B型肝炎

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B型肝炎ウイルスの完全排除が困難な現時点においてウイルス量(HBV-DNA量)を一定以下に持続的に抑制し肝炎を寛解状態に導き、肝硬変、肝不全への進展を抑制、または肝癌の発生を抑制し、そして良好なQOLのもとで生存期間を延長させることが必要である。
HBe抗原陰性、ALT正常例においてHBV-DNA量が4log cpies/mlを超える場合は、発癌率が有意に高くなっている。肝硬変を伴わない比較的良好な状態でもHBV-DNA量が5log cpies/mlを超える場合、発癌リスクが10倍以上になることがREVEAL試験で分かっております。
発癌抑制のためには治療目標のHBe抗原陰性ALT正常化に加えてHBV-DNAの陰性が重要であります。
3年間の壊死炎症スコア、並びに、線維化スコアを改善する薬剤を使用しなければならない。
35歳未満はdrug-free、最終的にはHBs抗原陰性化を目指してIFN単独療法あるいは
核酸アナログ・INFのsequintial療法を基本とします。
35才以上はHBV-DNAの持続的陰性化およびALTの持続的正常化を目指して核酸アナログ製剤(初回核酸アナログ製剤はバラクルード、ラミブジンおよびバラクルードの耐性にはラミブジン+アデホビル併用療法)を長期投与しHBs抗原陰性化を目指します。
バラクルード投与中に変異株が出現したのはいずれもHBe抗原陽性、7log cpies/ml以上の高ウイルス量の症例で、バラクルード投与1年以内に2.6log cpies/ml以下にならなかった症例である。この場合にラミブジン+アデホビルに薬剤を切り替えることによりコントロールすることが必要になります。

B型肝炎の要約

B型慢性肝炎は核酸アナログ製剤によりウイルスの増殖抑制と肝炎の沈静化を目指すがC型肝炎はINF+RBVによりウイルスの排除を目指す。
慢性肝炎は臨床的に6カ月以上の肝機能検査値の異常と肝炎ウイルスの感染が持続している病態と定義される。
HBVキャリアは約130~150万人いるが非活動性の無症候性キャリアで、病変が進行して肝硬変・肝細胞癌に至るのはその約1割である。
HBVキャリアの9割は一過性のALT上昇の後、seroconversionを起こし、HBV-DNAは低下して、いわゆる健康人キャリアとなる。
残りの1割は長期間炎症が持続する慢性肝炎となり年率約2%で肝硬変へと進展する。
肝硬変からは年率約3%で肝癌が発生する。慢性肝炎からでも0.5%程度の肝癌発生がみられる。
HBVキャリアー(HBV持続感染者)の10~15%が慢性肝炎を発症します。
B型肝炎は、130~150万人(日本人100人に1人) がこのウイルスに持続感染している疾患ですが、自分の感染に気付いていない人が多く、感染している患者さんの身内はリスクが高くなります。
B型肝炎の病態は様々で肝機能値が正常で推移している場合でも突然、癌が見つかることがあります。B型肝炎の治療は年齢、ウイルス量、肝機能値、肝線維化などの状態を総合的に判断して決めます。

B型慢性肝炎に対する治療の考え方は、35歳未満の若年者では、肝機能の変動やHBV-DNAの高値を認めても自然経過によるseroconversionが期待できることを考慮すべきである。
遺伝子A型のHBVなどは慢性化しやすい
B型慢性肝炎ではウイルス量が5log copies/ml以上になるとALT上昇を伴う肝炎の活動性が見られ肝発癌リスクも増大する。
Seroconversion後もプレコア変異株(HBe抗原非産生株)症例も認められることが分かった。
そのため治療目標も持続的HBV-DNAの抑制とALTの正常化となり、これにより肝不全、肝細胞癌への進展を抑制する。

  • インターフェロンは抗ウイルス作用と免疫賦活作用を併せ持つ
  • 核酸アナログ製剤はDNAポリメラーゼに対して選択的な阻害作用を有する
    しかし、これはDNA伸張反応を停止させ増殖を阻害するが非増殖状態のウイルスには無効であり、複製の鋳型となる閉鎖2本鎖DNAに対しても効果がない。

○B型慢性肝炎は、一般的に35歳未満であれば自然経過での肝炎の沈静化が期待できるため通常は経過観察あるいはdrug-freeを目指してINF治療かsequintial療法が選択される。
経過観察する場合でも可能な限り肝生検を行い繊維化のないことを確認する。
○35歳以上では自然経過でseroconversionが期待できない可能性が高く繊維化の進展の見られるF2以上ではALT<31でもHBV-DNAの持続陰性化をめざしてエンテカビル使用を考慮する。
肝硬変および肝細胞癌治療後も核酸アナログ製剤の治療を行いHBV-DNAを低下させ進行の抑制および再発予防を目指す。
Sequintial療法とは核酸アナログ治療でHBe抗原が陰性化した例(またはHBV-DNA陰性例)でfree drugにするためINFと核酸アナログ製剤を1カ月以上併用しトータルでINFを6カ月使用し治療を中断する治療である。

増加傾向にあるB型肝炎
B型肝炎ウイルスは1965年に発見され、すでに40年が経過している。
日本で最も多い日本型と言われてのはgenotypeCで、次いでgenotypeBであり、最近になり増えているgenotypeAは、海外由来のB型肝炎であり性交渉により感染する。
海外、特にヨーロッパあるいはアメリカ、東南アジアの人たちが持っていたB型肝炎が新たに日本で遷延し始めている。
このgenotypeAは、急性肝炎で治る人も存在するが、約3人に1人は慢性肝炎に移行します。

HBVに感染するとHBsAg(+) 、HBeAg(+)、HBV-DNAが高値となる。
Seroconversionが起きてもHBV-DNAが高値となりHBeAg(-)活動性肝炎になる場合もあり、この状態からHCCの発生も報告されている。

構造

HBVは肝細胞内で増殖するが、core粒子が核内で造られ,これが細胞質内でつくられたエンベロープ蛋白で表面を覆われてHBV粒子(Dane粒子)となり,肝細胞から放出される。
HBVに関連する抗原構造はHBs抗原(HBVの外殻の構成蛋白がHBs-抗原蛋白)のほかに、coreの表面のHBc抗原およびcoreの内部のHBe抗原の3種類より成る。
HBe-抗原はコア粒子とは別個に血中に流れだした可溶性蛋白で野生株(増殖が盛んなときはHBe-抗原蛋白を血中に流出させるHBV)と変異株(遺伝子の一部が変異しHBe-抗原蛋白を血中に流出させることができないHBV)がある。
HBe-抗体には中和抗体としての働きはない。

  • [1] B型肝炎ウイルス(HBV)の検査法
    NAT(nucleic acid amplication test)は基本的にはPCRと同じ検査法でありHBs-Agのウインドウ期
    のヒトを見つけたりHBs-Ag陰性でHBc-Ab陽性の中からHBVに感染している非定型的HBVキャリアを見つけたりするのに役だっている。
    HBs抗原が6ヵ月以上の間隔をおいて引き続き検出されれば、その人は持続感染者(HBVキャリア)と認定される。
    HBVに感染するとHBs-Agが血中から消える前の早い段階からHBc-Abが出現する。
    まず、IgM-HBc-Abが出現し数カ月で消え、IgG-HBc-Abが少し遅れて出現しほぼ生涯にわたって持続して検出される。
    HBVキャリアではHBs-Agとともに高力価のHBc-Abが検出される。
    これは、HBV粒子中のHBc-Agによる免疫刺激が続くとHBc-Abが大量に作られ血中に存在するか、HBc-AgがHBV粒子の外殻に包まれた形で存在するために血液中のHBc-Abが抗原抗体反応によって消費されない・・・ことによると考えられている。
    HBVの感染既往者ではHBc-Abは中~低力価陽性である。
    HBc抗体の抗体価が高値の場合には、持続性のHBV感染であると推定でき、HBc抗体価が低い値を示す一過性の感染とは一時点の検査で区別できる。
    IgM型HBc抗体はB型急性肝炎の発症から2~12ヶ月まで陽性化するので確定診断に役立つ。

[2]B型肝炎の感染対策

感染対策は血液対策であり、糞便対策、経気道感染対策は特に考える必要はない。
HBV感染後約59日たつとHBs-Ag検査でウイルス感染が判明する。一般には2~3カ月を目安とする。

1) 医療従事者の事故

HBVを含む血液材料による汚染事故があった時には、高力価HBs抗体含有免疫グロブリン(HBIG)をできるだけ早く(遅くとも48時間以内に)投与し、必要に応じてHBワクチンを併用して、HBV感染を防ぐこと。
本人がHBs-Ab陰性(HBs抗原陽性の場合はHBワクチンの適応はない)の場合HBIGを24時間以内に筋注し、汚染源がHBe抗原が陽性であった場合はHBワクチンの接種併用する。
汚染源がHBe抗体陽性の場合はHBIG投与のみで予防可能である。
( HBワクチンをする前に必ずHBs抗原、HBs抗体をを検査し両者ともに陰性であることを確かめておく)
その後の研究により汚染後48時間以内のHBIG筋注投与にワクチン接種を併用することによりHBe抗原陽性であってもその殆が予防可能であることが判明した。

妊婦に対するマス・スクリーニングと児に対する予防措置

HBe-Ag陽性のHBVキャリアの母親から生まれた子供は放置した場合は、ほぼ100%HBV感染が起こり、うち85~90%がキャリア化する。
すなわち、妊婦がHBs抗原陽性ならばHBe抗原陰性であっても、肝細胞内にはHBウイルスが存在することを意味し、その妊婦から出生した乳児でも、その10%程度に一過性感染が起こり、急性肝炎や劇症肝炎が発生している。
HBs-Ag陽性の妊婦から生まれた子供はHBe-Agのいかんに関わらず出生後48時間以内の出来る限り早い時期に高力価ヒト免疫グロブリンを筋注することが必要である。
HBIGは筋注で投与するとHBs-Abは短時間のうちに血中に出現し48時間でプラトーに達する一方、投与された中和抗体は代謝されて2週間の半減期で減少する

児の感染とその後の病態には妊婦のHBe抗原,HBe抗体が強く関連しており、妊婦がHBe抗体陽性の場合は出生児がHBVキャリアになることはほとんどない。
出生時に何らの感染防止処置をしないで自然経過を見た場合,児がHBs抗原陽性になるのは通常,生後1~3カ月である。
生後1週以内のHBs抗原陽性化は極めて少なく1%以下であり,
4カ月以降に陽性化することもまれである。

児の検査

初回のHBs抗原検査は、おおむね生後1か月に行う。
母親がHBe抗原陰性の場合には、生後1か月までの乳児内のウイルス増殖が少なく、乳児に対するHBs抗原検査は医師の判断で省略することができる。
検査でHBs抗原が陰性の場合には、その後、HBIG、HBワクチンの投与(予防措置)を行うが、HBs抗原陽性の場合には、その後の予防措置は断念せざるをえない.
まれに胎内感染が成立し、出生時又は出生後1か月以内にすでに児はHBs抗原陽性の場合(生後1か月のHBs抗原検査で陽性になった場合)には、B型肝炎母子感染防止対策の対象から除外し、保健指導を行う。

HBIGとHBワクチンの投与
①母子感染防止のためのHBIG投与は、出生直後と生後おおむね2か月(8~9週)の2回実施される。
初回のHBIG投与は、生後できるだけ早く、おそくとも48時間以内に行う.(初回注射時期は生後5日以内)
第2回目のHBIG投与は、母親がHBe抗原陽性の場合には必ず行うが、HBe抗原陰性の場合には、これを省略することができる。
第2回目のHBIG投与を行う場合は、おおむね生後2か月とされているが、1回目のグロプリンの効果(児の血中の抗体持続)のあるうちに生後2か月(60日)をめどに投与する。
HBIG投与の方法としては、用量は第1回目は0.5ml~1.0mlととなっているが、体重等に問題が なければ通常1.0mlが適当である。
この場合0.5mlずつ2回にわけて筋肉内注射することになって いる。 
第2回目のHBIG投与については、新生児同様体重等に問題がなければ通常少なくとも 1.0mlは 投与したい。
②HBワクチンの投与(第二世代の遺伝子組換え)は、通常、初回は生後2~3か月、 第2回は初回の1か月後、第3回は初回の3か月後、の3回である。
初回投与は、HBIG投与と同時に投与した場合でも十分に有効であり、両者を同時に投与することが実用的である。
HBワクチンとHBIGは別々の部位にそれぞれ注射し、決して両者を混合して注射しては ならない。
ワクチン投与方法は、用量は0.25mlずつで、皮下注射である.
皮下注射なので注射部位については常用される部位で差し支えない.
HBワクチンと他の予防接種との関係であるが、問題となりうるのは通常ポリオ生ワクチン
(生後3月~48月)とB C G(4歳に逢するまでの問)である.

HBワクチンをポリオ生ワクチン接種予定日より7日以上早く実施する(ポリオが先だと1か月の間隔をあけたくなるが、不活化ワクチンであるHBワクチンが先なら次の他ワクチンは7日以上 間隔があけばよい)
生後6か月ころのHBs抗体検査により、HBs抗体が獲得されていれば予防措置は成功したものと考えてよい。
もしHBs抗体陰性もしくは低値であれば、この時点で、HBs抗原検査を行い、陰性が確認されれば、B型肝炎ワクチンを追加接種(第4回目)(第5回目)を担当医の判断によって行われるべきであろう。
なお、これら追跡中にHBs抗原が陽性となることがあれば、その時点で予防措置は成功しなかったと判断し、以後のB型肝炎ワクチン接種は行わない.このような児に対してはHBe抗原陽性の間は3か月に1回程度、HBs抗原、HBe抗原(もし陰性化したらHBe抗体)、
GOT、GPTの検査を行い経過を観察する必要がある。

HBV母子感染防止処置の失敗例

出生時から後1カ月以内に陽性になってくる ものが1~2%あり,これらは出生前の感染と考えられる(早期陽転群)。
その後,ワクチンに反応せずHBVキャリア化するものが2%程度ある(後期陽転群)。
また,いったんHBs抗体陽性と なったものが次第に低下し,1~2年後にHBs抗体陰性化するとともにHBs抗原陽性となるものが まれにある(晩期陽転群)。

B型肝炎の関連疾患

Gionotti病、腎障害(基底膜にHBe抗原抗体の複合体が沈着)

薬物消毒

薬物消毒のうち、HBVおよびHCVに対しての疫学的検討から有効性が確認され、また最も広く用いられているものは塩素系消毒剤である。
しかし、金属材料に対しては、本剤は腐蝕作用があるので、非塩素系消毒剤を用いる。なお、消毒する対象物が蛋白質でおおわれている場合には、薬物により蛋白質が凝固し薬物の効果が不十分となりやすいので、作用時間を長くすることが必要である。
いずれにしても、使用後すみやかに十分に洗浄した後に、薬物消毒することが望ましい。
(1)塩素系消毒剤
次亜塩素酸剤( 有効塩素濃度1,000ppm) 消毒時間1時間
(2) 非塩素系消毒剤
(イ)2%グルレタール・アルデヒド液
(口)エチレン・オキサイドガス
(ハ)ホルム・アルデヒド(ホルマリン)ガス
(注)次亜塩素剤の商品名は次のとおりである。
クロラックス, ピューラックス, ピューラックス10, ハイター,ミルトン
(3)加熱滅菌
オートクレーブ,  乾熱滅菌,  煮沸滅菌

B型慢性肝炎・肝硬変の基本的考え方

B型慢性肝炎の場合は、ウイルスを排除することはほぼ不可能で、治療の目的はウイルスの増殖を低下させ、肝炎を沈静化させること」となります。

平成22年(2010年)35歳未満B型慢性肝炎の治療ガイドライン

B型慢性肝炎の治療方針は年齢により異なる。
35歳未満では自然経過でセロコンが起こる可能性があることやINFの治療効果が期待てきる。

治療対象はALT≧31IU/Lで
HBe抗原陽性例は、HBV DNA量 5 log copies/mL以上
HBe抗原陰性例は、HBV DNA量 4 log copies/mL以上
肝硬変では、3 log copies/ml以上

HBV DNA量     7log copies/mL以上        7 log copies/mL未満


          ①IFN長期投与 (24-48週)    ①IFN長期投与 (24-48週)
HBe抗原陽性00000①Entecavir*000000000000000②Entecavir


          ①Sequential療法           ①経過観察または Entecavir
HBe抗原陰性   ( Entecavir + IFN連続療法)    ② IFN長期投与 (24週)
00000000000000000② Entecavir
        血小板 15万未満または F2以上の進行例には最初から Entecavir 

35歳未満B型慢性肝炎治療ガイドライン
INFによりALT値の改善やHBV-DNA量の低下が見られない例も認められることからエンテカビルによりHBe抗原の陰性化とHBV-DNA量の低下を目指すこととしエンテカビルも治療の選択肢の一つとした。
*Entecavirを使用しe抗原が陰性化しHBV-DNAが陰性化した症例はSequential療法に切り替え、drug freeをめざす。最終的にはHBs抗原陰性化を目指してINF単独あるいは核酸アナログ・INFのsequintial療法を基本とする。

HBe抗原陽性で7log以上の例ではINF抵抗例も多く認められるが、核酸アナログ製剤では35歳未満から長期服用することとなるためできるだけ短期間でHBe抗原の陰性化およびHBV-DNA量が低値となる治療法が望まれるためINF療法を第一選択とする。
HBe抗原陰性で7log未満の例は、基本的には経過観察としているが
ALT値31以上を繰り返す症例は進行例であることを考えてエンテカビルまたはIFN24週間長期投与とする。

核酸アナログ・INF sequintial療法
①併用期間あり
INF sequintial治療とは核酸アナログ治療でe抗原が陰性化しHBVウイルス量を低下させた段階でdrug freeにするためにINFと核酸アナログを1ケ月間併用しトータルINF6ケ月使用し治療を中断する治療と定義する。

  核酸アナログ
 ・・・・・・・・・・・・・    INF5ケ月
         --------------------------------------- 
②併用期間なし
  核酸アナログ       INF6ケ月
 ・・・・・・・・・・----------------------------------  

INF sequintial療法とは核酸アナログ治療でHBe抗原が陰性化または陰性となった症例でdrug freeを目指してINFと核酸アナログを1カ月併用後、5カ月間、あるいは核酸アナログ終了後連続してINFを6カ月使用し中断する治療法である。
また、このINF sequintial療法を行う場合は、核酸アナログ治療でHBe抗原が陰性化または陰性となった例で核酸アナログを十分投与し、HBV-DNAの陰性化期間が1年以上経過しCore関連抗原(HBcrAg)も4.0logu/ml以下の症例に行うのが望ましい。

解説
●e抗原陽性でウイルス量が非常に多い人には、まずはインターフェロンを投与します。
もし、このインターフェロンで効果がない場合は、核酸アナログ(エンテカビル)が使われます。
●e抗原陽性でもウイルス量が少ない人に関しては、インターフェロンの長期療法により肝炎の沈静化とトランスアミナーゼの正常化を求めます。
●e抗原陰性例でウイルス量が多い人に対しては、しばらくは経過観察し、もし肝機能が 悪化する場合はインターフェロンの長期投与、あるいはエンテカビルの投与となっております。
●しかし、e抗原陰性で、ウイルス量が少ない人では、経過観察を一般に行いますが、患者さんによっては線維化の進行が肝硬変に近い場合には、インターフェロンやエンテカビルを使うこととなっています。

平成22年(2010年)35歳以上B型慢性肝炎の治療ガイドライン

35歳以上の場合、INFによるHBe抗原の陰性化が得られにくいためエンテカビルが治療の中心となる。

治療対象は、ALT≧31IU/Lで
  HBe抗原陽性例は、HBV DNA量 5 log copies/mL以上
  HBe抗原陰性例は、HBV DNA量 4 log copies/mL以上
  肝硬変では、3 log copies/ml以上

HBV DNA量        7log copies/mL以上000000007 log copies/mL未満


            ① Entecavir0000000000000① Entecavir 
HBe抗原陽性      ②Sequential療法*0000000② IFN長期投与( 24-48週)
00000000000000( Entecavir + IFN連続療法)


HBe抗原陰性0000000000Entecavir0000000000000000①Entecavir
000000000000000000000000000000000000000000②IFN長期投与(24-48週)

*Entecavirを使用しe抗原が陰性化しHBV-DNAが陰性化した症例はSequential療法に切り替え、drug freeをめざす。

35歳以上はHBV-DNAの持続的陰性化およびALT値の持続正常化を目指して
核酸アナログ製剤(初回核酸アナログ製剤はエンテカビル、ラミブジンおよび
エンテカビルの耐性例はラミブジン+アデホビル併用療法)を長期投与し、HBs抗原
陰性化を目指す。

補足1
1.B型肝炎はHBV genotypeにより治療効果が異なるためgenotypeを測定して治療を決定する。特に、genotypeA,Bは35歳以上でもINFの効果が高率であることから可能な限りINFを第一選択とすることが望ましい。
2.INFの投与期間は24週間を原則とするが有効症例(HBV-DNA低下、ALT値正常化)は48週間が望ましい。
3.INF在宅自己注射可能な症例はQOLを考慮して在宅自己注射を推奨する。
4.ラミブジンおよびエンテカビル耐性株については、ラミブジン+アデホビル併用療法を基本とする。
しかし、ラミブジン+アデホビル併用を行なって3年以上経過しても
HBCVDNAが4log copies/ml以上でかつALT値>31の例はエンテカビル+アデホビル併用療法も選択肢の一つとなる。
5.ラミブジン、アデホビル、エンテカビルのいずれの薬剤にも耐性株が出現した例にはエンテカビル+アデホビル併用療法、あるいはテノホビルも選択肢の一つとなる。
6. sequential療法を行う場合は、核酸アナログ治療でHBe抗原が陰性化(または陰性) の症例で核酸アナログを十分投与し、HBV-DNAの陰性化期間が1年以上経過し、Core関連抗原(HBcrAg)も4.0logU/ml以下の症例に行うのが望ましい。
7.アデホビル併用療法を長期行い、腎機能が悪化する症例ではアデホビルは隔日投与にする。
8.抗ウイルス療法はALT>31の場合に考慮する。35歳以上でF2の進行例にはALT<31でもウイルス増殖が持続する場合は抗ウイルス療法の対象となる。
しかし、高齢者やHBe抗原陰性例、抗ウイルス剤の投与が難しい場合は肝庇護療法(SNMC,UDCA)で経過を見ることも可能である。
9.ラミブジン投与中でHBV-DNAが陰性化持続する場合は原則エンテカビルに切り替える。
また、エンテカビルに切り替える際はラミブジンの耐性変異がないことを確認することが望ましい。
10. HIV合併例はエンテカビルの使用によりHIV耐性ウイルスが出現する可能性があるためエンテカビルは原則として使用すべきではなく、エンテカビル開始時にはインフォームドコンセントを取った上でHIV抗体測定を行うことが望ましい。

平成22年Lamivudine投与中B型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ製剤治療ガイドライン

     HBV DNA量              治療法


2.1 log copies/mL未満持続       原則的にEntecavir 0.5mg/日に切り替え


                     ①VBTなし*:Entecavir 0.5mg/日に切り替え可
2.1 log copies/mL以上持続      ②VBTあり*:Adefovir 10mg/日併用
                    * VBT: viral breakthrough
      VBTではウイルス変異が起こり、なおかつトランスアミナーゼが高い

ラミブジン耐性ウイルスによる肝炎に対ては、アデフォビルが第1選択になる。
また、慢性肝炎でHBe抗原陽性例ではALT値が100以上での投与が効果的である。
(但し、組織学的に進行した患者さんではHBV-DNAが上昇した時点でアデフォビルを開始する。)

参考
◯母子感染例はIFN抵抗性のことが多く、Sequential療法(Entecavir+IFN連続)も選択肢のひとつとなる。
◯HBV DNA量が低値・ALT値が正常であっても、免疫抑制作用のある薬剤や抗がん剤投与時にはHBV DNA量が上昇して高度の肝障害をきたすことがあるため注意が必要である。

免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策

1.HBV・DNA量が低値・ALT値が正常であっても免疫抑制・抗癌剤 投与時にはHBV・DNA量が上昇して高度の肝障害をきたすことがあるため注意が必要である。
2.HBs抗原が陰性例でもHBc抗体、あるいはHBs抗体陽性例に免疫抑制・抗癌剤投与中、あるいは投与終了後にHBV-DNA量が上昇して高度の肝障害をきたすことがあるため経時的にHBV-DNA量を測定し、HBV-DNAが陽性化した症例には核酸アナログ製剤を早期に使用することが望ましい。

ウイルス性 B型肝硬変に対する包括的治療のガイドライン

A)治癒目的の核酸アナログ治療
  1. B型肝硬変(代償性・非代償性)症例への初回核酸アナログ製剤はエンテカビルを、
    一方、ラミブジンまたはエンテカビル耐性株出現例ではラミブジン+アデホビル
    併用療法とする。
  2.  B型肝硬変症(代償性・非代償性)症例への核酸アナログ投与はHBs抗原が陰性化するまで長期投与する。
B)初癌予防および肝癌再発予防目的の治療
  1.  B型肝硬変および肝細胞癌の症例でHBV DNA 4log copies/ml以上を示す例では核酸アナログ製剤でHVB-DNAを低下させ再発予防を目指す。
  2. 肝硬変例にはアルブミン値を考慮して分岐鎖アミノ酸製剤(リーバクト)を使用して発癌抑制を目指す。

●本ガイドラインでは、代償性、非代償性を問わず、B型肝硬変に対する治療目的での治療として、核酸アナログ製剤を、HBs抗原が陰性化するまで長期投与することを推奨している。
この際、初回治療であればエンテカビルの投与が推奨されている。
●また、初癌予防および肝癌再発予防を目的に治療を行う場合はHBV-DNAが4log以上を示す例では核酸アナログ製剤でHBV-DNAを低下させ、再発予防を目指すことを推奨しいる。

◯肝組織の新犬山分類
       線維化の程度         壊死・炎症所見の程度
   F0:線維化なし           A0:壊死・炎症所見なし
   F1:門脈域の線維性拡大       A1:軽度の壊死・炎症所見
   F2:線維性架橋形成         A2:中等度の壊死・炎症所見
   F3:小葉のひずみを伴う線維性架橋形成   A3:高度の壊死・炎症所見
   F4:肝硬変

慢性肝炎ではALT>ASTであるが,進展につれて1.0に近くなり,肝硬変ではAST>ALTと逆転する.

腹部エコーでは肝右葉の萎縮・左葉の腫大,肝表面の不整・波打ち様凹凸不整,肝実質エコーの粗造化,肝内脈管系の狭小化,中度から高度の脾腫や門脈本幹の拡張,腹水などの所見は肝硬変への進展を示唆する.CTでも同様に肝表面の凹凸不整や右葉の萎縮・左葉の腫大などの観察や,MRIでの再生結節の出現は診断の有用な指標となる.

腫瘍マーカーではAFP,PIVKA-II,
AFP高値の場合AFP―レクチン(L3)分画の測定肝細胞癌の早期発見に有用である

<各種診断基準>

慢性B型肝炎(Chronic hepatitis B)
1. HBsAgが6か月陽性
2. HBVDNAが20,000 IU/mL (5 log copies/mL)以上。
   HBeAg陰性患者では2,000-20,000 IU/mL (4-5 log copies/mL)
3. 持続的または間欠的に ALT/AST が上昇
4. 肝生検で慢性肝炎と壊死炎症性病変を認めること

非活動性HBsAg キャリア(Inactive HBsAg positive career state)
1. HBsAgが6か月陽性
2. HBeAg陰性、HBeAb陽性
3. HBV DNA が2,000 IU/mL(4 log copies/ml)以下
4. 持続的に ALT/AST が正常
5. 肝生検で有意な肝炎所見なし

沈静化B型肝炎(Resolved hepatitis B)
1. 以前に急性または慢性B型肝炎があった患者、またはHBcAbかHBsAbが陽性
2. HBsAg陰性
3. HBV DNA検出感度以下
4. ALT正常

HBcAbのみ陽性(HBsAgもHBsAb陰性)になった症例
①HBsAgが時間が経って陰性になってしまった慢性活動性肝炎
②HBsAbが時間がたって陰性化してしまったResolved hapatitis
③HBc抗体が偽陽性
④急性肝炎でHBc抗体しか認められない時期( IgMHBcAbを測定したらはっきりする)

乳幼児期はいわゆる「免疫寛容」の状況にあり、HBVが体内に侵入してきても自己の免疫システムが未熟なため、HBVを非自己として認識できないことによる。仮にHBVに感染しても慢性化は稀である。
一方、成人であっても、免疫不全の状況にある、「免疫抑制剤使用中」、「抗癌剤治療中」、「後天性免疫不全症候群(AIDS)患者おいては、 HBVが排除できずに持続感染を起こすことがある。HBVの初感染の場合はIgM-HBc抗体が陽性となる。

劇症肝炎の診断基準はプロトロンビン活性度40%以下かつ肝性脳症Ⅱ度以上(羽ばたき振戦出現)である。一般的に肝庇護剤の使用は逆にウイルス排除をの妨げとなりHBVの持続感染化を起こすので推奨されていない。IFN療法を行うと感冒様症状、汎血球減少は必発である。
また時に間質性肺炎、うつ病を起こす患者がいる。また眼底出血、脱毛、タンパク尿などが出現することがある。

参考文献
1)熊田博光 監修 B型慢性肝炎のマネジメント.医薬ジャーナル社.2008
2)三田英治・加藤道夫編著:必ず役立つ肝診療バイブル.
メディカ出版.2009
3)日本肝臓学会編,慢性肝炎の治療ガイド2006

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