1型糖尿病の治療

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1型糖尿病のいろいろ

  • 『劇症1型糖尿病』
    劇症1型糖尿病の診断基準は初診時の血糖≧288かつHbA1c>8.9で、10歳未満で
    発症するのがほとんど1型で、10歳以降は徐々に2型糖尿病の発症が増加し、
    14~15歳以上では2型が上回ってくる。小児糖尿病の約7割が肥満の2型糖尿病である。
    糖尿病を合併する遺伝性疾患でミトコンドリア遺伝子3243変異は糖尿病全体の1~2%
    程度を占め進行性のβ細胞機能低下を示し、母系遺伝と難聴が診断の鍵となる。

数日の経過でどんどん悪化する病気です。
劇症1型糖尿病の臨床
1.日本人急性発症1型糖尿病の約20%
2.有症状期間<10日
3.血糖値は著明高値・HbA1cは正常上限~軽度上昇
4.ケトアシドーシスで発症
5.尿中CPR<10μg/day
6.膵外分泌酵素の上昇
7.膵島関連自己抗体陰性
8.膵島炎(-)
9.膵外分泌組織へのリンパ球浸潤(+)
急激に発症し、最初は上気道炎症状(発熱、咽頭痛など)や消化器症状(上腹部痛や嘔気、嘔吐など)などの前駆症状を約70%の症例で認めます。
重篤な意識障害に陥る前の前駆症状の時点で見抜くことは極めて難く、
『口渇』がないか、尿糖やケトンをチェックすることが大事です。

劇症型ではほとんどの症例で膵酵素が上昇し、自己免疫性と比較しても
インスリン分泌能が極度に低下し、急激に発症するためHbA1cが低いのが一般的です。

          劇症型      自己免疫性(Ⅰ型)
血糖値       799        434
HBA1c00000000000006.400000000012.2
膵酵素上昇      95%000000000 39%
膵島関連自己抗体   4.8%000000000 100%
尿中CPR000000000004.3000000000 21
感冒様症状      71         26%
腹部症状       72         7%
妊娠との関連     21          1%
意識障害       45          5%

1型DMのサブタイプは3種類あります。『slowly progressive IDDM』との違い
0000000000000000000000001型糖尿病サブタイプの特徴の比較
00000000000000000急性発症典型      緩徐進行型        劇症型000000000
発症年齢      小児・若年に多い     30~50歳        20歳以上に多い
男女差        女性に多い        男性で進行早い    男女ぼぼ同数に発症
発症形式       急性発症         徐々に進行       数日で急激進行
発症時ケトーシス   多い           まれ            急激なケトアシドーシス
膵島関連自己抗体   陽性          陽性            原則陰性
血中膵外酵素     変化なし        変化なし          上昇
血尿CPR        低い           徐々に低下       完全に枯渇
インスリン治療    必要            最終的に必要      必要

1型糖尿病患者へのムンテラ

1.1型糖尿病は膵β細胞破壊により、インスリン分泌が低下する疾患であり、2型糖尿病のような生活習慣病ではない。
2.食事の自由度を高め、食事(特に炭水化物)とインスリンの関係をつかむことを目標とする。
3.食品のカロリーや炭水化物など、食事に関する知識を身に付けること、また、体重増加(肥満)を来さない食べ方が重要である。
4.感触も基本的には許可するが、必ず、インスリンを追加注射することを前提とする。

1型糖尿病の治療

I型糖尿病では患者の生活に合わせてインスリンを使用することが治療の基本である。
健常人の生理的インスリン分泌に近い形で補い、できるだけ血糖を正常化することにあり、健常人のインスリンの生理的分泌パターンである基礎分泌と追加分泌により調整する。
インスリン作用不足か軽度な発症早期の急性期典型例や、インスリン非依存期の緩徐進行I型糖尿病では内因性インスリン分泌が残存しているため基本は強化インスリン療法ということができる。これは、インスリンを生活に合わせて自分で調節して良好な血糖コントロールを目指す治療法である。
インスリン投与法としては、中間型もしくは持効型インスリンで基礎分泌を補充し、毎食前の超速効型インスリンで追加分泌を補充するbasal-bolus療法(頻回注射療法)もしくはインスリンポンプ療法が用いられる。
基礎インスリンの補充で重要なことは途切れることのない安定した血中インスリン濃度を再現するすることである。
中間型インスリンは注射後4~6時間で血糖低下作用が最大になり、16時間程度で効果が消失する。一日2回注射すると夜間の低血糖が起こりやすく、一日一回の注射では24時間にわたって安定した基礎分泌を再現できないことが多い。
NPHインスリンは1日2回が原則だが、朝、就寝前にとらわれず夕食前の血糖が高い患者では昼食前と就寝前の方が安定した良好なコントロールを得られることもある。
症例によっては朝食前と夕食前に注射したほうが良いこともある。

持効型インスリンアナログ製剤は安定した基礎分泌を再現しやすい。
グラルギンは注射後5時間頃に小さなピークがあるためADAでは小児I型糖尿病にグラルギンを用いる場合、夕食前もしくは朝食前に注射することを勧め就寝前に注射しないように勧告している。
追加インスリンとしてかっては速効型インスリンが、現在は超速効型が使用されることが多い。

速効型インスリンは①効果発現まで30分程度の時間を要する。②効果発現までピークが2時間後となる③効果持続が6時間と生理的追加分泌よりも長いという特徴がある。
注射量が多くなると作用のピークの遅延と作用時間の延長が起こる。
場合によってはピークが4時間以降、作用が12時間以上に達することがあるため食後血糖を十分に下げようとすると低血糖が起こりやすいくなるのでおやつや血糖の高い時に追加注射するのに向いていない。
その点、超速効型は生理的な追加分泌に類似しているので追加インスリンには向いている。焼肉屋で焼肉を食べるときは速効型を用いたり夕食前にインスリンの効果が切れやすい場合は昼だけ速効型を用いるなど使い分けるのも手である。

インスリンの使用量とインスリンの配分

内因性インスリンの枯渇した患者の場合、一日に必要なインスリン量は0.5~1.0単位/kgとされているが思春期には1.5単位/kg以上を必要とすることもある。

基礎インスリンと追加インスリンの割合
日本人の場合、基礎インスリンが20~40%くらいで残りが追加インスリンとなることが多い。一般に内因性インスリン分泌が残っている患者では基礎インスリンは少量ですみ、枯渇した患者では多量に必要とされる。
基礎インスリンを2回に配分する場合はNPHインスリンの時は一般的には就寝前が多く、朝食前(昼食前)は少量とする。
ただし、長期間にわたって混合製剤で治療されていたような場合は朝食前のインスリン量が多く、就寝前を少なくしたほうがよいことがある。
持効型インスリンの場合は50%ずつを12時間毎に注射することが多い。
新規導入の際は1日のインスリン量の25%ずつを毎食前の追加インスリンと基礎インスリンに割り当てて治療を開始し、SMBGの結果から責任インスリンを増減して最終的なインスリン量と配分を決定している。

責任インスリンに基づくインスリン量と配分の決定

超速効型インスリンを用いる場合は、朝食前だけでなく昼食前、夕食前、就寝前も基礎分泌が責任インスリンであることが多くなった。(食前の超速効型インスリンが少なすぎるために次の食前の血糖が下がらない場合や多すぎて低血糖気味になって上昇しているのでなければ)食前血糖や就寝前の血糖が高い時には基礎分泌インスリンの不足を考えるべきである。

早朝空腹時血糖の上昇や夕食前の血糖高値をみたら

空腹時血糖の上昇は、前日の中間型インスリンの過剰によって夜間無自覚性低血糖が起こった反動であったり(ソモジー効果)することもある。
また、夕食前のインスリン不足のために就寝前の血糖が十分に低下せずその影響が続いていることもある。夕食前の血糖が高い理由は、おやつの時にインスリン注射をしていなかったり量が足りないためであったりすることもある。深夜2~3時の血糖も測定してインスリン量を調整する。

新規発症1型糖尿病へのインスリン導入

インスリンの導入は0.2~0.4U/kgを初回1日投与量とし、1日投与量の25%ずつを毎食前の追加インスリン、25%を基礎インスリンとする。その後は毎食前と就寝前の血糖を毎日測定してそれらが目標に到達するように2~4日おきにインスリンを増減する。
(インスリン開始直後の数日間、SSにより毎食前のインスリン量を調節すると短期間にインスリン量を決定できる)
SSのこつはスケールの幅を大きくしないこと、できるだけ早く責任インスリンの考え方に基づいたインスリン調整へ移行することである。
例 168cm 50.5kg BMI18.0
初回の1日投与量は50x(0.2~0.4)=10~20単位となる。毎食前に速効型を4単位、就寝前に中間型4単位を初期投与量とし、短期間に1日のインスリン量を決定するために毎食前注射に下記のSSを併用してインスリンの調整をする。

血糖値          投与インスリン量
000~80           -1単位
81~120           ±0
121~160           +1
161~200           +2
201~             +3
ここで1日インスリン量が分かってきたらできるだけ早く中止する。

維持療法

摂取する脂質によって食後血糖は大きく異なるので糖質だけでなく脂質摂取量も考慮してインスリンを調整する。
間食をとるときは間食に合わせて超速効型インスリンを追加すればケーキを食べても血糖コントロールは乱れない。
I型糖尿病の食事療法は一人ひとりの日常生活とインスリン注射を調和させるために必要で、強化インスリン療法を行えば基本的にはバランスの良い健康的な食生活であれば(当然、肥満にならなければ)、何を自由に食べてもよい。I型糖尿病の運動の長期的な血糖コントロールへの効果は不明である。

参考文献
1)日本糖尿病学会編、糖尿病治療ガイド2004-2005.2005、文光堂
2)Kaufman FR eds. Medical manegement of type1,5th ed.American diabetes associattion,2008
3)丸山太郎、インスリンポンプ療法マニュアル(小林哲郎他編).2009;p73-80,南光堂
4)税所芳史他,糖尿病.2005:48:682-91

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