髄膜炎

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髄膜炎

  • 診断のための検査は、
    神経学的診察、一般血液検査、血液培養2セット、画像検査、髄液検査(沈渣のグラム染色)を行う。
    髄液はグラム染色によって好中球が優位であれば細菌性が疑われ、単核球が優位であれば結核性、真菌性が疑われる。リンパ球優位の場合はウイルス性を考える。
  • 確定診断までは細菌性髄膜炎、真菌性髄膜炎、結核性髄膜炎を視野に入れ鑑別するためにツ反、喀痰・胃液・髄液のガフキー検査とチール・ニールセン染色および結核菌培養、血液PCR、胸部CTを随時行う。

細菌性髄膜炎の髄液初圧は200~500mmCSFを示すことが多い。
これを超える場合は測定を中止し、速やかに髄液採取を行うと同時にグリセオール点滴を行う。
髄液糖/血糖比は0.6以下が異常値で0.4以下の場合は細菌性髄膜炎が疑われる。
髄液蛋白量は40mg/dl以下であり非特異的所見である。髄液CRPはウイルス性よりも細菌性髄膜炎で有意に上昇し、100ngmlを超える場合は感度87%で細菌性髄膜炎をしめす。

①ウィルス性髄膜炎

無菌性髄膜炎のほとんどがウイルス性と考えてよい。
髄液蛋白・糖量は正常で、単球優位の細胞数増加がある。
大体1週間以内に回復して合併症や後遺症がない場合が殆どです。
新生児は典型的な発熱・嘔吐がなくなんとなく元気がなかったり、お乳の飲みが悪かったりする。大専門が硬くはっていると要注意である。
SLE,MCTDでイブプロフェン、スリンダクの投与中、投与後に報告されている。その他、サルファ剤、カルバマゼピン、免疫グロブリンでも報告されている。
髄膜炎髄膜炎は届出が必要で潜伏期は2~10日致死率は10~15%で、治療しなければ50%の致死率である。
濃厚接触者には予防接種と抗生剤の予防投薬が行われる。ワクチン接種後10~14日は十分な予防効果が期待できないでその間リファンピシンやシプロキサンなどを投与して発病予防する。

病原ウイルスとしてはエンテロウイルスが最も多く次いでムンプス、水痘、帯状疱疹、単純ヘルペスEBなどがあげられる。
ウイルス性ではCRPは正常~軽度上昇、髄液糖の低下がない。

成人1型の単純ヘルペス脳炎(HSV-1)による単純ヘルペス脳炎(HSE)ウイルス学的検査所見
髄液を用いたPCR法でHSV-DNAが検出されること。
ただし、陰性であっても診断を否定するものではない。特に治療開始前と治療開始後の髄液の検査をおこなうこと。
HSV抗体測定による検討
髄液HSV抗体価の経時的かつ有意な上昇、または、髄腔内抗体産生を示唆する所見が見られること。
血清÷髄液抗対比≦20または
抗体価指数=髄液抗体/血清抗体÷髄液アルブミン/血清アルブミン≧2

抗ヘルペスウイルス薬の早期投与

  • 1)単純ヘルペス脳炎「疑い例」の段階で抗ウイルス療法を開始する。アシクロビル10mg/kg,1日3回1時間以上かけて点滴静注、計14日間
    ショック、皮膚粘膜症候群、アナフィラキシー様症状、DIC、意識障害、錯乱、急性腎不全、汎血球減少症などの副作用に注意する。
    重症例ではアシクロビル20mg/kgが使用されることもあるが
    一日薬用量を超えるため家族にインフォームドコンセントを得る。
  • 2)アシクロビル不応例にはビダラビン15mg/kg, 1日1回点滴静注
    10~14日間
    単純ヘルペス脳炎が否定された段階で抗ウイルス薬を中止する。
  • 3)痙攣に対しては
    痙攣発作にはジアゼパム、フェノバルビタール、フェニトインの静注、筋注
    痙攣重積には呼吸管理下でミダゾラム、ペントバルビタールなどの持続点滴

動物実験的HSV-1脳炎ではステロイドの併用に効果が見られ、また、ステロイドの使用がアシクロビルの抗ウイルス作用に悪影響を与える事はなく成人の臨床例でもステロイドの併用は有用と考えられる。

②細菌性髄膜炎

画像の説明

画像の説明

日本における細菌性髄膜炎の原因菌は、6才から49才までは肺炎球菌が多く、インフルエンザ菌が続く、50才以上では肺炎球菌やインフルエンザ菌の他に黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌、連鎖球菌などが加わる。

  • サイトカインとステロイド
    細菌性髄膜炎の発熱や頭痛および中枢神経症状の病態には髄腔内に侵入した起炎菌による直接傷害に加えて起炎菌に対する免疫反応に伴う傷害、なかでもIL-1やTNFといったサイトカインなどが病歴に大きく関与している。
    これらのサイトカインが数時間以内に放出されると考えられているので極めて早期の副腎皮質ステロイド薬の投与が有用と考えられている。
    成人の肺炎連鎖球菌髄膜炎にデキサメサゾンの抗菌薬投与前または
    同時投与で有効性が示されステロイド薬を使った補助療法の重要性が示されている。
    肺炎球菌以外の原因菌であればその時点で中止すれば問題ない。
  • 初期治療
    髄液検査結果の菌未確定時の初期抗菌薬は
    免疫能が正常な50才未満ではカルバペネム系抗菌薬(パニペネム・ベタミプロン合剤、またはメロペネム)または第三世代セフィム系抗菌薬とバンコマイシンの併用を行う。
    50才以上または免疫不全者では起炎菌が多様となるため第3世代セフィム系抗菌薬とバンコマイシン、アンピシリンの併用を行う。
    原因菌が特定された後の治療は、原因菌の感受性結果が得られればその結果に基づき適宜変更し髄液移行性のよい殺菌性抗菌薬を最大量投与し治療終了まで投与量を減量せず通常最低2~3週間投与する。
  • symptome & sign
    発熱、項部硬直、意識障害を髄膜炎の三徴という。
    95%の髄膜炎に三徴の2つ以上を、また、99~100%に三徴のうち少なくとも1つを認める。細菌性髄膜炎は急激に発症することが多いがリステリアでは亜急性に、髄膜炎菌では電撃的経過を示して超急性に発症する(waterhouse-Friderichesen)。
    ①Jolt accentuation of headacheの感度は97%、特異度60%であり、この徴候を認めない場合は髄膜炎を除外できると言われる。
    髄膜炎の危険性が高くJolt accentuationが陽性の場合は髄液検査を施行すべきである。
    髄膜炎に由来する項部硬直は左右への受動回旋はスムーズである。Stiff neckは高齢者で見極めがたいことがある。高齢者では髄膜炎、頚椎疾患、パーキンソン症候群、パラトニーなどで認められるがこれらは左右回旋に抵抗が認められる。
    ③ケルニッヒ徴候(股関節と膝関節屈曲した位置から股関節を伸ばしても膝関節が伸びない)は通常は両側性である。ラセーグ徴候は通常一側性である。
    ④ブルジンスキー徴候(首の屈曲により馬尾神経根が伸展されることとにより下肢を屈曲する)

000000000000000細菌性髄膜炎臨床診断
00000000000000000
000000000000グラム染色で菌検出
00000000000000000


G(+)球菌     G(-)球菌   G(+)桿菌     G(-)桿菌
肺炎球菌     髄膜炎菌   リステリア   インフルエンザ菌
ブドウ球菌                    緑膿菌
連鎖球菌                     大腸菌群
             +
000000 抗菌薬投与直前または同時にステロイド薬を併用

基本的には、抗菌薬の投与の10~20分前または同時に投与する。
デキサメサゾン0.15mg/kgを6時間ごとに2~4日間の投与が推奨される。

000000最近の外科的手術・手技の既往(+)
000000000000  ↓
■カルバペネム系抗菌薬+バンコマイシン
■第3.4セフェム系抗菌薬(セフタジジム、セフォゾプラン+バンコマイシン)
000000000000  +
抗菌薬投与直前または同時にステロイドの併用

0000000000最近の外科的手術・手技の既往(-)
00000000000000000 ↓
50歳未満     消耗性疾患や免疫不全状態     50歳以上
↓            ↓              ↓
■免疫能正常    第三セフェム系抗菌薬
↓        (セフォタキシムまたは     左記と同じ
16~50歳未満00000 セフトリアキソン)+バンコ
00000000000000000000 +アンピシリン
■カルバペネム系抗菌薬
パニペネム、ベタミプロン合剤000000+ 000000000000000000000000000000000000     +
またはメロペネム0000000抗菌薬投与直前または00000左記と同じ
または0000000000000000同時にステロイドの併用
■第三セフェム系抗菌薬
(セフォタキシムまたは
セフトリアキソン)+バンコ
    +
抗菌薬投与直前または
同時にステロイドの併用

6~49才
起炎菌のほぼ80%が肺炎球菌で、ついで髄膜炎菌、その他の連鎖球菌属による例が見られる。
50才以上
感染防御能が再び低下してくる年代で大腸菌やクレブシエラなどの腸内細菌、緑膿菌を含むブドウ糖非発酵菌も起炎菌となる。
その他、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸球菌、そして、口腔内連鎖球菌による発症例も見られる。

慢性消耗性疾患や免疫不全状態を有する患者
糖尿病、アルコール依存症、摘脾後、悪性腫瘍術後、担癌状態、慢性腎不全、心血管疾患、重篤な肝障害、放射線療法中、免疫不全症候群、抗がん剤や免疫抑制剤服用中

画像の説明

細菌性髄膜炎における初期治療の標準的選択
起炎菌が同定され感受性結果が得られたら直ちにその結果を基に抗菌薬の選択を変更する。
抗菌薬に対して中間型との結果が得られたら耐性菌として治療を選択する。
感受性から投与が不要な場合は直ちに中止する。
成人細菌性髄膜炎の起炎菌としてインフルエンザ菌の頻度はまれであるが乳幼児では最も多い起炎菌であり学童~若年成人でも起炎菌となりうる可能性は残る。
髄液の培養でインフルエンザ菌が同定された場合はBLNAR(βラクタマーゼ陰性アンピシリン耐性)、BLPAR(βラクタマーゼ産生アンピシリン耐性)、BLPACR(βラクタマーゼ産生アモキ/クラブラン耐性)
に対しても感受性良好な第三セフェム系抗菌薬(セフィタキシムまたはセフトリアキソン)またはメロペネム、あるいはその両者の併用に変更することが望ましい。

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投与量と投与方法(成人)

  • ①パニペネム・ベタミプロン合剤(カルベニン)1g/回、6時間毎に静注
  • ②メロペネム(メロペン)2g/回、8時間毎に静注
  • ③セフォタキシム(セフォタックス、クラフォラン)2g/回、4~6時間毎に静注
  • ④セフトリアキソン(ロセフィン)2g/回、12時間毎静注
  • ⑤バンコマイシン500~750mg/回、6時間毎静注
  • ⑥アンピシリン(ビクシリン)2g/回、4時間毎静注
  • ⑦セフタジジム(モダシン)2g/回、8時間毎静注
  • ⑧セフォゾプラン(ファーストシン)2g/回、6~8時間毎静注

投与期間
上記治療を継続し臨床症状が改善し全身炎症所見の正常化、髄液所見の正常化を確認後さらに約1週間の投与継続の後に終了する。臨床症状が改善しても抗菌薬の投与継続が不可能な状況にない限り途中での投与量の減量や中止は慎む。
アレルギー等による薬剤選択変更
薬剤アレルギーにより試用継続できないときは別の推奨薬剤に変える。
50歳以上で消耗性疾患や免疫不全状態を有する場合は第三セフェム系抗菌薬(セフォタキシムまたはセフトリアキソン)+バンコ+アンピシリンのみを推奨してある。
この場合第三セフェム系抗菌薬やアンピシリンが使用できない場合はメロペネム+バンコに変える。
グラム陰性球菌(髄膜炎菌)にて第三世代セフェム系抗菌薬が使用できない場合はアンピシリンまたはメロペネムの投与が考慮される。
グラム陽性桿菌(リステリア)でアンピシリンが使用できない場合はメロペネム+ST合剤の投与やゲンタの投与が考慮される。
バンコが薬剤アレルギーや耐性により使用できないときはリファンピシンの経口投与が考慮されてもよい。

画像の説明

起炎菌が想定された場合の抗菌薬の標準的選択
グラム陽性球菌
    肺炎球菌(PISPやPRSPを含む)
00000000000カルバペネム系抗菌薬または
00000000000 第三世代セフェム系抗菌薬+バンコマイシン
    B群連鎖球菌  第三世代セフェム系抗菌薬またはアンピシリン
    ブドウ球菌(MRSA含む)
        バンコマイシン
        または
        第三・四世代セフェム系抗菌薬
        または
        カルバペネム系抗菌薬
        ただし、MRSAが想定される状況の場合はバンコを
        選択し感受性結果が確定したらそれに従い変更する。
グラム陰性球菌
      髄膜炎菌    第三世代セフェム系抗菌薬
グラム陽性桿菌
      リステリア菌  アンピシリン
グラム陰性桿菌
      インフルエンザ菌(BLNAR,BLPAR,BLPACRを含む)
             第三世代セフェム系抗菌薬またはメロペネム
             または両者の併用
      緑膿菌   第三・四世代セフェム系抗菌薬またはカルバペネム系抗菌薬
      大腸菌群  第三・四世代セフェム系抗菌薬またはカルバペネム系抗菌薬

③結核性髄膜炎

エタンブトール、イソニアジド、ピラジナミド、リファンピシンなど4剤

参考 
予後不良となるリスクファクター(初回の髄液検査所見)
① 細胞数が多い
② 多核球(好中球)が優位
③ 髄液糖が異常に低値
④ 髄液蛋白が非常に多い

化膿性,結核性,および真菌性髄膜炎では細胞数増加のため,
外観としても混濁する。

          細胞数  優位細胞   糖     蛋白
化膿性      500~2万   多核   減少   100~700
結核性      25~500   単核   減少  500~1000
無菌性      5~千 111111単核   不変    <100
抗生剤投与 化膿性100~千111111単核   不変    >100
脳腫瘍・白血病11110~300 1111111単核1111不変orやや減少1150~千
膠原病      <50 11111111単核   不変    不変~上昇

真菌性髄膜炎

成人の場合、真菌性髄膜炎で最も頻度が高いのはクリプトコッカス髄膜炎(クリプトコッカスはβ-Dグルカンを有しない)で、真菌性はHIV感染、腎疾患、膠原病、悪性腫瘍、ステロイド投与、糖尿病など免疫不全がハイリスクとなる。

プロジフFos-fluconazole
CrCl >50
初日800mg 1回静注⇒ 2日目より1回 400mg 24時間毎 静注
CrCl 10 - 50 mL/min
1回 200mg 24時間毎 静注
CrCl <10 mL/min
1回 200mg 24時間毎 静注

参考--β-Dグルカン
多種多様の病原真菌は細胞壁骨格の主要構成成分として繊維状多糖(1→3)-β-Dグルカンを含有している。
(1→3)-β-Dグルカンは酵母の出芽または糸状菌菌糸の先端発育に際して内因性グルカナーゼの作用によって微量ながら細胞外へ遊離されるので真菌症の診断マーカーとなりうる。
真菌細胞壁の(1→3)-β-Dグルカンとカブトガニから精製される血球抽出物が鋭敏に反応するので侵襲性または播種性真菌症の診断に役だっている。
β-グルカン値は血中の(1→3)-β-Dグルカン値を測定している。
カンジダ症では90%前後、アスペルギルス症では60~80%程度がβ-Dグルカンの上昇を来す。しかし、真菌細胞壁に(1→6)-β-Dグルカンを有するクリプトコッカス属や(1→3)-β-Dグルカンを有しない接合菌(ムコールなど)は陰性となる。
Pneumocystitis jeroveciiも細胞壁に(1→3)-β-Dグルカンを有するためにカリニ肺炎において上昇する。
β-Dグルカンの利点は①汚染やコロナイゼーションのみでは通常陽性とはならない。②病勢の推移や治療効果のモニタリングに利用できるが、問題点として③感度および特異度が十分と言えない④病態や免疫能が血中の抗原レベルに影響を与えるか検討されていない。⑤複数の異なるタイプの検査法の併用が必要であるから1つでは済まない。

細菌性以外の髄膜炎の治療

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