。
  • インスリン分泌能の指標HOMA-β (正常値40~60)
    (HOMA-βはインスリン使用中の患者では使えない)
    30%以下:軽度インスリン分泌低下
    15%以下:明らかなインスリン分泌低下
    数値が小さいほどインスリン分泌が低下している。
  • ④SUITはインスリン分泌能の指標で、治療の必要性の判断ができます
    SUIT indexは、約50で内服薬治療が可能、SUI指数<30%インスリン治療が必要と
    されています。
  • インスリン分泌指数(Insulinogenic index)
    インスリン追加分泌のうち初期追加分泌能はインスリン分泌指数で見ます。
    Insulin inogenic index(⊿IRI/⊿BS)
    =(負荷後30分IRI値-負荷後IRI値)/ (負荷後30分血糖値-負荷前血糖値)
    75gGTTを行うとインスリン分泌の初期反応の指標であるインスリン分泌
    指数が得られます。0.4以上は初期追加分泌能維持。2型では0.3以下が多い。
    境界型でinsulin low responderでは0.4以下となり、将来2型発症の危険性高い。
    耐糖能異常例が糖尿病に進展しやすいか評価する指標です。
  • ⑥肥満(内蔵脂肪蓄積を含む)の有無を見て、MBI≧25  腹囲:男性≧85cm 女性≧90cmの場合はインスリン抵抗性を疑う。
  • 空腹時CPR>1.0ng/mlは内因性分泌能がある。
    食後2時間CPR>2.0は経口剤  CPR<1.9はインスリン治療
    尿CPR>20μg/dayあれば内因性インスリン分泌能はあるので経口薬の適応である。
    尿中CPRは抗インスリン抗体があってインスリン測定が困難な場合に有用。
    CPRの半減期は11分   
    一日尿中CPR排泄量35~50μg/dayで20μg/dayを下回っている場合はインスリン治療が必要である。
    空腹時血中CPR 1.5~3.0ngで あるが 0.5ng以下であればインスリンが必要。
    CPRは腎臓で代謝を受けずに排泄される。24時間蓄尿して3日間連続測定

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75gOGTTが推奨される場合

[A]強く推奨される場合(現在糖尿病の疑いが否定出来ないグループ)
空腹時血糖値が110~125のもの
随時血糖値が140~199のもの
HbA1c5.6~6.0(JDS値)のもの
(明らかな糖尿病の症状が存在するものを除く)
[B]行うことが望ましい場合(糖尿病でなくとも将来糖尿病の発症リスクが高いグループ

  • 高血圧・脂質異常・肥満などの動脈硬化のリスクをもつものは施行が望ましい)
  • 空腹時血糖値が100~109のもの
  • HbA1c5.2~5.5(JDS値)のもの
    (上記を満たさなくても、濃厚な糖尿病の家族歴や肥満が存在するもの)

HbA1cが見かけ上、低値になりうる疾患や状況
溶血性貧血、肝疾患、透析、大出血、輸血、慢性マラリア、異常ヘモグロビン症

糖尿病腎症診断基準

(1)病歴5年以上
(2)網膜症 神経障害の存在
(3)持続性アルブミン尿・蛋白尿の持続
(4)高度血尿and/or細胞性円柱: みられない
(5)GFRの高値and 腎臓腫大、特に早期 
                     
参考

妊娠糖尿病

定義:妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常。明らかな糖尿病は含めない
診断基準

○妊娠糖尿病
  75gOGTTにおいて次の基準の1つ以上を満たした場合に診断する。
  1. 空腹時血糖値 ≧92mg/dL
  2. 1時間値 ≧180mg/dL
  3. 2時間値 ≧153mg/dL
※ただし明らかな糖尿病である場合は除外

○明らかな糖尿病
  以下のいずれかを満たした場合に診断する。
  1. 空腹時血糖値 ≧126mg/dL
  2. HbA1C ≧6.5%
  3. 随時血糖値 >200mg/dLの場合は空腹時血糖値かHbA1Cで確認
  4. 糖尿病網膜症が存在

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妊娠中はHbA1cく5.8%(NGSP), GAく15.8%を目標とする

  • 妊娠許可条件
    Ccrea>70 蛋白尿1g/日以内 , 高血圧がない
    せいぜい単純網膜症である。 増殖性でも光凝固可能  

妊娠糖尿病の治療指針

管理目標  食前血糖<100   食後血糖<120
● 食前血糖が正常
食事直前に超速効型を2単位から開始
● 食前血糖が100以上または食後血糖が200以上
食事30分前に速効型もしくは食事直前に超速効型を2単位から開始。1週間後に1~2単位増量し管理目標にする。
● 経口薬を服用している2型糖尿病
経口薬を中止しインスリンに変更
食事30分前に速効型もしくは食事直前に超速効型を2単位から開始。1週間後に1~2単位増量し管理目標にする。
● 食前血糖が低下しない2型糖尿病
就寝前に中間型インスリン追加
● インスリン使用中の1型2型糖尿病
悪阻のときは低血糖に注意、悪阻が治まれば急激な血糖上昇
● 血糖不安定な1型糖尿病
中間型2回打ち+速効型3回打ち

妊娠糖尿病一日摂取エネルギー
①妊娠前半  標準体重x30kcal+付加量150kcal
②妊娠後半  標準体重x30kcal+付加量350kcal
③授乳期    標準体重x30kcal+付加量600kcal 
肥満妊婦  1200kcal (万一ケトーシスが起こるときは主食の米飯量を各食事に1単位ずつ増やす) 体重増加量が1週間あたり300gを目標にする。
これでも2時間食後血糖>120mg/dlの時はインスリンを用いる。
超速効型リスプロ(ヒューマログ)やアスパルト(ノボラピッド)は免疫原性はない。
妊娠3ケ月以降に使うこと医師もいる。
 
参考

sick-dayとは

糖尿病患者が感染症に罹患したり、あるいは何らかの原因により摂食不良の状態になるなど、通常に比して肉体的・精神的ストレスが生じ、結果として相対的にインスリン不足状態を引き起こし、血糖コントロールが乱れた状態をいう。
血糖がおおよそ250~400 mg/dL 以上の場合は、嘔吐や脱水が疑われれば病院にて通常の即効型(もしくは超速攻型)インスリンの20%を増量、400 mg/dL 以上では30%を増量、尿ケトン体陽性においてはさらに10%増量した治療を行う。
このとき、血糖値、尿ケトン体の測定は4~6 時間ごとに(超速攻型使用の場合は 2~3 時間ごと)にチェックする。

1型糖尿病のsick-day Rule

食事療法が通常量の1/2以上可能な場合
血糖値400以上  超速効型インスリンを30%増す
血糖300以上   超速効型インスリンを20%増す
血糖200以上   超速効型インスリンを10%増す
血糖80以下    超速効型インスリンを10%減らす

食事療法が通常量の1/3以下の場合
通常量の1/2のインスリンは必要であり、その量に上記のインスリン量を追加する。
[例]
ノボラピッドを毎朝16単位の患者さんが殆ど食べられない時は8単位を基本とし朝の血糖値が320なら20%追加して計10単位を注射する。
睡眠前の中間型インスリンは食事量に関係なく注射する。
睡眠前血糖が400以上のときは超速効型インスリンを2~4単位追加する。
食事が殆ど取れないことが24時間以上続くときは受診する。

2型糖尿病のsick-day rule

① 食事が摂取できるか分からない時はインスリンを食後に変更する。
② 食事摂取量が半分以上ならインスリンは通常量とし、半分以下ならインスリンは1/2量を注射する。
③注射量について迷いが生じたときは連絡を取るよう指導する。

Sick-day時の内服薬
①αグルコシダーゼ阻害薬、BU剤、チアゾリジン薬はsick-dayで消化器症状がある間は服薬中止とする。
インスリン分泌促進薬(SU薬、速効型インスリン分泌促進薬グリニド系)については食事摂取量が半分程度なら半量とし摂取量が1/3以下なら服薬中止とする。
③嘔吐下痢がとまらず食物不能の時、高熱が続き尿ケトン体陽性、血糖値が350以上の時は入院加療が必要。
④十分な水分摂取により脱水を防ぐよう指示する。
⑤食欲が無いときは口当たりがよく消化の良い食物(お粥、ジュース、アイスクリームなど)を摂取し絶食にしないようにする。

グルカゴノーマ

診断基準
[A]症候  
1)体重減少 2)皮疹、または口内炎/舌炎  3)悪心・嘔気・嘔吐 4)腹痛 5)全身倦怠   6)口渇 7)食欲不振 8)腹部腫瘤のうちいくつか
[B]検査所見
1)グルカゴン過剰分泌とそれに伴う
①低アミノ酸血症 ②正色素貧血 ③糖尿病/耐糖能低下
2)画像診断で膵腫瘍性病変
3)腫瘍によるグルカゴン産生

確診A及びBの1)2)3)をみたすもの
疑診 A及びBの1)2)をみたすもの
症候を伴わないグルカゴン産生腫瘍の診断はBの3)のみでよい

膵臓に出来、成長が遅い腫瘍で約80%が癌である。直径1cm~3.5cmほどで小さいものでも肝転移やリンパ節転移する可能性が高く、グルカゴン作用により二次性の糖尿病となる。
低アミノ酸血症の関与が指摘されている壊死性移動性紅斑も特徴的な皮膚病変で慢性的な赤茶色の発疹が現れる。鼠径部から始まって殿部、脚、上腕へと広がっていく。
他の特徴として、舌がツヤツヤと赤橙色に輝く萎縮性舌炎、口角炎、貧血、体重減少などを示すことがある。
平均年齢は約50歳で殆どが女性。
血糖値を上昇させる行程で、肝をグリコーゲン分解(筋肉は分解しない)、アミノ酸から糖新生を促進して、脂肪細胞のホルモン感受性リパーゼを活性化し脂肪分解を促進して遊離脂肪酸放出を増加させ、その結果体重が減少する。

治療法は、外科的切除が理想的であるが、癒着が著しく切除ができない場合や転移している場合は、化学療法としてストレプトゾシンとドキソルビシンの組み合わせを投与し,循環免疫反応性グルカゴンを減らし,症状を軽減し,反応率の改善を図る。オクトレオチドを多様量投与してグルカゴン値を下げると、発疹が消え、食欲不振がなくなり、体重も増えてくる。

糖尿病とASO

ASO患者のほぼ 4 割が糖尿病を合併していることが明らで糖尿病患者の10.9%がASOである。
症状が両側性で,足の先端から出現する場合は糖尿病性神経障害と考えられます。
偏側性であればASOが疑われ,両側性であれば糖尿病性神経障害の可能性が高くなる。
さらに,糖尿病性神経障害では症状が足の先端から出現してくるという特徴があり,糖尿病の進展につれアキレス腱反射の喪失も観察されます。

  • 糖尿病性神経障害が示唆される所見
    (1)「異常感覚などの症状」,
    (2)「振動覚の低下」,
    (3)「アキレス腱反射の低下または消失」
    が挙げられます。原則的にはこれらの所見はほぼ左右対称に生ずるとされています。

一般に,糖尿病を合併したASOでは膝より下での血流障害が多く,血管が細いため,手術適応にならないケースが多くなります。そのため,糖尿病合併ASOの治療は薬物療法が主流になる。

ankle-brachial pressure index(ABI)と脈波伝播速度(PWV)を測定し,ABIが0.9未満でかつPWVが1,400(cm/秒)以下の患者には,下大動脈の総腸骨動脈分岐部より膝窩動脈下端までをマルチスライスCTを用いて3D-CT血管造影を行い,外科的治療の対象となるASOの有無を診断します。
MRAでは2D-TOF(time of flight)法と3D-PC(phase contrast)法で撮影します。

糖尿病患者では動脈の石灰化により患肢でもABIが正常に検出されてしまう場合もあるため,ABIが正常値(>0.9)にある場合でもASOでないとは言い切れません。
「間歇性跛行症状」の訴えも見逃してはいけません。

  • 糖尿病とASOとCKD
    一般に糖尿病にASOとCKDの合併率は高く,特に透析患者で高いことも知られています。
    動脈硬化のハイリスク患者である糖尿病合併のCKD患者では,65%以上に末梢の動脈硬化性疾患性狭窄/閉塞,プラーク/石灰化)が認められました。また,糖尿病を合併していない場合でも,約4割の患者に末梢の動脈硬化性疾患があり、CKD患者は,透析導入以前の
    早期段階でも既に血管障害が始まっていることは明らかと言えます
  • ASOの進行度指標としてのFontaine分類
    Fontaine I 度:冷感やしびれ感,
    Fontaine II 度:しばらく歩くと足が痛む,いわゆる間歇性跛行,
    Fontaine III 度:安静時の疼痛,
    Fontaine IV 度:足の潰瘍・壊死―と進行していきます。
    ASOの初期症状として,下肢の冷感,しびれ感(Fontaine分類 I 度),間歇性跛行(Fontaine分類II度)があります。
    ASOは全身の動脈硬化の一部分症であり,いわば「足の脳卒中」です。
    脳卒中で入院された方の80%程度にASOが発見されています。
    また,ASO患者の死因の約66%は血管イベントであるという報告されている 。

血管拡張作用と抗血小板作用を併せ持つプロスタグランジンのI2ベラプロスト(プロサイリン6T/3x/day)の使用で,ASOの自覚症状ならびに動脈硬化進展の指標である上腕足首間脈波伝播速度(baPWV)などが有意に改善しました。

足背動脈の脈拍の消失や減弱があり,それに左右差が認められる場合はASOを合併している。
動脈硬化の危険因子を持つ患者に対しては,足関節/上腕血圧比(ABI)を測定します。

一般にABI<0.90ではASOがあるとされていますが,実際にはABI≧0.90でもASO患者は潜在していますので,注意が必要です。
 また,0.90≦ABI<1.00の患者においても,ABI≧1.00の患者に比べ,心原性の死亡率が2 倍以上になることが明らかにされています。驚くべきことに,LSCS患者の25.7%がASOを合併していました

特にLSCS(脊柱管狭窄症)とASOは。LSCS患者に合併するASOの頻度は25.7%でした。
LSCSに対する経口薬物療法としては,プロスタグランジンE1誘導体製剤であるリマプロスト(オパルモン6T/3x/day)が適応を有し,広く処方されていますが,ASOに対する適応はありません。
一方プロスタグランジンI2誘導体製剤であるベラプロスト(プロサイリン)はLSCSに対する適応はありませんが,ASOに対しては適応を有します。

参考
IDDMとNIDDMのうち、膵β細胞破壊を成因とする糖尿病を1型糖尿病と定義する。
1型糖尿病にはIDDMのほとんど全てとNIDDMの一部が含まれることになる。
インスリンの欠乏により、
①肝細胞で嫌気性解糖経路の酵素活性が抑制され、グルコース利用が低下する。
②グリセロール、アミノ酸から糖新生を行う酵素活性が亢進する。
③グルカゴンによるクリコーゲン分解が亢進する。
④末梢組織ではグルコースを細胞内に取り込めない。
⑤脂肪組織では脂肪分解が亢進しFFAが動員され肝細胞で酸化されミトコンドリア内でケトン体が産生される。

血中インスリン 正常値: 2~10 μU/mL
早朝空腹時の血中インスリン値が15μU/mL以上を示す場合は、明らかなインスリン抵抗性の存在が考えられます。

抗インスリン抗体antiinsulin antibody 基準値125I-インスリン結合率7%未満(空腹時)
抗インスリン抗体は、①自己免疫疾患における自己抗体と②インスリン治療に伴う抗体とに分類される。通常、インスリン治療により生じた抗体が低血糖の原因となることは稀であるが、インスリン治療中に生じた抗インスリン抗体がインスリンと 抗原抗体反応にて結合して、何らかの要因によりインスリンが活性を有して早朝低血糖を引き起こしている例もある。
一方、インスリン投与の経験がないにもかかわらず、血中に抗インスリン抗体が認めれ低血糖を生じる「インスリン自己免疫症候群」が知られている。
一旦結合したインスリンを再び遊離するため、それによって自発性の低血糖を惹き起こすのではないかと推測されている。

1型糖尿病の血清中に検出される自己抗体で抗グルタミン酸脱炭酸酵素65抗体(GAD65)が約6割に陽性を示す。
その他、抗インスリン抗体(IAA)、抗膵島細胞抗体(ICA)などがある。
これらの膵島関連自己抗体は発症直後には高率に認められるが経過するに連れて抗体価が低下して陰性化していく。思春期頃になると甲状腺自己抗体が陽性を 示すことが多く、抗核抗体、下垂体抗体、副腎抗体、胃壁細胞抗体が陽性となることがある。
抗GAD65>10U/mlの高抗体価ではインスリン依存か将来インスリン依存に進行する。
抗GAD抗体 基準値 1.5u/ml未満(1型糖尿病疑い1.5~10u/ml、1型糖尿病10u/ml以上)
膵臓ランゲルハンス島β細胞には、GAD(Glutamic Acid Decarboxylase:
グルタミン酸脱炭酸酵素)が存在し、このGADが1型糖尿病における抗GAD抗体の標的になる。また、抗GAD抗体は、1型糖尿病を発症しないうちに血中に高率に出現するので、1型糖尿病の発症予知やLAD(Latent Autoimmune Diabetes)の診断にも有効。

抗ICA抗体/抗IA-2抗体(Islet Cell Antibodies) 基準値 0.4 未満
抗IA-2抗体は、抗GAD抗体やICAなどと共に主要な膵島関連自己抗体の一つとして位置付けられ、1型糖尿病の発症前より血中に出現することがあるため、若年発症例(10歳以下)の1型糖尿病の診断に有用とされる。

  • CPR (C-Peptide immunoReactivity)
    基準値 血中C-ペプチド 1.2~2.0ng/ml、尿中C-ペプチド排泄量 24~97μg/日
    インスリン自己分泌の残存程度を示す検査数値である「血中CPR」(→)の値が、測定限界以下~0.03ng/ml未満となる)ことも、1型糖尿病の特徴のうちの大きなひとつとされています。

検査結果の判定
CPRが高値の場合は、膵臓の障害(インスリンノーマなど)、コルチゾールや成長ホルモンの過剰分泌(クッシング症候群や副腎皮質ホルモンの過剰な服用など)、インスリンの作用低下などが原因と考えられます。
一方、2型糖尿病で、インスリンの分泌が低下するとCPRは低値となります。
血糖値が低い状態や低栄養状態で、体内のブドウ糖が不足しているとインスリンの分泌量も減少します。コルチゾールや成長ホルモンの分泌量が、減少したときにも低値を招きます。
CPRは、インスリンとほぼ1:1の割合で生成され、尿中および血液中に排出されるので、CPRの生成量を測定することでインスリンの自己分泌能力を判定できる。
血中CPR値(空腹時)が0.5ng以下、1日尿中CPR排泄量が20μgを下回っている場合、インスリン注射が必要であると考えられる。
プロインスリンからインスリンを分解生成する過程に切り離されて生じる副産物である。
特に抗インスリン抗体の存在によってインスリン測定が困難な場合に有用である。

  • 血中インスリン・C-ペプチドが異常値を示す疾患
    インスリン  CPR            疾患
    増加     増加   肥満、インスリノーマ、インスリン受容体異常、
                  インスリン抗体陽性
    増加     正常   異常インスリン血症、肝障害
    増加     低下   詐病性低血糖
    正常     増加   腎不全
    低下     低下   1型糖尿病、腎不全、下垂体機能低下、膵全摘出
    腎機能が低下している時はCペプチドは見かけ上高めになる傾向がある。

1型糖尿病の大部分は自己免疫が関与しており、急性・緩徐進行・劇症に分けられる。
新規急性発症1型糖尿病の20%は劇症型であり、一見2型と思われる新規糖尿病の10%は緩徐進行1型糖尿病である。

劇症1型糖尿病fulminant type1 diabetes mellitus

劇症1型糖尿病診断基準2004(下記の基準を満たす場合は入院の上精査が必要)
下記1~3のすべての項目を満たすものを劇症1型糖尿病と診断する。
1.糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る初診時尿ケトン体陽性、血中ケトン体上昇のいずれかを認める。
2.初診時の(随時)血糖値が288mg/dl(16.0mmol/l)以上であり、かつHbA1c値<8.5%である。
3.発症時の尿中Cペプチド<10μg/day、または、空腹時血清Cペプチド<0.3ng/mlかつグルカゴン負荷後(または食後2時間)血清Cペプチド<0.5ng/mlである。

劇症1型糖尿病と1型糖尿病におけるDKA の鑑別点
           劇症1型糖尿病      1型糖尿病
DKA発症様式       超急性          急性
糖尿病の既往        (-)         (+)
膵島自己抗体        (-)         (+)
HbA1c値         正常~軽度上昇      高値
膵外分泌酵素        上昇         変化なし
妊娠との関連性       高い         比較的高い
子宮内胎児死亡       高い        比較的高い

<参考所見>
A)原則としてGAD抗体などの膵島関連自己抗体は陰性である。
B)ケトーシスと診断されるまで原則として1週間以内であるが、1~2週間の症例も存在する。
C)約98%の症例で発症時に何らかの血中膵外分泌酵素(アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1など)が上昇している。
D)約70%の症例で前駆症状として上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)、消化器症状上腹部痛、悪心・嘔吐など)を認める。
E)妊娠に関連して発症することがある。

特徴(診断基準)
①ケトアシドーシスを伴って非常に急激に発症する。
(高血糖症状が発現してから平均4日以内でケトアシドーシスに陥る。)
②発症時に著名な高血糖を認めるにもかかわらず、HbA1c値は正常範囲または軽度上昇(<8.5%)にとどまる。
③発症時にインスリン分泌は枯渇している。
(尿中Cペプチド<10μg/日)
(血中Cペプチド:空腹時<0.3ng/ml、
食後またはグルカゴン負荷後<0.5ng/ml)
④発症時に血中膵外分泌酵素の上昇を認める。
(ほとんどの場合、2~3週間のうちに正常化する。)
⑤膵島炎を認めない。
⑥膵外分泌腺にTリンパ球を主体とした単核球の浸潤を認める。

Latent Autoimmune Diabetes(緩徐進行型1型糖尿病)

1)臨床的特徴
①自己抗体が持続陽性:膵島抗体(ICA)は低抗体価(5~40JDF単位)、抗GAD抗体は急性発症1型糖尿病に比しむしろ高抗体価の傾向
②発症初期には、2型糖尿病のような臨床像(インスリン非依存状態)
③経過とともに徐々に膵β細胞機能が低下
④最終的には内因性インスリン分泌廃絶したインスリン依存状態に至る。
ただし、完全な廃絶ではなく、高感度のCペプチド測定系でのみ検出可能度の微小残存膵β細胞機能が認められる場合が多い。
⑤発症年齢が30~50歳と急性発症1型糖尿病に比し高齢の傾向にある
⑥膵β細胞機能の低下は男性の方が女性より速やかである。

2)膵組織所見
1.膵β細胞がわずかながら残存する。
2.膵外分泌組織の著名な萎縮
3.膵管に慢性膵炎様の変化(主膵管拡張、不整など)
4.膵島炎は極めてまれ
5.ときに膵外分泌腺周囲に細胞傷害性Tリンパ球の浸潤を認める

新鮮膵島移植の基準

1.膵島量≧5000IE/kg以上
2.純度≧30%
3.組織量≦10mℓ
4.Viability≧70%
5.Endooxin≧5EU/kg
6.グラム染色陰性
膵島単独移植の場合は経皮的門脈穿刺にて門脈内に点滴投与する。
(肝・腎などと同時移植の場合は手術的に)

膵島移植の禁忌
1. 重度の心疾患、肝疾患(心移植または肝移植と同時に行う場合には考慮する
2. アルコール中毒
3. 感染症
4. 悪性腫瘍(5年以内に既往がないこと)
5. 重症肥満
6. 未処理の網膜症
7. その他移植に適さないもの

参考
食後高血糖は2型糖尿病における血管合併症の独立したリスク因子であり、これをコントロールすることが糖尿病治療において重要である。
2型糖尿病の治療目標は1.最小血管障害の発症・伸展阻止 2.血管イベントの発症阻止である。

インスリン自己免疫症候群insulin autoimmune syndrome

インスリンの注射を受けたことがないにもかかわらず、血中にインスリン結合抗体を有し、 食前または食後に強い自発性低血糖を生じる症候群として、1970年に平田らによって 報告された。
インスリン結合抗体はIgGに属しκ優位であり、特定のHLA-DR4と強く関連し日本人に多い。
インスリン自己抗体によって空腹時低血糖を生じたと思われる場合に限って用いられる。
1)インスリン注射を一度も受けたことがない。
2)インスリン抗体がインスリン注射によって生じたものと区別できること
3) 低血糖の原因がインスリン抗体以外に求めにくいこと
4) 発作時、血清中に著しいインスリン量の存在が証明される。
15,000~30,000μU/mlに及びCPRも上昇する。
5) 発作時あるいはそれに近い時期に50mg/dl以下の低血糖を証明する
抗Cペプチド抗体、抗インスリン受容体抗体は検出されない。
約半数で低血糖発作の4~6週間前にSH基のような誘起性薬剤が、インスリン分子内のS-S結合を還元後、α鎖とβ鎖を解離し、インスリン抗体を産生するという説がある。
一方、食後に分泌されたインスリンが抗体に結合して直ちに働かないため耐糖能異常をきたす。
血中の自己免疫インスリン抗体に大量の自己インスリンが結合しており、そのインスリンが遊離することで低血糖を引き起こすと考えられている。
薬剤誘発性ではチアマゾ-ル以外にチオプロニン、グルタチオン、ペニシラミンで報告されており、これらの薬剤はいずれもSH基を有し、これがインスリンのS-S結合に影響を及ぼし、インスリンが変性して抗原性を持つのではないかと推察されている。
この抗体産生時期はチアマゾール使用開始2か月から1年以内にかけて見られ、やがて陰性化へと向かう。

治療法
●比較的短時間に自然寛解を示す例が多い。一過性に起こる低血糖を見たら本症を疑う必要がある。
低血糖の頻発期は糖質の頻回摂取で切り抜けると1週間前後で寛解を示し長くても1年以上にわたることはない。低血糖が持続するときはステロイド療法が有効である。
薬物を中止し、糖質投与、高張ブドウ糖静注など低血糖発作時の一般的な方法をとる。
また、SH基を有する薬剤の使用では、使用開始2カ月の時点および再開例では2週間の時点におけるインスリン自己免疫抗体のチェックが必要であるとの報告がある。
インスリン自己免疫症候群を起こす可能性のある薬剤
◇抗甲状腺ホルモン:チアマゾール、プロピルチオウラシル
◇血圧降下剤: カプトプリル
◇肝臓疾患用剤: チオプロニン
◇解毒剤: グルタチオン、D-ペニシラミン
◇代謝拮抗剤: 6-メルカプトプリン

●自発性低血糖の原因疾患
①インスリノーマ
②インスリン自己免疫症候群
③インスリン拮抗ホルモン低下
(ACTH単独欠損症、汎下垂体機能低下、原発性副腎機能低下症、甲状腺機能低下症)
④サプリメントや漢方薬などαリポ酸、コエンザイムQ2、ジベゾリン(不整脈薬)、アルコール、ピリチノール(抗リウマチ薬)

参考文献
1)日本高血圧学会編:高血圧治療ガイドライン2009.
2)Klein R et al. Is blood pressure a predictor of the incidence or progression of diabetic retinopathy?
Arch Intern Med 149:2427-2432.1989
3)Treeuw WJ et al.Effect of periodontal treatment on
Glycemic control of diabetic patients:
A systematic review and meta-analysis . Diabetes Care 33:421-427.2010
4)Journal of Life Style Medicine . Vol.1 No.1,2007
5)石井周一・能登谷洋子, Diabetes Mellitus 糖尿病,第4版2005

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