輸液の基礎知識

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オープニング症例
76才女性高血圧と陳旧性脳血管障害とで通院中で降圧薬治療で160/80程度であった。数日前から尿路感染で38度となり食事が取れなくなり水分摂取のみ可能であったが反応が鈍くなり救急搬送された。
身体所見 推定体重50kg程度、38.8度、脈拍110/分、血圧110/70
皮膚ツルゴール低下、経静脈臥位平坦
尿所見 比重1.030 尿Na 9mEq/L
血液 BUN38 Cr2.0 Na130 K3.5 CL86
さて、どのように対処するのか?
解説 
体液欠乏に対する輸液については
00000①欠乏体液の成分は何か
00000②欠乏体液量はいくらかを念頭において対処する。
欠乏体液成分は血清Na濃度から推定できる。
Na濃度が正常範囲の時の欠乏成分は等張液であり、高Na血症の時の欠乏成分は電解質を含まない水である。
脱水があり血清Naが低い時は水よりもNaを多く失った状態で、等張液を失った後、相対的に水が貯留している。
欠乏体液量は体重の変化が分かれば参考となるが治療開始時に健常時の体重を正確に把握することは困難である。
脱水の重症度からの判断が中心となる。
本症は脱水すなわち細胞外液の欠乏と考えられる。血清Naが低値であるがほぼ正常に近いことから失われた体液は等張液が大部分と考える。低血圧、頻脈から有効循環血漿量を保つためにまず等張液(生理食塩液)を投与すべきである。
次に、大まかな欠乏量は比較的重症の脱水症と判断して体重の10%程度(5kg=5㍑)前後の脱水があると予想する。
補充輸液の原則は予測欠乏量の半分を最初の24時間で輸液することをプラスバランスの目標とし、これに維持輸液量1.5㍑と考え2.5㍑+1.5㍑=4㍑程度を輸液するのが妥当である。
従って生理食塩液150~200ml/時間で点滴する。
5%ブドウ糖はfree waterであり不適、維持輸液3号液もfree waterを多く含むので低Na血症を増悪させてしまう。
また、1号液(1/2生食相当)も500mlの生食と500mlのfree waterをあわせたものと考えると低Na血症時には危険がある。

輸液の基礎知識

●細胞外液の性状はほぼ一定であり恒常性が保たれている。
●体細胞は細胞外液の中に浸っていると考えられる。
細胞膜にはイオンポンプがあり、Na+は細胞外にくみ出され、K+は細胞内に取り込まれる。

体液の分布

細胞内液 : 細胞外液=2:1
細胞外間質液 : 細胞外液血管内液 =3 : 1

体重の60%は水分で
体液量の分布は(細胞内):(細胞外間質):(血管内)=8:3:1

浮腫は細胞外液量が増加し、生理食塩水が溜まった状態である。
脱水は細胞内の水分が欠乏していることで血漿浸透圧が上昇(特に高Na血症)していることを言います。
水中毒は血漿浸透圧が低下して水が細胞内に移動したことを言います。

維持輸液量=何も侵襲がなくても体が必要とする水分量の計算
43kgなら(4×10)+(2×10)+(1×23)=83ml/h。

4-2-1ルールによる術早期補充

術前からの経口摂取制限による脱水、術中維持量の補充

00000体重10kgまで; 4ml/kg/hour (a)
00000体重10~20kg; a+(体重-10)x 2ml/kg/hour (b)
00000体重20kg以上; a+b+(体重-20)x 1ml/kg/hour
以上により維持量を、術前脱水分は細胞外液で手術開始1~2時間で補い、以後は開始液を投与する。


00000体重10kgまで  4ml/kg/hour
00000体重10~20kg  2ml/kg/hour
00000体重20kg以上  1ml/kg/hour
例えば体重43kgを想定した場合は、
43=10+(20-10)+(43-20)であるので4-2-1ルールを適応し、
10×4+(20-10)×2+(43-20)×1=83ml/hourとなり、絶飲食の時間が15時間とすると
83×15=1245mlの量を手術の早期で補給すればよいということとなる。

術中補充

術中の不感蒸泄、術野からの蒸泄分の補充
0000012ml/kg/hourを細胞外液で補充する
術操作による機能的細胞外液減少分の補充
00000手術部位により以下の量を細胞外液で補充する。
000000上腹部内10~20ml/kg、下腹部・下肢10~15ml/kg、
000000胸部表面・胸腔内・腹壁・上肢5~10ml/kg

出血の補充

  • 循環血液量の10%以下の出血には
    細胞外液を出血量の2~3倍投与する。
  • 10~20%の出血には
    代用血漿を上限1000ml以内で加える。
  • 20%以上の出血には出血量相当の輸血と同量の細胞外液を投与する。
    フィジオ140は急速投与しても1%糖含有なので血糖上昇がなく初期輸液としては最適で、維持にはフィジオ70やKN3Bが良い。

輸血の指標
Hb8g/dl, Ht45%が輸血開始の目安となる。

水分欠乏量の推測 

(正常値、ヘマトクリット(Hct)=45%、血清総蛋白(TP)=7mg/dl、
(血清Na濃度=140mg/dl)(水分量=体重の60%として)
1、体重からの推測     →水分欠乏量 = 健常時体重- 現在の体重  
2、ヘマトクリット(Hct)を用いる→水分欠乏量 =(1-45/Hct)x体重x0.6
3、血清総蛋白(TP)用いる    →水分欠乏量 =(1-7/TP)x体重x0.6
4、血清Na濃度を用いる →水分欠乏量 =(1-140/Na濃度)x体重x0.6

脱水の評価には様々な指標があるが、絶対的なものではなくそれらを組み合わせて評価するべきである。
口腔粘膜の乾燥、ツルゴールの低下、仰臥位での外頚静脈の不可視などがあげられ、
血清アルブミンの相対的高値やBUN/Cr>20,などが脱水を示唆する所見である。
尿浸透圧>500mOsm/Lや尿比重>1.020, 部分排泄率としてはFENa<1,FEUN<35などが有名である。

輸血製剤の容量
0001単位の血液製剤は200ccの全血に由来し、一単位当たりの容量はMAP140ml、
0000FFP80ml、濃厚血小板20mlで計算する。
000200cc全血に由来するMAP一単位の中には、ほぼ30gのヘモグロビンが入っている。
00従って一単位の輸血で上昇するHb濃度(g/dl)は、30(g)÷循環血液量(dl)で
000予測される。
000循環血液量:70mL/㎏

画像の説明
各種輸液の分布
           細胞内液    細胞外液(間質/血漿)
5%ブドウ糖000000000000000000000000000000000水の補給(低張輸液)
生食/リンゲル液0000000000000000000000000000 細胞外液の補給(等張輸液)
ビィーンD000000000000000000000000000
酢酸リンゲル0000000000000000000000000
T1~T4000000000000000000000000000000000000000低張輸液
アルブミン/グリセオール000000000000000000000000000血漿増量剤

1000mlの輸液・輸血で血管に残る量
5%ブドウ糖  85ml  、生食/リンゲル液 275ml 、5%アルブミン 500ml 、全血  1000ml

画像の説明
画像の説明

市販電解質輸液製剤組成
000000000000Na0000K0000CL0000base0000ブドウ糖000浸透圧
0.9%食塩水0001540000000154  0000000000000000000030800(等張性)
リンゲル液000147004000015600000000000000000000000030900(等張性)
ソリタT10000900000000007000020乳酸イオン02.6000000326(低張性)
ソリタT2000084000200000066000020乳酸イオン03.20000376(低張性)
ソリタT300003500002000035000020乳酸イオン04.30000350(低張性)
ソリタT400003000000000020000010乳酸イオン04.300000300(低張性)
1/2食塩液000770000000007700000000000000000000000154
10%食塩水0171000000000171000000000000000000000003420
メイロン0000835000000000835HCO3-0000000000000000001670
15%KCL 000000000020000020000000000000000000000004000

参考
Pit recovery time
Slow edema 血管内過剰容量浮腫  心不全
Fast edema 血管内低用量浮腫  低アルブミン(ネフローゼ)

参考
細胞外液量の変化は血管にかかる圧力の変化を心房、大動脈、頚動脈、腎臓にある張力
受容体が感知する。そのあと交感神経、RRA系、心房性Na利尿ペプチド、坑利尿ホルモンなどの
調節因子を用いて効果器官である腎臓に働いてNa排泄を増減する。
Kは血清K濃度や細胞内外のK濃度勾配がシグナルとなりセンサーである副腎皮質によって
感知されそこからエフェクターとしてのアルドステロンが分泌される。
インスリン、カテコールアミン、甲状腺ホルモンなどはKの細胞内移動を促進する。
輸液量の目安
1号液 生理食塩水が60%に薄められた溶液でKは含まれていない。
0000(Kを含まない) 病態不明の時の水・電解質補給
2号液 生理食塩水が50%に薄められた溶液でKは含まれている。
000(細胞内に多い電解質K,Mgを多く含む)心不全・腎不全の時にK投与は危険
3号液 生理食塩水が30%に薄められた溶液でKは含まれている。
000(1日に必要な水・電解質補給でき最も多く使われている)
4号液 生理食塩水が25%に薄められた溶液でKは含まれていない。
000(電解質濃度低く細胞内への水補給効果が大きい)
以上の維持液は生理食塩水と5%ブドウ糖液を組み合わせて作られている。

  • 1, ラクテック(乳酸リンゲル)には乳酸が含まれており、乳酸は肝代謝を受けて、アルカリ性となり体内の酸性化を防いでいるが
    肝代謝の容量を超える量を投与したり、肝機能そのものが悪かった場合、乳酸はそのまま血中に残り、乳酸アシドーシスを引き起こす。ヴィーンF(酢酸リンゲル液)はその副作用が少ないとも
    乳酸リンゲルとあまり変わらないとも言われている。
  • 2,フィジオ140(ブドウ糖加酢酸リンゲル液):酢酸の他にブドウ糖やMgそしてクエン酸を加えている。
  • 3,ビカーボン注: pHを維持するために重炭酸が含まれ最も生理的なリンゲル液で速やかな代謝性アシドーシスの補正効果と代謝異常を伴う患者に対しても効果が期待できる。
  • 4,ヘスパンダー(ヒドロキシエチルデンプン):高分子デンプンが入っています。
    この高分子デンプンが体内で良くも悪くも働くわけです。血管内に残るのはヘスパンダーの場合、ほとんど残ります。デメリットとして、2本/日までとなってます。
    このデンプンが高分子なばかりに腎臓を詰まらせて腎不全を起こしたり、溶血を引き起こしたりします。
    ヘスパンダー(HES 70/0.5)の使用指針
    現在最も優れたHES製剤は、130/0.4という第3世代製剤ですが日本では使用できません。
    第2世代HES製剤(70/0.5)でも、適切に使用できれば血液凝固能や腎機能には大きな障害を与えずにコロイド浸透圧を維持できます。
    HES(70/0.5)は、平均分子量7万のヒドロキシエチルデンプンを含み腎臓から排泄されます。
    尿にとろみが増して、尿比重は非常に高くなります。長期の投与は控えるべきです(5日以内)。
    HESの血管内容量の維持効果は約3-4時間です。従って、循環血液量が減少し続ける病態では、術後にもHESの投与が必要です(例:HES 40 cc/時間、3-4 パック/日)。
    HESが血小板機能を低下させるという報告もあります。
    Cr 2.0以上あるいはCCr 30ml/min以下の腎機能低下患者、または腎臓摘出などで術後の予測CCr 30ml/min以下となる患者では、使用量を制限したり使用しない方が安全と考えられている。

カロリーの補充
電解質に加えて蛋白質の異化を最低限度にするためにブドウ糖で
1日100~150gは必要である。
ブドウ糖100gが代謝されると代謝水60mlが生成する。
適切なブドウ糖の投与速度は0.5g/kg/時 以下とされている。
カロリー補給を目的とするためには20~50%ブドウ糖液を投与する必要がある。

各種ショック輸液
低循環性(出血)ショック⇒リンゲル液または生食(約15分で1~2㍑の初期輸液)
0000000000002㍑は循環血液量の40%である。
心原性ショック⇒ブドウ糖または維持輸液
         (例外は右室梗塞ならリンゲル液または生食)
敗血症性ショック⇒リンゲル液または生食
000000000000最初の6時間のパラメーター
000000000000000①CVP8~12cmを保つように輸液
0000000000000000000最初の6時間で6~10㍑の輸液が必要
0000000000000000000CVPをコントロールするまで昇圧薬の使用は待つ
000000000000000②平均動脈圧>65mmHgに保つ
            [(収縮期血圧-拡張期血圧)÷3]+拡張期血圧
000000000000000000CVPを正常化しても血圧が低ければ昇圧薬(ノルアド/ドパミ
0000000000000000ン)を使用する。
000000000000000③中心静脈血酸素飽和度>70%
0000000000000000000000Htが30%以上になるように輸血する。
アナフィラキシー性ショック⇒リンゲル液または生食
神経原性ショック⇒リンゲル液または生食
閉塞性ショック⇒リンゲル液または生食

Refeeding syndrome

低栄養状態で糖の代謝が低下すると細胞内のPが細胞外に流出し細胞外の過剰なPは尿中から体外に排出されるので体内のPの量は徐々に減少してくる。
(血清リン濃度測定では正常)。
その状態に対して体外から急激に補給されると糖代謝に使われるPが細胞外から細胞内に一気に流入するため細胞外のリンは急速に枯渇し著しい低リン血症が顕在化する。
リンが枯渇すると不整脈、心不全、腎不全、肝不全、神経障害、血球減少など重篤な障害を招く。
Refeeding syndromeが起きやすい病態
神経性食欲不振症、極度な飢餓状態や栄養失調症、 肥満者の急激な減量後、長期間の低カロリーの静脈栄養患者、慢性アルコール依存症、担癌患者、心・腎などの重篤な基礎疾患の患者
Refeeding syndrome予防のためには頻回の血清P濃度測定と積極的なPの補充が大切。
●超急性期(入院から1週間程度の重症の場合)
BEE(basal energy expenditure)エネルギー消費量
♂(kcal/day)BEE=66.5+13.7xBW+5.0xBH-6.8xYR
♀=65.5+9.6xBW+1.7xBH-4.7xYR
最初の数日間は総カロリーとして経口摂取も含めてBEEの約7割以下にとどめる。あるいは20~25kcal/kg程度まで
● 急性期(入院から2~3週間程度の重症の場合)
超急性期を過ぎバイタルサインが安定しているようであればrefeeding syndに注意が必要である。
カロリーは数日から1週ごとに200kcal程度の増量にとどめる。
血清P<1.0の重度低P血症は1回量0.2 0.8mmol/kgを6時間かけて投与する。
血清P>2.0であれば経口投与にきりかえ0.5~1g以上を連日投与する。
● 体重増加期(入院2~3週以降の重症の場合)
目標は1週間に1kg前後を目指す。
摂食量をみて総カロリー2000kcal以上は必要。
脂肪製剤は非タンパクカロリー量の約20~30%を使用する。

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