肝硬変

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アルコールと肝硬変症

『アルコール依存症』とは、飲酒により社会生活に支障をきたしており、
『大酒家』とは日本酒5合/日×10年以上で、この大酒家の10~30%に肝硬変が発生してきます。
『常習飲酒家』とは一日に平均して3合以上の日本酒を飲む人を言います。
欧米諸国では肝硬変の約80%近くがアルコール性肝硬変で占められいますが、わが国では肝硬変の約80%は、
B型やC型の肝炎ウィルスに起因しています。
肝硬変に絞ってみてみますとアルコール単独で肝硬変になった人とアルコール+C型肝炎ウィルスが
原因で肝硬変になった人の比率は約半分ですが、肝癌の発生という点からみてみますとアルコール+
C型肝炎ウィルスが原因で肝硬変になった人が約60%、アルコール単独の肝硬変の人が約30%と2倍もの
差があります。
肝硬変にまで進行しない場合でも一般には、日本酒に換算して3合以上を5年以上続けて飲むとアルコール性脂肪肝になり、さらに10年以上続けると肝硬変にまで進行します。
早期に禁酒すれば治りますが、普段から大量に酒を飲み続けている人が何日か集中的な大量飲酒を繰り返すと
アルコール性肝炎を引き起こし、急性肝不全になり死亡する事もあります。
アルコール性脂肪肝・肝炎・肝硬変にならないためには一日量を日本酒に換算して2~3合以下にとどめ、
週1~2日の「休肝日」を設けるのが賢明といえます。

肝硬変症

肝硬変の診断

確定診断
肝生検または腹腔鏡下肝生検による病理診断

肝生検を行わずに診断するポイント
①画像検査及び内視鏡検査で肝萎縮、脾腫、腹水、食道胃静脈瘤を認める
②臨床検査で肝不全、クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房を認め、硬い肝臓および脾臓を触知する。
肝硬変に典型的な血液検査
プロトロンビン時間<70% 血小板<10万  アルブミン<3.5
AST>ALT ヒアルロン酸の上昇

Z=0.124x(γ-glob%)+0.001x(ヒアルロン酸μg/L)-0.075x(血小板)-0.413x(♂1,♀2)-2.005
判定  Z(-) 慢性肝炎  Z(+)肝硬変

Child-Pugh分類法(肝硬変の程度)
00000ClassA5~6 ClassB 7~9 classC10以上
00000累積生存率50% A(6~7年) B(4~5年) C(2~3年)
スコア          1       2       3
ビリルビン(mg/dl)     <2      2~3      3<
アルブミン(g/dl)    3.5<      2.8 ~3.5    2.8>
プロトロンビン時間(秒) 1~4      4~6      6<
         (%)   80<     40~80     40>
肝性脳症         なし     1~2     3~4
腹水          なし      小量    中等量

肝硬変のスコア化(6カ月の増減差)
生命予測  5~6点(3~2年) 6~8点(1年) 9点以上(0.5年未満)

スコア            1      2       3
ビリルビンΔmg/dl/6M    <0.5    0.5~1.5    1.5<
ヘパプラスチンテストΔ%/6M  <5    5~10     10< 
コレステロール Δmg/dl    <10    10~20    20< 
コリンエステラーゼ ΔpH/6M  <0.04   0.04~0.08  0.08<

非代償期で内科的治療では余命が1年以内の時期
①Bil>3.0mg/dl ②Prothrombin Time>15秒 ③Alb<2.5
④難治性腹水 ⑤II度以上の繰り返す肝性昏睡 
の2項目以上を満たすもの

基準値
プロトロンビン時間(PT) 70~100%
トロンボテスト基準値: 70%以上
ヘパプラスチンテスト基準値: 70~120%
ATIII体内の重要な凝固阻止因子正常値:100±30 %

腹水の発生と治療

  • [病理学的構造]

肝硬変で肝小葉の形が変わると門脈血流が流れにくくなり、肝臓代謝などに使われる有効血流量が減少し、肝細胞の壊死をさらに増やし門脈圧は上昇する。
行き場を狭められた門脈圧は、別に門脈側副血行路を作って心臓に戻ろうとし、門脈‐大静脈短絡路P-Cシャントができます。
消化管から吸収された物質が肝臓で代謝されずに直接大循環へ流れてしまうことになる。

  • [腹水の発生]
    非代償性肝硬変の腹水の発生には
    ①肝細胞が破壊されて減少し,肝臓での蛋白合性能が低下、血清アルブミン値が3.0g/dl以下に減少すると、膠質浸透圧が低下するため腹水が発生しやすくなる。
    ②繊維増加や結節形成により肝静脈枝や門脈枝が圧迫され、肝内の静脈圧や門脈圧や類洞内静水圧が上昇し、水分を組織中に押し出すことも原因となる。
    ③腎臓のNa・水の再吸収が亢進して循環血液量が増大し、門脈圧の亢進によって水分が腹腔内にもれるという説もあります。
  • [腹水の治療]
    腹水の治療には一般的には安静、食事療法、アルブミン製剤の投与、利尿剤の投与などがあり、食事療法は塩分を一日1~3g以下に制限します。
    腹水を治療するためには、高蛋白食を必要としますが、高アンモニア血症を伴う場合低蛋白質食で1g/kg以下に制限します。
    血清ナトリウム値が130mEq/L以下の場合には水分の摂取量を1日1㍑以下に制限したり、アルブミン製剤や利尿剤などを投与する場合もあります。
    これらが無効の場合は穿刺により腹水を抜くこともあります。
    肝硬変では死因の1/3が食道静脈瘤出血ですが食道静脈瘤硬化療法により予後が改善されてきています。
    また門脈圧の上昇によって、胃や腸にうっ血がおこり腹部膨満感を訴えたり、胃・十二指腸潰瘍ができやすくなります。
    腹水対策
    ① 安静臥床/Na飲水の制限、塩分は1日5g以内に制限
    ② 薬物療法
      第1選択剤はk保持性利尿薬の抗アルドステロン薬で50~150mgが一般的である。
      効果不十分の時はラシックス20~80mgを併用する。
    ③ アルブミン製剤投与
      低アルブミンが高度(2.5g/dl以下)のとき
      20~25%アルブミン製剤1日100mlを3日間投与し、血清アルブミ
      ン3.0g/dlを目標とする。
    ④ 腹水穿刺排液
      腹部膨満、呼吸困難の改善を目的とするときは1日1㍑を限度とする。

肝性脳症

肝性昏睡の意識レベル
I   だらしなく気にとめない態度
II  指南障害、はばたき振戦、医師の指示に従う
III  医師の指示に従わない、傾眠傾向、羽ばたき振戦
IV  痛刺激反応昏睡
V  痛刺激無反応昏睡

羽ばたき振戦とは両腕を前に伸ばし手首を背屈させると手に震えを認める。

  • [高アンモニア血症と肝性脳症] 
    腸ではアミノ酸や腸管内に排泄された尿素が腸管細菌が産生するウレアーゼによって脱アミノ化され、アンモニアを生成するが、そのアンモニアは吸収され、肝臓に運ばれて尿素サイクルで尿素に解毒されるが非代償性肝硬変ではこのアンモニア処理能力が低下するため、高アンモニア血症となる。
    また、肝硬変で門脈ー大循環短絡路(P-Cシャント)は門脈から肝臓を通らずに直接大循環に入る為、アンモニアが肝臓で分解されずに直接脳に達します。
    肝硬変では肝の各種貯蔵能が減少していて、グリコーゲンの.蓄積能力が少なく、食後は糖の取り込みが障害されているため高血糖になりやすく、逆に夜間から早朝にかけてはグリコーゲンが枯渇するのでエネルギーの確保するため筋肉を崩壊させて補っている。
    骨格筋にもアンモニアの解毒機能が存在しますが肝硬変では骨格筋の減少が認められ、ここでのアンモニア処理能力も低下します。
    血液中のアンモニア濃度の上昇が 一過性の場合には肝性脳症は起きにくいが、一定期間以上アンモニア濃度が高値で持続すると肝性脳症が発現します。
    アンモニアは体内で「NH4+」と「NH3」のかたちで存在しているが、このうち 神経毒作用を強く発揮するのはガス状のNH3です。
    高アンモニア血症時、脳内ではBCAAを利用してアンモニアをグルタミンに変化させ処理しているが、生じたグルタミンは脳外に流出し、 腎臓や小腸で代謝されます。
    肝硬変が進行すると血液・脳間バリアー作用が弱まり、有毒物質が脳内に入りやすくなり、
    肝性脳症が 起きやすくなり脳の血流量や代謝が低下します。
    脳症が長期間にわたって続いていくと脳萎縮などの脳の変化が高頻度にみられています。.
  • [肝性脳症の誘因]
    食事蛋白の過剰摂取:アンモニアやアミンの産生が増加します。
    便秘:食事蛋白、アミノ酸と腸内細菌叢との接触時間が増加する為、アンモニアの産生が増加し、有毒性アミンの生成と吸収が増加します。また排便時の力みによって門脈圧を亢進、食道静脈瘤の破裂をきたすことがあります。
    利尿剤の投与、嘔吐、下痢:低カリウム血症を誘発しアルカローシスを招き、アンモニアを増加させます。利尿剤でアルカリ性に傾くと、毒性の強いガス化アンモニアが増加し、逆に、酸性の方にアンモニアは引かれるため、二糖類などで腸内を酸性にするとアンモニアは体内から腸内に移動します。
    腎臓の尿細管からNH3(アンモニア)をNH4にして排泄します(この時Hを使用)。
    尿細管はNa・Cl再吸収しHを排泄していいます。利尿剤の使いすぎはHが排出されるためNH3をNH4とできず高アンモニアとなります。
    体内でアンモニアは、90%以上がイオン化したもので、この型のものが毒性は低く、フリーの物はガス化し毒性が強くアルカリ性で増加します。
    鎮静剤、鎮痛剤、精神安定剤の投与:肝性脳症の既往はこれらの薬に対する感受性が亢進しています。
    低クロル性アルカローシス長期の食塩摂取の制限で起こります。
    消化管出血:食道静脈瘤の破裂などによって消化管内に出た血液は蛋白源としてアンモニア、有毒性アミンなどを生成します。
    感染(肺、尿道、腹膜炎):組織の崩壊により、窒素化合物が増加します。
    手術:手術侵襲により肝機能が低下し、糖代謝などの合併により栄養管理が困難になります。また輸血用の保存血液中にはアンモニアが多く含まれています。
    肝硬変患者の死亡原因は、肝癌・肝不全・消化管出血です。
    特殊アミノ酸製剤、利尿剤の開発により肝不全の症状である肝性脳症や浮腫・腹水も改善されてきて、肝硬変の死亡原因は肝癌が50~60%を占めるようになりました。
    これらのことから肝臓病の生存率を高めるためには肝硬変から肝癌に到る段階を遅らせことが非常に重要であります。

BCAAとFischer比

  • [分岐鎖アミノ酸BCAAと芳香族アミノ酸AAA]
    正常人では、血漿中の各アミノ酸の比率がほぼ一定となっているが、肝硬変ではアミノ酸バランスがくずれます。
    肝硬変患者は肝臓でのアミノ酸代謝が減少し相対的に骨格筋でのアミノ酸代謝が亢進するため、Ile,Leu,ValなどBCAAが減少します。
    一方、骨格筋では代謝されないPhe,TyrなどのAAAが過剰になります。
    その結果BCAA(Ile,+Leu+Val)/AAA(Phe+Tyr)のモル比(=Fischer比)が低下します。このAAAが血液脳関門(BBB)を通過して脳内に移行する時、BCAAが競合的に拮抗することが知られています。
    つまり、肝硬変患者では血漿中のBCAA濃度の減少に伴い脳内のAAA濃度が増加するため、肝硬変で血漿中のBCAA濃度が減少するほどAAAは脳内に移行しやすくなります。
    脳内のAAA濃度の増加はNE、DA(dopamin)、5HT(serotonin)などに神経伝達物質、オクトパミン、5-ヒドロキシルインドール酢酸などの偽性神経伝達物質の生成を亢進します。
    これらの脳内アミンの代謝異常が肝性脳症の一因と考えられています。
  • [必須アミノ酸と非必須アミノ酸]
    蛋白質は約20種類のアミノ酸から構成されており、通常健常人では必須アミノ酸と非必須アミノ酸のバランスは1:1です。
    非必須アミノ酸は体で作ることができるアミノ酸であるのに対し、必須アミノ酸食物から補給しなければならないものです。
    肝硬変が進行するにつれて必須アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の分岐鎖アミノ酸(BCAA)が減少して非必須アミノ酸(AAA:フェニ-ルアラニン、チロシン)は増加します。

フィッシャ-比(BCAA/AAA)により肝硬変の進行度を確認します。

0000000000000000000代償性肝硬変   非代償性肝硬変
血清アルブミン値  3.6g/dl以上    3.5g/dl以下
フィッシャ-    2.1以上      2.0以下

  • Fischer比: 正常者で3~4、肝性昏睡者では1以下
  • アルブミンが3.5g/dl以上の群では比較的予後が良く3.5g/dl以下では生存率が低下する。
  • [分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)と適応]
    必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が不足し、非必須アミノ酸である芳香族アミノ酸AAA(フェニ-ルアラニン、チロシン)の増加することで肝性脳症が発症します。
    肝機能低下によりエネルギ-源である糖質が低下し、そのかわりに分岐鎖アミノ酸BCAAがエネルギ-源として利用されます。
    一方、筋肉は有害物質であるアンモニアを処理する働きがありますが分岐鎖アミノ酸BCAAがエネルギ-として使われてしまうため蛋白質を作れなくなり筋肉量が減少してしまいます。
    そこで肝性脳症を覚醒するために分岐鎖アミノ酸を投与します。
    その後、脳症再発の防止と栄養状態を改善(血清アルブミン上昇等)するために分岐鎖アミノ酸BCAAを多く含んだ総合的な栄養剤(肝不全用成分栄養剤リ-バクト顆粒)も服用しますが適応となるのは、初期の方が対象となります。

分岐鎖アミノ酸含有製剤と投与目的
リ-バクト顆粒;  分岐鎖アミノ酸単剤  低アルブミン血症、全身倦怠感改善等
ヘパンED/アミノレバンEN ; 肝不全用成分栄養剤  肝性脳症、低栄養状態改善
モリヘパミン/アミノレバン;  肝不全用アミノ酸注射剤  肝性脳症改善

  • [肝硬変の栄養管理と分岐鎖アミノ酸含有製剤]
    代償期  バランスのとれた食事 
         エネルギー  2000kacal/day
         蛋白      60g/day+リーバクト顆粒
         脂肪(エネルギー比)  20%
    00000000ビタミン・食物繊維  多めに摂取
    非代償期  塩分         6g/day
          水分(浮腫が強い場合) 1000ml/day以下
          蛋白質     &deco(red){60g/day +リーバクト顆粒
                  40g/day+ヘパンED20g+};
    000000000000000000000000アミノレバンEN

栄養治療のジレンマと解決

アンモニア源を減らすためには低蛋白食が必要ですが、肝硬変では窒素バランスを維持するためには、現実には、健常人に比べると1.3倍のアミノ酸が必要であり、蛋白質の量をたくさん必要としているのに、病態的には蛋白質の量を制限せざるを得ないため、そのジレンマを解決すべくBCAA製剤(アミノレバンEN ヘパンED リーバクト)を使用します。

肝硬変の方の窒素出納では、3食よりも夜食を加えた4食,6食の方が窒素出納の改善がされており、良い栄養状態が保てます。
夜食の効果としまして1日あたり1g窒素の保留効果が確認されており蛋白に換算すると6.25g 非脂肪体重、筋肉として30g/dayの増加が期待できることになります。
肝硬変は進展すると蛋白不耐症(食事後のアンモニアの上昇により、脳症を引き起こすこと)になり限られた蛋白摂取量でも食事のタイミングを変えることにより、窒素保留に差が出、夜食を摂ることは非常に有効であり夜食を長期に続けるとlean body mass(非脂肪体重・筋肉)の増加が期待できます。

蛋白不耐の場合、蛋白量を減らすことで(低蛋白食)、ある程度アンモニアのコントロールが可能ですが、それではアルブミン値の改善は不可能です(栄養治療のジレンマ)。
そのような場合は、低蛋白食と経口BCAA製剤(アミノレバンEN ヘパンED)を併用することでアンモニアのコントロールと栄養改善の両方の効果が得られます(ジレンマの解決)。
一般的に、アミノレバンEN3包を使用した場合、食事蛋白も含めた1日の摂取総蛋白量が100gを越えても、脳症は起こりづらくなります。

アミノ酸の投与目的は熱源(カロリー)の補給ではなく、蛋白質の素材を供給する(アルブミンなどを上昇させる)ことですが、蛋白合成を促進させるためにはアミノ酸だけでなく適正な量の糖質や脂質が必要です(NPC/N;150以上)。また、肝硬変の栄養治療を実施するにあたっては、不足するビタミン類やミネラルも十分考慮しなければなりません。
NPC/N :Non Protein Calory/窒素(g)

また、脳症の改善、再発を防止するために十分なBCAAの量、またZnなどを摂取する必要があります。

●栄養管理:低蛋白食(40g以下)やアミノレバンEN(50~150g)、食物蛋白食(食物繊維15~20g)

●便通調整:便秘に対してラクツロースの浣腸(等量の水で希釈、300~500ml) 乳酸菌製剤(ビオクラス9カプセル)

●電解質是正:低カリウム血症にアスパラK(3~6T)

●アンモニア対策:ポルトラック(18~36g)、ラクツロース(30~90ml)、塩酸バンコマイシン(2g)、フラジオマイシン(2~4g)、ポリミキシンB(300~600万単位)、硫酸亜鉛(300~600mg)

●アミノ酸不均衡の是正:アミノレバン(40gアミノ酸/500ml)

1)高アンモニア対策
便秘・電解質異常などの誘因を除き、低蛋白食(1日40g以下)とします。
二糖類などの内服で、腸内pHを下げ、アンモニア産生菌を減らすとともに、排便を促進させ、アンモニアの腸管内吸収を阻害させます。時に、アンモニア産生菌を押さえるために、抗生物質の投与も行われます。

2)分岐鎖アミノ酸
分岐鎖アミノ酸を高濃度に含有する 特殊組成アミノ酸輸液剤を3~5時間で点滴静注し、脳におけるアミノ酸や アンモニア代謝の異常を是正します。

特に、血漿分岐鎖アミノ酸濃度の著しく低い慢性(再発)型では覚醒効果が期待できます。覚醒後は輸液剤に換えて、肝不全用経口投与栄養剤(分岐鎖アミノ酸含有量が多い)を使用します。

ラクツロースとラクチトール
現在、高アンモニア血症を伴う肝性脳症の治療薬としてラクツロース製剤が第一選択剤として広く使用されています。
ラクチトール製剤(合成二糖類)は乳糖から合成されますが、これはガラクトースとソルビトールが結合した構造をもちます。
ラクチトールは1gあたり約2kcal(ショ糖は4kcal /g)で、乳糖を原料に合成され乳糖を含まないので血糖値への影響はありません。人工甘味料として砂糖代わりに使用され、服用により善玉菌とよばれるビフィズス菌が増え、ビフィズス菌はアンモニアを取り込む働きがあり、またビフィズス菌の代謝産物である乳酸や酢酸などは腸の運動を助け、便秘を防ぎます。

作用機序
ラクチトールを服用しますと、胃・小腸で吸収されることなく大腸に達し、腸内細菌により、酢酸、プロピオン酸、酪酸などの脂肪酸に分解されます。その結果、腸内のpHが低下しアンモニアが吸収されにくいイオン型となります。更に、pH低下により腸内細菌叢が変化しアンモニア産生菌の減少、乳酸産生菌の増殖が促進することに伴いアンモニアの産生が抑制されます。
また、ラクチトールが腸管に到達後、浸透圧が亢進し、腸管輸送能が亢進することにより、アンモニアを含む腸管内容物の排泄が促進されます。ラクツロース製剤の作用も基本的に同じです。

大腸には腸内細菌がたくさんいますがラクチトールはこれらの菌により分解されて乳酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の酸になります。酸性になると 腸管内にあるアンモニアは吸収されにくい形にかわります。
また、ラクチトールは 腸管輸送能を亢進させアンモニア源となる腸管内容物の滞留時間を短縮させ、アンモニアの産生及び吸収を抑制し血液中のアンモニア濃度を低下させます。また、ラクチトールは善玉菌であるビフィズス菌を増やしアンモニアを産生する悪玉菌を増やしません。

肝性脳症の治療

腸管内で生ずるアンモニアなどの神経毒性物質が肝不全のために解毒されなかったり、門脈大循環シャントのために直接大循環に流入して血液脳関門を超え、脳内に入ることにより肝性脳症を呈してくる。
亜鉛は肝線維化を抑制的に作用し、銅は促進的に作用する。

高アンモニア血症(肝性脳症)は劇症肝炎に準じて治療する
  1)治療方針
    予後の改善のために、意識障害の有無に関係なくPT≦40%の時点で
    重症肝炎と診断し、劇症化の予防的治療を開始する。
  2)急性型の治療
   1.高アンモニア血症の予防と是正
     ◯ガラクトースとフルクトースからなるラクツロ-ス(難消化性二単糖)は、
00000000小腸では分解されず、大腸の腸内細菌により分解され乳酸と酢酸を生じ、
00000000大腸内のpHを下げることによりアンモニアの吸収を低下させる。
00000000浸透圧性の下痢と消化管運動の亢進もアンモニア吸収低下に役立つ。
     1)経口:60~90ml/1~3×1。軟便程度の量に調節する。
     2)経口不可(急ぐ場合):
000000000難消化性二糖類(ラクツロース)注腸 200ml+水800ml/1~2回/日
     ◯抗生物質:腸管非吸収性カナマイシン 2~4g/2~4×1

   2.特殊療法
    a)ステロイド療法:肝壊死の進展を防止することを目的としてプレドニゾロン
0000000001mg/kg/日を早期に使用し、PTの改善が見られたらreboundに
000000000注意しながら、はやめに減量する。
     効果がない場合は漫然と投与せず早期に中止する。
    b)肝不全用特殊組成アミノ酸輸液製剤
0000000アミノレバン500ml+50%ブドウ糖40mlを2~3時間かけて1~2回点滴静注
0000000する。アミノ酸は総エネルギーが不十分の状態ではエネルギー1g=4kcalとして
0000000消費されてしまう。
0000000蛋白質合成のためにはアミノ酸6.26gあたり130~180kcalの
0000000エネルギーが必要です。
0000000アミノレバン  重篤な腎障害には禁忌
     アミパレン10%200ml   BCAAが多く配合されているアミノ酸輸液製剤
0000000肝性昏睡や重篤な腎障害そして高窒素血症には禁忌
0000000アミノレバン500ml中にはNaが7mEq、CLが47mEq含まれるので注意!
000000000アミノレバン500ml点滴静注(3~4時間)アミノレバン
000000000(40gアミノ酸/500ml) 
    c)グルカゴンーインスリン療法(GI療法):肝再生機構に作用して再生を
000000000促進させたり、壊死を防止する作用があるとされる。
     10%ブドウ糖液 500ml+グルカゴン1mg+レギュラーインスリン
00000000010Uを2~3時間で点滴静注。1~2回/日。
       低血糖、低K血症、悪心に注意。
    d)血漿交換療法(PE):肝不全に伴う毒性物質の除去とアルブミンや
000000000凝固因子などの欠乏因子を補充するために行われる。大量のFFPを
000000000使用するため副作用も多い。
     1)適応:急性型では、昏睡Ⅱ度以上、PT≦40%の症例で施行する。
        亜急性型では、脳症発現後できるだけ早期に開始する。
     2)方法:膜型血漿分離器を使用し、3~5 /回のFFP
0000000000(1パック80ml)を3~4時間で交換する。通常3~5日間。
     3)血漿交換12時間後のPTが50%以上となる症例は生存率が高い。
     4)亜急性型では本療法のみでは予後の改善はみられず、人工肝補助療法
      の併用が必要と思われる。
    e)人工肝補助療法:
    f)抗ウイルス療法:
 3.合併症対策
    a)出血傾向
     1)アドナ  1A(100mg)×2/日 静注
     2)ケイツ- 1A(50mg)/日 混点
     3)DICの診断および治療
     4)PEを施行しない場合にはPT値≧25%を目安にFFPを投与
    b)脳浮腫
     1)予防として、頭高位(30~45゜)とし、低酸素血症は脳圧を亢進
      させるのでPaO2を100torr前後に保つ。
     2)神経症状(瞳孔不同・ミオクロ-ヌス・除脳硬直)が出現したら脳浮
      腫に対する治療を行う。
    c)感染症
     1)抗生物質の予防投与は原則として行わない。
     2)感染症状出現時は、肝障害の少ない薬剤を起炎菌を考慮して投与する。
      塩酸バンコマイシン(2g)フラジオマイシン(2~4g)、ポリミキシンB(300~600万単位)
     3)肝障害発生頻度の高い抗生剤:EM>AG系、Tc系、CP
    d)消化管出血対策
000000000ガスター1回0.8-1mg/kg静注1日2回
0000e)脳浮腫対策
00000000a. マンニットール1回0.5-1g/kg点滴静注1日4−6回
00000000b. グリセオール1回5-10ml/kg点滴静注1日3−4回
0000f)中心静脈栄養管理
00000000a. アミノレバン10-20ml/kg点滴静注1日1−2回
00000000b. ブドウ糖液中心に総合ビタミン剤、ケーツーNを加え、尿量1mg/kg/時
0000000以上を保つ。
0000g)高アンモニア血症対策
0000000a. ラクツロース1日0.5-2ml/kg分3経口
0000000b. カナマイシン1日50-100mg/kg分4経口
0000h)出血・DIC対策
0000000a. ケーツー1回1mg/kg(最高10mg/日)静注
00000000ヘパプラスチンテスト40%以上を目的に
0000000b. エフオーワイ1-2ml/kg/時 持続点滴
0000000c. 新鮮凍結血漿1回10ml/kg 追加投与
0000000d. 併用療法として ヘパリン1日200-400単位/kg 持続点滴のもとに
000000000アンスロビンP1日30単位/kg 点滴静注

[A]経口摂取がある程度確保されている場合
000① 低蛋白食  発症数日は0.5g/kg/dayその後、漸次、1.0~1.5g/kd/dayに増量
000②便秘対策(+消化管清浄化)   難消化性二糖類(ラクツロース30~90ml)
    腸管非吸収性抗生剤 カナマイシン2~4g、
000000000000000000000000ポリミキシンB300~600万単位/日
0000③特殊アミノ酸製剤の投与  アミノレバンEN(50g) 2P/2xまたは3P/3x
                へパンED(80g)2P/2x
[B]経口摂取不能時
0000000◯経口摂取不能時
00000000 中心静脈栄養 ; 高ロリー輸液用基本液25~35kcal/kg/dayに
0000000各種ビタミン、微量元素を追加

4.分岐鎖アミノ酸(BCAA)療法
フィッシャー比 (BCAA/ AAA ) 3.0以上にします。
高アンモニア血症を伴う場合は蛋白1g/kg以下に制限します。
血清Naが130以下の場合には水分の摂取量を1日0.5~1㍑以下に制限します。
低K血症はアルカローシスを招きアンモニアを増加させる。
低CL性アルカローシスは長期の食塩制限で起こります。
肝硬変ではアルブミンが不足しアミノ酸のバランスも崩れてきますから肝臓で代謝されるべき「芳香族アミノ酸」が増加し、筋肉で代謝される「分岐鎖アミノ酸」が減少してしまいます。
不足している分岐鎖アミノ酸を補給することで肝性脳症や腹水の改善効果も期待できます。

  • BCAA製剤にはアミノレバンEN, へパンED,リーバクト、
    モニラック/ラクツロース シロップ(本剤はガラクトースや乳糖を含有)
    腸管内アンモニア産生・吸収を抑制し生理的腸管機能を改善する。
    30~60ml/2~3x/day
  • ポルトラック 1包中6g
    ビフィズス菌を選択的に増殖させ腸内アンモニア産生・吸収を抑制する。水様便が現れたら減量または中止する。
  • リーバクト
    0000非代償性肝硬変の低アルブミン血症の改善
    00001包 4.15g 成人に1回1包を1日3回食後経口服用する。
    0000 総ビリルビン値が3mg/dL以上、肝性脳症で昏睡度が3度以上、
    0000 肝臓での蛋白合成能が著しく低下しているときは禁忌
    0000 副作用は下痢、お腹が張る、吐き気、食欲不振

0000低カリウム血症でカリウム補充に反応しない場合はマグネシウムを補充することで
0000改善することがある。

肝臓疾患に対する微量元素「銅」の役割

生体中の金属の中で銅は鉄、亜鉛、に次いで多く存在し広範な生体内諸反応の触媒としての大切な役割を担っています。
肝臓障害では慢性肝炎から肝硬変と病態が進展すると銅排泄障害が起き、その結果血清・肝組織中の銅濃度は有意に増加しています。

以上のように銅は、必要以上に蓄積すると線維化・癌化が進む原因となり、肝硬変・肝癌の成因の1つとなると言われています。
 実際、先天的に銅がたまり肝硬変・肝癌に進行する疾患にウイルソン病がありますが、この疾患は銅を排出させることで病状の改善が見られています。
 これらのことから過剰に蓄積した銅を排除することは、肝硬変・肝癌予防につながるとも考えられています。
 

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