胆管炎

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急性胆管炎

(1)胆管内に著明に増加した細菌の存在
(2)細菌またはエンドトキシンが血流内に逆流するような胆管内圧の上昇の2因子が不可欠となる。

急性胆管炎の診断基準

000A   1.発熱*(悪寒・戦慄を伴う場合もある) 2.腹痛(右季肋部または上腹部)
000000003.黄疸
000B   4.ALP,γ-GTPの上昇 5.白血球数,CRPの上昇
      6.画像所見(胆管拡張,狭窄,結石)
 疑診:  Aのいずれか+Bの2項目を満たすもの
 確診: (1)Aのすべてを満たすもの(Charcot3徴)
     (2)Aのいずれか+Bのすべてを満たすもの
    ただし,急性肝炎や急性腹症が除外できることとする。
       

MRI,MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography)
   MRIでは急性胆管炎の際に,胆管拡張,胆管粘膜の浮腫,胆管周囲の浮腫や
   液体貯留などの描出が可能となるが,急性胆管炎の診断はMRIだけでは困難で,
   臨床所見,血液検査等を含めた総合的な診断が重要である。
DIC-CT(Drip infusion cholangiographic-computed tomography)
   DIC-CTは急性胆管炎の成因診断に有用であるが,黄疸例では適応とならない。

急性胆管炎発症の成因
   1)胆道閉塞と,2)胆汁感染である。
   胆道閉塞の原因のうち頻度が高いのは,総胆管結石症・良性胆道狭窄・
   胆道の吻合部狭窄・悪性疾患による狭窄である。
   悪性疾患が占める割合は,約10~30%と報告されている
胆汁感染の危険因子は
   (1)高齢,(2)緊急手術,(3)急性胆嚢炎の既往,(4)黄疸の既往・存在,
   (5)総胆管結石,(6)総胆管の検査や処置の既往,(7)胆管空腸吻合術後,
   (8)総胆管の閉塞,などがある。

急性胆嚢炎患者の72%,慢性胆嚢炎患者の44%,胆道閉塞患者の50%では,胆汁培養が陽性となる。また黄疸を伴う総胆管結石患者の90%で,胆汁から細菌が同定される

急性胆管炎の重症度判定基準

  • [I]重症急性胆管炎
      重症急性胆管炎は,敗血症による全身症状をきたし,直ちに緊急胆道ドレナージを
      施行しなければ生命に危機を及ぼす急性胆管炎である。
      急性胆管炎の重症化は,胆道内圧上昇により細胆管が破綻して,感染した胆汁内容物
    0000の類洞への流出と血中への移行を起こし,敗血症やDICなど全身の臓器不全をきたす
    0000ことである。

  急性胆管炎により,「意識障害(精神症状)」,「急性腎不全(クレアチニン >2.0mg/dLまたは尿素窒素 >40mg/dL)」,「ショック(収縮期血圧 <80mmHgまたは血圧の維持にカテコラミンを要するもの)」,「血小板数 >10万/mm3または30%以上の急激な減少」,「エンドトキシン血症,または菌血症」,「急性呼吸不全」を呈した場合には重症と判断した。
   急性胆管炎のため直ちに緊急胆道ドレナージが必要な病態を重症急性胆管炎と判断
0000する。

 一般血液検査
   トランスアミナーゼ(AST,ALT)値の上昇
   重症胆管炎の場合は,白血球数が減少することやプロトロンビン時間も延長するこ
0000とがある。
   重症の急性胆管炎では,腎不全(尿素窒素やクレアチニンの上昇,カリウム
0000の上昇),DIC(血小板数の低下,FDPの上昇),血液ガス分析によるPaO2やbase
0000excessの低下,高度の白血球数上昇などをきたす。
   ALP> 正常上限値の2倍   アミラーゼ↑

0000急性胆管炎では,炎症性サイトカインが産生され,IL-6,IL-8, LPS結合蛋白,
0000可溶性CD14も高値を呈することがある
0000重症胆管炎ではエンドトキシン血症や補体価の低下をきたすことも多いが,
0000エンドトキシン値の高値は,疾患の重症度や予後とは必ずしも相関しない。

  • [II]中等症急性胆管炎
      中等症  全身の臓器不全には陥っていないが,その危険性があり,
    0000すみやかに胆道ドレナージをする必要のある胆管炎
      急性胆管炎の内,以下のいずれかを伴う場合は「中等症」とする。
      ①黄疸(ビリルビン >2.0mg/dL) 
      ②低アルブミン血症(アルブミン <3.0g/dL)
    0000③腎機能障害(クレアチニン>1.5mg/dL,
        尿素窒素 >20mg/dL)
      ④血小板数減少*( <12万/mm3)39℃ 以上の高熱
  • [III]軽症急性胆管炎
      軽 症  胆管炎を保存的治療でき,待機的に成因検索とその治療(内視鏡的処置,手術)を
      行える胆管炎

急性胆管炎のうち,「重症」,「中等症」の基準を満たさないものを「軽症」とする

肝硬変等の基礎疾患でも血小板減少をきたすことがあり注意する。
付記:重症例では急性呼吸不全の合併を考慮する必要がある。

特殊な胆管炎

Mirizzi syndrome
胆嚢頸部や胆嚢管結石により機械的圧迫や炎症性変化によって総胆管に狭窄をきたした病態。
0000 Type I: 胆嚢頸部または胆嚢管にある結石と胆管周囲の炎症性変化により胆管が右方より圧排された病態。
0000 Type II: 胆嚢管結石による胆管の圧迫壊死のため胆嚢胆管瘻(biliobiliary fistula)をきたした病態。

Lemmel syndrome
十二指腸傍乳頭部の憩室が胆管,あるいは膵管(の開口部)を圧排させ,胆道・膵管の通過障害を来すことにより生じる胆汁うっ滞,黄疸,胆石,胆管炎,膵炎などの一連の病態。

各種胆道疾患における胆汁中陽性細菌はその起源を腸内細菌叢とすることがいわれている。
実際,好気性としてはE. coliやKrebsiella,Enterococcus,Enterobacterなどが高頻度に分離され,次いでStreptococcus spp. やPseudomonas,Proteusなどがしばしば分離される。
また,嫌気性菌としてはClostridium,Bacteroidesがしばしば分離される。

急性胆管炎患者の胆汁中に細菌が存在するリスクファクター8因子年齢70歳以上,緊急手術例,手術時の黄疸併存,手術前1週間以内の悪寒の存在発症・入院後4週間以内の手術施行,胆道系手術既往,結石などによる胆管閉塞機転の存在)がある。

胆道閉塞が存在すると抗菌薬の胆道移行性がいちじるしく阻害される。
原則としてすみやかに胆道ドレナージを行うべきである。(推奨度A)
胆道閉塞が存在すると,胆道移行性にすぐれた抗菌薬でもほとんどの場合胆道に移行せず,
原則としてすみやかに胆道ドレナージを行うべきである。

経皮経肝的ドレナージに関して急性胆管炎にPTBD(or PTCD) :
   percutaneous transhepatic biliary drainage(or percutaneous
   transhepatic biliary drainage)は18~24時間以内に解熱し臨床症状の
   著明な改善を得ている。

  • 胆汁の腸肝循環が遮断された場合,抗菌薬の胆汁中移行は著しく阻害されることに注意すべきである。
  • セフェム系,ペニシリン系,アミノグリコシド系,カルバペネム系抗菌薬の多くは腎排泄のため,腎障害時には用量を減量する。「サンフォード感染症治療ガイド2005」
    成人男性の推定量(女性は x 0.85)=腎機能正常者の投与量の%
             =(140-年齢)(kg単位の理想体重)/(72)(血清クレアチニンmg/dl)
    0000000000000000000 男性の理想体重:50.0kg+0.91kg/cm(150cm以上)
    0000000000000000000 女性の理想体重:45.5kg+0.91kg/cm(150cm以上)

急性胆道炎での抗菌薬の使用
重症急性胆管炎に対して使用している抗菌薬では第2-3世代セフェム系,カルバペネム系抗菌薬。使用薬剤としてはセフォペラゾン/スルバクタム(スルペラゾン®),イミペネム/シラスタチン(チエナム®),メロペネム(メロペン®)等が使用されており,
セフェム系などにクリンダマイシン(ダラシン®)を併用する場合も少なくなかった。

急性胆管炎と悪性疾患の鑑別
CT健常人の胆管の壁肥厚は全例が1.5mm以下であり,5mm以上の壁肥厚は胆管癌のみにみられる。
腫瘍マーカー
胆管癌検出のsensitivityは血清CA19-9:61.11%,血清CA125:96%,胆汁中のCA19-9は胆管炎でも胆管癌でも高値となるが,胆汁中CA125が200ng/ml以上と高値の症例は胆管癌である。

基本的診療方針
急性胆管炎では診断がつき次第,初期治療を開始するとともに重症度評価を行い重症度に応じた治療を行うことが原則となる。
血圧低下や意識障害を伴うような重症急性胆管炎では緊急的な胆管ドレナージが必須である。
また,中等症~軽症胆管炎であっても,抗菌薬投与などによる保存的治療が奏効せず状態に改善が認められなければ,可及的速やかに胆管ドレナージを行うべきである。
特に高齢者では,発症後容易に重症化するため,胆管非拡張例でも積極的に胆管ドレナージを行うことが肝要である。
胆道ドレナージ術の施行を前提として,絶食の上で十分な量の輸液,電解質の補正,抗菌薬投与を行う。
急性胆管炎の重症化,すなわち,ショック(血圧低下),菌血症,エンドトキシン血症,意識障害,急性呼吸不全,急性腎不全,DIC(血小板数減少)のいずれかを認める場合は,緊急に
胆道ドレナージを行う必要がある。

  • 急性胆管炎では,原則として,胆道ドレナージ術の施行を前提とした初期治療(全身状態の改善,感染治療)を行う。
    ①重症例(ショック,菌血症,意識障害,急性腎不全のいずれかを認める場合):
    適切な臓器サポート(十分な輸液,抗菌薬投与,DICに準じた治療など)や呼吸循環管理(気管挿管,人工呼吸管理,昇圧剤の使用など)とともに緊急に胆道ドレナージを行う。
    ②中等症例:初期治療とともにすみやかに胆道ドレナージを行う。
    ③軽症例:緊急胆道ドレナージを必要としないことが多い。 しかし,総胆管結石が存在する場合や初期治療(24時間以内)に反応しない場合には胆道ドレナージを行う。

急性胆管炎の治療
初期治療は,絶食・輸液・抗菌薬投与などempirical therapyの開始前に積極的に血液培養を行う。
可能な限り胆汁を採取して起炎菌の同定を行い,培養の結果が判明したらempirical therapyからより抗菌スペクトラムの狭い抗菌薬に変更する。
急性胆管炎の診断がついたら,ごく軽症の症例を除きfull doseの抗菌薬が必要である。
empirical therapyのターゲットは腸内細菌,特に大腸菌,クレブシエラ,エンテロバクター,緑膿菌などである。
また、胆管空腸吻合のある患者や重症の高齢者では,バクテロイデスのような嫌気性菌もカバーする必要がある。
アミノグリコシド系薬は,胆汁移行性は極めて不良で,単剤では利用できない,胆道閉塞がある場合には腎毒性などの合併症のリスクが増強する懸念もある。
これに代わり、広域ペニシリン,セフェム系抗生剤や新キノロンに加えて,現在急性胆道炎に対して広く使用されている第三,四世代セフェム系薬やカルバペネム系薬の中から,抗菌スペクトラムや耐性の出現状況を考慮し,重症度に応じたempirical therapyを行う。

血圧低下や意識障害を伴う重症急性胆管炎や抗菌薬投与などによる保存的治療が奏効しない症例は,緊急的な胆道ドレナージの対象となる。
手術拒否例やハイリスク例などでは経過観察も選択可能である。

胆管胆汁移行性のよい抗菌薬
イミペネム・シラスタチン(チエナム®)は,他剤と比較すると胆管胆汁への移行はさほど良好ではないが,抗菌力に優れた薬剤であり起炎菌に対するMICが小さいため,常用量の投与で胆汁中濃度はMICを上回り,治療上十分な胆汁移行性を示すと考えられる。

胆管胆汁移行性の良好な静注抗菌薬
ペニシリン系薬  ピペラシリン(ペントシリン®),アスポキシシリン(ドイル®),タゾバクタム/ピペラシリン(タゾシン®),アンピシリン(ビクシリン ),
セフェム系薬(第一世代)セファゾリン(セファメジン®)
(第二世代)セフメタゾール(セフメタゾン®),セフォチアム(パンスポリン®),フロモキセフ (フルマリン®)
(第三,四世代)セフォペラゾン:スルバクタム(スルペラゾン®,セフトリアキソン(ロセフィン®),セフォペラゾン(セフォペラジン®),セフピロム(ブロアクト®,セフタジジム(モダシン®),セフォゾプラン(ファーストシン®)
ニューキノロン系薬 シプロフロキサシン(シプロキサン®),パズフロキサシン(パシル®)
モノバクタム系薬 アズトレオナム(アザクタム®)
カルバペネム系薬 メロペネム(メロペン®),イミペネム・シラスタチン(チェナム®), ビアペネム(オメガシン®)
リンコマイシン系薬 クリンダマイシン(ダラシン-S®)

軽症例
経口ニューキノロン系薬;  レボフロキサシン(クラビット®) シプロフロキサシン(シプロキサン®)
経口セフェム系薬;  セフォチアムヘキセチル(パンスポリンT®), セフカベンピボキシル(フロモックス®)
第一世代セフェム系薬;  セファゾリン(セファメジン®)
広域ペニシリン系薬 ; アンピシリン(ビクシリン®) ピペラシリン(ペントシリン®)

ペニシリン系薬やセファゾリンは腸内細菌に対し耐性が生じてやすく,β-ラクタマーゼ阻害剤との合剤であるタゾバクタム/ピペラシリン(タゾシン®)やアンピシリン/スルバクタム(ユナシン-S®)の使用も推奨される。
タゾバクタム/ピペラシリンは胆汁移行性も良好である。
また,腹痛が比較的軽度で,発熱などの炎症所見や血液検査に乏しいような軽症胆管炎症例では,上記のような経口抗菌薬を投与する場合もある。

中等症,重症例
重症例は,第1選択として,幅広い抗菌スペクトルを持つ第三,四世代セフェムが推奨される。
第1選択薬が無効の場合は第2選択としてニューキノロン系薬,カルバペネム系薬が,グラム陰性菌が検出された場合はモノバクタム系薬が選択される。
なお,中等症・重症の胆管炎では早急に胆道ドレナージが必要である

  • 中等症第1選択薬;
    第二世代セフェム系薬
    セフメタゾール(セフメタゾン®),フロモキセフ(フルマリン®)
    セフォチアムヘキセチル(パンスポリン®)
  • 重症第1選択薬;
    第三,四世代セフェム系薬
    セフォペラゾン/スルバクタム(スルペラゾン®), セフトリアキソン(ロセフィン®), セフタジジム(モダシン®),セフォゾプラン
    (ファーストシン®),セフピロム(ブロアクト®)

グラム陰性菌が検出された場合
モノバクタム系薬; アズトレオナム(アザクタム®)

  • 重症第2選択薬
    ニューキノロン系薬; シプロフロキサシン(シプロキサン®),パズフロキサシン(パシル®)

嫌気性菌が検出あるいは併存が予想される場合
上記のうち一剤+クリンダマイシン(ダラシン-S®)

カルバペネム系薬 ; メロペネム(メロペン®),イミペネム/シラスタチン(チエナム®)パニペネム/ベタミプロン(カルベニン)

アミノグリコシド系薬の胆汁移行性は極めて不良であり,単剤では胆管炎に対して無効である。
加えて,閉塞性黄疸が存在する場合にはアミノグリコシド系薬の腎毒性が増強される懸念もある。
腸内細菌の菌交代現象・ビタミンK吸収障害が生じ,出血傾向をきたすことがあることに注意し,必要ならばビタミンKを経静脈投与する。

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