腎症と神経症

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Opening Trap

手根管症候群Carpal-tunnnel syndは、多くは特発性で、正中神経の圧迫性neuropathyである。
母指、示指、環指のとう側のしびれ感や痛みを呈し進行すると母指球の筋萎縮を認める。
肘部管症候群で尺骨神経が障害される。
糖尿病性ニューロパチーは小径繊維の障害を反映し早期より自律神経障害を伴いやすく、起立性低血圧、膀胱障害、消化器障害、発汗異常など全身多臓器にわたる。
糖尿病性ポリニュウロパチーは下肢優位の、左右対象性の感覚障害を特徴とし、アキレス腱反射低下と振動覚低下が重要である。
糖尿病性眼球運動障害では動眼神経麻痺が最も多く、外眼筋麻痺による眼球運動障害と眼瞼下垂をきたすが瞳孔は保たれるの典型的パターンである。眼筋麻痺では痛みを伴うことが多い。
糖尿病では内眼筋の麻痺が見られないため瞳孔の異常がない。

糖尿病性単ニューロパチーとして生ずる外眼筋麻痺について
糖尿病の合併症で生ずるニューロパチーのうち、単一の末梢神経のみに麻痺が生ずる場合に糖尿病性単ニューロパチーと呼ぶ。
糖尿病性眼筋麻痺の特徴として、50歳以上の高齢者に多く、瞳孔機能が保たれる事が多い(瞳孔回避pupillary sparing)。すなわち、散瞳を生じないことが特徴とされる。
約半数例で発症前から眼窩内や眼周囲の痛みを伴う。
外眼筋麻痺の発症は、糖尿病の罹病期間・コントロール状態・眼底所見と相関しない。
予後は比較的良好で3~4カ月以内にはほぼ自然に回復する。
脳神経障害としては外眼筋麻痺や顔面神経麻痺が多い。
外眼筋麻痺では動眼神経麻痺が、ついでが外転神経麻痺が多く見られ、滑車神経は必ずしも多くはない。
下方視で複視を訴えているにもかかわらず眼球運動制限が見られない場合は滑車神経麻痺であることが多く、頭部を左右のいずれかに傾けると複視が増強し、他側に傾けて軽減ないしは消失すれば複視が増強した側の上斜筋に麻痺がある(Bielschowsky`s head-tilt test)。すなわち、滑車神経麻痺では頭部を健側に傾けると複視が改善する。

参考
瞳孔括約筋を支配する副交感神経は、動眼神経(III)のなかに含まれている。
この副交感神経は中脳の動眼神経副核(Edinger-Westphal核)から出て、動眼神経のなかを走行して括約筋にいたる。
虹彩の筋肉の活動により瞳孔は大きさを変化させるが、その筋肉は意志でコントロールできないので、不随意筋である。瞳孔の大きさは交感神経と副交感神経の2つの神経により拮抗的に支配されている。
・散瞳=瞳孔散大筋(放射状に走る)……毛様脊髄中枢 交感神経(第1胸髄神経、Th1)、頚部交感神経節
・縮瞳=瞳孔括約筋(輪状に走る)……動眼神経副核 副交感神経(動眼神経) 毛様体神経節
もし、頚交感神経が麻痺すると毛様脊髄中枢の支配がたたれることになり、瞳孔散大筋の収縮による散瞳が障害されることになり、縮瞳する。
瞳孔は、交感神経刺激剤では散瞳し、ブロッカーでは縮瞳、抗コリン剤(アトロピン等)では散瞳となります。
サマリー
糖尿病性腎症第4期(腎不全期)では、持続性蛋白尿、血清Cr上昇を認めるので、この時期には、血糖コントロールに加えて厳格な降圧療法、塩分制限、低蛋白食などの治療が大切になり、過度の運動は制限する。RENAL研究やIDNT研究によって、顕性蛋白を認めるときにアンジオテンシン受容体拮抗薬は血清Crの倍化、末期腎不全、死亡率を低下させることが明らかとなったため腎不全においてもCrの上昇や高K血症などの副作用に注意しながら 低容量での開始や血清Cr、Kのモニターが前提としてアンジオテンシン受容体拮抗薬を積極的に投与すべきである。
糖尿病性腎症による腎不全ではネフローゼ症候群の合併や血管透過性亢進などによって浮腫や溢水をきたしやすいので食塩・水分制限やループ利尿薬の投与が必要となる。腎性貧血に対しても血圧の上昇に注意してエリスロポエチン製剤を使用すると貧血の改善によって腎機能低下の進行を遅らせる事ができる。この時期にはSU剤による低血糖が危惧され、さらに、インスリン代謝が遅延してインスリン必要量が減少しているのでインスリン投与量を調節することが必要である。
糖尿病腎症3B~4期では、BU剤は肝・腎・心・肺障害のある者には禁忌である。
急激な血糖コントロールは網膜症の悪化や治療後神経障害を招くおそれがある。
糖尿病患者では140/90以上の高血圧では生活習慣の修正と同時に降圧療法が推奨されACE阻害薬、ARB、長時間作用型Ca拮抗薬が推奨されている。ただし、Crが上昇している者にはACE阻害薬やARBの使用は注意が必要である。
以前は腎症の進展阻止は困難と考えられていたが現在では血糖・血圧が達成されれば進行を停止させることが少なくない。

糖の流れを理解する

糖の流れ

健常人では「糖の流れ」が正常であるため暴飲暴食にもかかわらず血糖は常に狭い範囲に調節されている。
夜間・食間そして絶食時には肝臓からの糖放出がおこり全身の細胞がブドウ糖を利用しているが、24時間にわたる基礎インスリン分泌により肝での糖放出率が規定されている。
食後、糖質は十二指腸でブドウ糖と果糖に変わり一気に吸収され門脈を経て肝に流入し、同時に、膵臓からインスリンが分泌され肝に流入し、肝は糖の流出を抑え、ブドウ糖の大半をまず肝に取り込まれます。
肝を通り抜けたブドウ糖により全身のブドウ糖が上昇してきますが
それらはインスリンの働きで筋肉・脂肪組織に取り込まれ血糖値は再び低下します。
2型糖尿病では糖の流れのどこかに乱れを生じております。
24時間にわたる基礎のインスリン分泌不足のために夜間に肝からの糖放出が過大となり、一方、全身の筋・脂肪の糖取り込みが低いために夜間絶食中にもかかわらず血糖値は上昇してきます。
食後には肝へブドウ糖が流入するがインスリン分泌は緩やかで量も少ないと肝の糖放出は抑制されず肝は糖を取り込まず食後高血糖となります。
筋肉・脂肪組織での糖処理が低下し、食後の高血糖が顕著に起ってきた場合に、これを是正するためには食事療法・運動療法により改善しなければなりません。さらにタイミングよく膵臓から肝臓へ適切な量のインスリンを供給することが大切です。
インスリンが分泌され、その働きにより肝臓、筋肉などの全身の細胞がブドウ糖を利用します。
血糖値の高い状況が続くのが糖尿病で、糖尿病になった原因もいろいろ違いますが糖尿病の治療は、健常人の糖とインスリンの流れを再現する治療が望まれます
空腹時でもインスリンの分泌とその働きを受けて全身の細胞がブドウ糖を取り込んでいます。
そして、筋肉での糖取り込み率と肝臓からのブドウ糖放出率が一致しているからこそ低血糖にもならず血糖値は正常値に保たれています。
ところがインスリンの働きが良くない人が慣れない運動をすると筋肉はブドウ糖を取り込みません。
カテコルアミン、グルカゴンは過剰に分泌され肝臓は糖を放出し血糖値は運動中に上昇します。
SU薬などにより血糖値が正常域にあるときに運動をするとインスリンにより低血糖になるかもしれません。
血糖値は毎分、刻々と変化し、①血糖値はインスリンと特にグルカゴンの働き、 あるいは、②インスリンの働きを低下させるような中性脂肪、FFAなどの血中レベルが高さ、③肝臓、筋肉、内臓脂肪等にどの程度脂肪が蓄積されているのか、という相互作用によって規定されています。
多くの2型糖尿病では食後にインスリンがゆっくりと分泌され分泌量も多くありません。
従って肝臓からの糖の放出にはブレーキがかからず 肝臓はブドウ糖を取り込めないので食後高血糖になります。
やがて遅れて分泌されるインスリンと高血糖により筋肉がブドウ糖を取り込み、血糖値が少々下がるけれども三食後も夜間も血糖値が高くなります。
食事を取ると肝臓にブドウ糖が一気に流れ込みインスリンが素早く分泌されます。
ブドウ糖とインスリンのカクテルが肝臓に流れ込み、肝臓は糖の放出をゼロにし、筋肉がブドウ糖を取り込み血糖値はあまり上がらないと言われていますが実は流れ込んだブドウ糖の大半を肝臓が取り込んでいて肝臓の後ろの全身の血糖値は140以上になりません。
このように肝臓がどれだけブドウ糖を取り込めるかが重要な因子になります。
食後高血糖の繰り返しが膵β細胞のアポトーシスを起こし、インスリン分泌量が落ちて肝臓はブドウ糖を取り込みません。
種々の手段を駆使し肝臓に糖を取り込ませると食後の血糖応答が正常化します。この正常化の繰り返しが膵臓β細胞のインスリン分泌能力を維持します。

糖の流れを理解した食後高血糖のコントロール

現代の食事には食物繊維が少ないこともあり炭水化物はその殆んどが小腸上部から消化・吸収されます。
食事の直前にαGIを服用すると小腸上部に多く存在する糖質分解酵素の働きが阻害され、炭水化物の消化・吸収が遅れ小腸全体で消化・吸収されるようになり食後の急激な血糖上昇が抑えられます。
この食後高血糖は心血管イベントの発症リスクと強く相関します。ヨーロッパでのDECODE studyでは血糖値と死亡リスクとの関連を検討した結果、糖負荷後2時間血糖値が高くなるにつれて死亡率が増加することを示しております。
つまり、繰り返す食後血糖の急激な上昇は心血管イベントの発症と強く相関しております。
空腹時血糖を改善しても血糖変動の改善には繋がっていないが食後血糖を改善すると血糖変動を小さくすることができます。
αGIは心血管イベントの発症を抑制し、炭水化物の消化・吸収を穏やかにし肝臓へのブドウ糖の流入を穏やかにすることにより僅かなインスリンを有効利用して食後高血糖を改善し血糖の日内変動を安定化しています。また、αGIは血中のGLP-1を増加させる膵β細胞機能保護しております。(IGTは心血管系のリスクファクターでありインスリン抵抗性インスリン分泌量で代償している) 

  • 2型糖尿病の治療の目的は
    [1]動脈硬化を進行させない
    [2]β細胞のインスリン分泌力を守り回復させることです。

①肝臓、筋の糖脂質代謝を正常化する・・・食事・運動療法、ピオグリタゾン、メトフォルミン
②肝臓への速やかなインスリンの供給・・・グリニド、超速効型インスリン
③毎食前の血糖値を正常域に保持する・・・間食の禁止
④ブドウ糖の大量の肝臓への流入を減らす・・・αGI、食物繊維 、
⑤積極的に肝臓へ糖を取り込ませる・・ ピオグリタゾン, BU剤
⑥内因性インスリンを保持し回復させる・・・ 高血糖を取り除く薬物療法のタイミングを逸しない、将来的に膵臓外分泌細胞をインスリン分泌細胞に変える。
⑦脂肪肝・脂肪筋を改善する・・・食事療法・運動療法以上の方法で食後高血糖を正常に戻すことができます。
⑧膵からのインスリン分泌を促進する・・・DPP-4阻害薬、GLP-1 

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は2型糖尿病患者の約20~40%が有するとされる。
UKPDSによると糖尿病の罹病期間が15年を超えると、1割に第3期顕性蛋白尿(持続性蛋白尿)を認め、放置すれば1カ月に約1ml/分ずつCcrは低下し約10年で末期腎不全に移行する。
特に血清Cr値が2mg/dlを超えると2年ほどで透析導入を余儀なくされる。蛋白尿が(+)程度であれば既に顕性腎症(第3期)の可能性が高い。

糖尿病の診断から透析または腎移植に至る(腎不全に至る)期間
腎症の病期     期間中央値
正常尿        18.9年
微量アルブミン尿   10.9年
顕性蛋白尿       9.7年
血清Cr2.0以上     2.5年
微量アルブミン尿(30~299mg/gCr)を認めれば早期腎症と診断する。
微量アルブミン尿の診断には測定対象に蛋白尿(-)者だけでなく
(+)程度の人も含める。休ませて2回目の尿を採るか早朝尿を持ってきてもらう。
血糖値や血圧値が乱れていない薬物治療でコントロールされた時点で測った方がよい。

糖尿病性腎症の早期診断基準
測定対象  尿蛋白陰性か陽性(+1程度)の糖尿病患者
必須事項  尿中アルブミン値30~299mg/gCr
       (3回測定中2回以上)
参考事項  尿中アルブミン排出率30~299mg/24時間
       または20~199μg/分
      尿中IV型コラーゲン値 7~8μg/gCr以上
      腎サイズ 腎肥大
顕性蛋白尿を認めても糖尿病の罹病期間が短く、網膜症や神経障害
などの合併症が現れていなければ顕性腎症ではない。
微量アルブミン尿にもかかわらずGFRが低下していれば腎症以外の要因を考える。
                                 
糖尿病性腎症の病期分類
病期           尿蛋白      GFR(Ccr)    病理学的特徴
第1期(腎症前期)   正常       正常~高値    びまん性病変
第2期(早期腎症)  微量アルブミン尿  正常~高値   びまん性病変・結節性病変
第3期A顕性腎症前期 持続性蛋白尿    正常     びまん性病変・結節性病変
(1g/日 以下)   (60ml/分以上)
第3期B 顕性腎症後期  持続性蛋白尿    低下    びまん性病変・結節性病変
(1g/日 以上)   (60ml/分以下)
第4期 腎不全     持続性蛋白尿  低下(Cr2.0以下) 末期糸球体硬化症
第5期  透析期                     末期糸球体硬化症

2型糖尿病における非糖尿病性腎疾患
微量アルブミン尿
腎硬化症>IgA腎症>メサンギウム増殖性糸球体腎症>慢性腎盂腎炎
マクロアルブミン尿IgA腎症>膜性腎症>腎硬化症>間質性腎炎・微小変化群・メサンギウム増殖性糸球体腎炎

糖尿病性神経障害

  • [A]糖尿病性神経障害の簡易診断法
    ①両足趾先の異常覚(冷感やこむら返りは除外する)
    足の先がジンジン・ピリピリする。足の先がしびれる。
    足の先に痛みがある。
    足の感覚に異常がある。のうちどれか一つ以上ある。
    ②両側アキレス腱反射の減弱あるいは消失  
    ③振動覚c128音叉で10秒以下  
    これら①②③のうち2つあれば糖尿病性神経障害ありと診断する。

糖尿病性多発神経障害(distal simmetric polyneuropathy)
画像の説明

簡易診断法で「神経障害あり」は50%で、このうち40%は無症候性である。  
診断につながる症状は「腫れたり」、「傷がなかなか治らない」などが参考になる。
糖尿病性神経障害では筋紡錘神経がきれいな螺旋状とならず乱れてくる。
そして変性によって段々と残存神経が減ってきて感覚鈍麻が起こる。 
感覚鈍麻は患者さんは分からないから医者が診断してやらなければいけない。 
神経障害は耐糖能異常の段階から始まっている。

糖尿病多発神経障害の臨床像と進展様式
画像の説明

糖尿病性神経障害の 
●陽性症状に対してはチャンネルブロッカー(メキシチール)、  抗うつ剤、抗けいれん剤、プレガバリン、デュロキセリンなどを投与したり血糖コントロールや対症療法が主になる。
プレガバリンは痛みを伝える神経伝達物質の放出を抑え、神経回路の神経伝達を抑制し、鎮痛効果をあらわす。
●陰性症状 感覚鈍麻を早く見つけ対処する。糖尿病の合併症はポリオール代謝+AGE+酸化ストレス+サイトカインなどの要素が関係している。
将来的治療として幹細胞の移植が実現しつつある!

00000000000有痛性糖尿病神経障害
        ↓       ↓
第一選択  デュロキセチン プレガバリン000000オプション
000000000040mgvds0000 75mg(0-0-1)000000キネダック
        ↓       ↓        メキシチリン
第二選択  プレガバリン  デュロキセチン +  エパレルスタット
        ↓       ↓        リドカイン
第三選択   ドグマチール/オピオイド       カプサイシン
        (追加または変更)         NMDA受容体拮抗薬
                         牛車腎気丸

画像の説明

参考
ソルビトールは、リンゴ、ナシなどの果物や海藻類など含まれている糖アルコールと呼ばれる物質で、虫歯になりにくい甘味料としても利用されている。
一方、アルドース還元酵素は、体内に存在している酵素で、ふだんはあまり働かない酵素であるが、血糖値が高くなると、突然働き出し、体内にある余分なブドウ糖に作用して、ソルビトールを作り出す
ソルビトールは、元来体内にも存在しており少ない量では人の健康に害を与えることはない。
高血糖が続き、細胞内に貯まっているブドウ糖を減少させようとアルドース還元酵素が働き始めると、ソルビトールが多量に作り出されるため、細胞内にソルビトールが蓄積され、障害が起こるとされている。
アルドース還元酵素は、末梢神経、網膜、水晶体、脳、肝臓、すい臓、赤血球、副腎などに多く存在することが認められている。
つまり、このような細胞(臓器)は糖尿病の合併症が出やすいところであり、アルドース還元酵素の存在するところと一致している。
アルドース還元酵素阻害薬は、ブドウ糖からソルビトールを作り出すアルドース還元酵素の働きを妨げることによって、細胞内でのソルビトールの生成を抑制する。これによって、細胞内へのソルビトールの蓄積が抑えられ、糖尿病性神経障害における自覚症状や神経機能の異常を改善するとされている。

  • [B]もうひとつの神経障害の診断指標
    ①四肢の痛み・感覚異常(ピンプリックテスト、寒冷テストの反応低下)
    ②アキレス腱反射の低下
    ③内果の振動覚低下(c64音叉)
    ④安静時のRR感覚変動異常
    この4項目の中の2項目があれば神経障害あり・・・と判定する。

神経障害ありと判定されたものではPWV(脈波伝播速度)やPP(上腕脈圧)が有意に高く、そして、IMT(頚動脈の内膜中膜複合体肥厚度)も有意に高いことが分かっている。
HbA1cの高値とともに食後血糖のピーク値と空腹時血糖値の差が大きくなるほどIMTが高くなる。食後高血糖HbA1cとは独立した動脈硬化のリスク因子である。
糖尿病の神経障害は肥満の予防解消が重要である。神経障害はvascular factorとMetabolic factorが関連する合併症である。

糖尿病性網膜症

  • 網膜症治療の進歩
    OTC(optical coherence tomography)光干渉断層計により非侵襲的に黄斑浮腫の程度や治療効果の判定ができるようになった。
    また、抗VEGFは加齢黄斑変性の脈絡膜新生血管の抑制効果があり網膜症の失明を抑え硝子体手術の補助剤となる画期的な薬剤である。

肝臓機能障害と糖尿病

肝機能異常メタボや糖尿病発症の独立した危険因子であり、ALT/γGTPが高いとその後の糖尿病発症リスクが約2倍に上昇する
肝機能異常は心血管疾患の発症や死亡のリスクを上昇させる独立した危険因子でもある。
肝機能異常のマーカーであるALT異常の保健指導判定値(31)で 31以上では微細な肝機能異常が生じている。
ALT>31は慢性肝炎の目安で受診が必要な判定値51である。

肝機能の異常は糖代謝にも関連し糖尿病発症リスクが上昇する。
ALT>31/γGTP>51 はメタボリックアバランシェを引き起こすので
食事運動療法+ウルソーがひとつの治療法として必要になる。
ウルソは用量依存的に肝障害を抑制すると考えられる(Liver protection)。    
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大規模臨床試験             

  • ヒトにおけるMetabolic Memoryの存在を示唆した大規模研究として
    DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)/EDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)およびUKPDS 33(United Kingdom Prospective Diabetes Study) /UKPDS 80 (1997~2007)があります。
  • DCCT/EDICは、1型糖尿病を対象に、合併症抑制における厳格な血糖コントロールの意義を検証した試験であり、DCCTにおける6.5年間の追跡により、強化療法群で細小血管障害の有意な抑制効果が確認され、試験終了後、さらに追跡を続けたEDICでは、11年後に細小血管障害とともに大血管障害の発症も有意に抑えられることが示されました。(DCCT/EDIC Study Research Group: N Engl J Med 353: 2643-53, 2005)。
  • UKPDS 33では2型糖尿病患者を対象に実施された強化療法による大血管障害抑制効果に有意差が認められなかったが、その後の追跡調査UKPDS 80において、細小血管障害の進展リスク低下に加え、心筋梗塞(p=0.01)や死亡(p=0.007)に関しても有意なリスク低下が確認されました。(Log-Rank test、Holman RR et al.: N Engl J Med 359(15), 1577-1589, 2008)、
    同研究では、こうした初期の良好な血糖コントロールによりその利益が継続し、
    1型糖尿病、2型糖尿病いずれにおいてもLegacy Effect という現象が存在することが示唆され、高血糖が記憶されないよう、可能な限り早期から介入を行うことが重要で、それが最終的に細小血管障害、大血管障害の両方の抑制につながります。
    Metabolic MemoryとLegacy Effectは同じ現象と考えることができる。
    糖尿病の治療開始時点でしっかり治療することは、その後の大血管障害を有意に抑制しうることが示唆され、これはMetabolic Memoryによるものである。
    同様の知見が、新規発症2型糖尿病患者を対象としたUKPDS33(United Kingdom Prospective Diabetes Study)の追跡調査であるUKPDS 80でも示されている。
    画像の説明
  • ACCORD試験(2008)では、「HbA1c 6.0%以上」に加え、「空腹時血糖値 100mg/dL以上」、「食後2時間血糖値140mg/dL以上」を設定し、インスリン頻回注射+SU薬を含む経口薬2~3剤の併用療法を中心とした強化療法が行われ、その結果、血糖は急激に降下し、重症低血糖が高頻度に認められた。強化療法群において総死亡が有意に増加したことから、当初は血糖が下がると死亡が増加するかと思われたが、厳格な血糖管理が死亡を増加させたと短絡的に解釈するのではなく、インスリンやSU薬を含む複数の内服薬を用いた急速な血糖降下療法が重症低血糖、体重増加などを招いた結果である可能性が指摘されている。
    最近、血糖コントロールと死亡リスクに関する解析結果が発表され、強化療法群ではHbA1cの6%から9%への上昇により死亡の増加が確認され、厳格に血糖がコントロールされた患者の予後は良好であった。
  • UKPDS 35では、HbA1cの上昇とともに冠動脈疾患リスクが高まることが示された(Stratton IM et al.: BMJ 321(12), 405-412, 2000)。
    また、急性冠症候群患者において、空腹時血糖値100mg/dL未満の死亡を1とした場合、空腹時血糖値が200-299mg/dLでは死亡の相対リスクが5.11倍、300mg/dL以上では8.00倍に達することが報告されている(Sinnaeve PR et al.: Arch Intern Med 169(4), 402-409, 2009)。さらに同研究では、空腹時血糖値が高いほど、死亡までの期間が短いことも示されている。
  • UKPDS試験終了から10年間の追跡調査結果を報告したUKPDS 80では、
    当初から強化療法を行った群では、細小血管障害とともに全死亡や心筋梗塞の有意な抑制効果が示され、診断早期の段階で血糖コントロールの介入を行えば長期にわたりその効果が持続することを示唆され、血糖が高いと死亡および心筋梗塞リスクが上昇し、血糖管理によるLegacy effectが認められたため、心血管イベントを防ぐためには早期から血糖コントロールに努める必要がある。
  • ADVANCE試験(2008)では、「HbA1c 6.5%以上」を治療変更の目安とし、SU薬のグリクラジド(第二世代)(グリミクロン)をベースとした強化療法が行われ、HbA1cは比較的ゆるやかに改善し、結果的に重症低血糖の頻度は少なかった。合併症を防ぐための血糖コントロールは、重症低血糖を可能な限り回避すべく、ゆっくり血糖値を下げることが大切である。
    グリメピリドは膵臓のSU受容体のみならず心筋のSU受容体にも結合するが、心筋のミトコンドリア膜への作用の違いから虚血プレコンディショニングを抑制しないというメリットも期待できる。

糖尿病に関する大規模試験(1993~2009)


1993年 DCCT(1型糖尿病・北米)         細小血管障害予防には
1995年 KUMAMOTO STUDY(2型・日本)     厳格な血糖コントロール
1997年 UKPDS(新規発症2型・欧州)       重要


1999年 DECODE STUDY(一般住人・欧州)   食後高血糖は心血管疾患の
                         リスクファクター


2006年 ADA/EASD 2型糖尿病治療コンセンサス  インスリン治療の開始はBasalの併用から


2007年 IDF 食後高血糖管理ガイドライン   血糖管理は空腹時・食後血糖
                       ともに同時に実施


2008年2月 ACCORD一部中止発表   厳格な血糖コントロール
6月  ADVANCE/VADT            必要性に疑問
9月  UKPDS 10年フォローアップ      厳格な血糖コントロール
                       「早期から」がポイント

SU薬およびメトホルミンを中心とした強化療法を行ったUKPDS(1997)では、HbA1cを1%低下させることにより、心筋梗塞や脳卒中、全死亡が有意に抑制されることが示されている。また、ハイリスク2型糖尿病におけるチアゾリジン薬の二次予防効果を検討したPROactive(PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events Study2005)で心筋梗塞予防効果が示唆されたが、循環器疾患に伴う死亡リスクはSU薬と同等であることが報告されている。このPROactiveに続き、2007年以降は、厳格な血糖コントロールによる大血管障害抑制効果に焦点を当てたACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes2008)試験、ADVANCE(Action in Diabetes and Vascular Disease2008)試験、VADT(Veterans Affairs Diabetes Trial 2009)の成績が相次いで報告された。

2型糖尿病と診断された時点で、その機能は既に50%低下しており経年的に4%ずつ低下する。DAWN JAPANでも糖尿病の罹病期間が20年を超えるとインスリン治療が必要となる。
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AGE-RAGE系を介した血管障害メカニズム

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AGE(Advanced Glycation End Products=終末糖化産物)はタンパク質が糖化して、
還元糖から形成されるが、変質した最終糖化物質で、体内に糖がたくさんあればあるほど、タンパク質が糖とくっついてAGEがつくられる。
「メイラード反応」では、加熱により、焦げ目がついたり、キツネ色になることでありAGEがたくさん含まれます。
Metabolic Memoryとは、“過去にどのくらいの高血糖に、どの程度の期間曝露
されたか(diabetic exposure)が、その後の糖尿病血管合併症の進展を左右する”
という概念です。
高血糖が持続している状況下では、生体内のタンパク質が糖化されやすい状態にあり、グルコースなどの還元糖はタンパク質と非酵素的に反応してシッフ塩基、さらにアマドリ化合物が形成される。この反応はいずれも可逆的である。
さらに高血糖状態が持続すると、アマドリ化合物の一部がAGEsを形成する経路へと進み、不可逆的となります。
グリコアルブミンやHbA1cはアマドリ化合物であり、AGEsの前駆物質と言えます。
つまり、可逆的な反応の段階で形成されるため、血糖値を下げれば低下し血糖値に応じて変動します。

血管障害抑制の根本はAGEsを形成させないこと
血管を構成する細胞膜上には、AGEsの受容体RAGE(Receptor for AGEs)が存在し、AGEsと結合することにより情報が伝達され、酸化ストレスの産生を促し、炎症反応を惹起すると考えられております。
最近では、AGE-RAGE系とレニン・アンジオテンシン系がクロストークし、血管障害の進展にかかわっている可能性も報告されており、血管障害の発症には、AGE-RAGE系を含め複雑な情報伝達経路が関与し、AGEsは心血管疾患を予測する有用なバイオマーカーになりうる可能性があります。
 
経口血糖降下薬の歴史をふり返ると、1950年代にSU薬、60年代にビグアナイド薬が、90年代以降からはα-グルコシダーゼ阻害薬やインスリン抵抗性改善薬、速効型インスリン分泌促進薬、さらには第3世代のSU薬としてグリメピリドが登場し、最近ではGLP-1アナログやDDP-Ⅳ阻害薬が開発されました。
HbA1c6.5%未満を達成できている患者は約3割にとどまっているのが実情であり、高血糖状態が続けばAGEsが形成され、血管障害が進んでいくので、血糖コントロールの徹底のためには適切な薬剤を選択することが大切であります。

第三世代SU薬のグリメピリドは、投与開始4週目よりHbA1cの有意な改善がみられ、
その効果が維持されるほか、インスリン分泌促進に加え、インスリン感受性を改善する
働きも併せ持っていることから、BMIにかかわらずHbA1cを有意に低下させるという特徴がある。
また、グリメピリドは第二世代SU薬に比べ低血糖累積発現率が低いこと、第二世代SU薬からの切り替えによりBMIが25以下では体重の増減はなく、BMIが25以上では体重が減少することも報告されており、SU薬投与時にしばしば問題となる低血糖や体重増加への心配が少ない。
グリメピリドは心筋細胞のKATPチャネルに作用するが、心筋細胞内のミトコンドリアのKATPチャネルには作用しないため、グリメピリドでは虚血プレコンディショニングを阻害しないというメリットもある。
 

グリメピリド群では投与後1年以内にHbA1cが7.0%以下に低下し、以降5年間にわたりグリベンクラミド群に比べ良好な血糖コントロールが維持された。また、SU薬の投与に際し体重増加がしばしば問題となるが、グリメピリド群では体重増加は見られず、グリベンクラミド群に比べBMIが低値で推移した。さらに、グリメピリド群ではインスリン抵抗性の改善も認められ、かつ5年間を通して安定したインスリン分泌が保たれていることも明らかとなった。 SU受容体との結合速度、解離速度とも、グリメピリドはグリベンクラミドに比べて速い。グリメピリドによるβ細胞への負担が少ないことを裏付けている。

最近、経口血糖降下薬に加えて基礎インスリンを追加補充するBOT(Basal supported Oral Therapy)が広く用いられるようになった。
BOTの対象となるのはHbA1c7~9%であり、9%を超えると基礎インスリンだけでは十分な血糖コントロールは得られ難く、段階的な追加インスリンが必要になる。
血糖コントロール不良で入院した患者には、グラルギン+経口血糖降下薬のようなBOTへの変更も有用な手段になりうる。 同時に血圧および脂質異常にも積極的に介入し、トータルな管理を実践して合併症の発症・進展阻止につなげていくべきである。
BU薬、SU薬は、「両薬剤とも細小血管症に加えUKPDS等で心筋梗塞抑制効果が示されたうえ、長い歴史があり、予期せぬ副作用が出る可能性が少ない。

参考文献
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