血糖コントロール

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大規模臨床試験             

  • ヒトにおけるMetabolic Memoryの存在を示唆した大規模研究として
    DCCT(Diabetes Control and Complications Trial)/EDIC(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)およびUKPDS 33(United Kingdom Prospective Diabetes Study) /UKPDS 80 (1997~2007)があります。
  • DCCT/EDICは、1型糖尿病を対象に、合併症抑制における厳格な血糖コントロールの意義を検証した試験であり、DCCTにおける6.5年間の追跡により、強化療法群で細小血管障害の有意な抑制効果が確認され、試験終了後、さらに追跡を続けたEDICでは、11年後に細小血管障害とともに大血管障害の発症も有意に抑えられることが示されました。(DCCT/EDIC Study Research Group: N Engl J Med 353: 2643-53, 2005)。
  • UKPDS 33では2型糖尿病患者を対象に実施された強化療法による大血管障害抑制効果に有意差が認められなかったが、その後の追跡調査UKPDS 80において、細小血管障害の進展リスク低下に加え、心筋梗塞(p=0.01)や死亡(p=0.007)に関しても有意なリスク低下が確認されました。(Log-Rank test、Holman RR et al.: N Engl J Med 359(15), 1577-1589, 2008)、
    同研究では、こうした初期の良好な血糖コントロールによりその利益が継続し、
    1型糖尿病、2型糖尿病いずれにおいてもLegacy Effect という現象が存在することが示唆され、高血糖が記憶されないよう、可能な限り早期から介入を行うことが重要で、それが最終的に細小血管障害、大血管障害の両方の抑制につながります。
    Metabolic MemoryとLegacy Effectは同じ現象と考えることができる。
    糖尿病の治療開始時点でしっかり治療することは、その後の大血管障害を有意に抑制しうることが示唆され、これはMetabolic Memoryによるものである。
    同様の知見が、新規発症2型糖尿病患者を対象としたUKPDS33(United Kingdom Prospective Diabetes Study)の追跡調査であるUKPDS 80でも示されている。
    画像の説明
  • ACCORD試験(2008)では、「HbA1c 6.0%以上」に加え、「空腹時血糖値 100mg/dL以上」、「食後2時間血糖値140mg/dL以上」を設定し、インスリン頻回注射+SU薬を含む経口薬2~3剤の併用療法を中心とした強化療法が行われ、その結果、血糖は急激に降下し、重症低血糖が高頻度に認められた。強化療法群において総死亡が有意に増加したことから、当初は血糖が下がると死亡が増加するかと思われたが、厳格な血糖管理が死亡を増加させたと短絡的に解釈するのではなく、インスリンやSU薬を含む複数の内服薬を用いた急速な血糖降下療法が重症低血糖、体重増加などを招いた結果である可能性が指摘されている。
    最近、血糖コントロールと死亡リスクに関する解析結果が発表され、強化療法群ではHbA1cの6%から9%への上昇により死亡の増加が確認され、厳格に血糖がコントロールされた患者の予後は良好であった。
  • UKPDS 35では、HbA1cの上昇とともに冠動脈疾患リスクが高まることが示された(Stratton IM et al.: BMJ 321(12), 405-412, 2000)。
    また、急性冠症候群患者において、空腹時血糖値100mg/dL未満の死亡を1とした場合、空腹時血糖値が200-299mg/dLでは死亡の相対リスクが5.11倍、300mg/dL以上では8.00倍に達することが報告されている(Sinnaeve PR et al.: Arch Intern Med 169(4), 402-409, 2009)。さらに同研究では、空腹時血糖値が高いほど、死亡までの期間が短いことも示されている。
  • UKPDS試験終了から10年間の追跡調査結果を報告したUKPDS 80では、
    当初から強化療法を行った群では、細小血管障害とともに全死亡や心筋梗塞の有意な抑制効果が示され、診断早期の段階で血糖コントロールの介入を行えば長期にわたりその効果が持続することを示唆され、血糖が高いと死亡および心筋梗塞リスクが上昇し、血糖管理によるLegacy effectが認められたため、心血管イベントを防ぐためには早期から血糖コントロールに努める必要がある。
  • ADVANCE試験(2008)では、「HbA1c 6.5%以上」を治療変更の目安とし、SU薬のグリクラジド(第二世代)(グリミクロン)をベースとした強化療法が行われ、HbA1cは比較的ゆるやかに改善し、結果的に重症低血糖の頻度は少なかった。合併症を防ぐための血糖コントロールは、重症低血糖を可能な限り回避すべく、ゆっくり血糖値を下げることが大切である。
    グリメピリドは膵臓のSU受容体のみならず心筋のSU受容体にも結合するが、心筋のミトコンドリア膜への作用の違いから虚血プレコンディショニングを抑制しないというメリットも期待できる。

糖尿病に関する大規模試験(1993~2009)


1993年 DCCT(1型糖尿病・北米)         細小血管障害予防には
1995年 KUMAMOTO STUDY(2型・日本)     厳格な血糖コントロール
1997年 UKPDS(新規発症2型・欧州)       重要


1999年 DECODE STUDY(一般住人・欧州)   食後高血糖は心血管疾患の
                         リスクファクター


2006年 ADA/EASD 2型糖尿病治療コンセンサス  インスリン治療の開始はBasalの併用から


2007年 IDF 食後高血糖管理ガイドライン   血糖管理は空腹時・食後血糖
                       ともに同時に実施


2008年2月 ACCORD一部中止発表   厳格な血糖コントロール
6月  ADVANCE/VADT            必要性に疑問
9月  UKPDS 10年フォローアップ      厳格な血糖コントロール
                       「早期から」がポイント

SU薬およびメトホルミンを中心とした強化療法を行ったUKPDS(1997)では、HbA1cを1%低下させることにより、心筋梗塞や脳卒中、全死亡が有意に抑制されることが示されている。また、ハイリスク2型糖尿病におけるチアゾリジン薬の二次予防効果を検討したPROactive(PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events Study2005)で心筋梗塞予防効果が示唆されたが、循環器疾患に伴う死亡リスクはSU薬と同等であることが報告されている。このPROactiveに続き、2007年以降は、厳格な血糖コントロールによる大血管障害抑制効果に焦点を当てたACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes2008)試験、ADVANCE(Action in Diabetes and Vascular Disease2008)試験、VADT(Veterans Affairs Diabetes Trial 2009)の成績が相次いで報告された。

2型糖尿病と診断された時点で、その機能は既に50%低下しており経年的に4%ずつ低下する。DAWN JAPANでも糖尿病の罹病期間が20年を超えるとインスリン治療が必要となる。
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AGE-RAGE系を介した血管障害メカニズム

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AGE(Advanced Glycation End Products=終末糖化産物)はタンパク質が糖化して、
還元糖から形成されるが、変質した最終糖化物質で、体内に糖がたくさんあればあるほど、タンパク質が糖とくっついてAGEがつくられる。
「メイラード反応」では、加熱により、焦げ目がついたり、キツネ色になることでありAGEがたくさん含まれます。
Metabolic Memoryとは、“過去にどのくらいの高血糖に、どの程度の期間曝露
されたか(diabetic exposure)が、その後の糖尿病血管合併症の進展を左右する”
という概念です。
高血糖が持続している状況下では、生体内のタンパク質が糖化されやすい状態にあり、グルコースなどの還元糖はタンパク質と非酵素的に反応してシッフ塩基、さらにアマドリ化合物が形成される。この反応はいずれも可逆的である。
さらに高血糖状態が持続すると、アマドリ化合物の一部がAGEsを形成する経路へと進み、不可逆的となります。
グリコアルブミンやHbA1cはアマドリ化合物であり、AGEsの前駆物質と言えます。
つまり、可逆的な反応の段階で形成されるため、血糖値を下げれば低下し血糖値に応じて変動します。

血管障害抑制の根本はAGEsを形成させないこと
血管を構成する細胞膜上には、AGEsの受容体RAGE(Receptor for AGEs)が存在し、AGEsと結合することにより情報が伝達され、酸化ストレスの産生を促し、炎症反応を惹起すると考えられております。
最近では、AGE-RAGE系とレニン・アンジオテンシン系がクロストークし、血管障害の進展にかかわっている可能性も報告されており、血管障害の発症には、AGE-RAGE系を含め複雑な情報伝達経路が関与し、AGEsは心血管疾患を予測する有用なバイオマーカーになりうる可能性があります。
 
経口血糖降下薬の歴史をふり返ると、1950年代にSU薬、60年代にビグアナイド薬が、90年代以降からはα-グルコシダーゼ阻害薬やインスリン抵抗性改善薬、速効型インスリン分泌促進薬、さらには第3世代のSU薬としてグリメピリドが登場し、最近ではGLP-1アナログやDDP-Ⅳ阻害薬が開発されました。
HbA1c6.5%未満を達成できている患者は約3割にとどまっているのが実情であり、高血糖状態が続けばAGEsが形成され、血管障害が進んでいくので、血糖コントロールの徹底のためには適切な薬剤を選択することが大切であります。

第三世代SU薬のグリメピリドは、投与開始4週目よりHbA1cの有意な改善がみられ、
その効果が維持されるほか、インスリン分泌促進に加え、インスリン感受性を改善する
働きも併せ持っていることから、BMIにかかわらずHbA1cを有意に低下させるという特徴がある。
また、グリメピリドは第二世代SU薬に比べ低血糖累積発現率が低いこと、第二世代SU薬からの切り替えによりBMIが25以下では体重の増減はなく、BMIが25以上では体重が減少することも報告されており、SU薬投与時にしばしば問題となる低血糖や体重増加への心配が少ない。
グリメピリドは心筋細胞のKATPチャネルに作用するが、心筋細胞内のミトコンドリアのKATPチャネルには作用しないため、グリメピリドでは虚血プレコンディショニングを阻害しないというメリットもある。
 

グリメピリド群では投与後1年以内にHbA1cが7.0%以下に低下し、以降5年間にわたりグリベンクラミド群に比べ良好な血糖コントロールが維持された。また、SU薬の投与に際し体重増加がしばしば問題となるが、グリメピリド群では体重増加は見られず、グリベンクラミド群に比べBMIが低値で推移した。さらに、グリメピリド群ではインスリン抵抗性の改善も認められ、かつ5年間を通して安定したインスリン分泌が保たれていることも明らかとなった。 SU受容体との結合速度、解離速度とも、グリメピリドはグリベンクラミドに比べて速い。グリメピリドによるβ細胞への負担が少ないことを裏付けている。

最近、経口血糖降下薬に加えて基礎インスリンを追加補充するBOT(Basal supported Oral Therapy)が広く用いられるようになった。
BOTの対象となるのはHbA1c7~9%であり、9%を超えると基礎インスリンだけでは十分な血糖コントロールは得られ難く、段階的な追加インスリンが必要になる。
血糖コントロール不良で入院した患者には、グラルギン+経口血糖降下薬のようなBOTへの変更も有用な手段になりうる。 同時に血圧および脂質異常にも積極的に介入し、トータルな管理を実践して合併症の発症・進展阻止につなげていくべきである。
BU薬、SU薬は、「両薬剤とも細小血管症に加えUKPDS等で心筋梗塞抑制効果が示されたうえ、長い歴史があり、予期せぬ副作用が出る可能性が少ない。

参考文献
1)日本神経治療学会ガイドライン標準的神経治療:手根管症候群
2)馬場正之:糖尿病に伴う神経障害 診断と治療 ポリニューロパチー.日内会誌 93:1556-1562,2004
3)岡本幸市:糖尿病に伴う神経障害 診断と治療 脳神経障害.日内会誌 93:1551-1555,2004
4)中里吉彦 他:糖尿病に伴う神経障害. 末梢神経障害 診断と治療 自律神経障害.日内会誌 93:1567-1572,2004
5)DCCT Research Group: New Engl J Med 329: 977-986, 1993
6)Ohkubo Y et al.: Diabetes Res Clin Pract 28: 103-117, 1995
7)EDIC Research Group: New Engl J Med 342: 381-389, 2000
8)Holman RR et al.: N Engl J Med 359: 1577-1589, 2008
9)Müller G et al.: Biochim Biophys Acta 1191: 267-277, 1994

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血糖のコントロールの基礎知識

オープニング症例
72才で2カ月前の近医でFPG146 HbA1c6.8 で2型糖尿病と診断されたが現在はFPG182 HbA1c7.6と悪化し体重が8kg減少した。食欲低下・疲労感・倦怠感が出現して紹介されきた。何をすべきか?

糖尿病ではすい臓がんや肝臓がんの発生リスクが高まるため治療を強化する前に悪性腫瘍の可能性を除外する必要がある。
血中インスリン・Cペプチドは膵β細胞のインスリン分泌予備能やインスリン抵抗性などの病態把握し、治療薬を選択・調整するうえでは役立つが血糖悪化の原因追及には役立たない。

参考--実施検査項目
FBS, HbA1C , 血中Insulin, 血中C-peptiide, 抗インスリン抗体, 1.5AG(基準値15-45), 抗GAD抗体,GA(基準値<16%),乳酸 mEq/L, 尿中C-peptiideμg/日, 尿中アルブミン mg/g-cr. 網膜症, 頚動脈エコー, 心エコー、抗核抗体, 抗ICA抗体/抗IA-2抗体、 コーチゾール、成長ホルモン、アミラーゼ、リパーゼ、 エラスターゼ1

糖尿病治療の原則

治療の原則は,発症8~10年以上経過している例では厳格な血糖コントロールはしない.
発症10年未満を目安に,厳格な血糖コントロール(HbA1c 6.5%未満を目標)をする.

▶▶▶糖尿病性網膜症がある場合
最初の1~2年の血糖コントロールはHbA1c 8.6%に甘くコントロールし,それ以降はHbA1c 6.6%程度に厳格なコントロールをするという戦略を取ればよい.
▶▶▶メトホルミンの次に加えるべき薬 
経口血糖降下薬(OHA)で大血管障害を予防できることが証明されているのは,肥満患者に
おけるメトホルミンと,8年間治療を継続した場合のインスリンとSU剤(ただし,効果は8年以降:Legacy effect)のみ。
インスリンにはメトホルミンを併用
SU剤(アマリール,オイグルコン,ダオニールなど)や速効型インスリン分泌促進薬(ファスティック,スターシスなど)よりも,メトホルミン(メデット,メルビンなど)やαグルコシダーゼ阻害薬(グルコバイ,ベイスンOD,セイブルなど)を選んだ方が合理的だと思われます.
メトホルミンは肥満患者で有効というエビデンスがあるのみで,痩せている患者でもHbA1c低下効果としては悪くありません.
メトホルミンの投与量は,インスリンの投与量を最大限抑えるために,750mg3×で投与します.

▶▶▶絶食患者での血糖コントロールの方法
内服血糖降下薬を中止します。
血糖値が150mg/dL以上の場合,眠前ランタス開始します。
(ランタスが使用できない場合は,ノボリンNなどの中間型製剤を朝晩に等量2分割して
使用します).
開始単位数            ランタス単位数   (体重60kgなら)
150mg/dL<入院時血糖≦200mg/dL   眠前0.1単位/kg    (6単位)
200mg/dL<入院時血糖≦250mg/dL   眠前0.2単位/kg    (12単位)
250mg/dL<入院時血糖≦300mg/dL   眠前0.3単位/kg    (18単位)
''300mg/dL<入院時血糖         眠前0.4単位/kg    (24単位)
''
血糖4検で測定し,以下の表に従って毎日増量の必要性を判定します.
最低値(通常は朝食前値)によって単位数を調整すると良いです.

増量単位数                ランタス単位数
血糖4検の最低値≦ 80mg/dL        8単位減量
80mg/dL<血糖4検の最低値≦140mg/dL   変更なし
140mg/dL<血糖4検の最低値≦200mg/dL   4単位増量
200mg/dL<血糖4検の最低値≦250mg/dL   8単位増量
250mg/dL<血糖4検の最低値≦300mg/dL   12単位増量
300mg/dL<血糖4検の最低値        16単位増量  

多くの教科書(Harrisonなど),レビュー(NEJM 2006;355:1903など)では,絶食患者においても6時間毎に速効型or超速効型インスリンを投与するよう指示していますが,絶食患者では食事による血糖上昇がないわけですから追加分泌を補充するという意義のある日中の速効型インスリンの投与は不要と考えられます.
つまり,ランタスのみで空腹時血糖<140mg/dL,任意の血糖値<180mg/dLにできれば,速効型or超速効型の追加投与は不要です.

▶▶経口摂取中患者での血糖コントロールの方法
経口摂取中の患者の場合でも,速効型or超速効型インスリン投与は必ずしも必要ではなく
、その一番の理由は効果とコンプライアンスのバランスです.
どのみち2型糖尿病ではインスリン治療によって合併症が予防できるというエビデンスはどこにもないのですから,患者の苦痛が増すだけでしょう.
経口血糖降下薬のみで可能な程度の血糖コントロールで大目に見るという勇気も必要なのではないでしょうか.
本当にインスリンが必要な患者であっても,可能な限り1日1回注射で済むかどうかトライしてみても良いと思われる.

▶▶▶集中治療患者
ADAとACE(American College of Endocrinology)の推奨
 血糖値を140~180mg/dLにコントロールします.
 外科ICU患者では,80~110mg/dLにした方が予後がよいという報告もあります(NEJM 2001;345:1359)が,内科ICU患者では予後は変わらず低血糖が多かったという報告(NEJM 2006;354:449)があるため,そこまで厳しいコントロールにはしない方が良いでしょう.
 経口血糖降下薬,インスリン皮下注は中止し,微量輸液による持続インスリン(0.5~1単位/mlの濃度で調整)の使用が必要です.

ランタス治療開始容量

ランタス治療目標値  HbA1c 6.9(NGSP)、 FBS110未満

ALOHA study    
ランタスの開始容量 0.15単位x体重

24週までの追加容量
00000(ベースライン-目標)HbA1c+2
例えばベースライン 目標 ➞24週までに必要な追加容量は
     9%     7%        4単位増量

              インスリン投与量/日


FBS110~ 140         1単位増量


140以上           2単位増量


80以下や低血糖    併用しているインスリン分泌系薬剤の減量
     さらに改善が見られた場合はインスリンを減量

糖尿病治療ガイド(2012~2013)
  開始時のインスリン容量 実測体重x0.2~0.3単位/日とする
糖尿病治療のエッセンス(2010~2011)
  一日のインスリン総量 体重x (0.1~0.2)単位から開始

スラディングスケールの利用

スライディングスケール法:6~8時間毎に血糖を測定し、下記の量のレギュラーインスリンを投与(皮下注)する。

000000000000000Scale A      Scale B     Scale X
食前血糖値(mg/dL)  (超)速効型インスリン(皮下注)
79 以下        低血糖時の指示NDP推奨案①②参照
80 ~ 99000000000 0 単位      0 単位    (   )単位
100 ~ 149000000000単位000000000単位000000(   )単位
150 ~ 199000000001単位000000001単位000000(0000)単位
200 ~ 249000000002単位000000003単位    (0000)単位
250 ~ 299000000003単位000000005単位000000(0000)単位
300 ~ 349000000004単位000000007単位0000000(0000)単位
350 ~ 399000000005単位000000008単位0000000(0000)単位
400 以上0000000000Dr コール
※ 採用するScale A,Scale B,Scale X のいずれかを○で囲む。
※ Scale X は担当医がScale A,Scale B でコントロール不良と判断した時に採用する。

[これも一法----便利なスライディングスケール]
画像の説明
インスリンの初期投与速度はレギュラーインスリンを0.1U/kg/hrで持続注入するのが一般的である。
インスリン投与後1時間ごとの血糖値を参考にしてインスリン注入ダイアル調整を行う。
生食100mlにヒューマリンR25単位混注したボトルを用意して0.25u/mlとする。
持続インスリン注入量を最高4ml/hrまで16段階に設定血糖値に応じて調整する。
血糖値が前回の測定値より上昇している場合は上りラインに従って注入インスリン量を決定し、前回値より低下している場合は下りラインに従って決定する。
大量にインスリンが必要な場合は縦軸のインスリン量を1.5~2.0倍に再設定し血糖値が低めの時は0.5~0.75倍にする。

注意点
a)インスリンの濃度が1.2単位/ml以上の時は、管壁への吸着は無視してよい。
それ以下の場合は、0.35%以上のアルブミンを加える。
b)一方インスリンの輸液回路への吸着は瞬時に起こり、それ以上吸着しないという見解もあり、はじめに100mlぐらいフラッシュするだけでアルブミンの添加は不要とも言われている。

[インスリン投与調節スケール(インスリン静脈内持続投与)]

  血糖値    現行流量に対するインスリン量の増減0000000000000 目安(参考)
000059 以下000インスリン中止し、50%ブドウ糖液20mL静注Drコール000同左
  60 ~ 79   インスリン中止し、Dr コール000000000000000000000同 左
  80 ~ 99   (     )単位/時間 減らす            0.5 単位/時間 減
0-----------------------------------------------------------------------------
シリンジポンプによる持続投与
長崎大学のガイドラインでは「ヒューマリンR50単位+生食49.5ml」で1単位=1ml
指示は「単位/時間」で出すこと、と決まっており、通常「0.5~5単位/時間」で使用する。
0-----------------------------------------------------------------------------
100 ~ 1990000(00000)単位/時間 増やす•減らす000000000そのまま
200 ~ 2490000(00000)単位/時間 増やす•減らす000000000.2 単位/時間増
250 ~ 2990000(00000)単位/時間 増やす•減らす000000000.4 単位/時間増
300 ~ 3490000(00000)単位/時間 増やす000000000000000.6 単位/時間増
350 ~ 3990000(00000)単位/時間 増やす000000000000000.8 単位/時間増
400 以上000000(00000)単位/時間 増やし、Dr コール000001.0 単位/時間 増
※単位数を記入し、「増やす」か「減らす」を◯で囲む。
※血糖値が99 mg/dL 以下および350 mg/dL 以上の時は、上記処置後1 時間で血糖値を再検し、再度注入量を調節する。

ヒューマリンR 50単位(0.5ml)+生食500mlを調整し輸液ポンプにて滴下
0.1単位/ml( 1.0単位/10ml , 2.0単位/20ml)

低血糖の対処

低血糖発現時の補食
血糖値 79 mg/dL 以下時
① 食事であれば、すぐに食事をとる
② 食事の準備中であればグルコースサプライ0.5 単位分補食し、
そのまま食事にはいる
③ 食事でない場合(間がある場合)は、グルコースサプライ1 単位分補食し安静
④ 眠前または夜間の場合は、グルコースサプライ1 単位分補食し、さらに、1単位分のクラッカーを補食
※ ③④の場合には30 分後に血糖値を再検し、79 mg/dL 以下ならブドウ糖10g飲ませDr コール
※ 低血糖による意識消失の場合は、直ちに50%ブドウ糖液20 mL 静注

1単位分の食品例
バランスオン  クラッカー5枚×2袋入り 1袋あたり 80kcal
マリー   ビスケット3枚×8袋入り 1袋あたり 77.5kcal

参考
低血糖のときは下記の標準化低血糖処置NDP推奨案に従って対処する。
Drコールするのは
①血糖が1時間で100 以上変化、
②血糖値>360、
③低血糖が50%G40ml投与後20 分たっても改善しない時。

血糖値が70mg/dl程度まで下がると交感神経症状により冷汗、振戦、動悸などを生じる。
さらに、50mg/dl以下になると脳活動が低下し中枢神経症状である集中力低下、抑鬱、意識低下などが生ずる。
低血糖を頻繁に繰り返すと交感神経症状が欠如していきなり中枢神経症状が生ずることもあるので予防に努めなければならない。
特に、老人や自律神経障害のある患者さんでは低血糖症状が出にくい。

低血糖の害
 ・血糖<70mg/dLでは,カウンターホルモンとして分泌されるカテコラミンが不整脈を引き起こすとされ、特に高齢者や虚血性心疾患患者で起こします.
・血糖<50mg/dLでは,一過性に起こる認知障害により転倒や誤嚥が起こります.
・血糖<40mg/dLになると,痙攣や昏睡が起こります.

標準化低血糖処置NDP推奨案

血糖値が70mg以下または低血糖症状があって80以下の場合
①意識障害なく、経口摂取可能の場合
000(1)ブドウ糖20gを水で溶かして内服
000(2)30分後に血糖再検
0000症状・血糖が改善しない場合は(1)(2)を繰り返す。
00003回繰り返しても改善しない場合はDr.Call
00000 (改善とは症状消失かつ血糖80以上)
②意識障害なく、経口摂取不可能の場合
0000(1)50%ブドウ糖20ml静注
0000(2)10%ブドウ糖500ml点滴開始100ml/hr
0000(3)主治医または当直医に連絡
0000(4)15分後に再検し改善しない場合は(1)を繰り返しても改善しない場合もDr.call

補足
●改善後次の食事まで1時間以上ある時は1時間毎に血糖測定し上記の対応する。
●夕食後または深夜の低血糖は150mg/dl以上に上昇するまで上記対応後就寝する。
その後0時と3時にBSチェックし上記対応。
●次の食前に血糖関連内服薬やインスリンのある場合は食前血糖を測定し指示を受ける。

低血糖を起こす薬剤

  • 中等度エビデンス: シベノール(抗不整脈)、ガチフロ、ペンタミジン, グルカゴン低下、 インドメタシン、キニン
  • 低エビデンス; ACE阻害薬、βブロッカー、クラビット、リスモダン、ヘパリン、ST合剤、ロイケリン、アスピリン、アセトアミノフェン
    低血糖時の検査
  • ①インスリン過剰(血糖値と同時にインスリン値とC-peptideを測定)
  • ②ぶどう糖の産生障害(肝臓機能,栄養状態,アルコールなどのチェック)
  • ③インスリン拮抗ホルモンの低下(GH, グルカゴン,コルチゾール測定)
  • ④インスリン抗体の存在(インスリン抗体測定)

難治性低血糖時の処置
1.グルカゴン(アルコール多飲、低栄養、小児など肝臓のグリコーゲンが枯渇しているときは効果なし)
2.サンドスタチン 50~100μg皮下注 保険利かない

参考
当院採用の「ソルデム3A 500ml」を考えると「ソルデム3A 500ml」4.3%糖ですから500ml中にブドウ糖21.5g。(86Kcal)
これに混合するインスリン量は「2単位」ということになります。
※輸液内のブドウ糖10gに対し、インスリン1単位より開始し、適宜増減。

           ブドウ糖含量  インスリン量目安
ソリタT1(500)      13g       1~2単位
KN1A (500)        13g       1~2単位
5%ブドウ糖(500)00000025g       2単位
ヴィーンD(500)0000000025g       2単位
10%ブドウ糖(500)111  50g       5単位
ハイカリックRF(500)111 250g      25単位

アルコール
日本酒でも焼酎でもウイスキーでも種類を問わず、1g当たり7kcalと高カロリーなので、糖尿病に良いアルコールは存在しません。
参考までに、80kcal相当量は、ビール200ml,日本酒70ml、ウイスキー(ブランデー)30ml、焼酎40ml、ワイン100mlです。

参考
血糖値250mg/dl以上ではインスリン抵抗性があったり、インスリン感受性が低下している場合がある。
・例えば、朝のインスリン投与量は昼前の血糖値を見てインスリン量を決めるのがよい。
・インスリン投与量はころころ変えない。
・インスリンを使うことによりインスリン抵抗性が改善され、血糖値が下がるときが出てくる。 
⇒予測してインスリン投与量を減らす。 目安は血糖値250mg/dl以下
・血糖値が400mg/dlであった人が30分で200mg/dlに低下したら、交感神経の働きにより低血糖症状が引き起こされることがある。

シィックデイについてsick-day rule

Sick day rules(風邪・下痢などにより、体調を崩したときの自己管理法)
.食物摂取量が減った時は、ジュース、スープなどの飲物で補う。糖質は最低100g、水分は 最低1Lを目安とする。

[A]  1型糖尿病のsick-day Rule

食事療法が通常量の1/2以上可能な場合
血糖値400以上  超速効型インスリンを30%増す
血糖300以上   超速効型インスリンを20%増す
血糖200以上   超速効型インスリンを10%増す
血糖80以下    超速効型インスリンを10%減らす
食事療法が通常量の1/3以下の場合
通常量の1/2のインスリンは必要であり、その量に上記のインスリン量を追加する。
[例]
ノボラピッドを毎朝16単位の患者さんが殆ど食べられない時は8単位を基本とし朝の血糖値が320なら20%追加して計10単位(8+8x0.2)を注射する。
睡眠前の中間型インスリンは食事量に関係なく注射する。
睡眠前血糖が400以上のときは超速効型インスリンを2~4単位追加する。
食事が殆ど取れないことが24時間以上続くときは受診する。

[B] 2型糖尿病のsick-day rule

① 食事が摂取できるか分からない時はインスリンを食後に変更する。
② 食事摂取量が半分以上ならインスリンは通常量とし、半分以下ならインスリンは1/2量を注射する。
③注射量について迷いが生じたときは連絡を取るよう指導する。

[C] Sick-day時の内服薬

① αグルコシダーゼ阻害薬、BU剤、チアゾリジン薬はsick-dayで消化器症状がある間は服薬中止とする。
インスリン分泌促進薬(SU薬、速効型インスリン分泌促進薬グリニド系)については食事摂取量が半分程度なら半量とし摂取量が1/3以下なら服薬中止とする。
③嘔吐下痢がとまらず食物不能の時、高熱が続き尿ケトン体陽性、血糖値が 350以上の時は入院加療が必要。
④十分な水分摂取により脱水を防ぐよう指示する。
⑤食欲が無いときは口当たりがよく消化の良い食物(お粥、ジュース、アイスクリームなど)を摂取し絶食にしないようにする。

参考
GLP-1 アナログ注射液(GLP-1受容体作動薬)
リラグルチド(商品名:ビクトーザ皮下注18mg)0.3mg 0.6mg 0.9mg
バイエッタ 5mg/10mg

インスリン製剤のいろいろ

画像の説明
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画像の説明

ノボラピッド®50ミックス注 フレックスペン®
インスリンの追加分泌* に相当する超速効型の成分と基礎分泌*に相当する中間型の
成分を5:5の配合比率で含有する製品です。
通常、成人では、初期は1回4~20単位を1日2回、朝食直前と夕食直前に皮下注射する。

ノボラピッド®70ミックス注 フレックスペン
超速効型の成分と中間型の成分を7:3の配合比率で含有する製品です。
通常、成人では、初期は1回2~20単位を1日3回毎食直前に皮下注射する。

インスリン製剤の特徴   
超速効型
アピドラ注ソロスター  作用発現 約15分  持続時間約3~5時間
000000000000000000食直前投与で食後高血糖を抑制
ノボラピッド注300フレックスペン  
000000000作用発現までの時間が短い。そして作用消失までの時間も短い。

速効型
ノボリンR注フレックスペン  作用発現約30分  持続時間約8時間
0000000000000000生合成ヒト中性インスリン注射液 
ヒューマリンR注U-100   作用発現約30~60分 持続時間約5~7時間
000000000ヒトインスリン注射液、生理的追加分泌に比べ作用発現が遅いので、
000000000000000000000食事の30分前に投与する。

中間型(NPH製剤)        
ヒューマログミックス50注キット、作用発現15分  持続時間18~24時間
00000000インスリンリスプロ(インスリンアナログ遺伝子組み換え)
00000000超速効型:中間型=50:50 

<1>ヒューマログミックス50の1日1回療法
Pre Mixed supported Oral Therapy(MOT療法)
SU薬は中止せずに朝食前にヒューマログミックス50を0.2単位/kgから開始し、朝食後もしくは昼食後血糖が200mg/dl以下になるように投与量を調節した。
朝後、昼後、夕後の高血糖が朝にヒューマログミックス50を打つことによって抑えられてくるのでヒューマログミックス50の1日1回療法もかなり有用である。

<2>ヒューマログミックス50は1日4~20単位を1日2回、朝食前と夕食前に皮下注射する。ときに投与回数を増減することが出来る。

<3>ヒューマログミックス50の1日3回法のターゲットは眠前血糖が低ければ低いほど6ケ月後のHbA1cがよくなる。
朝:昼:夕=1:1:1で始める。体重に合わせて少量から始める。
ヒューマログミックス50は眠前の血糖が110~120でも 夜間の低血糖が起こりにくい。
昼のインスリン量を減らすことができる。

朝      昼       夕
5   :  2~3 :    5 位に昼を少なくできる。
うまく行くと昼2~3をなくして1日2回打ちにできるかもしれない。

ノボリンN注フレックスペン   作用発現約15分  持続時間約24時間
NPH製剤生合成ヒトイソフェン インスリン水性懸濁注射液 

持効型 
ランタス注ソロスター  インスリングラルギン(遺伝子組み換え)
作用発現 約1~2時間  持続時間約24時間
作用のピークがなく、24時間にわたり安定した血中濃度を示す。     
ランタスの最大量は体重の1/2程度が目安
ラランタスは毎食前血糖を110を目標に調節する。
そして、SUにより食後血糖180を目処に経口薬を調整する。

混合型(超速攻型+中間型) 
ノボラピッド30ミックス注フレックスペン
超速効型インスリンアナログと中間型インスリンアナログを3:7の割合で含む混合製剤、通常、成人は初期に1回主成分として4~20単位を1日2回
朝夕の食直前に皮下注射します。1日1回注射の場合は朝食直前に皮下注射します。

[例] ノボラピッド30ミックス導入時の初回インスリン投与量
0.2単位/kg/日(または10~14/日)分割比 朝2:夕1
体重60kg  0.2x60=12  朝食前8単位 夕食時4単位

'混合型(速効型+中間型)'
ノボリン30R注フレックスペン  速効型:中間型=30:70  
作用発現約30分  持続時間約24時間

ノボリン50R注フレックスペン  速効型:中間型=50:50 
作用発現約30分  持続時間約24時間

ヒューマログミックス25注ミリオペン**インスリン強化療法の2回投与への変更について [#yea6bcdf]
R-R-R-Nの強化療法で4回注射から混合型2回に変更する場合は、
一日の4回注射の合計量と同量とし朝1.5対夕1とする。
たとえば、4回注射の1日合計量が24単位の例では朝14単位、
夕10単位に変更する。

変更後の30Rの用量調節は
① 朝食前の注射量は、朝食後と夕食前の血糖値
② 夕食前の注射量は、夕食後と翌朝朝食前の血糖値を見ながら行う。
入院例であれば2~3日、外来であれば1~2週間の血糖値を見て2~4単位程度で調節する。

用量調節の問題点
30Rの2回注射の問題点は基礎分泌を補充するNの割合が高く、Rの割合が低い。

30Rを増量するとNも同時に増量されるため食前の低血糖が起こりやすくなる。
このような場合は超速攻型アナログ製剤が混合されている30ミックスやミックス50へ変更を考慮する。

注意事項

  • 禁酒が必要; 血糖コントロール不良、肥満、高血圧、高脂血症、高尿酸血症
  • 妊娠中、妊娠の可能性が高いときはインスリンを使用し経口薬は使わない。
  • ③2型でも1型に近い人は食べなくてもインスリンはいつもの量の2/3程度を打ってあとは水を飲んでもらう。
  • ④強化インスリン療法では内服薬はすべて中止する。
  • ⑤ステロイド服用中は血糖値を測定してみて高いようだったらインスリン導入を考慮

BS 140~200経過観察    >200 治療
血糖コントロールが良好でもプレドニソロン20mg以上の時はインスリン量20%増量する

インスリン製剤一覧表
http://diabetes.web.fc2.com/sub_html/ichiranhyou.htm

[参考]
一般にDMのコントロールが良い患者のインスリン量
(basal insulin1日量) :( prandial insulin食事前のインスリン1日量)は約1:1である。
ランタスの量はFBSを指標にして決める。中間型インスリン量はFBSか夕食前血糖で決める。
インスリン量の決定 食事療法後の空腹時血糖(FBS)より
レギュラーインスリン=(FBS×0.12-3.7)/3を 1日3回
レンテインスリン=FBS×0.11-6.9  朝1回

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