褐色細胞腫

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褐色細胞腫

褐色細胞腫は高血圧や糖尿病合併することから生活習慣病にも注意が必要である。
褐色細胞腫はいずれの年齢にも発生しうるが,男女差はなく40~70歳にかけて分布し、患者の平均年齢は♂53.6才、♀51.6才、推定発症平均年齢は♂46.3 ♀41.2才である。
臨床的には大部分が散発性片側副腎発生の良性腫瘍である。
本腫瘍は90%以上が副腎髄質に発生するが、異所性および悪性の例がそれぞれ約10%存在する。
局在は90%が副腎内で、右側にやや多く、副腎外が10%で副腎外腫瘍の30%は悪性である。
多発性が10%、家族性が10%で両側性が5%である。褐色細胞腫の大きさは様々だが,平均では直径5〜6cmである。重さは50〜200gある。

副腎の解剖学的位置関係

前腎傍腔には膵臓、十二指腸、上行・下行結腸、上腸間膜動脈の一部、肝・脾動脈の一部が含まれ、腎周囲腔には腎・副腎・尿管近位部などが含まれる。
後腎傍腔には実質臓器は存在しない。
右副腎は右腎上極より2~5cm頭側で、肝右葉後面と下大動脈に挟まれた場所に位置する。
左副腎は左腎上極のレベルにあり膵尾部と胃に挟まれた位置に存在する。

カテコールアミン分泌動態

褐色細胞腫はクロム親和細胞より発生する腫瘍で、カテコラミンを分泌し、過剰のカテコラミンによる種々の症状を呈する。
臨床的には高血圧とspells(蒼白発作)が特徴的で、発作性または持続性の高血圧症をきたす。
褐色細胞腫はカテコールアミンの過剰分泌が高血圧を誘発し、心機能・腎機能に障害をきたしやすい。また、肝臓からの糖の放出の増加によって高血糖状態、慢性的な脱水状態になりやすい。
副腎髄質以外に腹部大動脈周辺、後腹膜・後胸腔の交感神経節などに分布、異所性褐色細胞腫の発生原因ともなる。
カテコールアミン(catecholamine:CA)は、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンの総称で、交感神経・副腎髄質系より分泌されます。
アドレナリンは副腎に存在するphenylmethanolamine-N-methyl transferase(PNMT)によりノルアドレナリンから合成分泌され、ノルアドレナリンは交感神経における神経伝達物質として重要でありドーパミンより合成される。
つまり、ドーパミンはノルアドレナリンやアドレナリンの前駆物質であるとともに中枢神経系において重要な神経伝達物質である(脳、交感神経節、腸管クロム親和性細胞などに広く分布)。
カテコールアミン測定は主に褐色細胞腫の診断に用いられます。
褐色細胞腫の診断以外では、交感神経系の腫瘍である神経芽細胞腫の診断にも用いられます。
発作性分泌型の場合は発作時の血中濃度の測定が適していますが、持続性分泌型を示すものでは尿中カテコールアミンの測定値の信頼性が高く、また数日間にわたって尿中カテコールアミンのみが高値になる場合があります。

  • 腫瘍が副腎性の場合はアドレナリン、ノルアドレナリンを分泌し、副腎外性の場合(傍神経節細胞腫)はノルアドレナリンを分泌し、血中濃度は正常値の10倍以上にもなり、尿中では30倍以上にも達することがあります。
    異常がみられた場合は、カテコールアミンの代謝産物であるVMA、HVA、メタネフリンなどを測定し、その過剰を確認します。
    副腎外のものは腹部大動脈周囲の交感神経幹、腸間膜動脈起始部に分布しここからの発生が多い。頭蓋底から副睾丸までの後縦隔、心臓、肺、膀胱などに発生する。

NADR有意のカテコールアミン増加の場合は副腎外、悪性の可能性を考慮する。
クロニジン試験は、正常では血中NADRが低下するが、褐色細胞腫では低下しない。

  • ドパーミン分泌腫瘍はカテコールアミン分泌能がより未分化であることを意味しその増加は悪性を示唆する。
    ノルエピネフリン、ドーパの高値、エピネフリン/ノルエピネフリン比の低値は悪性を示唆する。
  • テロメラーゼ逆転写酵素の遺伝子発現は悪性で認められ、テロメラーゼ活性は良性例では陰性であった。
    血管新生因子については、悪性例では全例に血管新生因子染色性を認め、副腎原発で5.4%、副腎外原発では43.5%が陽性であった。
    COX2免疫染色性が中等度以上陽性を示す例は悪性が疑われる。

褐色細胞腫の診断基準(案)

[必須項目]
1.副腎髄質または傍神経節組織由来を示唆する腫瘍
現在、過去の時期を問わない。副腎髄質由来を褐色細胞腫、傍神経節組織由来をパラガングリオーマと称する。

[副項目]
1.病理所見褐色細胞腫の所見
0000腫瘍細胞の大部分がクロモグラニンA陽性であること。
2.検査所見
001)尿中アドレナリンまたはノルアドレナリンの高値
0000基準値上限の3倍以上を陽性とする。偽陽性や偽陰性があるため、
0000反復測定が推奨される。

002)尿中メタネフリンまたはノルメタネフリンの高値
0000基準値上限の3倍以上を陽性とする。偽陽性や偽陰性があるため、
0000反復測定が推奨される。

003)クロニジン試験陽性
0000ノルアドレナリン高値例のみ。負荷後に前値の1/2以上あるいは
0000500pg/ml以上の場合を陽性とする。

1)-3)のうち1つ以上の所見があるときを陽性とする。

3.画像所見
001)131 I-MIBGシンチグラフィで腫瘍に取り込み
123 I-MIBGシンチグラフィを含む。

002)MRIのT2強調像で高信号強度

1)、2)のうち1つ以上の所見があるときを陽性とする。

確実例:必須項目1に加えて副項目1あるいは副項目2、3を満たす場合
疑い例:必須項目1に加えて副項目2あるいは副項目3を満たす場合
除外項目:偽性褐色細胞腫

悪性褐色細胞腫の診断基準(案)

必須項目
1.褐色細胞腫の診断基準で確実例または疑い例
2.副腎外腫瘍(非クローム親和性組織由来)の存在
肝臓、肺、骨、リンパ節など本来の発生組織でない組織における腫瘍。
副項目
1.上記2の病理組織:褐色細胞腫の所見
2.上記2の腫瘍に131I-MIBGシンチグラフィで取り込み

123I-MIBGシンチグラフィを含む。

確実例:必須項目1、2に加えて副項目1あるいは副項目2を満たす場合
疑い例:必須項目1、2を満たす場合

確定診断は24時間尿中カテコラミン定量に尽きる。
尿中カテコラミンの分画はメタネフリン、ノルメタネフリンがよい指標となる。
血中カテコラミンの定量も行われるが、半減期が短く(1~2分)、ストレスによる偽陽性、発作間欠期の採血による偽陰性があり、信頼性に劣る。
また、VMAは偽陰性が多く信頼性が低い。

測定方法:HPLC
基準値:血漿 単位(ng/ml)アドレナリン0.17以下 ノルアドレナリン0.15~0.57,  ドーパミン0.03以下
尿 単位(μg/dey)アドレナリン1~23 
ノルアドレナリン29~120 ,ドーパミン100~1000

※血中濃度測定は体位、ストレス、運動などにより上昇することがあるので、正確を期すためには20~30分程度安静臥床の後採血するのがよい。
24時間値の基準範囲:遊離エピネフリンおよびノルエピネフリン<100μg(<582nmol),総メタネフリン<1.3mg(<7.1μmol),VMA<10mg(<50μmol),HVA<15mg(<82.4μmol)。
しかし,これら化合物の排泄増加は,他の疾患(例,昏睡,脱水,睡眠時無呼吸)や極度のストレス,ラウォルフィア・アルカロイド,メチルドパ,またはカテコールアミンを投与されている患者,大量のバニラを含む食物を摂取した後(特に腎不全がある場合)でも生じうる。

局在確認
CTスキャン・超音波断層・シンチスキャン・血管造影が一般的に行われる。

  • [1]CTスキャン
    0000診断率は96%といわれ1~2㎝以上であれば診断可能であり造影法が有用であるため第一選択となる。
    腫瘍は円形、表面平滑で径3cm以上で血管に富む。
  • [2]MRIでT2強調像で高信号が特徴的である。
  • [3]超音波断層
    0000腫瘍径3㎝以上でないと診断不能である。
  • [4]シンチスキャン
    0000131I-MIBGの分子構造がノルアドレナリンと類似していること0000を利用して副腎皮質腫瘍との鑑別、異所性や転移巣の検索に有用である。
    0000123I-メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)は米国外で最も利用されている化合物であり,0.5mCiを静注して,初日,2日目,および3日目に患者をスキャンする。
    正常の副腎組織はこの同位元素をほとんど取り込まないが,褐色細胞腫の90%は取り込む。
    131 I-MIBG(meta-iodobenzylguanidine)はノルエピネフリンアナログであり、ノルエピネフリンと同様の機序で本腫瘍に取り込まれ褐色細胞腫に特異的に集積するために異所性および悪性例の診断に威力を発揮する。有病正診率86%、無病正診率を98.6%
    MIBGは、交感神経遮断性降圧剤グアネチジンのアナログであり
    生体内ではノルエピネフリンと同様の挙動を示す
    静注後72時間で70%が尿中に排泄される。異所性あるいは悪性で転移を伴う褐色細胞腫の診断に特に有用である
    111-In-Octreotideシンチグラフィはソマトスタチン受容体が発現している腫瘍では有用である。
  • [5]PET
    悪性腫瘍では糖代謝が亢進し糖アナログ取り込みが亢進していることを利用した18F-FDG-PETが応用されている。
    この検査はカテコルアミン産生細胞に取り込まれることを利用した検査で褐色細胞腫の診断に有用である。
    局在診断では約90%が副腎原発で約10%が副腎外原発である。
  • [6]血管造影
  • 腹部大動脈造影法が利用される。
    非イオン性造影剤の使用が主となった現在、副作用の発生率は激減したがその浸透圧は生理食塩水の2倍以上の浸透圧を有している。
  • 褐色細胞腫はカテコールアミンの過剰分泌が高血圧を誘発し、心機能・腎機能に障害をきたしやすい。
    また、肝臓からの糖の放出の増加によって高血糖状態、慢性的な脱水状態になりやすい。高浸透圧のの造影剤の投与は全身状態をさらに悪化させる原因となる。
    遅発性副作用の出現が造影剤の高浸透圧性を原因とするのか化学物質過敏症を原因とするのか結論は出ていない。
    脱水状態の蔓延により利尿が阻害され、造影剤が体外へ排泄されず再循環を繰り返すことによって血管内外の水分バランスが徐々に悪化し腎不全・心不全を誘発すると考えられる。
    このような病態は、糖尿病、気管支喘息、低カルシウム血症、骨髄腫などでもみられる。
  • α-adrenogenic blocking drugが投与されていないければ経静脈性の造影剤によるcontrast enhancementは行わないほうがよい。
  • [7]その他
    副腎外褐色細胞腫は大部分が腹腔内に発生するので、腸骨動脈から心臓まで下大静脈の種々のレベルの血中カテコラミンを測定する
    垂直方向の検索が可能で診断率は97%とされる褐色細胞腫の存在を疑うとき測定する血中カテコラミンは副腎皮質のグルココルチコイドにより誘導されるためE(エピネフリン)優位型の褐色細胞腫は副腎髄質に局在すると考えられ副腎以外の組織から発生する本腫瘍ではEを分泌することは殆どない
    一日総カテコラミン分泌量を反映する尿中カテコラミンの測定は、実はその95%が代謝産物を測定している。
    エピネフリンはメタネフリンへノルエピネフリンはノルメタネフリンへと代謝されさらに、VMAへと代謝が進行する。
    褐色細胞腫で偽陰性になる率は尿中カテコラミンが15%、メタネフリン+ノルメタネフリンは6%で、尿中VMAは15%でメタネフリン・ノルメタネフリンが最良の指標であった。

基本的治療

治療の第1選択は腫瘍摘出術であるが血中へのカテコールアミン流出や機械的刺激などによりショックをきたす危険があるため近年は腹腔鏡下に行われる事が多くなった。
手術中の著しい血圧の変動やクリーゼ防止のため術前にα-あるいはα-β遮断薬を十分量投与する。(ドキサゾシ6~12mg/d)
巨大腫瘍や癒着のある例は開腹術を行う。術前治療や手術困難例は薬物療法を行う。
β遮断薬単独投与は禁忌である。まずα-遮断薬を投与し頻脈を生じた際にはβ遮断薬を併用する。血圧管理が困難な例にはCa拮抗薬,ACE阻害剤,ARBを併用する。
α遮断薬とβ遮断薬の併用(通常はフェノキシベンザミン20〜40mg,1日3回経口,および、プロプラノロール20〜40mg,1日3回経口)によって血圧が調節されるまでは一般に手術を遅らせる。
術前α遮断は,手術前の3日間,0.9%生理食塩水に溶解したフェノキシベンザミン0.5mg/kgを2時間かけて各日静注する方法である。
術前または術中の高血圧クリーゼに対して,ニトロプルシドナトリウムを点滴する場合がある。
両側性腫瘍が立証または疑われるとき(MEN患者でのように)には,十分量のヒドロコルチゾン(100mg,1日2回静注)を術前および術中に投与することによって両側副腎摘出による急性グルココルチコイド欠乏を回避する。
一般に褐色細胞腫は腫瘍が大きく、また術中腫瘍の圧迫によりカテコールアミンが循環血中へ流入し急激に血圧上昇が起こるため、本疾患に対する腹腔鏡手術は難易度が高い。
褐色細胞腫に対する腹腔鏡手術は手術時間が長く、出血量も多く、また合併症の発生頻度も高い。
腹腔鏡下副腎摘除術は開放手術に比べ低侵襲である。

悪性褐色細胞腫の治療

転移巣であっても高カテコールアミン血症のコントロールのため摘出術を考慮する。
Debulkingは予後の改善に有効である。化学療法やMIBG療法も縮小・退縮効果がある。放射療法、TAEの適応も考慮する。カテコールアミン合成阻害薬であるα-メチルパラタイロシンはチロシンからDOPAへの変換を阻害する。
画像診断での良性・悪性鑑別診断は不可能である。悪性褐色細胞腫は大きく6cm以上になる。

副腎腫瘤

        臨床的に褐色細胞腫の可能性     

有                     無

単純CTとMIBGシンチ              単純CT    
 ↓       ↓            ↓         ↓
異常なし   異常あり         CT値>10      CT値<10
↓         ↓           ↓           ↓    
頚部・胸部  褐色細胞腫     MRIまたは造影CT   腺腫または良性腫瘍
検索                   ↓           ↓
               MRI opposed-phaseで    MRI opposed-phaseで
                 信号低下なし        信号低下あり
                  または           または
               造影CTで造影剤流出率が  造影CTで造影剤流出率が   
                60%未満             60%以上
                 ↓               ↓
              経皮的生検、経過観察        腺腫
               または手術

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